入学式を終え、夏油は机にお菓子と金魚が泳ぐ金魚鉢と金魚のいない金魚鉢、金魚を移動させるためのお玉を置いた。
「そういうわけで、総監部に認知されたくはないけど術師の知識は欲しいっていう人からお菓子を貰ったんだ。なんか呪物っぽい。説明書は絶対読んでねだって。どうすればいいだろう。一応毒味として金魚は持ってきたけど」
「ヤバ。それで金魚鉢なんだ」
「まあ俺、目が良いから俺もチェックしてやるよ」
「ヤバそうな物なら没収するぞ。それと俺が開ける。お前たちは離れて見てなさい」
そこで夜蛾先生はお菓子を開ける。
離れた場所から様子を伺う生徒3人。
「ふむ、説明書はこれか?」
数枚に及ぶ説明書を持ち上げる。
「説明書の枚数ヤバ」
「生きたカエルのチョコ六匹対象年齢7歳、百味ビーンズ対象年齢5歳300グラム、鼻血ヌルヌルヌガー4個対象年齢10歳、アニマルの顔になるクッキー対象年齢4歳40枚⋯⋯最後の一枚は注文書か。殆ど百味ビーンズの味の表記だな」
「ハリーポッター! ハリーポッターじゃん!」
わぁっと寄ってくる生徒達。
「待て。本当かわからん。金魚を使う」
お玉で金魚を一匹掬い、金魚鉢に入れてクッキーを入れる。
金魚の顔が犬になってガボガボ言い始めて、元に戻った。びっくりしたらしくグルグル落ち着かなそうに泳いでいる。
「ハリーポッターだー!」
写メで撮りまくる生徒達。
「せんせー! もっかいやって! もっかい!」
そしてお菓子を漁ると、その下にはハリーポッターの一巻のDVDが!
「皆でお菓子食べながらハリーポッター見ようぜ!」
「普通のお菓子も買いに行こうよ」
「うん!」
流石に個人の部屋まで行くのはまだ慣れないので食堂へ。そして中央に置いてあるテレビを占拠するという暴挙。その場でお菓子を配ると、先輩やその場の術師達も喜び、あっという間にお菓子は無くなった。確かに仲良くなるのに大いに役立つのだった。
「お菓子一つ千円(百味ビーンズは100g)、ただし、一件につき私の取り分が五百円、高専の事務の人に代引き手数料一件五百円。プラス着払いだそうです。注文番号書いて高専宛で送るって。取りまとめしろってことかー。便利に使われちゃったね?」
「お菓子千円ってたけーの?」
「めちゃくちゃ高い。20枚入ったクッキーが二百円で買えたりする。でも注文書コピーしておいておけば良さそうだよ。後は注文書写メで送って五百円なら良くない? 早速事務の人にお願いしに行こう」
「めっちゃたけーじゃん。あっ53000円のギフトボックスが5万円だって、お得! しかも4月に限り1万円だって! 俺、これ買って家の奴らびっくりさせたい! 早くコピーしよ」
「せんせー。これ両親に送っていいの?」
「呪術は秘匿されるものだからな。一般家庭は、まあ、親子兄弟までで、その場で消費して、写真とかを撮らないならお目溢しありと言ったところか。本当はダメだが」
「厳しー」
「呪術師の家なら良いんだろ?」
「そこを禁止したら仕事が回らないからな」
五条は人数を数え始め、家入は帰る日はいつだったかと考える。
それから、何十件も注文を取った。
人数が少ない術師の話なので、これはかなりすごい。
「高専には所属しないのか、その人は」
「なんだか、総監部は嫌がらせで生徒を死なせるとか、知識は欲しいけど総監部には認知されたくないと言ってました」
「そうか……」
「術式は?」
「どうだろう。そこまで聞いてないんだ」
「口に入るものを作るのが知らない者、というのも怖いな。傑の口からそれとなく勧誘してみてくれないか」
「わかりました」
夏油が注文ついでにその旨を連絡をすると、その言い分には納得してくれた。
そして、夜蛾先生にも連絡先を教える事、問題が起こった際に素性を明らかにする事にも同意をしてくれた。
ただ、勧誘とか色々干渉されたり直接親の店に来られるのは嫌らしい。
店にクレームに来るのもNG。
親には高専に特別なお菓子を卸す事は言っても、どんなお菓子かは伝えていないのだとか。その関係で、お菓子は高専を通して売らせて欲しいそうだ。
術式については言いたくないらしい。別にすごい術式とかそういうのではなく、術式が関係ないとなれば術式なしで魔法のお菓子を作れるのか、となったらややこしいし、術式が関係するなら多彩なお菓子を作れるなら呪具制作に応用すれば、となる。適当な術式でっち上げたら後で騙したのか、という事になりそう。なので確定させるのは嫌なんだそう。商売はしたいが魔法界については黙っていたい関係上、あまり探られたくないとのこと。
縛りとかガチガチで説明も面倒くさいから言いたくないと伝えて欲しいという事だった。
注文は面倒だが良いお小遣い稼ぎとなった。
夏油も興味があると言うと、作り方を教えてくれるという。
ただ、魔法界では、魔法を習う前にテストに合格しないといけないのだそうだ。
筆記や実技、面接。それらで合格して初めて、魔法について習えるのだという。
教えるのにも資格が必要で、今、テストを大量に受けているところだそう。
人間界は魔法界に認知されてないので資格者登録の必要はないが、テストは魔法使いが間違いを起こさない為の実用的なものなので、夏油もクリアしないと堀田の方針として、教えてもらえない。
そんなわけで、教科書と問題集、堀田の家に行けるドアの鍵を貰った。
使う度にエネルギー充填しないといけないため、テストを受ける時しか使わないように念押しされる。
夏油は早速、ドキドキしながら「はじめての錬金術」の問題集を見てみた。
問1。材料に50mlとあった。正解を全て選べ。
1、きっちり50ml測って入れた。
2、ちょっと多めに60ml入れた。
3、大は小を兼ねる。ドバッと入れた。
4、目分量で入れた。
5、反応を見ながら少しずつ入れて良さそうなところで止めた。
答え
1⚪︎
2× 測れ。
3× 測れ。
4× 測れ。
5× 初心者は測れ。プロになって何が起こっても対応できるようになってからマニュアルから外れろ。それまでは測れ、錬金術でトチったら死ぬぞ。
なるほど。確かにこんなものも正解出来ないようなら教えるわけにはいかないな。
夏油は深く頷いた。しかも対象年齢は小学生からだという。これなら片手間でも出来そう。一発合格できなければ恥まである。
実際、簡単だったというと、簡単だから大変なのだそうだ。
中には受験の回数制限のあるテストや、落ちても正答を教えてもらえないテストも多いらしい。酷いのになると、答えを人から聞いて知ってしまったら制度上受けられるけどもう一生一人前と認められないものも。
簡単だから、答えを聞けばもうテストで間違わない。
しかしテストの時だけ出来ても、その後も自然に実践できなくては困る。
だから、初めから何も言われずとも実践できる人しか教えないという事らしい。
はえー。でも私は大丈夫だろう。
だってテストは本当に簡単で、当たり前の判断力と倫理観があれば問題のないものだ。
例えば、こんな問題がある。
問い3 あいつむかつく! どうする?
1、魔法で殺す
2、魔法でイタズラを仕掛ける
3、話し合いで解決する
4、殴る
5、我慢して無視する
ここで、私はちゃんと3を選べる人間なのである。我ながら偉い。
答えは、ほら、あれ、正答2なのか!? それ以外が野蛮ってどういうこと!? どうなってるんだ魔法使いの倫理観!
ま、まあ多少のカルチャーショックはあるが、とにかく私なら問題ない……でも文化の違いは怖いな、一発合格前提のテストばかりだし、常識の把握は必要か。教科書読まずともいけるかと思ったが、一応教科書も目を通しておこうか。
教科書を読むと、面白かった。
お話が載っているのもあり、中々考えさせられる話もある。
魔法界では倫理を考えさせる物語が豊富らしく、それをよく送ってくれるのだが、どれも面白い。教育漫画の位置付けらしいが、スパイ魔法使いのシリーズがとても面白くて、悟や硝子も部屋に入り浸ってよく読んでる。魔法は内緒でも、物語の本は貸して良いって話だったしね。
魔法の注意点なども見ているだけで面白い。
性転換魔法の為の、男と女の違いなんてのも面白かった。
私は蘊蓄が好きなので、こういうのって読むのが楽しい。
私はテストを破竹の勢いで合格していった。
筆記試験は楽だった。全て一発合格だった。
堀田優も先生になる試験を受かったので、8月から魔法を教えてもらえた。
私は簡単な魔法を使えるようになった。
攻撃魔法なんかは、やはり術式や直接殴った方がずっと手っ取り早かったので、あまり役には立たなそうだけど……それでも魔法を覚えるのはとても楽しかった。
呪力を魔力に変換しているので、特殊な杖を使わないといけないが、魔法のことは内緒だしそもそも使う場面もないので、部屋に大切に保管している。
やはり私は優秀だ。
そんな優秀な私の前に、大きな壁が立ち塞がった。
実技である。
性転換魔法と、動物化魔法の試験がどうしても受からないのだ。
性転換魔法は答えを聞いたらその時点でちゃんとした合格はもらえない系統、動物化魔法は答えはわかるが本能に逆らえてない。
どうしても受からない。一生受からないかもしれない。
ぐぬぬ。
女の子と言ったらやはり硝子だよね。仕方ない、硝子を頼るか……。
でもなんて聞いたら良いんだろう。シュチュエーションを伝えてどうするか聞いたら、それはもう答えだよね……。
マシュマロ
https://marshmallow-qa.com/lucaluca
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