イナズマイレブン 〜フィールド上の詐欺師〜 作:セブンアップ
「フィールド上の
「ええ。そう呼ばれるプレーヤーが、神奈川県の立海大付属中学にいるそうよ」
雷門中キャプテンであり、GKの円堂守が首を傾げ、監督である吉良瞳子に尋ねる。
「
巨大な体格をした壁山が意味について尋ねると、一之瀬が分かりやすく解説する。
「詐欺師って言うのは、人を騙す人のことを言うのさ。あまり穏やかな二つ名でも無さそうだけど…」
「お前みたいだな、木暮!」
「う、うっさいやい!」
財前と木暮で言い合ってる傍ら、ゴーグルを付け、マントを身につけているドレッドヘアの男、鬼道が訝しげに呟く。
「しかし、立海大付属と言えばサッカーよりテニスに力を入れていると聞きます。響木監督が目を付けるほどのプレーヤーがいるのか…?」
「それは行ってみないと分からないわね。でも立海大付属もサッカーでは全国常連チーム。その学校に属しているぐらいだから、全国レベルと見ていいわね」
「確かに。正攻法で勝てるほど、エイリア学園は甘くない。敵を欺くプレーも駆け引きの1つ。全国クラスともなれば、エイリアに通用すると言えるわね」
マネージャーの雷門夏未が瞳子の言葉に納得し、他の選手も頷いている。
「よーし!それじゃあ早速、神奈川県の立海大に行くぞーっ!」
円堂の掛け声により、みんなが声を合わせてあげる。
雷門イレブンは全国に回るための移動用車輌、イナズマキャラバンに乗り込み、神奈川県にある立海大付属中を目指した。
雷門と同じ関東圏内であり、道のり自体は北海道や京都に行くほど時間がかからなかった。
そして。
「ここが立海大付属かぁ!大きいな!」
立海大付属中学に到着。キャラバンから皆がおり、校内を歩き始める。するとそこに1人の学生が通りかかったため、円堂が声をかける。
「なぁ!サッカー部ってどこにあるかな?」
「サッカー部?今の時間なら、このまま奥に行って右に行けばミーティングをしてる」
「本当!?ありがとう!」
円堂たちは彼の言うことを聞いて、サッカー部がミーティングをしている場所に向かった。しかし、向かった先にいたのは。
「陸上部!?」
「は、はい。サッカー部なら、今日は休みのはずですけど…。最近エイリア事件のこともあるし、練習はしてないと思いますよ?」
「てことは…」
「俺たち、騙されたのか?」
先程、親切に教えてくれた生徒がまさか自分たちを騙すとは思ってもいなかった。
「騙す…もしかして、仁王くんに会いましたか?」
「仁王?」
「僕、彼と同じクラスなんですけど……彼、サッカー部なんですよ。今日はなんでいるのかは知らないですけど。でも、サッカー部ではこう呼ばれてます。フィールド上の
「え、じゃあまさか!?」
「さっきのが監督が言ってたやつでやんすか!?」
既に
「おっかしいな…ここにいたのに…」
「誰を探してるぜよ?」
円堂たちの背後から声をかける。振り向いた先にいたのは、先ほどの生徒だった。
「あ、お前!」
「プリッ」
「よくも俺らを引っ掛けやがったな!」
「いや、木暮もよくやるだろ…」
騙されたことに対して怒りを表す何名かの雷門イレブン。彼らのそんな様子を飄々とした態度で観察し、尋ねる。
「天下の雷門が一体ここに何の用じゃき。エイリア学園とか言う異星人が来とるっちゅう話はないぜよ」
「用があるのは、貴方の方よ。仁王雅治くん」
「あ?」
「貴方のことは、ここに来るまでに調べさせてもらったわ。立海大付属の中でも、1番厄介な存在のオールラウンダープレーヤー。相手を騙し、翻弄する貴方のプレースタイルには目を見張るものがある。ぜひ、イナズマキャラバンに参加してくれないかしら?」
ポケットに手を突っ込んで、雷門を観察している彼の名前は仁王雅治。フィールド上の詐欺師という異名を持つプレーヤーである。FFでは全国優勝を逃したものの、彼の詐欺で多くの対戦プレーヤーを翻弄してきた。
「…別に良いぜよ。全国を旅するなんてのは中々体験出来んことじゃき。キャラバンに参加させてもらうのもありかのう」
「本当か!?」
仁王が快く承諾してくれたことで、円堂が目を輝かせる。理由はさておいて、全国レベルのプレーヤーがキャラバンに参加することは、チーム強化に繋がるに等しい。
「待て。…その前に、お前の実力を見てみたい」
「プピーナ。テストってことかのう?」
「まあそうとも言える。全国レベルとはいえ、俺たちの動きについて来れないのであれば、話にならないからな。現に全国大会に出場しているプレーヤーは、エイリア学園に負けている」
「俺も、お前のサッカーを見てみたい!いいか、仁王!?」
「ケロケロ」
「けろ…?とにかく、良いってことなんだな?」
「監督!」
「構わないわ。私も、仁王くんのプレーを見てみたいと思っていたから」
こうして、仁王雅治の入部試験?が決まった。立海大付属のグラウンドを借りて、仁王対雷門の円堂、鬼道、一之瀬、壁山、財前の5名とのミニゲームを行おうとしている。仁王は雷門のディフェンスをかわしてシュートをするというのがクリア条件。
キックオフは、仁王から。それぞれがポジションについて、審判の古株がホイッスルを吹く準備を始めた。
「準備は良いかい!?」
「ピヨッ」
「それでは…」
ホイッスルが高らかにグラウンドに鳴り響く。仁王はボールを少し蹴り、ドリブルを始める。
「お手なみ拝見だね!」
財前がすかさず仁王に着く。仁王は走りながらボールを上に蹴る。すると、ボールが徐々に肥大化し、財前目掛けて落下してくる。
「えっ、ち、ちょっとぉ!」
財前は本能的に手で頭を塞ぎながらボールから逃げる。…が、そのボールは彼女に当たることはなく。
「どこを見とるぜよ?」
「えっ…?い、今のは…?」
仁王のボールは彼の足元に。巨大化に見えたボールは実体ではなく幻覚。財前はまんまと仁王のオフェンスに騙されてしまったのだ。
「やるね!それが君の必殺技かな?」
「トリックボールと言ったところか。だが、種さえ分かってしまえばどうと言うことはない」
一之瀬と鬼道が仁王の進路を塞ぐ。フィールドの魔術師と呼ばれる天才MFの一之瀬、そして天才ゲームメーカーと呼ばれる鬼道のディフェンスに、並のプレーヤーであればパスを出してしまうか、ボールを取られてしまうだろう。
しかし、仁王は不敵な笑みを溢す。
左足を前にし、右足を後ろにしてボールを挟む。そして勢いよく一回転し、地面にボールをぶつける。すると、ボールが複数に分裂する。
「こ、これは!」
「イリュージョンボール…だと!?」
帝国、そして鬼道の得意とするドリブル技のイリュージョンボール。自身の十八番、そしてイリュージョンボールを繰り出される衝撃で、見事に引っかかってしまう2人は、仁王の突破を許してしまう。
「プリッ」
しかし、雷門きっての鉄壁を誇る壁山が彼の前に立ち塞がる。
「絶対通さないっス!」
すると、仁王は足を止める。しかしそれは壁山の守りに臆し、動きを止めたのではなく。
「お、あれなんぜよ?黒いボールかのう?」
「え!?黒いボールっスか!?」
仁王が壁山の右斜め上を指差す。黒いボール、という単語で思わず壁山は指差す方角に振り向いてしまった。しかし、そんなものはどこにもなく。
「黒いボールなんてのはどこにもないぜよ」
「え!?あ!だ、騙されたっス〜!」
壁山が仁王が指差す方角を向いてる間に、容易く突破。
「こ、これがフィールド上の
「今のところ、オフェンスに優れた木暮くんと言ったところですね…」
「俺をあんな詐欺師と一緒にすんな!」
「けれど、まだ彼がいるわ」
夏未、そしてフィールドに出ていない選手とマネージャーが視線を向けたのは、雷門最後の砦である円堂守。仁王、そしてボールに集中するよう構える。
仁王はボールを少し浮かし、ゴールの左側に視線を向けてダイレクトシュートを放つ体勢だった。
「(右か!)」
視線から読み取り、反応の早い円堂は素早く飛び込む。しかしその視線はフェイント。ボールを打つ、と見せかけたその足はジャストミートせず、ボールを擦るように振り抜き、スピンをかけ再び浮かす。
「(し、しまった!フェイクか!?)」
円堂が飛び込んだことで、逆サイドがガラ空きになってしまう。そこに目掛けて仁王がダイレクトシュート。
「(けど、まだだッ!)」
仁王が打つ寸前に方向転換し、見事な瞬発力でボールにもう1度飛びつく。
「熱血パンチッ!!」
円堂の反応は見事だった。しかし、それさえも読み切った仁王はボールに打つ時に回転をかけており、それによりボールが円堂が飛び込んだ方とは逆サイドに突き刺さり、ゴールネットが揺れる。
「くっそぉ!やられたぁー!」
「まあ、こんなところかのう」
と言いながらも、仁王の内心は穏やかではなかった。流石と言うべきか、2度目の円堂の反応速度。回転をかけていなければ、確実に捉えられていた。それほどまでに、雷門のGKの強さを体感してしまったのだ。
「すっげーな仁王!1回目のシュートフェイントもそうだけど、2回目のシュート!完全に取ったと思ったのに、それを読んで回転をかけてたなんて!してやられたぜ!」
「それに、鬼道のイリュージョンボールをコピーしていたのも驚いたよ」
「あぁ。どうやって習得した?」
「帝国は強豪校として有名じゃき。情報収集にそこまで苦労しなかったぜよ」
「ということは、見て覚えたというのか?恐ろしい奴だ…」
プレーヤーを混乱に陥れる手数。そして他人の必殺技を模倣出来る技術と、それを物にするための観察眼。通り名は伊達ではないことを、改めて身に染みた雷門イレブン。
「私ら、完全に騙されただけだったよな…?」
「俺なんて、必殺技ですらなかったっス…」
円堂と鬼道が関心している傍ら、仁王の
「けれど、これで確信したわ。仁王雅治くん。君のそのプレイは、宇宙人にも通じる。雷門イレブンにも、新しい刺激となる。私達の旅に、同行してくれるわね?」
瞳子が改めて、仁王にイナズマキャラバンの勧誘を伝えた。
「プリッ」
その彼独特の言語が、瞳子に対するイエスアンサーだった。こうして雷門イレブンに新たなメンバー、仁王雅治が加入。
しかし、雷門イレブンはまだ彼の実力、もとい