とある転生者の受難日記 作:匿名
第5話
あ、ありのまま、今起こったことを話すぜ……!
俺はメラスキュラに喰われたと思ったら、気づけば全く見知らぬ地にいた……
な、何を言ってるのか分からねーと思うが、俺も何をされたのか分からなかった……
催眠術だとか
もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ……
いや、本当に何?どういうこと?
森の中を散策しながらも、頭の中では現状に対する疑問でいっぱいだった。
俺は確かにメラスキュラに魂を喰われた………はずだ。
しかし、現に二本足で立って、呼吸をして、生きている。
…………もしかして、
「一回目ならともかく二回目もあるとか聞いてないぞ……不思議なこともあるもんだな〜」
「えぇ、本当にそうね。まさかこんなことが起こるなんて……」
あっ、やっぱそう思う?ほら、他人から見ても異常なんだから、凡そ個人で理解できる範疇超えてるって。
とりあえずこの森を出よう。そして、改めてこの
「久しぶりね、カリバーン。また会えて嬉しいわ」
「ギャアアアアアア!?!?メラスキュラァアアアアアア!?!?」
メラスキュラ。怨敵であり、天敵であり、宿敵である女。俺を殺したはずの張本人。
そんな相手が俺にニタニタと微笑みかけてくる。腹立たしい、なんて言葉で収まっていいわけがない。
というか新しい世界に転生したものかと思ってたけど、ここ地続きの世界だったのね!?
「本当に不思議よ。えぇ、本当に。だって、見知った魂を感知して来てみれば、
「ふん、あんたに褒められてもちっとも嬉しくないやい!また俺を喰う気なんだろ!」
「当然。あなたの魂は私の物なんだから」
「勝手に他人様の魂を自分の物にすんじゃねえ!」
次は、次こそは生き延びてやる。
そこら辺に落ちていた木の棒を拾い上げ、大きく振りかぶる。
人類の怒りを思い知れーッ!!
「───あら、あらあらあら」
「ん?ブヘッ!?」
しかし、次に待ち受けていたのは、あの黒い繭の中ではなく、四肢を絡め取られ、身動きが取れなくなった俺の顔面を、穴が開くほどに見ているメラスキュラの真っ黒な瞳だった。
何をしているのだろうか。味の吟味とか?『今度はどこから喰ってやろうか』なんて考えているんじゃ……
「………やっぱり、そうなのね」
「あえ?」
なんか知らんが解放された。
やっと俺の魂は美味しくないということに気がついてくれたか。
「しょうがないけどお預けね。付いてきなさい」
「は?行くわけないじゃん」
ほんの数秒前まで殺されかけた相手に、のこのこついていくわけないだろ。
「………そう。あなた、自分に何が起こったのか、理解出来ていないのね」
『水面を見なさい』と言われたので、疑心暗鬼になりながら、そこら辺に出来た水たまりに顔を覗いてみる。
なんだ、別に変わったとこなんて───
「なんか、額に紋様が……何これ?」
「それは魔神族のみに発現する紋様よ」
ははっ、何言ってんだ、この人。
それじゃあまるで俺が魔神族になったみたいな言い方じゃん。
……………………ゑ?
「あなた、魔神族になってるわよ」
「はああああああああああ!?!?!?」
────魔界。魔神王の城。
メラスキュラにどんぶらこと連れられて、とうとう地獄と名高い魔界に足を踏み入れた。
並の生物では一歩足を踏み入れた時点で、魔界に発生する毒素にやられて死に至るらしいが、今のところ何ともない。
その事実が、自身の体が魔神族仕様に作り替えられたという現実を、より叩き込んでくるようで辛い。
いったい全体どういうことなのか。俺ってもしや元々魔神族だったのか?いや、だとすればマーリンがいち早く気づいているはずだし……
そうだ、マーリンは、彼女はどうなった?本当に無事なのか?
「ちょっと、聞いてる?」
「聞いてませんでした」
「あなたね、正直すぎるのもどうかと思うわよ」
「それが美徳ですから」
今はマーリンのことで頭がいっぱいだっていうのに……
「もう一度言うわね。これから魔神王様に謁見しに行くわ。もちろん私だけで」
「俺としては一言も魔神族の一員になるなんて言ってませんけどね」
「あら、じゃあやめる?でも、本当にそれでいいのかしら?あなたが魔神族でなくなるというのなら、私は容赦なくあなたの魂を奪うわ。どうやらあなたは何度も転生できるようだし、これから何度でも、どれだけ逃げても、もうやめてと懇願しても、その心が折れるまで、折れてもなお、永久にあなたの魂を奪い、食べてあげる。………あぁ、いいことを思いついたわ!あなたの魂を鳥籠に閉じ込めて、私が飽きるまで飼ってあげるの!転生も出来ず、自死も出来ず。半永久的に生者と死者の狭間の存在として現界に居続けるのは、さぞ辛いでしょうねぇ」
「俺が悪かったですごめんなさい是非魔神族の一員に加えさせてくださいお願いします」
「何よ、つまらないわね」
つまらなくて結構。たった今想像した地獄──否、地獄も生ぬるいと感じるナニカを味わうことなく済むのなら……安いもんだ、コイツの機嫌一つぐらい。俺が無事で良かった……
「それで、さっきまでの話は覚えてる?魔神王様に私が謁見するって話」
「それに関しては、マナーも作法も何も知らないので別に良いんですけど、逆に良いんですか?それって。処遇を言い渡す本人がいないのって、王様に失礼なんじゃ……」
「むしろ、あなたのような低級の魔神族を謁見の場に出す方が良くないの。あなたが魔神王様の御目を汚させるほどの価値があるとお思いで?」
「ないです、ゴミですみません……」
この人は俺のことを褒めたり貶したりして、本心がよく分からん……
そうして城の廊下を歩いているうちに、デッカい門が俺たちの前に立ち塞がる。
滅茶苦茶分かりやすい。おそらくここが謁見の間なのだろう。
「ここで待っていなさい、多分すぐに終わるから。もし逃げ出したら……」
「わ、分かってますよ!いまさら逃げませんから!」
そう言ってるのに、最後までじーっと目端を鋭くさせたまま、ゆっくりと門の中に入っていった。
ふぅ、怖かった。まるで蛇のような鋭い目つきだった。
しかし、これでようやくゆっくりと考える時間ができた。
とりあえず、今日起きたことをまとめてみようと思う。
・メラスキュラに喰われたと思ったら、また転生していた。
・転生早々メラスキュラに喰われかけた。
・何故か魔神族になっていた。
・メラスキュラに連れられて、魔神族の故郷である魔界にやってきた←今ここ
我ながら一日で処理できる情報量ではないと思う。
何故転生したのかも、何故魔神族になっているのかも、何一つ分からないけれど、今はただ魔神族の親玉である魔神王の裁定を待つしかない。
「終わったわ」
「はやっ」
マジで早かった。
ただ、気になることが一つあって………何でそんなに嬉しそうな顔してるんですか?
「魔神王様からお許しを得たわ。あなた、今日から私の配下ね」
「────はい???」