【二次小説】機動戦士ガンダムGQuuuuuuX Another side   作:高坂 源五郎

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GQuuuuuuX Another side 第19話 宇宙へ旅立つ刻

 

—サイド3—

 

貸切にされた庭園の東屋には、四名の淑女が集っていた。サハリン家の令嬢アイナ・サハリン。カーン家の令嬢ハマーン・カーン。マツナガ家の令嬢ミノリ・マツナガ。そしてトッド家の令嬢セシリア・アイリーンである。

 

「皆さま、本日はようこそ。」

 

セシリア・アイリーンは喜悦していた。今日のお茶会は単なる個人の交流の場ではない。それぞれが世に知られた名家の代表として集った会盟の場である。その証拠として、どの家も人と物を提供してこの場を盛り上げている。

 

「ミノリ様は、初めてお目にかかるわね。お兄様が、ドズル閣下の親衛隊に居られるとか。」

 

「は、はい。兄はドズル様に忠義を誓う武人です。」

 

「そう、それは頼りになりますわ。」

 

マツナガ家はジオン公国の議員を務めた家である。しかしこの戦争においては数少ない和平派だった。

 

ザビ家が弾圧したわけではない。だが主戦論者に命を狙われ、マツナガ家の当主は暗殺されている。

 

跡を継いだ嫡男のシン・マツナガ大尉はドズルの忠臣として知られる。しかしドズルの部下でなければ、かなり厳しい立場に置かれた筈である。ラルがその妹をセシリア・アイリーンの茶会のメンバーに含めたのは、その境遇に自身を重ねての事だろう。

 

(つまり、良い手駒になるという事ね。)

 

トッド家など本来はマツナガ家に遠く及ばない。その令嬢を従えている。それだけで、セシリア・アイリーンの格は一段上がる筈だった。

 

セシリア・アイリーンはニコニコと自分に話しかけるハマーンに微笑み返した。

 

「そう。ハマーン様は地球にとてもご興味があるのね。」

 

「はい、セシリア・アイリーン様。父は宇宙ならばどこへでも私を連れていってくれました。ですから行ったことのない場所に惹かれます。」

 

ハマーンは少し音を立てて茶を啜った。小惑星帯など深宇宙暮らしが長い弊害なのだろう。マハラジャが淑女教育に力を入れるのもセシリア・アイリーンには理解できる。

 

「この戦争が終われば、ハマーン様も安全に地球旅行を楽しめましょう。」

 

「まあ、それは楽しみ。その時は、許可を得られるようにお力添えくださいね。お姉様。」

 

「ええ、もちろん。」

 

セシリアは「お姉様」呼びを喜んで許容した。相手はいたいけな少女であるのだし、何よりカーン家の娘である。ハマーンとの語らいを満足したセシリア・アイリーンは、お淑やかに紅茶を楽しむアイナ・サハリンに目を向けた。

 

「アイナ様は、楽しまれていますか。ガルマ様はお加減はいかが?」

 

「残念ながら。」

 

それまで楽しげにハマーンとセシリアのやり取りを見ていたアイナの表情が陰る。

 

「未だご体調に不安があります。先日も、デギン公王がお越しになったのですが……ガルマ様は少し取り乱されていました。」

 

「そう。それは心配ですのね。」

 

セシリア・アイリーンの表情も曇る。ガルマの件は単にガルマの問題に留まらない。ガルマはデギンの秘蔵っ子である。

 

ジオン公国はギレンが切り回しているとはいえ、その権力の根源はデギン公王にある。名家の力は重要だが、ザビ家の核がデギンである事実は揺るがない。

 

「ガルマ様の件、私も解決に向けてご協力を惜しみません。」

 

「ありがとうございます。セシリア・アイリーン様。どうぞよろしくお願いします。」

 

従順なサハリン家の令嬢アイナの返答に気をよくしつつ、セシリアは脳裏に一人の男の姿を思い浮かべていた。

 

 

 

 

総帥府に戻ったセシリア・アイリーンは、参謀本部からランバ・ラルを呼び出した。

 

「お呼びですか。」

 

ラルは即座に参上した。今日の予定を彼は把握している。呼び出される展開を予期し、予定を空けて待機していたのだ。

 

「それで、お茶会の首尾はいかがでしたか?」

 

本日のお茶会はラルの仕掛けた政治的な活動の一環である。アイナもハマーンも気脈を通じた相手とはいえ、人の相性はある。ラルはその点が気がかりだった。セシリア・アイリーンが上手く付き合えなければ、相手を抱え込む意味がないのだ。

 

「良かったわ。皆様とても協力的で、この私に親切でした。あれなら申し分ないでしょう。」

 

セシリア・アイリーンは笑顔を見せた。彼女の立場はラルの登場により大きく好転した。日陰の身である秘書兼愛人から、ギレン総帥の内縁の妻へと大きく踏み出しつつある。しかしまだ、大きく不足しているものがある。

 

「でも、不安があるの。」

 

「と、おっしゃいますと?」

 

「ガルマ様のことよ。前より悪いくらいだそうじゃない。」

 

「はい。私もアイナ様とはお話しできていますが、ガルマ様のご様子は依然お変わりなく…。」

 

ギレンの公然の妻となる為には、デギン公王に認められなくてはならない。名家の女性達の支持はその為に大切だが、デギン公王に直接気に入られる必要がある。それにはガルマの件は避けて通れないのだ。

 

「お前が早くなんとかなさい。」

 

セシリア・アイリーンは厳しくラルに申し渡した。その態度はラルの主人としてのそれである。ラルは畏まった。

 

ラルがアイナに接近するのを許したのは、ガルマの赦しを取り付けさせる為なのだ。デギンに迎合する為のガルマの回収が、このままでは裏目に出かねない。

 

「このまま放置すればお前の進退にも関わります。ガルマ様の件でご兄妹が結束すれば、私もお前を擁護できない。」

 

ラルは、セシリア・アイリーンに痛いところを突かれたという表情を浮かべた。そしてラルはため息を途中で呑み込むと、胸中の秘策を明かした。

 

「死者を生き返らせる事は出来ません。ここは、身代わりを立てましょう。」

 

その策はセシリア・アイリーンの予測を超えていた。本当に可能なのか、という疑心を彼女は隠さずに目に浮かべる。

 

「恋人であるガルマ様を騙すような相手を、お前は本当に用意出来るの?」

 

「はい。そのような事がいつかあるかと用意させておりました。」

 

ラルの自信に溢れた態度に、セシリア・アイリーンは態度を軟化させた。これは本当に用意がある顔である。

 

(イセリナ様を生かした苦心、ここで実を結ぶか。しかし最初から生け取りを命じてもらえれば、楽だったのだがな。ま、それでは功績とはならんか。)

 

ラルにしてみれば、なんという事はない。連邦に逃したイセリナをサイド3に呼び寄せるだけの事なのだ。死んだ筈の本物に偽者の振りをさせる。それこそがラルの秘策の骨子である。

 

「ただサイド3の中で用意すれば、必ず足がつきます。地球か中立サイドまで迎えにいく必要がありますので、しばしお時間は頂ければと。」

 

セシリア・アイリーンはラルの提案を吟味した。ザビ家の周辺は政府関係者ばかりだ。公的な記録など容易に調べられる。

 

ならば既存の人間を差し出すより、外部から連れてきて新たな存在に仕立てる方が安全だった。実務を知る立場として、セシリア・アイリーンはラルの考えを是とした。

 

「いいわ。許します。私から口利きもしましょう。でも、本当にガルマ様を騙し通す自信あるのでしょうね?」

 

「はい。単に容姿を似せただけではありません。本人の日記を読み込ませ、内面を磨かせています。」

 

ふーとセシリア・アイリーンは息を吐いた。これは望みがありそうである。

 

「それならば期待しましょう、ランバ・ラル。うまくやり遂げたなら、私がお前を中佐の階級に推してあげましょう。」

 

 

 

 

 

—ジャブロー司令部—

 

準備を整えたシイコは部下達に号令を下した。

 

「一斉に突撃よ! 安心して、道は私が切り開くわ!」

 

勇敢に飛び出した彼女の軽キャノンの背後に、続々と部下の機体が続く。肩のビームキャノンを放ちながら、軽キャノンの集団は敵を目指して全機で突撃を敢行した。

 

軽キャノンのビームキャノンは肩に備え付けてある。重力下で移動しながらの射撃は、砲身が揺れてまず当たらない。足を踏み出す際の反動が衝撃として砲身を揺らすからだ。シイコは感覚としてその事を把握していた。彼女はあくまで弾幕や目眩しとしての射撃戦を企図していた。

 

しかし敵の指揮官はシイコよりずっと狡猾だった。シイコの動きには釣られなかった。散開し、突撃するシイコ達の接近を待ち受けたのだ。敵は動かず冷静に照準を定めた。そして彼我のMSの性能が同等なら、戦術こそが部隊としての大きな差となる。

 

落ち着いてよく狙う敵と、拙速を重んじるシイコと部下。重力下ではこの差は劇的だった。

 

八対八で開始されたこの対戦で、最初の射撃戦でシイコの部下の半数が脱落した。戦力比は四対六となる。

 

敵に与えた損害二機の内の一機は、シイコのハイパーハンマーが破壊した。純然たる射撃戦の結果は、四機撃破される間の一機撃破でしかない。その一機撃破も、シイコの部下が火線を集中させたからこその戦果だ。

 

そもそも散開して待つ敵に吶喊は効きにくい。

 

相手に守るべき目標がなければ避けられて終わる。敵母艦にでも突っ込まない限り、こちらが戦力を集中したところを逆に包囲されてしまうのだ。

 

「距離さえ詰めれば、こちらのものよ。相手を選び放題だわ。」

 

なおも果敢にシイコは攻め立てた。その言葉が正しいと証明するかのように、彼女はビームサーベルで素早く敵機を斬り伏せる。彼我の戦力差は四対六から四対五まで押し戻した。

 

だがシイコのスコア獲得はそこまでだった。強力な敵に行く手を阻まれたのだ。相手は白くカラーリングされた軽キャノンである。そのパイロットは、彼女がお姉様と慕うセイラ・マスに他ならない。

 

「もうっ、こんな時にお姉様が相手だなんてっ。」

 

シイコをして一撃で倒せない技量。それは同じ機体を操縦しているとは思えない圧倒的な差。シイコはセイラを攻めあぐねた。

 

元より数的不利にされてしまっている。シイコは焦った。なんとしても目の前の強敵を突破しようと切り掛かる。しかしその全てが回避され、受け流された。

 

「ちくしょぉお!」

 

もはや部下達の指揮どころではない。シイコは面子を立てるべく挑み続ける。彼女の脳裏にはもう、部下の存在など忘却されていた。

 

『隊長、次の指示を!?』

 

「目の前の敵を倒す。それしかないでしょう?」

 

余りにも無策なシイコの回答に、部下達は棒立ちになる。そして一機また一機と撃破されていた。多少は腕に覚えがあれど、それは相手も同じなのだ。そもそも射撃戦で撃破は免れていても、無傷で潜り抜けた機体も少ない。

 

「ちょこまかと煩いんだよ!」

 

大振りな一撃を回避され、シイコの軽キャノンがたたらを踏む。その隙を敵は見逃さなかった。目の前の軽キャノンではない、離れた位置の機体が正確にビームキャノンでシイコの機体を撃ち抜いたのだ。

 

シミュレータが即座に撃破判定を下す。シイコのチームは敗北した。実に五対零の大差である。

 

 

 

 

「…皆、よくわかったな。今のがダメな例だ。どれだけ優れたパイロットでも、単独で突出すれば囲まれて終わりだ。だからこそ皆が実力をつけて、支え合って戦う必要がある。」

 

訓練生を集めて、リド・ウォルフ中尉が訓示を行っていた。『敢えて極端に悪い例を提示した』とする事で、彼は訓練生に対しては指揮の問題を糊塗しようとしていた。

 

そもそもMSの操縦訓練などベテランに負けて当然だ。それに戦術面の失敗例は早めに教え込む必要はある。だから訓練生は『そんなものか』と誰も疑問を持たない。しかし観戦をしていた司令部は、シイコの指揮能力の低さに頭を抱えていた。

 

「撃墜王も部隊指揮官としては、並以下か。」

 

ゴップ提督の漏らした意見は、凡庸だが司令部全員の総意に近い。

 

「相手チームの指揮官が巧みでした。あの指揮は、やはり?」

 

ティアンム提督の問いかけに、ゴップ提督は頷いた。

 

「ええ。〈ペイルホース〉のMS指揮官ミライ・ヤシマ中尉ですよ。」

 

〈ペイルホース〉は早期結成部隊である為に、これまでまともなMSは割り当てられてこなかった。精々が半端なガンタンクとコアファイターでの運用である。鹵獲ザクなどは、追加搭載したゴーストザク中隊という指揮系統が異なる部隊の装備だった。

 

連邦製MSの量産が進められた事で、ようやく今回装備をコアブースターから軽キャノンに一新した。その結果、意外な事実が明らかとなった。彼らの技量はゴーストザク中隊と同等、いや下手したらそれ以上に強かったのである。

 

「部隊として連携が取れている。下地があるのです。だから指揮がやりやすいでしょうな。」

 

ティアンム提督は暗に艦長のマチルダの技量を褒めた。人の士気を高め、同じ目標へ向かわせる。組織を一つにまとめる力において、マチルダは確かな才覚を持っていた。それが意図的なものか無意識的なものかはともかく、軍は彼女を有能と評価している。

 

「いや、戦術指揮もなかなかですぞ。」

 

ゴップ提督はミライの指揮を褒めた。出撃後の戦術的なすり合わせはミライの指揮の範疇である。戦績では劣るが、ミライはシイコに指揮能力で明確に優っている。これは軍に入る前の少女の頃からミライを知るゴップ提督から見ても、かなり意外な結果だった。

 

「……勝ったチームを褒めるのもいいですが、問題の解決を考えませんと。やはり彼女は指揮官から交代させませんといけませんな。」

 

ティアンム提督はシイコに辛辣だった。実際に宇宙で艦隊を率いるのは彼である。その時に引き連れるMS部隊の指揮官は万全を尽くしたい。

 

「しかしそれでは、カラコムの名を売る好機を逃します。勝てるという雰囲気作りこそ、今は大事です。勝利の機運を盛り立てていきませんと。」

 

対するゴップ提督は、士気を重視していた。個々人の能力には限界があると彼は承知している。だからこそ集団のやる気こそが重要である。

 

「しかし、あの指揮では勝てるものも勝てないですな。」

 

「指揮がまずいなら、副官に指揮させればよろしい。彼女が活躍し、兵がそれを目にして士気を高める。それが肝要でしょう。」

 

「いや。しかし訓練を担当させるのはこのままでは有害ですぞ。」

 

議論が白熱する中、それまで沈黙していた一人の男が口を開いた。遅れて入室した彼は、議論の中身を見極めていたのだ。

 

「彼女を先遣部隊に加えてしまうのはいかがかな。有能なものは戦場に引っ張られるのが道理。それならばご両人の意見を集約できると思うが。」

 

「レビル将軍、ご到着でしたか。」

 

「いやはや、遅くなりましたな。」

 

レビル将軍は挨拶を交わしながら部屋の中央に進み出て、正式に将官の輪の中に加わった。

 

「先遣部隊というと、レビル将軍には何か腹案がおありか?」

 

ゴップ提督の尋ねに、着座したレビル将軍は首肯した。

 

「先遣部隊をサイド6に派遣してはいかがでしょうか。」

 

「サイド6に、ですか。」

 

「連邦の主力艦隊がどこを目指すか秘匿したい。サイド6に寄港させて陽動をかけるのです。そこからグラナダを目指すのか、反転してソロモンに向かうのか。ジオンは大いに悩みましょう。」

 

「なるほど、敵戦力の配置をソロモンに偏らせなければ勝算は増しますな。」

 

ティアンム提督が戦術としての有利さを理解すると、ゴップ提督も戦略或いは政治的な利点を説く。

 

「サイド6の自治政府はジオン側へと傾きつつあると聞きます。連邦艦隊を到達させて彼らを中立に戻してやらんと、先端部品の調達にも差し障りが出ますな。」

 

「幸い〈ペイルホース〉隊は仕上がっているようだ。そこにカラコムを加えれば結構な戦力になりましょう。彼らを宇宙に先行させ、サイド6を目指させましょう。」

 

「ジャブローではその間もパイロットの育成を行う。そういう事ですな?」

 

ティアンム提督の問いかけに、レビル将軍は大いに頷いた。

 

「部隊長が最前線に赴く間、部下が代行として訓練を行うのは自然な事。これならカラコムの面目も保たれるでしょう。」

 

「いいでしょう。同意します。」

 

ゴップ提督が同意すると、ティアンム提督も頷いた。

 

「無論、私も同意します。」

 

「では、決まりですな。彼らにはなるべく早くサイド6を目指させましょう。」

 

レビル将軍の結びの言葉に、連邦軍首脳陣は大いに頷いた。

 

 

 

 

 

—ソロモン—

 

『シャア・アズナブル大佐、自分は突撃機動軍のマリガン中尉であります。グラナダよりお迎えにあがりました。』

 

シャアが軟禁されていた部屋に、マリガン中尉と名乗る男からの通話が届く。

 

「助かる。これでようやく自由に出歩けるようだ。」

 

シャアはソロモンを率いるドズル・ザビ中将麾下の宇宙攻撃軍での役職を全て解かれている。キシリアが率いるグラナダ側に引き取られるに辺り、この数日間を自室に軟禁されていた。別に留置されていたわけではないが、シャアのような男にはずっと自室に籠ることを強いられるのは苦痛なのだ。

 

「この数日の情報も欠落している。最新の情勢を教えて貰いたい。」

 

マリガンは頷いた。

 

「分かりました。私がソロモンに来た目的を含めて、道々ご説明しましょう。」

 

 

 

 

—サイド3—

 

セシリア・アイリーンは気を揉んでいた。ギレン・ザビの睡眠は浅い。戦争開始以来、ずっと不眠症気味なのである。その上で非常事態の対処を誤らない為に、睡眠薬を使用しない。いついかなる時も、冴えたままにしておく必要がある。それはギレンの持つジオン国民に対する指導者としての誠意である。

 

今日もギレンの呼吸が深くなり、熟睡へと変化したのは明け方であった。伴侶を見守るセシリア・アイリーンが安堵したのも束の間、寝室の電話が呼び出し音を鳴らした。この番号は本当に重大事が勃発しない限り鳴らされない。ギレンは覚醒し、受話器を持ち上げた。

 

「私だ。繋げ。……父上、どうされたのですかこんな朝から。え、ガルマが?あれは父上の言う通りに進めましたが。」

 

ギレンの表情が曇った。

 

「はい。はい。善処します。」

 

ため息と共にギレンが電話の受話器をおいた。傍に控えていたセシリア・アイリーンがギレンにそっと寄り添う。

 

「どうしましたの?」

 

ギレンは短くため息を漏らした。

 

「父上だ。ガルマが元気を取り戻さぬことに、どうも痺れを切らしたらしい。」

 

「まぁ。」

 

『逐電したガルマを必ず連れ戻せ』とそう厳命したのはデギン本人である。女絡みのいざこざであれば、本来は捨て置いてもいい話だ。

 

とはいえザビ家の兄妹は一も二もなくそれに従ったのだが、それは戦時体制ゆえにジオン国民に対して不祥事が露呈するのを避ける必要があったからだ。連邦の手に落ちれば、どう利用されるかはわからない。

 

ガルマが生きて戻り一度は安堵したデギンが、今もガルマが昔の通りにならない事に不満を示していた。

 

「末っ子は可愛いとはいえ、父上も老いたのだ。あの時はあれだけご自身で『その女を始末しろ』と叫ばれていたのだがな。」

 

ギレンの言は尤もである。この件で彼は一切の私情を挟んではいない。元々、それが最も特徴的なギレンの美質でもある。

 

凡人の心を理解しない天才。だがそれ故に私心を排して判断できる男でもあった。国民に対しても一定の公平さを持つ。その点だけを見れば、優れた統治者ですらある。しかし彼には欠けたものがあった。

 

それは想像力である。想像力のない彼は定見というものを持たない。軸のない力は、暴力に過ぎない。要求を額面通り受け止めてしまう為、“本当に必要とされる解決”を推察する能力をギレンは持っていない。知性も権力もあれど、解決法を想起する想像力がないのである。

 

現実的な解しか想起し得ない男だからこそ、毒ガスによる住民の虐殺やコロニー落としという所業を平然と実行するのである。ギレンは誠実で勤勉で想像力のない独裁者だった。

 

そしてジオン公国という一つの側に偏りすぎると、著しい歪みを生む事をまるで理解していなかった。官僚としては優秀でも、政治家としては基本的な資質に欠けているのだ。

 

セシリア・アイリーンとは、そんなギレンに偶然にも見出されてしまった小娘に過ぎない。それでもセシリア・アイリーンには、彼女なりに女としての成算がある。ギレンが愛を知る独裁者となれば良いのである。

 

(私だけがこの方と、ジオン国民を救える。)

 

セシリア・アイリーンの中には己の使命についての確信がある。彼女がギレンの子を授かれば、ギレンは変わる筈なのだ。この男が愛を知りさえすれば、完璧な存在となる。他人との関わり方も、良い方向に変わるのではないか。

 

セシリア・アイリーンは、女の持つ最も原初の力で平和を導こうとしていた。為政者に愛を教える。それはセシリア・アイリーンが目指す等身大の夢なのだ。

 

成功すれば、少なくともサイド3の国民の平穏は得られるだろう。その夢を果たす為に、彼女には乗り越えるべき障害がまだある。

 

「実は私も、アイナ・サハリン様よりガルマ様については薄々聞いていました。」

 

セシリアはアイナから聞いた話を打ち明けた。意図してギレンに伏せていた秘密という訳ではない。それを伝える必要性がこれまでなかっただけである。

 

独裁者の時間は貴重なのだ。時間が有限である以上、疲弊するギレンを労ることに充てられるべきだ。それがセシリア・アイリーンの基本理念である。

 

「そうか。」

 

セシリア・アイリーンは、頷いたギレンの顔を自分の胸で抱きしめた。これまで彼女は物事にうまく対処出来てはいなかった。その点、ランバ・ラルという男の存在はセシリア・アイリーンの問題対処能力を大いに拡大させている。

 

「大丈夫です。私がランバ・ラルに命じてなんとかさせましょう。ギレン様は公王様と弟君の事を、これ以上思い煩う必要はありません。全て、この私に任せてください。」

 

彼女とギレンの幸福な未来の為には、彼女には妻としての地位が必要となる。そしてその為には、デギン公王に認められる事こそが絶対の条件なのだった。

 

 

 

 

—ジャブロー基地—

 

ハネムーンと称する短い引きこもり休暇を終えたマチルダは、部下を呼び出し私的な面談を行なっていた。

 

「宇宙派遣に先立って行われたメディカルチェックの結果が出ました。リュウ、あなた怪我を隠していたそうね。」

 

緊張した面持ちのリュウ・ホセイが、マチルダの前に着席していた。

 

「艦に乗り組んだ当初から、色々な箇所の骨にヒビを抱えていたそうね。そして先ごろのジャブロー防衛戦で、ついに骨が折れてしまった。と、貴方を担当していた看護兵からそう聞いたわ。」

 

「はい、その通りであります。」

 

バレてしまった以上、リュウは率直に認めた。隠していた事に他意はない。〈ペイルホース〉にはこれまでパイロットが必要だったからだ。彼らは全力を尽くす事で、なんとか生き残ってきたのだ。療養する暇はなかったのだ。

 

「怪我を隠していたのは褒められた話ではないけれど、これまでの功績に免じて全て不問とします。ただし、このままでは駄目よ。怪我が治るまで、パイロットを続けさせられないわ。」

 

マチルダの言葉に、リュウは呻いた。

 

「そんな、殺生な。」

 

「当たり前でしょう。立場を利用して、マサキ看護兵から鎮痛剤を巻き上げていたそうね。これは出るところに出れば問題となりかねません。」

 

マチルダも問題にするつもりはない。〈ペイルホース〉を運行する上で仕方なかったとそう考えている。実際、ゴップ提督に掛け合って免責も得た。しかし、今後のこととなるとまた別の話である。

 

「艦長、どうにかなりませんか。」

 

真剣な面持ちのリュウに、マチルダは悩んだ。彼の状態を知らなかったにせよ、彼が骨折にまで至った直接的原因はマチルダにある。

 

彼女の異名の由来となった、あの突進。

 

“赤い彗星”のズゴックを巻き込みながらトンネル内をペガサス級で突き進んだ暴走じみたあの行為こそ、恐らくリュウの骨折の原因だったのだ。

 

「……私も責任は感じているわ。予備パイロットとして作戦同行を認めます。経過が良ければ復帰させましょう。それなら最小限の変化で済む筈です。」

 

リュウが一転喜色満面となる。彼は知っているのだ。人手不足の〈ペイルホース〉なら、どうせすぐにパイロットは戦場に駆り出されると。

 

そしてマチルダもまた、パイロットの欠員について一つの可能性を感じている。サイド6到着後の状況次第では、現在の乗員構成が変化するかもしれないのだ。もっとも、その可能性は彼女一人の意思では決められない。だからこそ今は口にしなかった。

 

「すぐに良くなります!」

 

敬礼するリュウに、マチルダは少し恥ずかしそうに告げた。

 

「無理はしなくていいわ。それに私もいざという時に、あなた達にちゃんと手加減をしてあげられるような性格ではないのだもの。」

 

 

 

 

再び〈ペイルホース〉への出向を命じられたシイコは悩んでいた。司令部の温情は感じている。彼女の不満は環境ではなく、より具体的である。MSとの相性に不安を抱えていたのだ。

 

「私、もっと速いMSがいいと思うのよね。」

 

ジオンのMSは総じて機動力を重視されている。ザクはその代表格だし、あまり実戦で使用されていないもののヅダという更なる高機動特化MSもあるらしい。地上で利用されるドムも、ホバー走行で足回りは速い。

 

対して軽キャノンは、どこか鈍重さを残している。ベースとなったガンキャノンよりは幾分マシであるが、推力面は課題が多かった。シミュレーションでも、シイコは距離を詰めきれない場面が多かった。

 

「格闘戦に持ち込めばまず勝てる筈なのに、逃げに徹されると厳しいわね。」

 

格闘特化というシイコの特性は、このところシミュレーションで鮮明になりつつある。特に軽キャノンは中遠距離用の機体であるだけに露呈しやすい。

 

地上ならMSの運動性には自ずから限界がある。そのような制約を取り払うGファイターを併用してシイコはかなり有利に立ち回れた。しかし宇宙の無重量環境では、戦闘が射撃戦に終始しかねない。

 

「いい手がありますよ。」

 

解決策は意外な男が提示してくれた。パイロットより半分くらいはメカニックに足を突っ込んだ男、ジョブ・ジョンである。

 

「シイコさん、実は命中率は悪くないんですよ。」

 

ジョブはシミュレータのデータを開いた。シイコも思わず覗き込む。

 

「だってハイパーハンマーは外した事はないでしょう?」

 

「確かにそうね。私は全て格闘兵器と思えばいいのかしら。」

 

「多分、イメージの問題なんです。実体がないとうまくイメージ出来ないような?」

 

ビームライフルにせよビームキャノンにせよ、軽キャノンの主武装はビーム兵器である。小型のメガ粒子砲とはいえ、実体はあるようでないといえる。

 

それに対してザクの使うマシンガンにヒートホークやクラッカー、それに軽キャノンのハイパーハンマーは質量がある。シイコは脳内で重さがある物を自動で補正して使用しているらしい。確かにザクに乗っていた頃、射撃も投擲もここまで壊滅的ではなかった筈である。

 

「ビームサーベルを使えてるんです。ビームがダメなわけじゃ無いんでしょうが、実体がある武器を活かす方向で考えるといい筈ですよ。」

 

「でも、足が遅いのよ。私としてはゼロ距離で殴り合いたいのに。」

 

「いい手があるのは、実はその事です。」

 

ジョブは図面を広げた。

 

「シミュレーション上で試作したデータなんですが、これなんてどうですか?」

 

ジョブの発想したのは小さなワイヤー射出装置である。爪で相手の機体にワイヤーを固定する。それだけの効果しかない。

 

「左右一機ずつあります。近距離射撃、バルカンを撃つくらいのタイミングで放てば、相手にケーブルを引っ掛けます。これで敵にくっつけば、逃げられる事は無くなりませんか?」

 

「いいわね、これ。」

 

シイコは満面の笑顔を見せた。

 

「全力で採用させて頂くわ。いつ出来上がるかしら?」

 

「え、僕が作るんですか?」

 

ジョブが戸惑う。シイコは大尉にして指揮官なのだ。彼女が手配する方が早い筈である。

 

「いいから付き合いなさい。貴方が説明し、私が説得する。その段取りでいきましょう。」

 

指揮の問題は棚上げしたままである。しかしシイコのもう一つのスランプは、これで解決する見通しがたった。少なくともシイコはそう確信をしていた。

 

「何かカッコイイ呼び名が欲しいわね。ま、それも誰かがきっと考えてくれるわね。」

 

 

 

 

 

—ジャブロー基地—

 

「行きましたな。」

 

ゴップ提督は、飛翔する〈ペイルホース〉を見上げた。ミノフスキークラフトのみで上昇する艦隊は、朝日を浴びて滑らかに上昇していく。

 

それは地球における暫定的な連邦軍の勝利の象徴だった。朝日を浴びて堂々とこれ見よがしに飛行している事も、ミノフスキークラフトのみで長時間その艦体を晒している事も。それは全て、敵の目がもうこの地に届かない事を意味している。

 

「南北アメリカ大陸はジオンの勢力を脱したのだ。次は、宇宙を取り戻してくれ。」

 

それはゴップ提督の祈るような言葉である。不安はある。しかし彼は放たれた必殺の矢が勝利を掴み得ると信じていた。

 

「さて。本当にジオンは釣られますかな?」

 

ティアンム提督は少し懐疑的である。彼は冷静に戦力を押し計っている。そして“足りない”と見定めていた。勝てる可能性はある。しかし、物量で押し切るにはまだ少し弱い。

 

(だがサイド6を味方にする策があたれば、或いは勝利が導き出せるかもしれん。)

 

北米やオデッサの撤退成功で、ジオンは余力を残した。追う連邦も勢いを増しているが、敵を圧倒するには至っていない。

 

「異名持ちが二人揃うのです。ジオンは何かあると考えて必ず釣られる筈です。間違いありません。』

 

作戦を立てたレビル将軍は、疑問を呈したティアンム提督にそう言い切った。

 

「彼女もあの艦も実に目立つ。まさに特別な存在だ。ここは“彼らが特別な存在である事”に賭けようではありませんか。」

 

〈ペイルホース〉は、レビルが見出したマチルダの指揮する艦である。特別な人間には特別な働きが可能だとレビル将軍は信じている。それは彼らが神に愛されているからだ。

 

『こちらからも情報を敢えてコロニー政府に流します。間違いなく、ジオンも先遣部隊の存在を彼らの到着に先んじて知ることになりましょう。』

 

レビル将軍は彼の知る最良を場に晒した。敢えて切り札の位置を敵に気付かせる。それは連邦軍が〈ペイルホース〉を意図的に囮にする事を意味する。だが、それこそが切り札の使い方というものである。

 

(目立つ、それ自体が囮としての資質を十全に備えている。)

 

最高に幸運で最高に可愛らしく、最高に実績のある前線指揮官。彼女が実力で成果を掴むのか。或いはマチルダの幸運は、神に愛されているからなのか。

 

レビル将軍にとって、実はそんな事はどうでも良かった。餌は食い破られるかもしれない。だが乾坤一擲の反攻作戦に勝てるなら、それでいい。勝利は全てを正当化し得るのだ。

 

「後もう少し、戦力を整えてやりたかったが。」

 

ゴップ提督は先遣部隊の戦力に少し不足があると見ていた。彼の抱く感情は親心である。〈ペイルホース〉の戦力はかなり充実させた。しかし、レビル将軍の策で命が幾つあっても足りないような危険な真似をさせる事になる。

 

「きっと死力を絞り尽くさねば、彼女達は生き残れないでしょうな。」

 

ゴップ提督はそもそもレビル将軍の好むような、個人の能力を過大評価した作戦は好きではない。軍事作戦としては、幸運を前提とした策は下の下である。

 

だがそれだからこそ敵の意表をつく事が出来る。勝利する為のギャンブルは戦争のどこかで必要になる。その点ではティアンム提督もレビル将軍と意見を同じくする。

 

「これは戦争なのです。勝利の為の賭けとしては、悪くない勝率でしょう。そうですな? レビル将軍。」

 

「ええ。連邦軍の見込める最高の勝率でしょう。今回の反攻作戦に全チップを賭ける、それでこの三名の意見が一致したのですからな。」

 

連邦軍は反攻作戦の為、できる事はし尽くしたのである。ならば後は神にでも祈るしかない。

 

「大丈夫です。私も彼らに続いて宇宙へと上ります。私が、必ず連邦の勝利を掴んで見せましょう。」

 

ティアンム提督もまた自信を見せた。少なくとも連邦軍は上から下まで一致団結している。ティアンム提督が知る限り、それは勝利の絶対条件である。

 

ジオンがザビ家の内紛という毒を抱えている以上、いずれ各個撃破は可能だ。つまりソロモンは、間違いなく落とせる筈なのだ。その後の事はその時に考えれば良い。ソロモンを落とせば、連邦軍の戦略的選択肢は大いなる広がりを見せるに相違ないのだから。

 

 

 

 

—サイド3参謀本部—

 

「連邦軍の宇宙侵攻作戦ですが、先遣部隊を派遣するようです。ジャブローより打ち上げられた艦にルナツーから追加でサラミスが参加しました。この小艦隊はサイド6に向かっています。」

 

報告する担当者の声に、会議に列席した参謀達はどよめいた。

 

「これは下馬評を覆し、グラナダ侵攻を挑むのではありますまいか。」

 

サイド6はソロモンとは真逆に位置し、むしろ月にあるグラナダへの経路となり得る。そして月の裏側に置かれたグラナダは、軍事的にも経済的にもジオン本国の生命線である。

 

ソロモンは単なる軍事基地に過ぎないが、グラナダは経済面の存在感が大きい。これまでは『連邦も戦後を見据えて侵攻しない』との意見が大勢を占めていたが、ここで意見が割れた。

 

この点、ランバ・ラルも定見はない。彼はソロモンに来ると読んでいるものの確証は得られていなかった。所詮は彼の意見も勘に基づくものでしかない。しかし気になる事がある。偵察映像の画像は不鮮明ながら分かる。この小艦隊には、アルテイシアの乗り組んでいる例のペガサス級がいる。その特徴は見間違いようがなかった。他に該当する艦が建造されていない限り、まず間違いない。

 

「私が出向き、奴らの目的を見定めよう。」

 

そう意見を述べたのはコンスコン少将である。ユーリ・ハスラー少将に並ぶ地位にある彼は参謀本部の重鎮だった。

 

「幸い、ギレン閣下の配慮で参謀本部直属にリックドムの戦隊が付けられた。これは現状では我がジオン公国軍随一の部隊だ。装備も練度も申し分ないだろうよ。」

 

麾下は精鋭のリックドムの集団となれば、ジオン本国でも最上等の部類に入る。実際にはギレンやドズルそしてキシリアの親衛隊が用意されている。だが派遣可能な戦略としては最善である。

 

それにリックドムは最新鋭だ。次の新型標準機であるゲルググは未だ量産の最終段階である。こちらは恐らく次の戦闘に投入が間に合わない。想定されているのは次の次の投入となる。

 

「私が出向き、サイド6に圧をかける。そして連邦の先遣艦隊を撃破して、サイド6を屈服させて見せよう。」

 

コンスコン少将は自信を見せた。彼にはそう豪語するだけの実績と戦力がある。不可能な絵空事だとは、この場の誰も考えてはいなかった。

 

「ならば、私も同行させてください。支援させて頂きます。」

 

豪語するコンスコン少将に対して、ラルは思わず支援を申し出ていた。ペガサス級の存在に気づいたが故に、つい焦りが出たのである。

 

「ついて来たいなら、ついてくればいい。」

 

そのコンスコンの言葉に、『参加を許された』とラルが安堵した。その瞬間、油断したラルをコンスコンが追撃した。

 

「だが、実戦参加は不要だ。少佐には見届け人に徹して貰う。」

 

(釘を刺されてしまったか。)

 

ラルはほぞを噛んだ。

 

連邦の艦隊には、例のペガサス級がいる。ラルとしては、敵味方を調整してアルテイシアに被害が生じないようにする必要性を感じていた。だが、同行を完全に禁じられてしまうよりはまだなんとかなるだろう。

 

「それは何故でありましょうか?」

 

白々しく尋ねるラルに、コンスコンは凄んで見せた。

 

「貴様は支援した事にして手柄を立てたいのだろう? だが、そうはさせんぞ。」

 

ラルを見るコンスコン少将の視線は冷ややかである。生粋の軍人である彼にとって、セシリア・アイリーンに接近する彼の立ち位置は政治的にすぎるのだ。

 

「では、手出しをせず見届けるとお約束します。」

 

「ならば良かろう。」

 

コンスコンとしては、ギレンの周囲でおかしな事をしないようにラルを連れ出したかったらしい。ラルはそう気がついていたが、アルテイシアの身に危害が及ぶ可能性を考慮すると他に道は存在しなかった。




【あとがき】

お読み頂きありがとうございます。

今回はソロモン攻略戦へ向けた準備回となりました。連邦軍はサイド6へと先遣部隊を送り込み、ジオン側もそれに対応する形で動き始めています。大きな戦いの前夜として、それぞれの思惑や立場を描く回になりました。

今回の中心人物はセシリア・アイリーンです。

彼女はしばしば「ギレン総帥の愛人」という立場から語られますが、私はそれだけの人物とは考えていません。彼女なりに理想を持ち、自分の出来るやり方で未来を良くしようとしている女性として描きたいと思っています。

一方でランバ・ラルは、表向きにはセシリアを支えています。実際、彼の働きによってセシリアの立場は大きく改善されつつあります。しかし読者の皆様は既にご存じの通り、ラルの忠義が向かう先はただ一人です。

ではラルはセシリアを利用しているだけなのか。

私はそうも思っていません。

忠義の対象はアルテイシアであっても、ラルは自分が支えると決めた相手を見捨てるような男ではないとも考えています。その辺りの微妙な関係性を感じて頂けたなら嬉しく思います。

また今回はシイコの弱点も明確になりました。優秀な撃墜王と優秀な指揮官は必ずしも一致しません。その一方で彼女なりの強みも見え始めていますので、今後の成長も見守って頂ければ幸いです。

次回からはいよいよサイド6編へと入っていきます。次回もよろしくお願いします。

今回のお話はいかがでしたか? 貴方の気持ちに近いものを選んでください。

  • セシリアは意外と有能・夢を応援したい
  • 今回はラルが黒幕では?
  • ミノリ・マツナガって誰?
  • イセリナ再登場が楽しみ
  • 格闘特化の指揮下手はシイコらしくて笑った
  • ミライの指揮官適性高い
  • 対コンスコン戦が楽しみ
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