とある転生者の受難日記   作:匿名

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第7話

 

 

 

 

 

‡月∀日

 

『魔法を使っていた』、その話を聞いてから、ずっとこのことばかり考えている。

 

今すぐ出せるものなら出したい。しかし、何故か、何度やっても魔法を出すことが出来なかった。

メラスキュラは氷の魔法っぽかったと言っていた。どんな氷の魔法だったんだ?全く想像がつかん……

 

とりあえず魔法を使うことが出来た。

これは大きな一歩だ。見れなかったことだけが悔やまれる。

 

 

 

 

 

※月∫日

 

今日は理知的なお兄さん──いや、おじさん(?)と出会った。

 

魔法について色々考え事をしていたら、いきなり話しかけてきた。

最初は『なんだこの人……』と思ったが、その道の専門の人なのか、魔力や魔法について順序立てて分かりやすく教えてくれた。

なんだか、『人に教えるのが上手なマーリンが、もし男だったら』みたいな人だった。

 

おじさんの名前はゴウセルっていうらしい。

どっかで聞いた覚えのある名前だが、また会えるといいな。

 

 

 

 

 

⁂月‰日

 

『打倒メラスキュラ』を目指す上で、今ではまだまだ修練不足と感じた。

だから、剣術で師匠になってくれる人を探してみることにした。

 

しかし、強力な魔力が幅を利かすこの魔神族で、剣術オンリーで達人の域に至った人なんて存在しているのだろうか……

 

明日、同僚のみんなに聞いてみよう。

 

 

 

 

 

◇月〉日

 

すごい人見つけちゃった!

 

その人は何にもない枯れ果てた大地で剣を振るっていた。

周囲には岩しかなかった。しかし、瞬きした瞬間に、岩が真っ二つになった。

全然見えなかった。その次も、またその次も、次も、次も、次も。瞬きを我慢して見ていたのに、ちっとも見れなかった。

 

魔力は感じられなかった。

つまり、純粋な剣速で一瞬のうちに岩を切っていたということである。

 

あれが次期魔神王候補筆頭と謳われ、魔神王から直々に代理を任せられた傑物……!

冷徹冷酷な処刑人──王子ゼルドリス。みんなが『マジやべぇ』って噂するのも納得だぜ。

 

 

 

 

 

:月£日

 

今日もゼルドリスを背後から眺める予定です。

まるでストーカーだが、俺にそういった趣味はないことは予め言っておこう。

 

本当なら面と向かって弟子入りを申し出る予定だったが、あの人結構怖くて、とてもではないが話しかけられない。

なんていうか、スッゲーピリピリしてるというか、『俺に話しかけるな』オーラがすごい出てるというか……

やっぱ中間管理職って大変なんやね。あの感じ、相当ストレス溜まってるよ。

かわいそうなゼルドリスさん……ひとえにあなたの兄貴のせいだが……

 

だから、彼の動きから何か盗めるかもって思って、リアルタイムで書き記していこうかなって感じだ。

 

それにしても、今日は全然剣振らないな。というか、なんかコッチ見てね?

いや、ここからゼルドリスまでの距離はまぁまぁあるし、流石にあり得な─────

 

 

 

 

 

追記

 

ゼルドリス──否、ゼルドリス師匠の弟子になりました。

 

やっぱ見られてたっぽいね。というか、昨日からガッツリ把握されてたっぽい。コソコソ見られると癪に障るから話しかけてきたらしい。

 

滅茶苦茶怖かったけど、勇気を振り絞って弟子入りを懇願したら、意外にもすんなり受け入れてくれた。

『その心意気は買ってやる』だって。めっちゃ面倒見のいいお兄ちゃんじゃん!

 

とにかく、明日から頑張っていこうと思います!

 

 

 

 

 

+月\日

 

師匠マヂ鬼……

今日なんかぶっ通しで剣振るってたな。おかげでペンを持つ力ががががががが。

 

でも、辛い辛いと思っても、意外にも一日があっという間に終わったように感じた。師匠の教え方が上手いからだろうか。

 

それと、身長が小さいこともあってか、今は通常の剣より片手剣の方が向いてると言われた。

なので、明日から片手剣で指導してもらうことになった。

 

というか、思ったんだけど、最近全然大きくならないんだよね、身長。気のせいかな。

 

 

 

 

 

♯月◯日

 

今日は魔神族の勉強会みたいなのに参加してみた。

勉強会というか、主に魔神族の歴史、軍事戦略、これまでの戦果etc……とりあえず、自分が所属する軍隊について詳しく知ろう!みたいな会だった。

 

特に熱気に包まれた瞬間は、女神族との抗争の歴史を語っていた時だろうか。

俺は戦闘狂でもなんでもないため、『〈十戒〉が誰々を討った!』と言われても『おぉ!』と興奮しないし、興奮する人の気持ちもよく分からない。

 

ただ、どうやら冷めているのは自分だけのようで、周囲の魔神族は拍手喝采といった感じだった。

そんなにも女神族に鬱憤が溜まっているのかと戦々恐々とした。

 

 

 

 

 

⌘月¢日

 

ゴウセルさんにまた会った。

そう、あの()()()()である、あのゴウセルさんだ。

 

彼の正体は──〈十戒〉『無欲』のゴウセル。稀代の魔術師と謳われ、その実力を買われて魔神王から『無欲』の戒禁を渡されたはいいものの、『やっぱお前の戒禁あぶねーわ』と五百年もの間幽閉されている、あまりに不憫すぎる人である。

五百年よ、五百年。もはや想像を絶する年数だ。

その間、こうして自身の分身である『ゴウセル』なる人形を通じて、外界と接していたようだ。

 

こんな超ビックスターに名前を聞いてもピンとこなかった奴がいるらしいぜ!いったいどんなマヌケなんだろうな!

………仕方ないじゃん、全然偉そうなオーラ出してなかったんだもん……

 

それにしても、ゴウセルさんの話を聞いてると、『なんか……魔神王ってバカなんじゃね?』と思った。

魔神王ってホンマ身勝手だよな。自分で勝手に渡しといて、勝手に墓穴掘っただけだろ。自分の力なんだから、渡した結果どうなるかぐらい自分で把握ぐらいしとけよって思う。

だって、ゴウセルさん、何にも悪くないじゃんね?

 

と、何故か俺が魔神王に対して愚痴を溢していたら、当の本人はこれを聞いてちょっと笑っていたんだが。『魔神王にそんなこと言えるのは君だけだ』って。

 

一応上司にあたる人だけど、ぶっちゃけあんま見たことないし、これっぽっちも尊敬の念抱いてないんだよね。

アレよ、俺が平社員なら、魔神王は社長。あまりに遠くにいる存在すぎて、身近な上司より親密度は低い的な感じだ。

 

これもゴウセルさんにぶっちゃけたら、これまた笑われたんですけどね。そんな面白いかな?もしかしたら俺って会話の才能があるのかも……

 

 

 

 

 

⁑月¥日

 

魔神族になって数ヶ月経った。すごいあっという間というか、本当に体感数秒だった。長寿種で生まれてしまった弊害なのかもしれない。

 

さて、数ヶ月も経てば、少しずつ慣れを得て、徐々に落ち着きを取り戻し始める頃だろう。

そして、改めて自分を振り返り、気になる点が二つできた。

 

一つは俺自身のこと。

この数ヶ月、全くと言っていいほど身長が伸びなかった。普通、十代前半は伸び盛りのはずなのに、一ミリも大きくならないことに、ほんの少し違和感を感じている。

まるで、()()()()()()()()()()()()()()()()()()みたいな、そんな感じ。

メラスキュラに尋ねても、『小さくてかわいいからいいじゃない』などと、ふざけた返答をしてきたので、今後一切アイツの前でこの話題を出さないことにした。

 

そして、もう一つ。マーリンのことだ。

魔界にいるとブリタニアの情報は入ってきづらい。だから、ベリアルインはどうなったのかとか、マーリンはどうなったかとか、全くもって分かっていない状況だ。

 

だから、ここで一度ベリアルインに行って、マーリンに会いに行こうと思う。

ずっと会いに行きたかった。ずっと頭の片隅にマーリンの存在があった。

でも、魔界でのゴタゴタだとか、聖戦間近の影響だとか、何より今の自分は魔神族だからと、会いに行くことを自重していた。

……まぁ、正直に言うと、彼女と会うことが怖かったんだ。もしかしたら、彼女に拒絶されるかもしれないって思うと……

 

でも、彼女ならきっと分かってくれるはずだ。

だって、俺たち唯一無二の親友だからね!

 

魔界からベリアルインってどのくらいの距離なんだろ。

明日、みんなに聞いてみよう。

 

 

 

 

 

♫月∮日

 

今日、魔神の先輩方にベリアルインについて尋ねてみたら、半狂乱になって口を閉ざされた。

 

お前は命知らずか、と。

新参だから知らないのも無理はない、だとかなんとかって。

そして、今後その話題を出してはならないと箝口令を敷かれた。

 

どういうことなんだろう。なんでベリアルインが禁句みたいな扱いになっているのか。

ベリアルイン……今どうなってるん?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

◇◆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ここはブリタニア辺境の地。

 草木は枯れ果て、人間はおろかネズミや砂虫すら存在しない焼け野原の中心地に、彼は佇んでいた。

 

 鳥の鳴き声も、人の足音すらも聞こえないその場所は、かつて魔術師たちが栄華を誇った都市──ベリアルインの跡地だった。

 そこは彼の故郷であり、大切な人との思い出を育んだ場所。

 それら全て、灰ひとつ残さず、この世界から消滅していたと知り、彼は───涙を流した。

 

 かつて故郷だった場所で立ち竦み、静かに涙を流す。

 彼の脳裏にあるのは、何よりも大切だった友の笑う姿。

 彼女も、きっとこの場所で眠っている。その事実にどうしようもない無常感と悲哀が彼を襲う。

 

 

 

 ここにはいない誰かを想い、溢れ出る慟哭。

 それを上空から眺めているのは、彼の宿敵にして上官である『信仰』の使者メラスキュラ。

 

 彼女は生前の彼を知る唯一の人物であり、彼が誰を想って涙を流しているのかも、凡そ見当が付けるただ一人の人物である。

 

 彼には友がいた。それこそ、一度自身の命を投げ捨てられるほどに、守りたかった友が。

 

 人間は皆、脆く、弱い。

 

 誰もが何かを盲信し、それに縋らなければ生きていけず、だというのに些細なことでそれらを手放してしまう、脆く醜い弱者。

 

 彼もそうだ。彼には“友”という信仰を抱く存在があり、彼にとってそれは心の支えとなっていたことだろう。

 

 しかし、今やその存在はこの世にいない。

 その事実に直面し、彼の心は、彼の信仰心は、二度と修復が不可能な状態まで折れる────

 

 

 「────やっぱり、あなたは折れないのね」

 

 

 メラスキュラの視線の先には、先ほどまで四つん這いとなって泣き喚いていた男が立ち上がる姿だった。

 

 それは、小さな背中だった。

 

 それは、風が吹けば一瞬で消え失せてしまうほどに、淡く小さな燈だった。

 

 それは、まごうことなく、脆く憐れな人間の姿そのものだった。

 

 しかし、メラスキュラは彼の姿を見て静かに微笑んだ。

 何故なら───彼の魂の輝きは一片たりとも欠けてなどいなかったから。

 

 彼女は魂を食糧とする魔神族の中でも、さらにその道を極めた専門家。【暗澹の繭】や【招来魂】といった魂に直接干渉する魔法を使わずとも、その魂の色や状態を探知できた。

 

 彼の魂の色を例えるなら───黄金、この比喩表現が最も適切である。

 

 これまで様々な魂を見てきた彼女でさえ、こうも圧倒的な光を放つ魂を見たのは生まれて初めてだった。

 あの時もそうだった。数年前、彼の魂を喰らった時でさえ、その魂は不動の輝きを放っていた。

 

 彼は弱者だ。メラスキュラもそれは否定しないし、否定する気もない。

 されど、この光景を“悪”だと、“醜い”と、断じる気にはなれなかった。

 

 「たまには慰めてあげようかしら。……でも、なんて言えばいいの?『ご愁傷様』?『死んでて残念だったわね』?それとも、『死体ぐらい見つかればよかったのにね』?ふふっ、分かんないわぁ〜」

 

 そして、()()()()()()()()()、上機嫌を()()、ゆっくりと彼の元へ近づこうとして───僅かな魔力を探知し、その足を止めた。

 

 発生源の中心地はカリバーン。

 その微弱な魔力は徐々に増幅していき、やがて見知った魔力へと変貌を遂げる。

 周囲に浮かぶのは巨大な氷柱の群れ。以前メラスキュラに放った魔法と同じであり、かつて彼の友が見せてくれた、彼の魔法における原点とも言える魔法。

 

 「───そっか。君はここにいたんだね、マーリン……」

 

 ここで、彼は自身が放った魔法を()()した。

 これは彼女が遺した置き土産なのだと、そう実感しながら。

 

 

 

 メラスキュラは、魔法を見て微笑んでいる彼の姿を、その目でしっかりと焼き付けていた。

 

 その光景を見て、メラスキュラは恐ろしいまでに冷静な頭で、今目の前で起こっている現象について考察を始めた。

 

 

 ────『転生(コンティニュー)』。

 

 

 おそらく、それがカリバーンに備わっていた本来の魔力であると、メラスキュラは憶測を立てていた。

 それならば、以前まで魔法が行使できなかったことにも辻褄が合う。

 彼の魔力は覚醒していなかったのではない、()()()()()()だったのだ。

 しかし、あまりに限定的、かつ今際の際で発動する代物であったため、覚醒していないと勘違いしていただけにすぎない。

 

 だが、もし魔力が『転生』、もしくはそれに準ずる能力を有したものであるならば、今やって見せているように、いまさら他人の魔法を行使できるようになった理由が──その因果関係が不明で、どうにも関連性を紐づけられない。

 メラスキュラにとって、その点が最も引っ掛かる部分であった。

 

 だからこそ、限られた手札の範疇で、少しばかり妄想を飛躍させた。

 

 

 『転生』という、謂わば『生』を繰り返すことが前提とされた異質な力。

 

 

 前回──言い換えるなら、前世に該当する時期に交流のあった知人の魔法を行使。

 

 

 そして、使い手の精神や意志を反映させる──魔力という存在。

 

 

 「───前世(前回)で見知った魔法であれば、来世(次回)で行使が可能となる……とかだったりしてね」

 

 

 魔力はいまだ解明されていない点が多い。

 しかし、魔法に対して強い憧れを抱く彼だからこそ、なんらかの要因で魔力が応えた可能性も低くはない。

 『様々な魔法を使いたい』という、純粋な願いが引き起こした奇跡──それが、彼の『転生』における最たるストロングポイントになり得るかもしれない。

 

 だが──異常だ。

 メラスキュラは自身の出した仮定に、以上の評価を下す。

 

 明らかに一個人が保有して良い力ではない。『転生』だけでも破格だというのに、自身が見て、その魔法を使えることを知ってさえいれば、()()にはその魔法を行使出来るのだ。

 (ルール)から完全に逸脱した存在───()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 嗚呼、しかし。

 

 その覚醒のトリガーを、自分ではなく、今はもう亡き者となった──事実は異なるが──あの小さな少女が引いたのだと知って、メラスキュラは嫉妬の炎に身を包まれた。

 

 カリバーンの全ては自身のモノ──メラスキュラはそう信じて疑っていない。

 それは、崇拝する魔神王にすら妥協を許さぬ程の執着であり、彼女の悪辣な性情が生んだ、歪みきった懸想であった。

 

 喜悦、快楽、憤怒、愁嘆、愛慕、恋慕、愛欲、嫉妬、羨望、執念、渇望、悔恨、羞恥、恐怖、畏怖、希望、絶望──そして、憎悪も。

 

 もれなく全てが自身のモノ。彼に全てを与えるのは自身であり、彼から全てを与えられるのも自身でなければならない。

 

 だからこそ──許せない。許してはならない。

 

 

 「───……ふふっ、うふふっ。一度、あの子に分からせる必要があるかしら?今はいったい誰に飼われているのか……その身に叩き込んであげないと」

 

 

 闇よりも昏く、黒よりも黒いその瞳の奥で、今も嫉妬の炎は燃え続けているのであった。

 




転生(コンティニュー)
・死ねばランダムで転生するよ!
()()()認知している魔法であれば、どんな魔法でも()()で使えるようになるよ!
※でも、今世で学んだ魔法や技は、今世では使えないよ!必ず死んでから使うようにしてね!

なので、これからもガンガン死んでいけば自ずと強くなれます。
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