BIOHAZARD ~The Twice Up Angels   作:AZ

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File.11:天国への階段

 

「ダメだ、完全に炎に包まれてる」

 

 レオンの前に広がる、炎の海原。その中に佇むアトリウム。グレースと最後に連絡がとれたセーフティーエリアがあった場所。

 

 しかし今は、炎がガラスを突き破り、建物は熱で黒く変色している。少し距離をとってもこの熱波。この中に生存者がいるかと問われれば首を横に振るしかない。

 

「BBQになるのは御免だな」

 

 レオンがそう零す。この炎の中にグレースとエミリーがいなければいいのだが。

 仕方なく踵を返したところに、急に襲い掛かるゾンビ。急所を的確に2発撃ち抜く。

 

「レオン! その遊園地、監視カメラが確認できる場所がある。エントランスエリア近くの警察待機所に向かってくれる。何かがわかるかも。平屋だから直ぐに分かる筈。ルートを送るわ」

「了解」

 

 設定された目的地に向かい移動を開始した時、背後から気配を感じ取る。

 先ほど倒したゾンビ。うつ伏せに倒れた背中の中で何かがうごめいている。

 

「何だ?」

 

 途端、背中を突き破って生えてくる両翼。

 赤黒く、骨を皮膚だけで覆ったような、蝙蝠(コウモリ)のような羽。

 それを生やしたゾンビは、うめき声をあげながら空中へと浮上する。

 

「……エルピスに幻覚作用があるとか今更言わないよな?」

「変異体なの?」

「さぁな。色んなヤツを相手にしてきたが、空飛ぶゾンビは初めてかもな」

 

 空中に舞い上がったゾンビがそのままレオン目掛けて頭から飛んでくる。

 銃が間に合わず、両手でゾンビと取っ組み合う形。一瞬の隙をついて背中のトマホークにアクセス。ゾンビの首筋に斧の刃を叩き込む。

 

 首に斧が食い込んだゾンビ。そのままトマホークごと地面へ投げ捨て頭を踏みつぶす。

 斧を引っこ抜いた時に気付く。空飛ぶゾンビは、こいつだけではないことに。

 

 空中には、次々と飛翔を始めるゾンビたち。かなり歪な光景だ。

 

「T-ウイルスに飛翔させる効果が?」

「あり得ない。そんな話聞いたことがない」

「だとすると、T-ウイルスではない何か」

 

 レオンを目掛けて次々と迫る飛翔ゾンビ。

 こちらに来る前に、弾丸で受け止める。羽を撃ち抜き墜落させ、勢いをつけて飛来するゾンビにはショットガンを突き付ける。

 

 それでもゾンビは増える一方。

 

「流石に相手にしていられないな」

 

 周辺のゾンビたちを倒したのちにすぐさま移動を開始。

 その時、背後から飛翔ゾンビに掴まれる。

 

「おい!」

 

 ゾンビはレオン持ち上げ、飛行を続ける。空中で喰らうつもりなのか口を大きく開いてレオンへ。

 そのゾンビの口の中へ、レオンはハンドガンの銃口を差し込む。

 銃がつっかえて口が閉まらないゾンビ。ふと下を見ると、平屋の建物が見えてくる。飛翔ゾンビに捕まり、センターエリアからエントランスエリアの近辺まで連れてこられたらしい。となれば、あの建物が警察待機所か。

 

「よぉし、そのままだ」

 

 レオンはタイミングを見計らい、平屋の建物直上まで来た時にトリガーを弾く。

 弾丸は真上に弾かれ、銃を咥えていたゾンビの脳天を貫通していく。

 

 ゾンビの握力がなくなり、そのまま地上へ落下。平屋の建物の敷地で受け身を取る。

 

「時間短縮になったな」

「余り無茶をしないで……」

「分かってる」

 

 空飛ぶゾンビタクシー。運賃は9mmの鉛玉と言う事らしい。

 平屋の建物のプレートには、やはり警察待機所の文字が記されていた。

 

■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇

 

 警察待機所の中へ。ライトと銃を構え奥へ進む。

 人の気配はしないが、誰かが直前まで居た痕跡をなんとなく感じ取る。

 

 休憩所の中へ。

 ここにも人はいない。あるのは空になったペットボトルとお菓子の包み。

 

 古いタイプライターが置いてある。出力された紙には、『ローズとエミリー:9月23日 21:32』の文字。

 

「エミリー……」

「何か見つけた?」

「タイプライターがある。紙には『ローズとエミリー:9月23日 21:32』と」

「ここに居たというの?」

「ああ、所どころ微妙にスペルが間違ってる。まだ文字を勉強中だと言っていたからな。おそらく、あの子で間違いないだろう」

「それと、ローズ……?」

「どこかで聞いた名前だ。少なくとも、グレースは一緒じゃなかったらしい」

 

 休憩室を出ると、モニタールームへ辿り着く。

 ここで園内の監視カメラの映像を確認できるようになっている。

 

 キーボードを叩き画面を切り替えていくと、ひとつのモニターにとある人の姿が映る。

 映像を拡大する。解像度の関係ではっきりとはしないが、よたよたとこちらへ歩いてきているようだ。

 

 しばらく待つと、その姿がはっきりする。エミリーだ。もう一人の少女と一緒に成人女性を担いでいる。

 その成人女性。服装と髪型の特徴から恐らく――「グレースか」

 

 映像を管理しているPCと持っていた小型の端末を繋ぎ、シェリーへ映像を送る。

 

「かなり薄暗い場所だ。どこか分かるか?」

「類似の映像から、プレートが確認できた。スタッフ用のアンダーパスね。近くのパブリックアーケードからアクセスできるはず」

 

 レオンは映像を切り替える。

 二人がグレースを抱えどこへ行っているのかを映像で追う。

 二人が辿り着いたのは、地下エレベーター前。カードリーダーにカードを通すと端末が緑色に光る。

 

「地上行き用のエレベーターじゃないな」

「更に地下があるというの?」

 

 映像を拡大する。エミリーと一緒にいる女の子。歳も背丈も同じくらい。

 金髪ロングに黒いキャップ。そして背丈に似合わないジャンパーを羽織っている。

 

「やはりどこかで見た顔だ」

 

 二人がエレベーターに乗ると籠が閉まって更に地下へと降りていく。

 ……その直後、降りて行ったエレベータのもとへ、誰かが歩いてくる。

 

 中年程の、やや小太りの男。緩慢に身体を揺らしながら降りて行った籠を眺めて、そしてその場から踵を返す。

 

「ゾンビじゃなさそうだな。何者だ?」

「……解析できた。その男……」

 

 その男、カメラ越しに誰かがいることに気付いているのか、ただこちらをじっと凝視していた。

 

 

■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇

 

 警察待機所の武器庫にて弾薬を補充後、再び外に出ると、どんよりとした夜空の中に飛翔ゾンビが増えている。

 もうアレはBSAAたちに任せよう。そう思いながらパブリックアーケードの方へ爪先を向ける。建物はここから見える程に近い。

 パブリックアーケードまでは無益な戦闘は避けようと身を屈めながら移動を開始するが、建物の屋上付近に居た一体の飛翔ゾンビがこちらに手を伸ばしうめき声をあげる。

 

 しまった見つかったか。銃を取り出し構えたとき――その飛翔ゾンビの胸を、鋭い爪が貫く。腐った血がばらまかれる。

 

「huh?」

 

 ゾンビの背後から現れた、その爪の持ち主。ゾンビたちよりもひとまわりかふたまわり程大きく、3メートル級はあろうか。全身は生々しく腐りただれた皮膚で、赤黒い筋肉がむき出しになってしまっている。そして目元には目が無く、代わりに鋭く尖った獰猛な歯が口の中を飛び出して生えている。

 

 背中には、やつらよろしく羽が生えており、着ている衣服は、おそらくワンピースの名残り。

 

 それは、厨房やジェットコースターで二人の少女を襲った化け物。

 

【クリーチャー『THE ANGEL』】

 

【挿絵表示】

 

 

「何よ、あれ!」

 インカムから張り裂けるようなシェリーの声。

「天国遊園地のマスコットキャラにしては、みてくれが悪いな」

 

 すると、そのクリーチャーは空を仰ぐようにして叫ぶ。

 

 ―――――――

 

 その咆哮、鼓膜を劈くような超音波。レオンも思わず顔を歪め片耳を塞ぐ。

 

 その化け物、目元が無いのでレオンのことが見えているかはわからないが、顔はしっかりとこちらに向いている。

 

 背中の羽を使い、レオンの下まで飛翔し、地響きを連れて落ちてくる。

 その拍子にひらりと、遊園地のパンフレットがレオンの手元に。

 

『天国で天使たちと素敵なひと時を』

 

 そう書いてある。しかし、目の前にいる天使はどうもフレンドリーには思えない。

 パンフレットを投げ捨て、銃と斧を持ちクリーチャーの前に立つ。

 

「天使と喧嘩とは、日ごろの行いだな」

 

 化け物は鋭い爪をむき出しにすると、レオンの心臓目掛けて一直線。

 レオンは身体を横に向け、胸元で斧を構え、天使の爪を受け流す。――パリィ成立。開いた隙に、顔へショットガンの散弾を数発叩き込む。

 

 化け物は多少怯みはするが、それでも攻撃は止まらない。鋭い爪を振ってレオンを仕留めにかかる。

 しかしその攻撃、毎回確実にレオンを狙えている訳ではない。たまに見当違いなところに爪を振ったりもしている。

 

「やはり目は見えてないのか」

 

 ならばとトマホークで近くの鉄を叩き音をだし、相手を陽動する。

 その隙に後ろへ回り込んで、一気に討つ。そう画策し、音を出して直ぐに背後に回り込む――が。

 

「レオン後ろ!」

「うお! クソッ!」

 

 化け物に集中していたレオンの背中を、飛翔ゾンビが掴む。噛まれる前に腕を切り落として脱出するが、こいつらがコバエのように飛び回る中ではロクな戦闘ができない。

 

「シェリー!」

「待って!……よし、目的のパブリックアーケードまで走って。多少ゾンビは残ってるけど、そこにはまだ飛翔する個体は居ないみたい。外よりはマシ」

「わかった!」

 

 先ほどアクセスした監視カメラの解析からその場所を指定する。

 レオンは閃光手榴弾をひとつ投げると、音と光に紛れてその場から駆け出す。

 

 パブリックアーケードは走ればすぐだ。飛翔ゾンビと地上を這うゾンビを掻い潜りながら建物のエントランスまで辿り着く。

 

 ガラスの扉を潜ると、確かにシェリーの言う通り、歩くゾンビがちらほらといるにはいるが、先ほどのカオスな状況に比べれば幾分マシだ。

 

「ここがアーケードか」

「エミリーが降りていったアンダーパスもここの中にある筈。スタッフルームを調べて。また、奴らが来る前に……」

 

 シェリーがそこまで言った時

 バァアアン! というガラスが砕け散る音と共に、先ほどの天使がパブリックアーケードのガラス天井を突き破って降りてくる。

 

「余程恨まれているな。俺のカルマは思った以上に最悪らしい」

 

 天使は降りてきて、周りをきょろきょろと見回す。レオンのおおよその位置を特定できても、詳細位置までは掴んでいない。

 

 レオンは足音を立てないように後退り、建物の構造を把握する。何か使えそうなものはないか……。

 

 ドン、と突如アーケード内の『改装中につき立ち入り禁止』と書かれた扉が開く。

 中からは、作業着を着たゾンビ。

 

 その手元には――チェーンソー。

 

「お前ら本当に好きだなそれ」

 

 呆れたように吐き捨てるレオン。

 ゾンビはエンジン音を轟かせ、片手でチェーンソーを振りまわし切りにかかる。

 

 チェーンソーの刃がレオンに掛かる一瞬の隙、レオンはゾンビをいなし素早く背後へ回り込むと、懐からレクイエムを取り出し、ゾンビの頭を一瞬で吹き飛ばす。

 

 レクイエムの銃声がアーケードに轟く。それを聞きつけた天使は、再び咆哮を挙げてレオンの下へ、四本足で駆けるように走ってくる。

 レオンはゾンビが落としたチェーンソーを拾い、エンジンをかけ、ふかす。

 

 天使がレオンの前に降り立つ。再びレオンに向かって鋭い爪――その攻撃をチェーンソーで受け止める。

 

 鋭い爪とチェーンソー。互いが鍔迫り合い、激しい火花を散らす。

 

「悪いが、俺は少年ネロじゃないんだ。迎えに来る相手を間違えてる」

 

 ガキンッ! と一瞬のキックバックがレオンの腕を打つ。天使の手が開いた隙、レオンはすかさずそこにチェーンソーを押し込む。

 中指と薬指の間に刃を入れて、ゴリゴリ鈍い音を立てながら肉を割いていく。

 

 下まで振り下ろしたとき、天使の手は真っ二つに。小指側の手はボロっと取れて下に落ちる。

 

 ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!゛!゛

 

 反対側の手でレオンに反撃。しかし、片手撃ちのレクイエムに弾かれて指ごと吹っ飛ばされる。

 

 ガタっと膝を着いたとき、天使の目の前にはチェーンソーをもったレオン。

 残った三本指の爪を立てるが、弾かれて、チェーンソーは天使の喉元に深く突き刺さる。

 

 ギュイイイイイイイイイイイイイイ‼‼‼‼‼‼ と豪快なエンジン音と肉が割け砕け散る音がアーケードに響き渡る。

 

 チェーンソーの刃が天使の顔を貫通した時、レオンは刃を真上に引き上げて、天使の脳天はパックリと真っ二つに。

 

 大量に返り血を浴びたレオン。天使は完全沈黙し、動かなくなった。

 

「天国は出禁だな」

 

 刃が壊れたチェーンソーを捨てて、レオンはその場を後にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇■◇

 

 

 ……ああ、酷い姿にされてしまって。

 でも、大丈夫だ。君はこんなところで終わらないよ。

 

 ほら。割れた頭は直ぐに再生する。

 

 飛び散った臓器だって、脳味噌だって。

 

 君は特別なんだよ。さぁ、僕と一緒に、ひとつになろうじゃないか

 

 ――レイラ

 

 

 

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