「THE SABUROUTA ~太平プロレス興行日誌~」   作:八意あまつ

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第17試合(太平プロ通常興行):タッグマッチ「ガータ御子柴&ライジング雫VSバッカス木桜&デンジャー・サチ」

 太平プロレスの熱気に包まれた会場。スポットライトが激しく交差する中、青と白を基調としたフリル付きのコスチュームに身を包み、リングインしたライジング雫の表情は硬い。黒髪のショートボブの隙間から覗く瞳は、鋭さを保とうと必死だが、その奥には拭い去れない混濁した疲労が沈殿していた。連戦。それも、ただの連戦ではない。不在となっているエース・三郎太の穴を埋めるべく、彼女は己の限界をとうに超えてリングに立ち続けていた。先日の興行で見せた、一日に二連戦という強行軍。勝利こそ掴み取ったものの、その代償は確実に彼女の肉体を蝕んでいる。その上、ろくに休養もとらず焦燥感から練習に身を浸し、今もなお、強迫観念が、彼女の肩に重くのしかかっている。幽鬼を照らす鬼火のような焦燥が胸の内を焼き続けていた。休めば崩れる、立ち止まれば置いていかれる――誰が評したか死霊騎士もかくやという執念が、彼女の筋肉を強張らせ、その呼吸すら浅くしていた。

「……オレが先に」

 隣に立つガータ御子柴が、低く、突き放すような声で言った。黒と赤の、肌の露出が極めて多い挑発的な衣装。頭にはネコミミのヘッドセットを装着し、尾を引くようなアイラインが彼女の「ガータ(雌猫)」としての獰猛さを際立たせている。御子柴は指ぬきグローブの感触を確かめながら、雫の足元のわずかな揺らぎを、射抜くような紅色の瞳で見据えていた。その視線の奥に何を思っているのか、雫には窺い知れない。知りたいとも思っていなかった。

「いえ、私が行きます。サチは私の同期ですし」

 雫は御子柴の視線を拒絶し、言葉を遮るように、一歩前に出た。その声は、自分自身に言い聞かせるような硬さを含んでいる。同期であるデンジャー・サチに対し、無様な姿は見せられない。いや、見せられないのはサチに対してだけではない。隣に立つ御子柴に対してもだ。雫にとって、反則を厭わず、盤外戦術すら「プロの華」と言い切る御子柴は、到底受け入れがたい存在だ。いまだ己の信じる正義と誠実を至上とする雫にとって、御子柴の存在は生理的な嫌悪感すら抱かせる。ぶっちゃけてしまえば宮川三郎太という雫にとって一番大事な先輩を巡る関係において、雫は御子柴のことが大嫌いだった。それでも、タッグメイトとして同じコーナーに立つ以上、それを呑み込まねばならない。雫は昏い炎を腹の底に押し込み、リング中央を睨み据えた。

 御子柴は「あぁ?」と喉を鳴らして眉を寄せた。

「テメェは引っ込んでろって言いたいとこだが……。まぁ、これはタッグマッチだからな。そう言うなら好きにしろニャ」

 御子柴は鼻で笑い、肩をすくめた。その言葉の端々には、隠しきれない苛立ちが混じっている。御子柴は知っているのだ。今の雫の状態が、かつて正論と理想を振りかざして空回りし、絶望の果てにメキシコへと逃げるように渡った自分自身の過去に、あまりにも酷似していることを。目の前の瑞々しくも危うい正義感は、彼女にとって、もっとも直視したくない「かつての自分」をどうにも想起させてならない。そんな心中を知る由もない雫は、固く拳を握りしめる。

「……先輩が居ない分は、わたしが頑張らなきゃいけないの。わたしが……」

 雫の呟きは、もはや義務感を超えて呪詛のように響いた。御子柴はそれ以上何も言わず、なにか言いたげな、それでいて全てを諦めたような複雑な表情で、「チッ」と大きく舌打ちをすると、コーナーへと退いた。

 

 その時、場内のスピーカーが割れんばかりの音量で実況の声を拾った。

『皆さん今晩は、本日も太平プロレス興行が始まります! 今宵は第1試合からいきなりの大試合! 不在のエース・三郎太の穴を埋めるべく、先日は1日に2連戦の強行軍で立て続けの勝利を掴んで見せたライジング雫がガータ御子柴とタッグを組んで戦います!』

 実況の熱を帯びた声に、会場からは割れんばかりの拍手が沸き起こる。だが、実況の声はさらに続く。

『お相手は揃ってヒールではないのにファンにはヒール扱いされているというお馴染みのバッカス木桜とデンジャー・サチのタッグコンビ! 今回の解説にはシロオニ・ベスさんにお越しいただいております』

 カメラが解説席を映し出すと、そこには不機嫌を絵に描いたような表情のベスが座っていた。

『……不愉快です。よりによって、あのような品性の欠片もない『野良猫』の試合を解説しろだなんて。酷い試合をした私への仕置きのつもりかしら?』

 ベスの毒づく声がスピーカーから流れる。その声には、明確な敵意が込められていた。先の試合で御子柴と戦い両者リングアウト引き分けとなり、さらに自分の信念を「自己満足」と断じられた屈辱が、彼女のプライドを今なお逆撫でしているのだ。

『えーと、ベスさん? 今日はあくまで公平な解説をその……せめて心がけるだけでもお願いしますよ? それで今回の試合、ベスさんはどうご覧になりますか?』

 困り果てた実況のフォローにも、彼女は鼻で笑って応じるのみだった。しかし、先発するのか自陣コーナーでリング内に立つ雫の姿がアップになると、その怜悧な瞳に微かな陰りが差す。

『色々思う所はありますが、実力的には野良猫と雫さんの組が上でしょう』

 ベスは過日の人生初の解説を、後に三郎太に「言いずらいけど小学生並みの感想?」と言われたのがさすがにショックだったのか、今回は冷徹に分析を口にした。

『ですが雫さんのあの顔が気になります。オーバーワーク? 前回の興行からしっかり休養できていないのではないかしら? サチさんはよく存じてませんが、バッカスさんは見た目はアレですが、それなりにしっかりした実力をお持ちです。雫さん次第では思わぬ不覚をとりかねないかも……」

 案じているのか、あるいはその無様な姿に苛立っているのか、その声音には、感情を抑え込もうとする硬さがわずかに混じっている。ベスの言葉は、会場の熱気とは対照的な冷ややかさで、雫の危うさを浮き彫りにしていった。

『たしかに目の下に隈があるようにも見えますね』

 実況が同意する。

『やはり前回の連戦といい無理をしているのでしょうか、心配ですね……。そうそう、心配と言えばベスさんは留学手続きが済んだとか。学校の単位は大丈夫そうですか?』

『おいやめろ』

 唐突なプライベートへの突っ込みに、ベスが素早く、かつ鋭いトーンで返した。その絶妙な間隔に、客席からは一気に爆笑が巻き起こる。殺伐とした空気が一瞬だけ緩んだ。だが、その緩慢な空気は、非情なゴングの音によって切り裂かれた。

 

 カーン!

 

 試合開始の合図。先発し雫の前に立ちはだかったのは、デンジャー・サチだ。茶髪のサイドテールを跳ねさせ、幼さの残る顔に似つかわしくない不敵な笑みを浮かべる彼女に対し、雫は先制のミドルキックを放つ。シュッ、と鋭い風切り音が鳴るはずだった。しかし、その脚筋は悲鳴を上げていた。踏み込みがわずかに浅く、重心が浮いている。

「はぁっ!」

 鋭い呼気と共に放たれた蹴り。しかし、本来の雫であれば空気を切り裂くような鋭さがあるはずのそれは、見る影もない。サチは「あはっ!」と嘲笑いながら、まるでダンスを踊るような軽やかなステップで、余裕を持って回避してみせた。

「なにそのトロくさい動き!」

 雫の心臓が嫌な音を立てて脈打った。焦りが思考を白く塗りつぶしていく。空振りした勢いで体勢を崩した雫の背後に、サチは猫のような素早さで回り込んだ。同期生としてデビューしたもののその後の活躍で雫に先行され後塵を拝していたはずのサチの指先が、雫の黒髪を無慈悲に掴み上げる。そしてそのまま、自らの体を投げ出すようにしてマットへ引き倒した。

「ざぁ〜こ♡  隙だらけだよ、雫!」

 強烈なフェイスバスター。鈍い音が響き、顔面からマットに叩きつけられた雫の視界が、火花を散らしたように明滅する。鼻腔に、キャンバスの硬い感触と独特の匂いが突き刺さった。

「きゃっ……!?」

 衝撃にダウンしつつもマットに手をついてすぐに身を起こそうとする雫。その背中に、サチが馬乗りになって押しつぶす。小柄なサチの体重ですら、今の雫には岩のように重く感じられる。サチは雫の黒髪を指に絡め、無理やり顔を上げさせると、空いた手で雫の頬を「ペチ、ペチ」と軽く、だが侮辱的に叩き始めた。

「戦う前からフラフラじゃん、ウケる! 何、三郎太センパイがいなくて寂しいの? そんなんじゃエースの代わりなんて無理無理!」

「……っ……はな……してっ……」

 雫の声は掠れていた。肉体的なダメージ以上に、同期にいたぶられ、大観衆の前で醜態を晒しているという事実が、彼女の誇りをズタズタに切り裂いていく。観客席からはサチの酷薄なムーブへの激しいブーイングと、雫を案じる悲鳴に近い声援が交錯し、会場のボルテージはあがりつつも混沌とした様相となっていった。

 だが、その屈辱こそが、ライジング雫の意識の奥底の昏い炎を呼び覚ました。馬乗りになったサチの下で、雫は震える指先をキャンバスに食い込ませる。耳元で囁かれる嘲笑はもはやノイズでしかなかった。

「……舐めないで……っ!」

 雫は裂帛の気合とともに、四肢に全神経を集中させた。夢中になっていたサチの虚を突き、その体を跳ね除ける。予期せぬ反撃に重心を崩したサチの首筋を、雫は膝立ちの状態から逃さずそのしなやかな腕で捉えた。渾身の力で自らの体重を浴びせ、マットへと叩きつける首投げ。鈍い衝撃音がリングに響き、サチの体がキャンバスで弾む。

「……あうっ!?」

 サチは短く悲鳴を上げ、後頭部をさすりながら転がるようにして距離を取った。雫は肩で激しく息を吐きながら立ち上がろうとするが、蓄積した過労のせいで膝が笑い、焦点が定まらない。まだ試合は始まったばかりだと言うのにリングの照明が二重三重に重なって見える。視界の揺らぎに合わせて、雫の呼吸も荒く乱れた。その雫の不調を見透かしたサチは、大げさに痛がる素振りを見せ、雫を小馬鹿にするようにひらりと舌を出して自軍のコーナーへと逃げ帰った。

「おじさ〜ん、交代! アイツ、余裕なさすぎてウザ〜い。マジで空気が重いんだもん!」

 サチは待ち構えていたバッカス木桜の大きな掌に力任せにタッチすると、足早にロープの外へと離脱してエプロンサイドでロープに体重を預ける。交代したバッカスは、むき出しの重厚な筋肉を揺らし、だらしなく突き出た腹を叩きながら、ゆっくりと獲物を追い詰めるような足取りでリング中央へと歩み寄った。

「おう、任せとけ。……おいおい、雫よ、顔色が最悪だぞ?」

 バッカスは不敵な笑みを浮かべ、アルコールの入り混じった吐息を漏らすと、突如として巨体に似合わぬ軽快なステップを踏み始めた。腰をくねらせ、両手を激しく回転させる奇妙なダンス――「バッカス・シェイク」の予備動作だ。

「そういや雫、お前さんにゃ初めてのご披露だったな。いくぜ必殺、バッカスシェイク! しぇけしぇけべいべぇ!」

 バッカスが激しく踊り狂うと、彼が試合前から大量に摂取していた安酒の、鼻を突くような強烈な臭いが霧となってリング上に霧散した。それは彼の汗から急速に気化したアルコール成分の結界であった。その霧に触れ、呼吸から取り込んだ者はあっという間に酒酔い状態と化してしまう。ただでさえ連戦の疲労で三半規管が悲鳴を上げていた雫にとって、その濃密な酒臭さは致命的な追い打ちとなった。

「うっ……、これ……は……」

 喉の奥からせり上がる、焼けるような胃酸の感覚。頭を直接殴られたような激しいめまいに襲われ、視界がぐるぐると回転する。リングが傾いているような錯覚に陥り、足元はまるで泥沼を歩いているかのようにおぼつかなくなった。雫の膝ががくりと折れる。

 その隙を、経験豊富なバッカスは見逃さなかった。

「体調整ってねえ時に酔ってキツい時ってあるよなぁ。……体調管理もレスラーの仕事だぞ、雫? オラァ!」

 教育的指導ともとれる無慈悲な宣告とともに、バッカスの丸太のような右腕が、雫の無防備な腹部へとめり込んだ。全体重を一点に集中させた、渾身のガットショット。

「がはっ……!」

 胃の腑を直接突き上げられた雫は、肺の中の酸素をすべて強制的に吐き出され、くの字に身体を折った。生理的な涙が瞳に溜まり、視界が完全に白濁する。もはや彼女に、バッカスの追撃に対応する余力は微塵も残されていなかった。バッカスは苦悶し、嘔吐感をこらえて嗚咽する雫の首を、強引に脇の下へと抱え込む。

「そのまま寝てな!」

 バッカスが垂直に跳び上がる。炸裂したのは、脳天からマットへ突き刺す非情なDDTだ。無防備な雫の頭部が、鈍い音とともにキャンバスへめり込む。首から背骨へと一気に衝撃が走り、視界が一瞬で暗転する。雫の体は力なく跳ね、その後はぐったりと動かなくなった。バッカスは勝利を確信したように鼻を鳴らし、さらに追い打ちをかけるべく、ダウンした雫の両脚を掴もうとかがみ込んだ。逆エビ固めに極め、試合に引導を渡すつもりだ。

 

 だが、その瞬間。

 

「オラ、そこまでだニャ」

 

 リング上の酒霧による視界の悪さとレフェリーの視線がバッカスの影に隠れた隙を突き、自軍のコーナーからまるで当然のように平然とリング内へ歩み出ていた影があった。ガータ御子柴だ。不規則リングインを果たして接近していた彼女の右足が、無防備にさらされていたバッカスの股間を、無造作に、しかし力強く下からえぐるように蹴り上げる。

「ぴっ!? お……おま……それはいくらなんでも……おおおお」

 バッカスは言葉にならない悲鳴を上げ、両手で股間を押さえながらマットを転げ回った。プロレスラーの頑強な肉体も、この禁じ手による衝撃の前では無意味だ。御子柴は悶絶する巨漢を一瞥もせず、マットにうつぶせで荒い息をつく雫のそばへと歩み寄った。御子柴は雫の頭をぽんぽんと軽く叩く。それは優しくパートナーを労う仕草ではなく、まるで故障して動かなくなった安物の機械を、動作確認のために叩くような無機質な動作だった。

「使えねーニャ、ほら、コーナー戻れ。交代だニャ」

 吐き捨てられたその言葉は、雫にとっては今もっとも大切だと縋っている「自力で三郎太の穴を埋める」という誇りを、土足で踏みにじるもののように感じられた。雫は真っ青な顔をゆっくりと上げ、血走った瞳で御子柴を強く睨みつけた。唇を噛み締め、屈辱に震えながら、喉の奥から絞り出すように言葉を繋ぐ。

「……あな……」

「あ?」

 よく聞き取れなかった御子柴が面倒そうに問い返す。雫は震える腕で自らの体を支え、拒絶の意志をぶつけべく今一度言い直す。

「貴女なんかの……助けは要らない……っ!」

その言葉を受けた瞬間、御子柴の目が細められる。彼女は冷徹な無表情のまま、地を這う雫をしばらく見下ろしていた。その沈黙は重く、リング上の酒霧よりも冷ややかに雫を包み込む。やがて、御子柴は何を考えているか推し量れない泥のような濁った瞳で、わずかに肩をすくめた。だが、そこに驚きの色がないことは確かで、見ようによってはまるで雫の言葉をあらかじめ予想していたかのようでもあった。

「……ほーん、そうかい」

 

 実況席からは、興奮を隠しきれない声がスピーカーを通じて会場に響き渡る。

『バッカス・シェイクによって生じた酒霧がリング上を包む中、ライジング雫が翻弄されております! これは一方的な展開だ! しかし、窮地をガータ御子柴が金的蹴りで救ったぁ! 観客の一部と私は思わず玉ヒュンで血の気が引く思いであります! ここでタッチか……?』

 雫を前に踵を返してコーナーへ歩きはじめる御子柴の姿に実況アナが息をのむ。

『ああっとタッチしない! 雫、御子柴のタッチを拒否した! この不調で、まだ一人で戦うつもりなのか!?』

 解説席のシロオニ・ベスは、信じられないものを見るような目で雫を、そして御子柴を凝視していた。

『……あの酒霧は、かつて私も受けた事がありますが、はっきり言ってまともに動けません。タッチを拒む理由が感情なら、愚かと言わざるをえないわ。意地を張る場所を間違えています。平然と動ける野良猫に代わるべき……なんでアイツ平気なの? え? なんで?』

 ベスは真剣に悩んでいた。自分は行動不能も同然となり、最後鬼の底力で無理やり暴れられなければ敗北していたかもしれないあの酒霧の中を確かな足取りで歩いている御子柴の姿は奇怪そのものであった。

『手厳しいベスさんのお言葉でした。一方、バッカス木桜は自陣コーナーへ這い逃れております、デンジャー・サチにタッチするつもりか!?』

『……え? あのサチという娘も平気なんですの……?』

 ベスの困惑をよそに、試合は非情に進む。今更気付いて注意しに来たレフェリーに下がるよう言われた御子柴は、素直にコーナーへ戻るべく歩きながら肩をすくめた。彼女は、地を這いながらも自分を拒絶する雫を見つめ、なかば呆れたような溜息をついてロープの外、エプロンへと戻っていく。

 一方、脂汗を浮かべて股間を庇ってマットを這っていたバッカスもまた、ようやく自軍のコーナーへと辿り着き、待機していたサチとタッチを交わす。

「お、おい……サチ……しばらく頼む……っ」

「もー、おじさん情けなーい! でも、あんな耳付き女に邪魔された分、私が雫ちゃんをたっぷり可愛がってあげるから見ててね!」

 サチは軽やかにロープの間を抜けてリングインする。狙いは一点。未だに四つん這いで、吐き気と戦いながら立ち上がろうとしている雫の背中だ。

「雫~? お顔真っ赤だよぉ? 大してお酒も飲めないのに、雑魚すぎてベロベロに酔っちゃったのかなぁ〜? あはっ、ざぁ〜こ♡」

 サチは空中高く跳躍すると、無防備な雫の背部へと自らの臀部を叩きつけるジャンピングヒップドロップを放った。

「かはっ!?」

 肺から無理やり空気を絞り出され、雫の身体が再びマットにめり込む。重力と衝撃。サチの嘲笑混じりの攻撃は、肉体以上に雫の精神を削っていく。サチはそのまま、雫の上にどっしりと乗り、流れるような動作で相手の両腕を背後へ引き寄せた。極めるのは、屈辱的な姿勢を強いるキャメルクラッチだ。

「ほらほら、どうしたの? そんなに震えて、ギブアップしちゃう? それとも、三郎太センパイにたすけて~って、大きな声で言ってみる? ……あ、ごめん。三郎太センパイ、今ここには居ないんだったよね! 雫ちゃんを助けてくれる王子様なんて、どこにもいなーい!」

「あ……ぐ……、が……っ……」

 雫の顎がサチの腕で強引に引き上げられ、首と腰に凄まじい負荷がかかる。反り返った背骨が悲鳴を上げ、視界には天井の照明が爆ぜるように映る。酒霧の効果で神経が鈍麻しているのか、痛みは鈍いわりに呼吸の息苦しさの影響は過敏に感じられた。肺が圧迫されるたび、酸素欠乏の焦りだけが鋭く胸を刺す。苦しい。

「だめ……ギブなんて……しない……!」

 雫は歯を食いしばった。意識が遠のき、自分がどこにいるのかさえ分からなくなりそうな極限状態の中で、彼女の指先がサチの太ももに触れた。グラウンド技術の真髄。身体を捻ってキャメルクラッチの軸をずらし、観客アピールで視線を外しているサチのキャメルクラッチの拘束をずるりと抜けた。そして、逆にサチの胴体に絡みついていく。必殺のティアドロップボディロックへと繋げる形だ。

「あ、ありゃっ!?」

 一瞬、サチの顔に驚愕が走った。こんな状態でまだ動けるのか。というか、ちょっと目を離した隙に抜けられて絡みつかれている自分の迂闊さに、わりと素で驚いていた。雫は朦朧とする意識の中で、死に物狂いでサチの腰を抱え、自分の脚を絡めた。ここで極めれば、逆転の目がある。そう信じて、彼女は魂を振り絞った。

「……つかまえた……! 離さない……絶対に……!」

 だが、現実はあまりにも残酷だった。本来ならば鋼のように相手を締め上げるはずのそのロックには、今の雫には到底、維持するための「芯」が残っていなかった。過労で筋肉は弛緩し、酒霧で神経伝達は乱れている。彼女が「全力」だと思っている力は、実際には完調時の半分にも満たないものだった。サチは一瞬、身構えたものの、腰を軽く揺すっただけで雫の締め付けが緩むのを感じて、すぐにその「ロック」のあまりの脆さに気づき、再び下卑た笑みを浮かべた。

「あれぇ? 何これ、全然ロックに力乗ってないんですけど?」

 サチは鼻歌でも歌わんばかりの余裕で、雫の絡みつく腕を力任せに引き剥がした。プロとしての技術云々以前の、単純な筋力による脱出。

「サチのパワーで抜けれちゃうなんて、よっわ~い♡」

「ぁ……」

 自信を持って繰り出したはずの技を、赤子の手をひねるように破られた。その事実は、雫の心に最後の一撃として突き刺さった。腕の力が抜け、彼女の指先が力なくマットへと滑り落ちた。その絶望的な光景を目の当たりにした観客席からは、もはや声援というよりも悲痛な叫びに近い声が漏れていた。サチはマットに突っ伏した雫の背中を見下ろし、勝ち誇った笑みを浮かべて再びその細い体を甚振ろうと一歩踏み出す。

「せっかくだし、とことん甚振ってや……あ」

 サチの言葉が途中で凍りついた。視線の先、自軍コーナーで待機していたはずのガータ御子柴が、凶器である鈍い光を放つ鉄鎖を指先に絡め、ニヤニヤと不敵な笑みを浮かべながらトップロープをくぐろうとしていたからだ。獲物を狙う野良猫のような、底冷えする瞳。サチは顔を引きつらせ、雫への追撃を即座に断念すると、脱兎のごとく踵を返した。

「……おじさぁん、タッチ、タッチ~!」

 慌てふためき、股間の痛みがようやく治まって来たバッカス木桜の手を無理やり叩き、サチは場外へと逃れるようにエスケープした。一方、自力での決着を望んでいた雫だったが、心身ともにすでに限界を超えていた。意識は泥のように混濁し、視界の隅では火花が散っている。それでも、彼女の奥底にあるレスラーとしての本能が、死に体に近いその体を動かした。最後の一滴まで振り絞るようにして、雫は朦朧としながらも、這うようにして御子柴の待つコーナーへと向かった。

 リングインする振りだけして、サチを追い返し、そのままリング外に戻っていた御子柴は、その様子を冷徹な視線で見下ろし、無機質な動作でタッチの手を差し出した。

「気は済んだか?」

 低く、地を這うような声を予想していた雫には意外な事に、のんびりとした御子柴の声が雫の鼓膜を叩く。

「くっ……!」

 戸惑いながらも雫はキャンバスを拳で叩き、言葉にならない屈辱を吐き出した。理想を掲げ、独りで背負い込もうとした結果が、この無様な惨敗だ。

「……一応言っとくけど、タッグをヤる気がないならそもそも試合を受けんなよ。三郎太は気に入らないタッグでもきちっと役割を果たしたぜ?」

 御子柴の口から出た三郎太の名前。それは、今の雫にとって何よりも重く、鋭利な刃となって胸に突き刺さった。憧れであり、目標である三郎太なら、今の自分をどう見るだろうか。そちらに気を取られた雫は語尾を飾っていない御子柴の珍しい素の口調には気付かない。

「お前はどうする? ……今、お前のすべきこと、なんだ?」

 雫は重い瞼を持ち上げ、御子柴の紅色の瞳を正面から見据えた。自分よりも強く、圧倒的な存在感を放つ「悪」の化身。その瞳に映る自分は、どう見えているのか。だが、ここで意地を張り続けることは試合を、観客をも軽んじることだ。雫の胸の奥深く、最後の矜持がそう言っていた。

「……私が間違ってました。ごめんなさい。後をお願いします」

 雫は震える指先を伸ばし、御子柴の掌を固く叩いた。

「あいよ」

 なんでもないことのように短く応じた御子柴は、雫と入れ替わるようにしてトップロープを飛び越えた。その瞬間、空気が一変する。

 

 リング中央で待ち構えていたバッカス木桜が、巨体を揺らして組み合おうと腕を広げる。だが、御子柴は正攻法のロックアップなど歯牙にもかけない。バッカスが踏み込むよりも早く、しなやかな跳躍から鋭い一撃を放った。

「木桜センパイ、お久。次は、この黒猫が相手してやる……ニャッ!」

 御子柴の放ったソバットが、バッカスの厚い腹肉を正確に捉えた。

「ぬぅっ……!?」

 分厚い脂肪とその下の筋肉すら超える衝撃にバッカスの巨体がくの字に折れ、苦悶の声を漏らす。しかし、老獪なバッカスもただでは下がらない。彼はリングインする際、密かに口に含んでおいた透明な液体――アルコール度数の高い焼酎を、至近距離から御子柴の顔面に向けて一気に吹きつけた。

「……遠征帰還のキミに乾杯ッ! ちょいと遅くなったがな!」

 酒の霧が御子柴の視界を奪う。バッカスの得意とする目くらましの盤外戦術だ。しかし、バッカスの期待したような混乱は起こらなかった。御子柴は顔を背けることすらなく、滴る焼酎を拭うことすらせず、逆光の中でその瞳を狂気的に輝かせた。

「ご丁寧にどーもっ!」

 顔面に吹きつけられた焼酎をものともせず、御子柴は電光石火の速さでバッカスの首筋へ延髄斬りを叩き込んだ。

「ぶおっ!?」

 バッカスの頭が大きく揺れ、その巨体がキャンバスへ膝をつく。御子柴は着地と同時に流れるような動作でバッカスの背後に回り込み、その巨躯をうつぶせにひっくり返すと、一本の脚を深く絡め取った。シングルレッグブリーカー。御子柴は絡めた脚をテコの原理で引き上げながら、バッカスの膝に己の腰を落とし、一点に荷重を集中させる。

「悪いな。メキシコでテキーラを浴びるほど飲んできたオレには、そんな安酒の匂い、香水にもなりゃしねえニャ!」

「あだだだだ!? て、テメェ……!」

 悲鳴を上げるバッカス。膝関節を極められ、脱出の術を失った彼の巨体がマットの上で激しくのたうち回る。御子柴は瞳にサディスティックな悦楽を浮かべながら、さらに深く腰を沈めた。バッカスのギブアップが目前に迫ったその時、場外にいたサチがなりふり構わずリングへ乱入してきた。サチは最短距離を走り抜け、無防備な御子柴の背後へ向かって跳躍する。

「離せ、この化け物猫ーっ!」

 空中から放たれたサチのドロップキックが、御子柴の背中にまともに衝突した。不意の衝撃に、御子柴のロックが強制的に外され、彼女の体は前方のロープ際まで吹き飛ばされる。しかし、御子柴はロープの反動を利用して猫のようにしなやかに着地した。その口元には、獲物を見つけた猛獣のような、底冷えする笑みが張り付いている。一方、蹴り飛ばされた勢いでロックが外れたバッカス木桜は、破壊された膝を押さえながら、脂汗を流して自軍のコーナーでサチとタッチを交わしていた。

「……サチ、無理すんなよ?」

「が、がんばる!」

 サチはまだ、自分が放った一撃の手応えに浸っていた。「やってやった」という高揚感が、その幼さの残る顔に浮かんでいる。しかし、その表情が凍りつくのに時間はかからなかった。目の前の「化け物猫」が、早くも目前に迫っていたからだ。

「お返しだニャ」

 御子柴が地を蹴った。その速度は、先ほどまでの雫の比ではない。サチが瞬きをする間に間合いは詰められており、空中で身体を旋回させながら放たれるのは、強烈なレッグラリアートだ。

「あぐっ……」

 御子柴のしなる脛が、ガードを間に合わせられなかったサチの側頭部を無慈悲に刈り取った。脳を直接揺さぶられたサチは、悲鳴を上げる間もなくよろめき、その場に崩れ落ちそうになる。だが、御子柴の追撃は止まらない。彼女は懐から、鈍い光を放つ金属製のチェーンを取り出すと、それを手慣れた動作で自らの前腕に幾重にも巻き付けた。レフェリーの死角を突いた、明らかな凶器使用。観客席の一部からどよめきが起きるが、御子柴は意にも介さない。

「テメェはちょっと練習不足だニャア……オラァ!」

 唸りを上げて振り抜かれた腕が、サチの喉元へと叩き込まれた。チェーンを巻いた前腕によるラリアットが硬質な金属と柔らかな肉体をぶつけ合い、嫌な音を響かせ、サチの体が紙切れのように宙を舞った。

「あ、ああ……っ」

 マットに叩きつけられたサチは、喉を押さえて激しく咳き込んだ。涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにしながら、恐怖に震える瞳で御子柴を見上げる。そこにはもう、試合開始時の生意気な「メスガキ」の姿は微塵もない。ただの、怯える少女がそこにいた。御子柴がチェーンをじゃらつかせながら、ゆっくりと歩み寄る。その姿は、サチにとって死神そのものに見えただろう。

「おじさん助けて! この猫耳女、怖いよぉ〜っ!」

 サチはなりふり構わず悲鳴を上げ、自軍コーナーのバッカス木桜へと助けを求めた。その悲痛な叫びに応えるように、コーナーから巨体が躍り出る。

「……サチ、下がってな。おじさんの意地、見せてやるよぉ……!」

 バッカス木桜は震えるサチを背に庇うように立ち塞がると、丸太のような豪腕を振りかざし、御子柴へと突進する。痛む膝をアルコールで誤魔化し、赤らんだ顔に強張った笑みを浮かべるその姿は、パートナーを守ろうとする意気が滲んでいた。

「へぇ、木桜センパイしばらく見ないうちに随分とイイ男になったニャ?」

 御子柴は足を止めず、皮肉たっぷりに口の端を吊り上げた。バッカスが吠える。

「御子柴ァ、お前は随分とヤな女になりやがって、くらえぃ!」

 バッカス渾身のラリアットが、空気を切り裂いて御子柴の首を狙う。まともに食らえば体格差で御子柴は吹っ飛ぶだろう。だが、御子柴はその軌道を完全に見切っていた。

「おっと!」

 衝突の寸前、御子柴はスライディングで身を低くし、バッカスの剛腕の下を鮮やかに潜り抜けた。その先には、バッカスの救援で気が抜けたように立ちすくんでいるサチがいた。

「えっ!?」

 バッカスが盾になってくれたと思い込んでいたサチは、目の前に突然現れた御子柴に対応できない。御子柴は滑り込んだ勢いのまま跳ね起きると、がら空きになったサチの無防備な首元へ、下から突き上げるようなトラースキックを叩き込んだ。

「まずはボケっと見てるマヌケ、お前からだニャ!」

「ぶぎゃっ!?」

 顎を蹴り上げられたサチが、再び白目を剥いて吹き飛ぶ。背後で風切り音がしたことで、バッカスが慌てて振り返った。

「テメこら、そういうことしていいと思ってんのか!?」

 激昂し、再び御子柴へと掴みかかろうとするバッカス。しかし、なおも御子柴の動きは止まらない。彼女は振り返りざまにバッカスの太い首に自らの両脚を絡みつかせると、遠心力を利用してその巨体を宙へと放り投げた。

「タッチなしで試合権ない奴ァ、リング外にすっこんでるニャ!」

 ヘッドシザースホイップ。バッカスの巨体は弧を描き、サードロープとマットの狭い隙間を通って、リング下へと転がり落ちていった。

「どわぁぁ!?」

 ドサッ、という重い落下音が場外から響く。

 

 邪魔者は消えた。リングに残されたのは、ダメージの蓄積で虫の息となっているサチと、余裕の御子柴のみ。御子柴は泣き叫ぶサチの髪を乱暴に掴むと、無理やり引き起こし、コーナーポストへと連行した。その表情は心底から楽しいと思わせるような満面の笑みだ。

「そいじゃあ……そろそろフィニッシュいこっか?」

 御子柴はサチをトップロープに座らせると、自らもコーナー最上段へと登る。逃げ場のない高所。サチは涙で顔を歪ませ、必死に首を横に振った。

「あぁ……負け! サチの負けでいいから許してよぉ!?」

 懇願するサチ。だが、御子柴はわざとらしく耳に手を当てた。

「あぁ~ん? 聞こえねえニャ~? ……プロなら観念して派手にマットに沈めや」

 御子柴はサチの腰を抱え上げ、水平に体勢を入れ替えながら自らの体をマットへと投げ出した。雪崩式変形スパインバスター――アビスキャットドライバー。

「やだぁぁぁぁ!?」

 サチの断末魔のような叫び声は、リング全体を震わせる轟音によって断ち切られた。高所からの落下エネルギーと、御子柴の体重、そして回転の遠心力が全て加わった一撃が、サチの背中と後頭部をマットに叩きつける。サチの体はバウンドすることすらなく、マットに沈み込んだ。御子柴は一度立ち上がり、エプロンサイドでへたり込んでいるライジング雫の方を一瞥してから、目を回してピクリとも動かないサチの上に覆いかぶさった。体固め。レフェリーの手がマットを叩く。

 

「ワン! ツー! ……スリー!!」

 

 カン! カン! カン!

 

 試合終了のゴングが打ち鳴らされた。

『スリーカウント! 決まったァ! まさにガータ御子柴無双! パートナーのライジング雫と交代して後は任せろと言わんばかりに、二人を相手に真っ向から打ち破ったぁ!!』

 会場は「御子柴」コールと歓声に包まれた。ヒールでありながら、その圧倒的な強さとカリスマ性は観客を魅了してやまない。解説席のシロオニ・ベスが、苦々しげに、しかし冷静にコメントを挟む。

『……ええ、心の底から忌々しいですが、あの「野良猫」は、外道な真似をしてもしなくとも強い。認めざるを得ませんわね。多少は雫さん相手にサチさんたちが体力を使っていたとは言え、あの一瞬の判断力、そしてしっかり各個撃破して叩き伏せる手並みは本物ですわ』

 ベスは吐き捨てるように言いながらも、その視線はリング上で悠然と勝ち名乗りを受ける御子柴に釘付けになっていた。認めたくない宿敵の強さを、プロの眼が残酷なまでに肯定してしまう。その葛藤に、彼女は思わず手元の資料を握りつぶした。

『勝利者コールの名乗りを受ける御子柴選手! しかし、パートナーのライジング雫はエプロンサイドで座り込んだまま、放心したようにリングを見つめております。勝者の姿には見えないこの焦燥ぶり、果たして大丈夫でしょうか……』

 実況が懸念を口にする通り、会場の照明を浴びて輝く御子柴の傍らで、雫は深い闇に沈んでいるようだった。

『好かない相手に勝たせてもらったのですから、気持ちはわからなくはないですが……フン、あれでは負け犬のようだわ。しっかりなさい……と言いたい所ですね』

 ベスの辛辣な言葉通り、雫の心は空っぽだった。勝った。記録上は、自分たちの勝利だ。だが、自分は何をした? 同期に技を返され、スタミナ切れで無様な姿を晒し、嫌悪していたはずの御子柴に助けられ、そして彼女が一人で全てを片付けるのを、ただ指をくわえて見ていただけだった。

 

 御子柴がレフェリーの手を振り払い、エプロンサイドへ歩み寄ってくる。彼女は勝利の余韻に浸ることもなく、力なく膝をついている雫を見下ろした。その瞳には、侮蔑と、そしてどこか苛立ちに似た色が混じっている。

「……テメェのその辛気臭い顔、見てると昔を思い出してムカつくんだよ」

 吐き捨てるような、低い声。

「……あ……」

 雫の喉から、掠れた音だけが漏れた。御子柴はそれだけを言い捨てると、さっさとリングを降り、花道へと消えていった。背中に浴びる歓声は、今の雫にとっては嘲笑にしか聞こえない。

 残された雫は、自力で立ち上がることもできず、ただ茫然とリングのキャンバスを見つめ続けていた。エース・三郎太の不在を守る。その誓いは、最も皮肉な形で果たされた。これは、勝利という名の惨敗だった。

 

 雫の心に密かに入った深い、深い亀裂がじわじわと広がっていく……。

 

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