BIOHAZARD ~The Twice Up Angels   作:AZ

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二人とも10~12歳くらいで同い年だったらいいなぁって


File.03:レッツ・バディ

 

 命からがら逃げ込んだスタッフルーム。

 二人は束の間の休息を取ったあと、その部屋の中を物色。何か使えそうなものはないか。

 

 しかし、そこはあくまでスタッフルーム。ロケットランチャーやスパークショットなどといった強力な武器は都合よく落ちてはいない。

 

 あるのは精々、医療用の救急ボックス。中には薬液。窓際には鑑賞用だろうか、グリーンハーブがいくつか植えてある。

 

 ローズは鉢植えのハーブを回収すると、薬液に浸して少し時間を置く。

 ハーブの色素が薬剤に溶けだし、薬剤はほんのり緑がかった回復薬になる。

 

 それを瓶に詰めて、流し台へ。ローズの左手、先ほどゾンビに押し倒された拍子に、少し擦りむいたらしい。

 ドバドバドバと左手に薬液を掛ける。濡れた左手をじっくり眺めて、よし、と呟く。

 

「それなぁに?」

 

「え? ああ、即席の傷薬。……父さんの記録にあったんだよね。有事の際には、こういうのが役立つって」

 

「お父さん?」

 

「あんたも、怪我してない?」

 

「まぁ、ちょびっと……」

 

 ローズはエミリーの手を取ると、そこにも薬液をかけてあげる。

 

「ただの気休めなんだけどね。取れた腕がくっついたりとかはしないから……普通は」

 

「何の話?」

 

 エミリーがぽかんと首を傾げると、ローズは空になった瓶を置き、休憩用のソファに座る。

 

「助けって、来るのかな。BSAAとか」

 

 心もとなく光る蛍光灯を見ながらそう呟く。

 

「BSAA?……DSOなら来てくれるって聞いたけど」

 

「……合衆国直属の対バイオテロ組織。こんな辺鄙な田舎に?」

 

「知ってるの?」

 

「聞いたことがあるだけ。そういうのに詳しい人がいるからサ」

 

 エミリーはローズの横にかけると、彼女の横顔を見つめる。

 視線に気付いたローズは、キャップのつばを下げた。

 

「あんた、一緒にいたお姉さん、大丈夫なの」

 

 ローズが訊いた。手洗い場ですれ違ったこと、彼女も気付いていたのかとエミリーは思う。

 

「……きっと、大丈夫だと思う。グレースは……強いもん……」

 

 ふと、気を抜けば込み上げてきそうになってくる何かを抑えながら、気丈に答えた。

 ローズはそれ以上を何も訊かず、そっか、とだけ言った。

 

「ローズは、大丈夫なの。家族とか」

 

「私は、学校の遠足でたまたま来てただけだから」

 

「そうなんだ……お友達とか、無事だといいね」

 

 エミリーがそう言った時、ローズは不満げな表情で、何も言わなかった。

 

「学校の遠足って、二人でバディになって行動するんでしょ? そのバディの子とも」

 

「うるさい」

 

 ローズはまた深くキャップのつばを下げ、エミリーの言葉を遮るようにそう言った。

 そのあと、そっと、囁くような小さな声で、呟く。

 

「知らないよあんな奴ら、食べられてしまえばいいんだ」

 

 そう言いきってしまった後に、ふと我に返る。

 エミリーの方を見ると、明らかに困惑している様子だった。

 

「……ごめん。不謹慎、だね」

 

 ローズは流石にばつが悪そうに。ソファの上で膝を抱えた。

 

「ううん……気持ちは、分かるよ。私だって、そうやって良くないこと考えちゃうこと、あったもん。怖い大人の人たちが、私の友達を連れて行ってしまって。それでも私、ああ、連れていかれたのが私じゃなくてよかったって、そう思っちゃって」

 

「そっか……」

 

 エミリーは、遊園地内でローズがずっと一人で居た理由が何となくわかってしまって、それ以上は何も言わなかった。

 

「あんたは、エミリーは、学校でイヤな奴とか、いたりしないの」

 

 ローズが訊く、するとエミリーは首を横に振りながら答える。

 

「……私、学校行ってないの」

 

「え?」

 

「ちょっと、最近まで、事情があって。今まではホームスクーリングでお勉強して、最近やっと、ラーニング・センターに行くようになって……だから私、まだちゃんと学校にはいけてないの」

 

 ローズが少し、キャップのつばをあげる。舌で頬の内側を押しながら、なんとコメントすればいいかと悩んでいた。

 

「だから、私にとってはローズが初めてのバディ……になるのかな」

 

 不意を突かれたように、ローズはエミリーの顔を見る。

 あんなに深刻そうな身の上話をしたと思えば、唐突なバディ宣言。

 すこし、分からない子だなと思ってしまう。

 

「まぁ、こんな状況だし。ま、バディ、か」

 

「嫌?」

 

「嫌というか、うん。まぁ、そうだね」

 

 バディという言葉に、ローズはいい思い出がない。

 最初は一緒に行動しても、途中で裏切られ、バディだった子は他の仲良しグループに合流して、ローズはいつも置き去り。

 一人で居る所を見て、仲良しグループの子たちは嗤って、先生はなぜバディ行動をしないんだとローズを叱る。

 それだけならまだいい。この間なんて、バディだった子に嵌められて、無人の用具室に閉じ込められ、そこで数時間を過ごした。

 

 バディは、裏切る。

 バディは、信用できない。

 

 それがローズが今まで学習してきた、涙色に塗られた経験則。

 

「ローズ?」

 

「……私を裏切らないって、約束できる?」

 

 ローズの声が僅かに震えている。

 エミリーは、少しの戸惑いを覚えつつも、うん、と答える。

 

「じゃ……まぁ、そういうことで」

 

 ローズは再びキャップのつばを下げた。

 

 刹那――

 

 甲高い獣の叫び声が、二人の耳を劈く。

 

 突然の出来事、二人は身を屈めて耳を塞ぐ。

 

 聞き覚えのある咆哮。先ほど厨房を徘徊していた、あいつ(・・・)だ。

 

 咆哮が止むや、二人はスタッフルームの中二階へ。

 ここの窓から、セーフティールームがあったセンターエリアが見渡せる。

 

 あの目立つ巨体、このスタッフルームから少し離れた、西エリアに通ずる通路付近に居る。

 化け物だけではない、その傍らには、生存者。

 

「うわあああああああ! やめろ! やめろこっちにくるな化け物!!」

 

 少し太った20代くらいの男性。右手に持っているのは拳銃だろうか。しかしスライドオープンしてしまっており、もう弾丸を発射はできない。

 

 化け物は、その男性が居る方へ、じりじりと音を頼りに歩み寄っていく。

 

 男性はどうしようもなく、腰も抜けてしまい、地面に尻をつけながら、命乞いにも似た叫び声を上げ続ける。

 

「やだ! やだあああああ! だれか、だれがだずげで! うわ! うわあああああああああああああああ!」

 

 化け物の右手が高く上がり、男性を目掛けて、一振り――。

 

「うっ!」

 

 その瞬間を、ローズもエミリーも目を背け見なかった。

 

 その次にあったのは、首と胴体と足が綺麗にせん断された、男性の悲惨な末路。

 

 化け物は、音を立てなくなった男性の残骸を、そのまま貪り始めた。

 

「これ……現実なの……? 夢じゃないの……?」

 

「あいつが居る限り、ここも安全じゃない……エミリー、逃げよう。もっと遠くのエリアに」

 

 二人で急ぎ荷物の回収。その時に、ローズは一枚の手紙を見つける。

 

『オリバー! いい加減、銃をオープンキャリーして出勤してくるのはやめろ! 開園前とは言え、銃を所持した人間が遊園地を出入りしているとクレームが来ているんだ! パークのポリシー上も、保安要員以外の武器携行は禁じられている! 勤務中はロッカーに入れればいいとかいう問題じゃないんだ。まったくジムといい、テキサス野郎にはうんざりさせられる』

 

 その手紙を片手に、職員のロッカーへ。オリバーと言う名前を探す。

 名前を見つけるが、ダイヤル錠が掛かっている。ダイヤルだとキーピックでは開かない……が、ロッカーの上に一枚の紙きれ。

 

『オリバー。言われた通りロッカーのカギは交換しといたよ。初期ナンバーは"1142"だ。早めに変えとけよ。またケツの番号一桁だけ変えるとかいうのはやめとけよ』

 

 ダイヤル錠を1142に合わせてみる。しかし開かない。

 そこから、末尾1桁を順に回していくと、1149で開錠。

 

 中には、一丁のハンドガン。

 

「わぁ……ピストルだ」

 

 エミリーは目を丸く。

 ローズはマガジンを外し、スライドを軽く引いてチャンバーチェック。一応弾は入っている。

 

「扱えるの?」

 

「まぁ、一応。訓練だけはさせられたことがあるから」

 

「ローズって一体……?」

 

「不思議なのはアンタもだよ」

 

 ローズは軽く笑うと、拳銃を両手で握りしめた。

 

 ――ハンドガンを入手した。

 

 

 

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