緋色の女王の幼馴染   作:雅媛

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6 勝負服

 秋の深まりとともに、我がチームの二人は順調に勝ち星を重ね、いよいよ年末のジュニアクラスG1レースへの出走が現実的なものとして見えてきた。

 怪我などのアクシデントさえなければ、スカーレットは予定通り『阪神ジュベナイルフィリーズ』へ、ジャーニーは『朝日杯フューチュリティステークス』へと向かうことになる。

 

 大舞台への出走が確定したウマ娘にのみ許される特権。それは、自分専用のオリジナル衣装――『勝負服』の制作である。

 というわけで、そのための採寸が行われることになったのだが……。

 

「……なんで私が測定するんですかね」

「トレーナーなんだから、当たり前でしょ?」

「ええ。私たちがここまで成長したのはあなたのおかげなのですから、あなた色に染めた責任をきちんと取ってください」

 

 トレーナー室で私は死んだ魚のような目でメジャーを手繰っていた。

 目の前には、ミリ単位の正確なサイズを測るため、全裸になったウマ娘が二人。

 成長期真っ盛りの中等部二年生は、数ヶ月で体型が劇的に変わることもあるため、勝負服を作る前の厳密な再測定は必須項目なのだ。とはいえ、全裸同然の担当ウマ娘二人を前に、男である私がメジャーを這わせてサイズを測るなど、明らかなセクハラではないかと私の中のおじさんが激しく訴えかけている。

 

 ちなみに、このウマ娘社会においては、これも立派なセクハラ事案に該当する。ただし、ウマ娘側からヒトの男性トレーナーに対するセクハラとして、である。

 圧倒的強者である彼女たちから「測れ」と迫られている構図なのだから、私が学園の窓口に被害を訴え出ればおそらく勝てるのだろう。だが、可愛い教え子をそんな理由で訴えるのはどう考えても違うだろうと思い直し、私はただただ粛々と、般若心経を唱えながら測定を続けるしかなかった。

 

(それにしても……二人ともデカいなぁ)

 

 スカーレットの暴力的なまでの豊満さは言うに及ばずだが、地獄の食トレを乗り越えたジャーニーの方も、かなりむっちりとしてきた。最初は少し肉がつきすぎかとも心配したが、骨格全体が立派に成長して太くなっているので、アスリートとしては許容範囲の理想的な仕上がりだろう。まだ中等部、成長する子はしっかり成長するのだ。ジャーニーの身長は伸びていないが、そこには触れないでおく。

 

 地獄の測定タイムが終わると、次は勝負服のデザイン会議へと移る。

 しかし、この二人は服を着ようとしない。

 

「あー、暑い暑いっ。お兄ちゃん、クーラーもう少し下げてよ」

「ええ、少し室温が高いですね」

「いや、暑いって言いながら下着姿でうろつくのはやめなさい。はしたないだろ!」

 

 私が注意しても全く意に介さず、下着の格好のままデザイン画のカタログを広げ始める二人。

 しかも、何故か私の両サイドにぴたりと陣取り、身体を密着させてくるのだ。

 

「私はもっとフリルがいっぱいの方がいいかなぁ。ねえお兄ちゃん、どっちが可愛い?」

「スカーレットさんは少し派手すぎますよ。トレーナーさん、私にはこちらのシックなラインの方が似合うと思いませんか?」

「暑いならくっついてこないでほしいんだが!?」

 

 右腕にはスカーレットの圧倒的な質量が、左腕にはジャーニーのむっちりとした小悪魔的な感触が押し付けられている。見事な両手に花のウマ娘サンドイッチである。

 ファッションのことなど前世の擦り切れたおじさんにはまるで分からん。二人とも自分の好きなように、自分の一番テンションが上がるデザインで作ればいいと思うのだが、そんな正論を口にする余裕すらないほど、私の理性はゴリゴリと音を立てて削り取られていた。

 

 結局、二人に散々振り回されながら完成した勝負服のデザインは、奇しくも私が前世のアプリで見慣れていた『あの姿』にしっかりと収まるのであった。

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