「THE SABUROUTA ~太平プロレス興行日誌~」 作:八意あまつ
リング上には、重苦しい静寂と絶望的なまでの戦力差が横たわっていた。激闘の末、エル・ザ・スターセイバーは完全に力尽き、かろうじてタッチを交わして試合権をビアンカに渡したのを最後にエプロンサイドに横たわってただ喘ぐばかりだ。フェルナンドも疲労困憊で引き下がっている今、リング上で戦えるのは、実質ハイジとビアンカのみ。頼みの綱であったエルの渾身の必殺技を受けてなお平然と立ち上がる怪物を見上げ、ビアンカの平坦だった息遣いが微かに乱れる。
ハイジは傲慢な笑みを浮かべ、見下すような視線をビアンカへと投げかけた。
「我が技を真似ようと考えているの? ……無駄よ。全ては白亜の城塞たるこの鍛え抜いた天賦の肉体あってこそ。華奢な貴様に模倣など不可能!」
絶対的な自信から放たれたその言葉は、純然たる物理的真理であった。かつてDr.フランケンはハイジを肉体に頼った雑な攻めと評した。だが、それだからこそ、どんなに技術を「鏡」のように正確に模倣できたとしても、絶対的な筋力と質量が伴わなければ意味をなさない。致命的に相性が悪いと言っていいだろう。
「くっ……」
これまで一切の感情を表に出さなかったビアンカの端正な顔が、初めて明確な焦燥に歪んだ。彼女の卓越した戦闘センスは、残酷な事実を告げている。
(エルさんの「Ro.H.S」も真似るにはパワーが足りません……)
エルの「Ro.H.S(ローゼス・ハリケーン・スープレックス)」は相手をお姫様抱っこで抱え上げるという、鍛え抜かれた腕力と背筋を前提とした技である 。ウェイト差のあるハイジをその体勢に持ち込むことなど、いかに重心移動や梃子の原理を駆使しても物理的に不可能であった。だが、思考の沼に沈みかけるビアンカに対し、ハイジは一切の猶予を与えない。
「蹂躙してくれるわ!」
裂帛の気合いと共に、巨大な城塞が自らの肉体を重質量弾へと変えて突進してきた。圧倒的なパワーを前面に押し出した、逃げ場のない正面からの強烈なショルダーブロックである 。まともに受ければ、華奢なビアンカなど容易く粉砕されてしまうだろう。
だが、彼女の追い詰められた天才的戦闘センスは、土壇場で新たな解答を導き出した。
「これなら……! 『ランチャ・ディ・フィアンマ(炎の槍)』!」
ビアンカは逃げずにハイジの突進を真っ向から迎え入れると、凄まじい衝突の直前で自身の体を極限まで低く沈め、ハイジの太い腕を深く絡め取った。そして、ハイジ自身の突進する猛烈なベクトルを一切殺すことなく、柔道の一本背負いの要領で前方のマットへ向けて豪快に投げ飛ばしたのである。腹の底に響くような衝撃音と共に、ハイジの巨体が背中からキャンバスに叩きつけられる。だが、ビアンカの攻撃はそれだけでは終わらない。ハイジを投げ飛ばした反動を利用して自らも高く跳躍し、空中で身を丸めて両足を揃えると、落下していく自身の体重をすべて乗せたダブルフットスタンプを、マットに倒れたハイジの無防備な腹部へ向けて無慈悲に突き刺した。
「ぐ……ッ!」
さしもの不落城塞も、自身の突進力を利用された投げの衝撃と、横隔膜を鋭く貫く二重の破壊力にたまらず苦悶の呻き声を上げる。自陣のコーナーでその光景を目の当たりにしたフェルナンドは、信じられないものを見るように紫の瞳を限界まで見開いた。
「『エストカ・デ・フエゴ(炎の致死剣)』までも……!」
それは間違いなく、先ほどフェルナンドがエルに放った必殺技のコピーであった。しかし、ウェイトの軽いビアンカは、始動技を突進の勢いを利用できる一本背負いへと変更し、さらに威力を一点に集中させるために、落下時の追撃を膝ではなく両足の裏によるスタンプへと見事に自分用に「最適化」してみせたのだ。驚愕に包まれるドームの観衆を置き去りにし、ビアンカはすぐさまコーナーポストへと駆け上がった。細い脚に蓄積された疲労と、全身のあちこちに走る痛みを無視し、トップロープの上からダウンしたままのハイジを見下ろす。
「私が見た中で私に使えるもっとも強力な……! 『クアドレッロ・クレミージ(真紅のクロスボウ・ボルト)』!」
ビアンカはためらうことなく、リングの中心へ向かって高く跳躍した。空中で自身の身体を独楽のように鋭く旋回させ、落下と共に折り曲げた両膝を、ダウンして息を呑むハイジの胸元へ向けて、ドリルで捻り込むように深く突き刺した。
「がはっ……ッ!?」
骨と肉が軋む凄惨な打撃音と共に、ハイジの口から肺の空気が根こそぎ吐き出される。ビアンカは突き刺した状態から流れるような身のこなしでハイジの巨体を丸め込み、両脚を深く抱え込んでブリッジを描くジャックナイフ・ホールドの体勢で、フォールへと移行した。
スピーカーから、実況アナウンサーの興奮が限界突破したような絶叫が迸る。
『ああ~っと! ここでビアンカ・ディ・スペッキオ、まさかこれは予選で戦ったスイス代表、ポモナ・ウィリアムスの得意技「レッドアロー・シュート」に……いや、違う! 違います! スピンセントーンではなく、スピンダブルニードロップだ!? 両ひざを捩じり込むようにダウンしたアーデルハイト・フォン・シュタールに突き刺したァ!?』
実況のその叫びに、解説のキンタロウは戦慄に満ちた声を漏らした。
『試合中の者たちだけでなく、過去対戦したすべての選手の技を映し取り、糧にしているのか……ッ!? これは……経験を重ねれば重ねる程、恐るべき選手になっていくということか……!』
スイスの英雄の血を引くポモナ・ウィリアムスの華麗なる空中殺法。それをただ模倣するだけでなく、自らの最大の武器となるよう、回転による破壊力を背中ではなく両膝の一点に集中させる形へと進化させていたのだ。イタリアの老獪なる指導者レジーナが、勝敗すら度外視してこの少女に強者との実戦経験を積ませようとしていた真の理由が、底知れぬ悪寒と共にキンタロウの背筋を駆け抜けた。
『そしてそのまま、ジャックナイフでフォールに行くぅ! カウントが入ります! 白亜の城塞もさすがに陥落か!?』
レフェリーがマットに身を滑らせ、キャンバスを強く叩く。
「ワン! ツー!」
『むぅ……』
キンタロウが鋭く目を細めた、まさにその瞬間であった。スリーカウントを告げるレフェリーの三度目の掌がマットを叩く直前。
「み、見事……、だが沈まん!」
下敷きになっていたハイジの全身から、爆発的な闘気が噴き上がった。己の鍛え抜かれた肉体と、愛する軍師へ無様なデータを残せないという強烈な執念が、限界を超えた筋力を呼び起こす。ハイジは下から爆発的に腰を跳ね上げ、ジャックナイフで押さえ込んでいたビアンカの身体を、まるで紙屑のように空中へと大きく跳ね飛ばしたのである 。
「あぁ……ッ!?」
完璧なフォールを力技だけで破られ、ビアンカは無防備に姿勢を崩し、無様にマットへと転がった。呼吸を荒くしながら、ハイジはよろめきつつも冷徹に起き上がる。全身が悲鳴を上げ、視界が揺らいでいるビアンカもまた、執念で立ち上がろうと身を起こしていた。
だが、ここでも体格差が無慈悲に響く。起き上がりかけたビアンカの漆黒の髪をハイジが手で乱暴に捉えると、下から突き上げるような無慈悲なニーリフトを一閃。鈍い音が響き、ハイジの膝が、ビアンカの柔らかい腹部へ正確にめり込んだ 。
「おぐっ……ッ!?」
腹を深く抉られ、ビアンカの双眸が大きく見開かれる。酸素を絶たれた彼女の口から、声にならない苦悶の喘ぎが漏れた。その崩れ落ちようとする小さな体を掴んだまま、ハイジは傲慢な勝者の笑みを浮かべて言い放つ。
「ハァッ……! ハァ……ッ! ……フッ、体力を使い果たしたか」
限界を超えた天才の模倣も、絶対的な力の壁の前についに終焉の時を迎えようとしていた。
鳩尾への無慈悲な一撃で完全に動きを止められたビアンカの背後へ、ハイジは流れるような動作で素早く回り込んだ。
「フンッ!」
白亜城塞の太く逞しい両腕が、ビアンカの華奢な胴体を背後からガッチリと捕らえる。そのまま強靭な背筋力と下半身のバネを一気に爆発させて、美しいブリッジを描きながら後方へと力強く反り投げた。圧倒的な質量と絶対的なパワーが乗った、見事なジャーマン・スープレックス。
「ぁ……が……!?」
キャンバスに深々と叩きつけられ、ビアンカの口から断末魔のような悲鳴が漏れる。視界は激しく明滅し、これまで天才的な模倣と応用を可能としていた彼女にもついに限界が訪れようとしていた。
その凄惨な光景をエプロンサイドから見つめることしかできないエル・ザ・スターセイバーは、いまだ整わぬ荒い呼吸を無理やり押さえ込み、自身の全身の激痛に顔を歪めながらも、身を起こしてコーナーのタッチ紐を力強く握り締め、必死に身を乗り出した。
「ビアンカ! 逃げろ! タッチするんだ!」
眼の前で傷ついていく命を見捨てることなど絶対にできない。しかし、身体はまるで鉛のように重く、自力でロープを越えてリングへ飛び込むことすら容易でない状態だった。ただ太い腕を限界まで伸ばし、血を吐くような声の限りを尽くして相棒を呼ぶことしかできない。
だが、非情なるドイツの貴族は、獲物が陣地へ逃げ帰るような隙など微塵も与えなかった。ハイジは倒れ伏して痙攣するビアンカの黒髪を掴んで乱暴に引き起こすと、自らの至高の必殺技の始動体勢に入るべく、正面から強引に組み付き、その頭を下げさせて腰をクラッチ、小さな身体を軽々と宙へと抱え上げた。
「……もはや逃げる事もできないようね。逃がさないが」
「うぅ……」
足が完全にマットから離れ、逃げ場を失ったビアンカは、朦朧とする意識の中で必死に現状を打破するための思考を続けていた。純粋な力では勝てない。高度な技を繰り出すスタミナも残されていない。ならば、どうすればこの巨大な城塞の拘束を崩せるのか。彼女の記憶が、ある一つの不確かな情報に縋らせた。本戦一回戦、ハイジがボーティス神宮寺に敗北した試合の映像記録である。あの時、神宮寺は圧倒的なパワーを誇るハイジに対し、「リッター・シルト」に捕らえられながらも密着状態から、彼女の力を完全に封じ込め、逆転。そのまま翻弄し続けて、悲鳴を上げて悶え苦しむハイジを陥落にまで追い込んで勝利していた。
ビアンカは最後の力を振り絞り、抱え上げられた状態のまま、自身の両手の指先を伸ばした。そして、ハイジの豊かな脇腹や脇の下の隙間へ向けて、その細い指先を不器用に突き立て、コチョコチョと動かして擽り始めたのである。
彼がおこなったパワー封じの再現。それが、感情を持たない論理的思考の果てにビアンカが導き出した「最適解」であった。しかし、脇腹を無表情な少女にツンツンと突かれ、不器用に擽られたハイジは、苦悶の悲鳴を上げるどころか、ただひたすらに困惑したような、極めて微妙な表情を浮かべて動きを止めた。
「……小娘、なんのつもり?」
ハイジの冷ややかな問いかけに、ビアンカは息も絶え絶えになりながら、不思議そうに首を傾げた。
「ハァ……ハァ……ッ! おかしい……ボーティス神宮寺戦で貴女はこうやってまさぐられてパワーを封じられて……ハァ……! まけたはずです」
それは、一切の悪意を持たない純粋な事実の指摘であった。しかし、その言葉を聞いた瞬間、ハイジの脳裏に、今は「我が愛する軍師」と呼ぶボーティス神宮寺によって全身を蹂躙され、大観衆の前であられもない嬌声を上げさせられた、あの天ご……もとい、地獄のような屈辱の記憶が鮮明にフラッシュバックした。
「…………」
ハイジの端正な顔が、みるみるうちに沸騰したように朱に染まっていく。
「……?」
己の計算通りに事が運ばないことに、ビアンカはますます困惑を深める。ただ同じ場所を触っているだけなのに、なぜ神宮寺の時のように悲鳴を上げて崩れ落ちないのか。上半身でなく下半身をくすぐらないと駄目なのだろうか?
「……あれは、その……邪な指使いで……。き、貴様のような小娘にはまだ早い!」
震える声で、ハイジは消え入りそうな声でぶつぶつとつぶやき、そして、恥辱と怒りをないまぜにして叫んだ。神宮寺のそれは……その、なんだ。熟練の技術と対象の精神を破壊する緻密な計算に基づいた、恐るべき拷問であった。その真の意味をいまだ知らず、ただ擽っていると解釈しているだけのビアンカの指先では、そのような効果は得られない。ビアンカにとっては残念な事だが。
「ハァ……ハァ……、言ってる意味が全然わからない……」
「愛」の様々な側面を何一つ理解できていないビアンカには、ハイジの怒りの理由が根本的に理解できなかった。一方、己の最も触れられたくない黒歴史をこれ以上ないほど無邪気にえぐり出されたハイジは、ついに堪忍袋の緒が切れたように吠えた。ぶっちゃけもう黙って欲しかった。
「ええい、もはや問答無用! これで終わりだ!」
ビアンカの身体が、ハイジの恐るべき筋力によって最高打点へと高々と持ち上げられる。万事休す。その絶望的な瞬間、青コーナーから重傷を負ったはずの巨体が弾かれたように飛び出してきた。
「ま、まだだ……ビアンカ、ボクが救って……っ!」
限界を越えて、文字通り火事場のクソ力を発揮し、激痛に耐えかねて足を引き摺りながらも、エルは決死の形相でハイジへと突進した。なんとしても彼女を救う、その想いだけが彼の身体を突き動かしていた。
だが、その悲壮な突撃は、目的を果たすことなく道半ばで断ち切られる。
「そうはいかん!」
赤コーナーから、同じく満身創痍であったはずのフェルナンドが、鋭いスライディングでリングへと滑り込んできたのだ。フェルナンドは自らの身体を投げ出し、突進してくるエルの太い脚へと強引に絡みついた。互いの脚が複雑にもつれ合い、二人の男たちはキャンバスの上を不様に転がりながら足止めされる。
(無様でもみっともなくても構わん! あの時の白鬼のように、今こそ、この俺も泥に塗れる覚悟をする時なのだ……!)
フェルナンドは、優雅な闘牛士としての美学を捨ててでも、パートナーであるハイジの絶対的な勝利の瞬間を守り抜くことを選んだのだ。
邪魔者が完全に排除されたリングの中央で、白亜の城塞がその全容を現す。ハイジは最高打点まで持ち上げたビアンカの身体を、自らの体重と重力加速度のすべてを乗せて、キャンバスへと向けて一直線に振り下ろした。
「眠るがいい、白雪姫!」
「あぁぁッ!?」
立った状態のまま、叩き捨てるように相手の背中から脳天にかけてのすべてをマットに激突させる。極めて危険で無慈悲な一撃、それがドイツ貴族であるアーデルハイト・フォン・シュタールの至高の必殺技「アドリゲン・ブリッツ」なのだ。貴き迅雷が、リング全体を揺るがす轟音と共に完璧に炸裂した。背骨を砕かれんばかりの衝撃に、ビアンカの意識は完全に刈り取られた。
ハイジはそのまま自らの巨体をビアンカの上へと覆いかぶせるようにして、フォールの体勢へと移行する。
「ワン! ツー! ……スリー!!」
返す力はない。救いの手も届かない。ただ、レフェリーの掌が三度、力強くマットを叩き据えた。
カーン、カーン、カーン、カーン!
試合終了を告げるゴングの音が、大歓声と拍手の渦の中に吸い込まれるように鳴り響いた。
『決まった! 「アドリゲン・ブリッツ(高貴なる雷撃)」の前にビアンカ・ディ・スペッキオ、為す術も無くマットに沈んでしまったァ! 最終的に激戦を制したのは本戦進出者タッグ! 意地を見せつけました!』
興奮のあまり裏返った実況アナウンサーの声が、熱狂のドームをさらに熱くさせる。隣の解説席で、キンタロウは深く頷きながら冷静に試合を総括した。
『エル君もビアンカ嬢もよく連携していたが、アーデルハイト嬢の防壁が脆いフェルナンド君をしっかりと守り切った形になったね。ビアンカ嬢の技の模倣と即席の応用は驚異的だが、連携という観点で見れば相棒の技を読みにくいというのがマイナスに働いたかもしれない』
『成程、びっくり箱故に制御が難しいという所でしょうか! しかし、各選手全力を出し切った良い闘いでした! 観客たちの声援がそれを証明しております!』
『決勝戦を前にしたタイミングのエキシビジョンマッチなのに休憩に行こうとした観客たちの脚を止めさせたのは大したものだ。良い試合だった』
キンタロウの言う通り、最初はトイレや物販へ向かおうとしていた観客たちも、足を止めてリング上の死闘に見入り、今は惜しみない拍手と歓声を四人の戦士たちへ送っていた。
『選手たちに熱い拍手が送られております! さぁ、これで残るプログラムは休憩の後の決勝戦を残すのみ! 皆さま世紀の決戦にご期待ください!』
リング上では、激闘の余韻が静かに広がっていた。脚を絡められて救出に間に合わなかったエルは、意識を失ってマットに沈むビアンカの身体を優しく抱き起こした。自らが盾となり、彼女を守り抜くという誓いを果たせなかった無力感と苦悩に、その精悍な顔は深く俯き、沈み込んでいる。だが、朦朧としながらもわずかに意識を取り戻したビアンカは、そんなエルの沈痛な表情の意味を全く理解できないまま、ただ目の前にある相棒の頭へと細い手を伸ばし、労うようにぽんぽんと不器用に撫でた。
一方、赤コーナーのロープ際では、全身の痛みに顔をしかめ、疲労困憊でロープにもたれかかるフェルナンドを前に、ハイジが一切のダメージを感じさせない様子で胸を張り、高慢な勝利の高笑いを響かせていた。あくまでマイペースなハイジの姿に、さしものフェルナンドも苦笑を隠せない。
そして、彼らの熱戦を見下ろすドーム最上層のVIP観客席。分厚いガラスの向こう側で繰り広げられた結末を見届け、老婦人レジーナは満足そうに口元を歪め、優雅に紅茶のカップを傾けた。
彼女の恐るべき最高傑作の「土台」は、この敗北という名の莫大な経験値を吸収し、次なる戦場へ向けて確かに完成へと近づいていたのである。