緋色の女王の幼馴染   作:雅媛

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11 秋のファン大感謝祭

 秋。中央トレセン学園における一大イベント、『秋のファン大感謝祭』の季節がやってきた。

 

 前世の学校行事で言えば「文化祭」にあたるイベントなのだが、その規模と熱気は全くの別物だ。国民的アイドルと同等かそれ以上の人気を誇るウマ娘たちが一堂に会し、催し物をするのだから、押し寄せる一般客の人手と熱狂ぶりはすさまじいものがある。

 そんなお祭り騒ぎの中、二人に増えた我がチームもせっかくだから何か出し物をやろう、ということになったのだが……。

 

「……なんで『お茶漬け屋』?」

「私が好きなので」

 

 ジャーニーの堂々たる一言により、我がチームの出し物はあっさりと『お茶漬け屋』に決定してしまった。

 学園の空き教室を一つ借りて、和風ののれんや小物を飾り付けたちょっとしたお店である。

 お祭りの出店といえば、焼きそばやクレープ、たこ焼きといった食べ歩きできるものが定番中の定番だ。活気あふれる祭りの最中に、わざわざ教室の椅子に座って、渋いお茶漬けをズズッとすする客などそう多くはない。まあ、当たり前だろう。

 

 とはいえ、閑古鳥が鳴いて悲惨な状況かと言われれば、そうでもなかった。

 ジャーニーの母親のステイゴールドや、ジャーニーの妹であるオルフェーヴルといった面々が、我が物顔で客席の端に陣取り、美味そうにお茶漬けをすすりながら入り浸っていたからだ。

 暴れん坊や気性難で知られる面々の溜まり場になりかけているが、彼女たちが大人しく出汁の香りに包まれている分には非常に平和なので、あえて触れないでおく。

 いや一応ステイゴールドにはご挨拶したが。担当の親だからね。

 頑張れとしか言われなかった。

 

 それに、客足が多すぎないのには、私にとって途方もなく大きなメリットがあった。

 看板娘として接客を担当しているスカーレットの姿を、特等席でじっくりと目に焼き付けることができるからだ。

 

「お兄ちゃん! はい、鮭茶漬け一丁!」

 

 お盆を手にしたスカーレットが、小走りで私の元へやってくる。

 和風のカフェを意識した、袴と割烹着をアレンジしたような今日の彼女の衣装は控えめに言って、クッソ可愛い。

 昔から「胸が大きいと和服はシルエットが崩れて似合わない」などという説を唱える輩がいるが、今すぐここに連れてきて正座させたい。規格外の豊満さを誇る彼女の胸元は、和装特有の清楚な布地によって包み込まれることで、逆にその暴力的なまでの起伏と隠しきれない色気を際立たせている。さらに、きゅっと締められた帯がウエストの細さを強調し、そこからスリット越しに覗く健康的な太腿が、前世のおじさんの理性を激しく揺さぶってくるのだ。

 

 大事なことなので二回言うが、和装のスカーレットはクッソ可愛いぞ。

 

「どう? お茶漬け、美味しい?」

「ああ、最高だ。出汁の加減もバッチリだし、何よりスカーレットの和装姿が信じられないくらい似合ってて可愛いから、味が五割増しに感じるよ」

「も、もうっ! お兄ちゃんったら、またすぐそういうこと言うんだから……っ! えへへ」

 

 私が素直に褒め称えると、スカーレットは顔を真っ赤にして照れながらも、嬉しそうに私の隣にちょこんと座った。

 忙しすぎないおかげで、こうして幼馴染の妹分とゆっくりとした時間を楽しめるのだ。ジャーニーのお茶漬け屋というチョイスは、結果的に大正解だったと言えるだろう。

 厨房の奥では、ジャーニーが「ふふっ」と意味深な笑みを浮かべながら新しいお茶漬けを作っている。もしかすると、彼女はこののんびりとした空間まで計算して、この出し物を提案したのだろうか。

 

 真相は分からないが、黄金一族の身内と、スカーレットの熱烈なファンである私の消費によって、なんとなく悪くない程度の売り上げも上がり、我がチームの初めてのファン大感謝祭は、穏やかな出汁の香りとともに平和に終わっていくのであった。

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