とある転生者の受難日記   作:匿名

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第17話

 

 

 

 

 

○月∧日

 

今日もゲラードとのんびり過ごした。最近はオフトゥンまで持ってきて寝泊まりしてるので、実質同居していると言っても過言ではない。

一つ屋根の下で美少女と同居……すごいな、漫画の世界だけの特権かと思ってた。

 

ちなみに、料理の腕はあんまり上達していない。その度にゲラードのご飯の完成度を思い知らされる。

俺もあんだけ料理ができたらなー。

 

 

 

 

 

⊥月=日

 

今日はゲラードと買い出しをしに街まで行った。

いたるところでフローラルな香りがして頭がどうにかなりそうだった。なんならちょっと酔いそうだった。

 

その商店街で、とある紫色の花を模した花飾りを見つけたんだ。

とても綺麗な花飾りで、一目惚れして思わず買ってしまった。

もちろん、ゲラードに日頃の感謝を伝えるためのプレゼントだ。

本人も気に入ってくれたし、とても良い買い物だった。

 

()()()()()っていう花らしい!語感が良くて綺麗な花だね!

 

 

 

 

 

∵月£日

 

ゲラードが風邪を引いてしまった。

昨日の商店街で貰ってきたのかもしれない。結構な人混みだったし……

 

人生で初めてお粥を作ってみたんだが、ちゃんと美味しかったか気がかりだ。ゲラードは『美味しい』って言ってくれたけど、あの子優しいし無理して言ってるかもしれない……

 

とにかく、今は薬を飲ませて寝かしつけたところだ。心なしか徐々に顔色が元に戻っているような気がする。ひとまず、これで様子見だろうか。

 

 

 

 

 

※追記

 

現在、ゲラードの手を握りながら日記を書いてます。

さっさと部屋から出て行こうと思ってたんですけど、泣きそうな顔をしながら『行かないで』と懇願されたら、もう仕方ないよね……

今日はこれで夜を明かすかもしれない。

 

 

 

 

 

∃月〒日

 

妖精王がカチコミしてきた。

 

玄関があるというのに、わざわざ天井から突き破ってきて、『あたしのかわいい妹を誑かした狼はどこのどいつっスか〜?』と言いながら、ピカピカ光る黄金の巨大な斧?槍?みたいなやつを出してきた時は流石にチビった。

 

その後、なんとか落ち着いてもらって……というか、ゲラードがブチギレて『兄上なんか大っ嫌い!』とクリティカルヒットを出したせいで、妖精王が撃沈したと言った方が正しい。

そのおかげで、ゆっくり話せるようになったんだけどね。

そしたらまぁ、結構話が弾んじゃってね。誤解も解けたこともあって、気のいい友達になった。

まぁ、何を誤解していたのかは知らないけれど。

 

今度、巨人族の友達を紹介してくれるみたい!

とうとう巨人族とご対面か〜!やっぱりめちゃくちゃデカいのかな〜!楽しみでならない!

 

というわけで、今日は妖精王ことグロキシニアと友達になったよという日記でした。やったね!

 

 

 

 

 

※追記

 

ちなみに、グロキシニアのことを“お兄さん”と言うとブチギレるので気をつけよう!

 

 

 

 

 

◉月≒日

 

巨人族の王、ドロールくんと友達になった!

 

色々言いたいことがあるが、とにかくめちゃくちゃデケェ!腕四本カッケェ!そんで強い!言うことなし!まさに俺が夢見た巨人そのままだ!

 

それと、ドロールくんはとても屈強な戦士だということが分かった。

巨人族は強さ至上主義であることは知っていたが、ドロールくんは突出してその傾向にあると見た。そして、誰よりも自種族に誇りを抱いていたことも、よく分かった。

誰にも負けないのはもちろんだが、もし敗北したとしても、()()()()()()()()()()()()()()()なのだろう。

 

正直、スゴくカッコいいと思った。

俺も何回も死んでは生きてを繰り返しているけれど、いつも後悔ばかり。『ああすればよかった』、『こうすればよかった』って反省ばかりで……

だから、ドロールくんのような志は持てないと思ったし、そんな彼に憧れてしまうのは仕方ないだろう。

 

そう(もちろん『転生』云々は省いて)正直に伝えたら、ドロールくんは意外そうな顔をしながら、嬉しそうに微笑んでくれた。

グロキシニアからは『そうやってゲラードも誑し込んだんスか』とジト目で言われた。

なんて人聞きの悪いことを。俺があんな美人さんを誑し込めるわけないだろッ!!

 

 

 

 

 

〻月▲日

 

ドロールくんのゴーレムがカッケェ!!

【土人形】って文字通り土で作られた頑強なゴーレムのことなんだけど、めちゃくちゃクオリティが高いの!

前の世界で高クオリティのプラモデルに目が肥えている俺から見ても、とても素晴らしい出来だと思った。一個ぐらいもらえないかな?

 

ちなみにグロキシニアも人形を作れるみたい。【花人形】ってやつなんだけど、こっちもクオリティが凄まじかった。

でも、いくらシスコンとはいっても、許可なく妹の人形を作るのは如何なものかとは思う。

まぁ、可愛かったからヨシ!

 

 

 

 

 

⌘月◎日

 

何やら〈光の聖痕(スティグマ)〉なる組織を発足させるらしい。

構成員は女神族をはじめとした、妖精族、および巨人族だ。

ま〜〜〜〜た魔神族イビリだよ。そんなんだから戦争ってなくならないんですよね……

 

二人は魔神族と戦っているが、本気で憎んでいるわけではないらしい。

だけど、二人はその立場上、自種族を守るために、魔神族と戦わなくてはならないとのことだ。

 

……妖精族と巨人族。人間族ほど非力でもなければ、女神族ほど民族浄化を望んでいない。

この戦争に着地点を見出せる存在がいるとしたら、きっとこの二人だと思った。

 

 

 

 

 

こんな話をしたためか、二人が衝撃的なカミングアウトをした。

なんと魔神族と女神族の友達がいるらしい。しかも、なんとその二人は恋人同士とのことだ。

これがどれだけヤバい話なのか……前の世界で例えるなら、イタリアのサッカーチームにおいて、地元ライバルチームのファン同士が付き合い出したような、そんなあり得ない現象が起こっているわけだ。

 

というか、俺は希望を見たよ。まだまだこの世界も捨てたもんじゃないと思わせてくれる!

 

今度会わせてくれるらしい。やったね!

 

………でも、魔神族と女神族の話、どっかで聞いたことがあるような気がする。なんだったっけ?

 

 

 

 

 

⇔月∵日

 

魔神族と女神族のバカップル───メリオダスとエリザベスさんに会った。

 

会って思ったね、『アンタかよ』って。そりゃ聞いたことあるわ。あんた、地元では散々な言われようですよ?

そんな状況を知ってか知らずか、この場に五人いるはずなのに、すぐに二人だけの世界を作りだしてしまった。

マエルさんが思わず物に当たってしまうほどのイチャつきを見て、今までメリオダスに抱いていた感情というか、『何してくれてんねん』って気持ちがサラーっとなくなった気分だ。末永く爆発してくれ。

 

自分的には、メリオダスは聖戦の引き金を引いてしまっただけで、一番悪いかと言われたら違うと思っている。

もちろん、勝手に魔神族から抜け出して、恋人のいる女神族に寝返ったことはぶっちゃけ良くないし、然るべき処罰が下されるべきなんだろうけど。

 

でも、魔神族には魔神王が、女神族には最高神がいた。この長い憎悪と闘いの連鎖の元を辿れば、全て指導者であり完全な統治者である彼らに責任が行き着くのだ。

彼らが納得できたなら、いつでも止めることができたはずだ。なのに、それをしなかった。メリオダスの離反が決定打になっただけで、遅かれ早かれ開戦になっていたと思う。

 

そうと分かった上で、それでもメリオダスには複雑な感情を持ち合わせていたことは確かだ。

彼が離反したことで数え切れないほどの不幸が生まれたのは否定できないし、俺の仲間たちもたくさん殺された。

それに、師匠を追い詰めた一端である彼を、責めはしないが許そうとも思わなかったのは事実だ。

 

それでも……ね?同胞も、血を分けた弟も、恋人のために全てを投げ打った人が、幸せそうに笑ってるのを見てると、“しょうがないよな〜”と、どっかで妥協点を見つけることができたような気がする。

やっぱり、笑顔が一番だよね!

 

というわけで、二人と友達になりました。

特にエリザベスさんには『小さいメリオダスみたい』と言われて可愛がられました。

エリザベスさん、大好きです!!!

 

 

 

 

 

℃月♬日

 

メリオダスに剣の振り方が良いと褒められた。

『あなたの弟に鍛えられました!』なんて口が裂けても言えないけど、内心師匠の剣術を褒められて嬉しかった。

 

まぁ、案の定メリオダスにボッコボコのフルボッコにされたんですけどね!

あの人、アホみたいに強いねん。なんやねん、【全反撃(フルカウンター)】って。魔法全部弾き返すとか、反則もいいとこでしょ。

そりゃ均衡崩れるわって感じ。

それよりもっと手加減しろ!

 

それに比べてエリザベスさんはどうよ。

疲れるだろうに、いっつも笑顔で傷を治してくれて……メリオダスは恋人を見習うべき。

 

ただ、ここ最近、エリザベスさんから頻繁に『姉々って呼んで?』と頼まれていることだけが唯一の悩みだ。

お姉さん系……姉なる者……うっ、頭が……

 

 

 

 

 

±月†日

 

光の聖痕(スティグマ)〉が発足されてから、各地域で目ぼしい戦果を得られているようだ。

多分、心の底から喜べていない人間は俺だけなのだろうな。

 

でも、戦場が落ち着いていく目処が立つのなら、俺も自由に動ける目処が立つのと同義である。

ひとまず、目下の目標であるジェンナとザネリとの合流は達成したい。それからマーリンの墓参り、できるならマエルさんたちにも会いたい。魔神族のみんなに会いにいくことは難しいだろうけど……

 

グロキシニア、ドロールくん、そしてメリオダスも、俺の気持ちを汲んで背中を押してくれた。

あとはゲラードの許可さえ貰えれば、大手を振って堂々と外に出られる。

じゃ、行ってくる!

 

 

 

 

 

※追記

 

ゲラードに反対されました。理由は聞いてない。

ただ、『行かないで』と泣きながら言われても、平然と断れる男であればどれだけよかったかと思ってるよ……

 

 

 

 

 

〆月♯日

 

最近、ゲラードの元気がないのが気になる。

聞いてものらりくらり躱わされる。

 

心配だ……何か力になれないだろうか……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「はぁ……」

 

 彼と暮らす家屋からほんの少し離れた泉で、膝を抱え込みながら、ボーっとその水面を覗き込む。

 水面に浮かぶ自身の面貌は酷く窶れているように見えた。

 

 最近、ずっとこの調子だ。

 あの日、あの時、()()()()()()()()()()()あの瞬間から、ずっと───

 

 

 

 彼が外に出たいと言い出した時は、“とうとう来たか”という思いだった。

 彼が外に出たがっていたのは知っていたし、その時が来たら快く送り出そうと……そう心に決めていたのに。

 

 

 三人。

 

 

 私の知らない三人の女性が、彼の心の大半を占めていた。

 

 きっと、この三人は彼を形作る上でとても大切な存在なのだろう。

 そして、おそらく外に出たがっている理由も、この三人にある。

 それについては別にいい。思わないところがないわけではないけれど、まだ良かった。

 

 ただ、彼が妖精王の森から出て行って───()()()()()()()()()、それだけが気がかりだった。

 

 おそらく、もう戻ってこないだろうと、証拠も確信もないけれど、私の勘がそう告げていた。

 彼は、目的を果たした後、きっともう私の元へは帰ってこない───と。

 

 

 

 

 気づけば、彼を引き止めていた。

 彼の目的も、想いも、全てを知った上で、卑らしく涙を流しながら懇願して……

 

 罪悪感はある。だけど、それ以上に安堵してしまった自分が憎くて憎くて仕方がない。

 罪悪感を覆い隠すほどに鈍く広がった黒い影が『これで良い』と私に告げてくる。

 彼に向ける感情の名を知らない私に、彼を止める権利などあろうはずもないのに。

 

 「はぁ、このままじゃダメね。ちゃんと向き合わないと──」

 「あっ、こんなところにいたんだ、ゲラード」

 「ッカ、カリバーン殿……!?な、何故ここに……?」

 

 背後から聞き覚えのある、しかし今一番聞きたくなかった声が鼓膜を揺らす。

 月光の明かりに照らされた金髪を揺らしながら、心配そうな面様で私の姿を蒼穹の瞳に映す少年こそ、私の胸中を掻き乱す張本人──カリバーン殿だ。

 

 「何でって、君こそこんな夜中に何してるのさ」

 「そ、それは……」

 

 言いたくない。彼にだけは見られたくない。

 こんな、醜い感情を宿す私を……

 

 「…………分かった。誰にだって話したくないこともあるし、無理に話せとは言わないよ。だから───」

 

 彼は私の隣で胡座をかく。

 太陽のように眩しく、月のように優しい笑みを携えて───

 

 「───だから、ゲラードが話してくれるその時まで、ずっと隣で待ってるよ。だって、俺たち──友達でしょ?」

 

 そう言って笑う彼を見て、思わず涙腺が緩み、口角が上がる。

 

 さっきまで罪悪感がどうこうと思っておきながら、彼に想われていることを知って、こんなにも温かな気持ちで埋め尽くされている。

 

 「……うん、やっぱゲラードは笑顔がよく似合うね」

 「ふふっ、本当ですか?」

 「なんで疑うのさ……」

 「今の私は疑心暗鬼ですよ?」

 「え、そうなの?」

 「はい、それはもう。例えば、今言ってくれた言葉の数々も、これまで出会ってきた女性に何十回と言ってきたのではありませんか?……なんて、思ったりしています」

 「そんなナンパ野郎じゃありませんッ!!」

 

 さて、それは本当でしょうか。今の言葉を平然と吐ける人間が言っても、説得力が欠けているように思えますが……

 

 「話していたら少し気が紛れました。ありがとうございます」

 「エヘヘっ、どーもいたしまして」

 「………カリバーン殿。今はまだ言えなくても、いつか言えるその時まで、私と共にいてくれますか?」

 「──もちろん!」

 

 今はまだ言えない。この感情の正体を知って、その時にちゃんと伝えたいから。

 

 

 

 

 

 泉の周囲に蛍が飛び交う。

 スカビオサの花飾りが、水面下で妖しく光った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「今日から〈光の聖痕(スティグマ)〉の一員になった、人間族のロウだ!腕には自信があるぜ!よろしく頼む!」

 

 戦争も佳境に入ろうとしていたある日、妖精王の森に複数の人間族が足を踏み入れた。

 この日の出来事が私と、そして彼の運命を狂わせるとは、この時の私は微塵も考えもしなかった。

 

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