追放された僕、封印ロリ女神に憑依されTS覚醒~最強の【魔力喰らい】となり神々の代理戦争にまで拡大する~ 作:nene2012
それから5日後に魔族が支配地に赴き魔王城に王国の軍勢が到着するのである。
軍勢は総勢約1万5千人で魔王城を包囲していた。
魔族の人口は人間とは違い、数が少ない。その為、人間の様に軍を編成して迎え撃つようなことはしなかった。
進軍している間は特に相手の抵抗は無く、魔王城まで問題なく到達できたのである。
だが、城内にいる相手は人間でなく魔族と魔物が相手である。
人間にはない特殊な能力や魔力を持つ者がいるので油断は出来ない。
また、中には魔法を使える者もいるので魔法での攻撃にも注意しなくてはならないのだ。
よって、すぐに城を攻め入るのではなく魔王城周辺を包囲する形になる。
そして、王国軍は魔王城の城門前に布陣して、その門が開くのを待つのであった……。
王国軍に囲まれて魔王城の城門は堅く閉ざされていた。
そして、その門の上にある櫓からは魔族の兵士が立ち王国軍を監視している。
彼等に向かってレムルスは大声で伝える。
「魔王に伝えろ! 神に選ばれた勇者レムルスが来たとな!」
「神に選ばれた勇者だと?……」
「そうだ! 魔王は神の敵として世界を破滅させる邪悪な存在だ!……だから、俺が神の裁きを下しに来た!」
魔剣士は櫓の兵士に向かって大声で叫ぶ。
彼の声を聞き兵士達は報告しようかどうか迷っている。
そして、考えた挙句の果てに櫓の兵士は上司に指示を仰ぐのであった。
「魔王様に報告してこい!」
「はっ……直ちに……」
その兵士は急いで城の中に入り魔王に報告しに向かうのである。
兵士は櫓を降り内門に向かうと、入り口迄の通路には魔族や魔物をかたどった石像が並んで配置されている。
門に入ってから、すぐに魔王のいる玉座の間に向かう。
玉座の間には長年設置されている黒い石でできた一枚岩を削り出して作った玉座が鎮座していた。
その玉座の上には黒いローブを着て髪色が多元色をした1人の女性が座っている。
近くにはドワーフ、ハーフリング、エルフ、竜人族もいた。
彼女には上位魔族特有の角は生えていないので人間と思われる。
兵士は息を切らせながら城門の前でのレムルスと名乗る男の言葉を報告していた。
「魔王様……レムルスと名乗る勇者が魔王様に面会を求めております」
「レムルス?……彼が勇者を名乗ってきた?」
「はい、なんでも神に選ばれた勇者だと言っておりますが……」
「……わかりました。すぐに門まで向かいます」
彼女は玉座から立ち上がると、兵士の案内で城門に向かう。
それと同時に周りに居た亜人達も彼女と一緒について行くのである。
城門に近づくと1人の兵士が彼女に近づく。
「レムルスという男が……魔王様を呼べと……」
「……わかりました。櫓から見てみましょう」
彼女は兵士と共に櫓を上る。その下では亜人達が魔王の身を心配しながら待つのであった。
櫓から見渡すと王国軍の軍勢が布陣している。
歩兵が列をなして、その後方には馬に乗った騎士団が控えている。
王国の軍勢の前方に見覚えのある男の姿が目に留まる。
「あれは?……」
アベルは目を凝らしてレムルスの顔を見ると、彼は天を仰ぐようなポーズを取っていた。
そして、彼に目的について質問するのであった。
「レムルス……軍を率いて何をしに、ここへ?」
アベルは威圧感を、まるで感じさせず魔王らしくない穏やかな声でレムルスに問いかける。
彼もアベルが目に入ると、大きな声で返答するのであった。
「魔王よ!……神の敵である、お前を倒しに来た!」
「えっ!?……」
「神に選ばれた勇者であるこの俺が、お前に正義の鉄槌を下す!」
レムルスの言葉にアベルは唖然とする。彼女の頭の中では混乱するばかりであった。
「倒しに来たって?……それ以前に何故、軍勢を率いることが出来たの?」
「それは……」
レムルスが答えようとすると傍からレイラが出てきて遮り代わりに答える。
「アベル……私は聖女として神に選ばれたの。教団に神の啓示を伝え王にも魔王討伐の必要性を認めさせ軍を率いてきました」
「なるほど、そういう事だったんだね……けど、君達が神に選ばれた勇者と聖女だとはとても思えないね……」
腑に落ちない点に対して彼女はレムルスに強い視線を向け反論する。
「それはどういう意味だ!……アベル!」
「言葉の通りだよ。君が神から選ばれた者としては余りにも相応しくない……。本当に選ばれたのなら落ちぶれ退廃したビビりの神なんだろうね」
「……なんだと!」
レムルスはアベルに馬鹿にされた事に憤慨するが、ウェイドとアーロンも彼の肩に手を当てて宥める。
「落ち着け!……ここで奴の挑発に乗っても敵を利するだけだ」
「ここは我慢しろ……」
「だけど……アイツが俺の事を馬鹿にしやがって」
仲間の言葉に彼は落ち着くが、反対にレイラは顔を真っ赤にしアベルに怒りの矛先を向ける。
「よくも……私達を侮辱しただけでなく、神をも侮辱したな!」
「別に馬鹿にしていないよ。ただ、君の信仰する神は衰退して無能な神だと言いたかっただけだよ……」
アベルはレイラの怒りに対して冷静に答えるが、彼女はさらに怒り心頭であった。
「この……人間のくせに魔王を名乗る能無しめ!……元仲間だったよしみも捨てて天罰を与えてくれるわ!」
「それは、こっちのセリフだよ……。勇者と聖女を騙る者が魔王を討伐するなんてお笑い種だね」
レイラとアベルは互いを罵り合い、睨み合って火花を散らしていた。
そして、アベルはレムルス達に向かって打診をする。
「だけど、ここで戦を起こせば互いに戦死者が出る……1つ考えがあるんだけど僕達と君達『終焉の刃』で戦って決着をつけないかい?」
「なんだと?」
アベルはレムルスに両軍を巻き込まない為の、1つの提案を持ちかける。
だが、レムルス達は彼女の言葉に困惑する。自分達や魔女がいれば戦争には勝利すると思えるが……。
そんな考えを読むかのようにアベルは彼らに話し続ける。
「僕達と君達で勝負して勝てば互いに多大な被害が出ないでしょう?」
「……好き勝手言いやがって」
「別に適当に提案している訳じゃなくて、死傷者を多く出さない為に言ってるんだけど……」
魔王の言葉に王国軍の兵士や騎士団も困惑していた。
彼等は今から戦が始まるものとばかり思っていたが、魔王の言葉には一理ある。
急な招聘に準備や装備も十分に整っておらず戦になれば多くの犠牲者が出るのは明らかである。
それに、魔王の被害の報告がない現状で魔族と戦うのは彼等としても不本意であった。
「まあ、奴の言う通り被害が最小限で済むなら俺達が勝てばいいだけだ」
「レムルス……どうする、代表戦をするか?」
「確かに軍の犠牲を払わずに済むな……俺達は神から力を貰ったんだ負ける訳がない!」
ウェイド達と話してレムルスは魔王の提案を受け入れることにする。
先日の決闘の時とは違い神の力だけでなく聖剣『ディヴァイン・フォース』がある。
アベルの魔力吸収は脅威だが、今の力では勝てるとレムルスは確信していた。
「わかった!……その提案を呑もうじゃないか」
「ありがとう……それじゃ、明日に魔王城の城門前で戦おうか」
「いいだろう……だが、俺達が勝ったら神への冒涜と敵としてお前と仲間達を処刑してやる!」
「……それは怖いね」
レムルスの言葉にアベルは肩をすぼめて戯けて見せる。そして、櫓を降り城に戻ると幹部達と仲間達に戦いを伝える。
「明日、僕達とレムルス率いる『終焉の刃』で戦う事になったよ」
「それは……奴等と一騎打ちするという事だな?」
「はい、彼等に負ける事はありませんから……」
ギルバルスは不安になりアベルに確認をする。彼は魔王の座から降りたが相談役として残っていた。
それに対して現魔王ことアベルは自信ありげに答えるのであった。
「そうか……わかった。では、奴等を打ち負かすのを期待しているぞ」
「まあ、見ていてください」
元魔王の言葉にアベルは余裕の表情で答える。
彼女は仲間達と幹部達と明日の戦いについて深く話し合うのであった……。