第一話 異世界と妖怪
「ん…ここは、何処だ…」
俺は気付くと、草花の上で仰向けになっていた。
起き上がりながら周りを見回してみると、木々が連なっており、一見して山のようだった。
「なんで、こんなとこに………っあ‼︎あのオバさん‼︎」
先ほどの女性…八雲 紫との会話を思い出し、俺は遠くまで響くような大声をあげた。
「旅…やらなんやら言ってたが、ここは…うちの近所の山か?とにかく、下ってみるか…」
それから、大体一時間後…
「っあ‼︎全然出られる気配がしねぇ、どうなってやがるこの山は…」
俺が思っていた山ならとっくのとうに山から出られるはずだ。しかし歩けば歩く程、目の前に広がっているのは沢山の木々だった。
「少しばかり休憩するかぁ…」
そう言って木に寄り掛かると、何やら話し声が聞こえてきた。
(ん?そこに人がいるのか…?これは助かるかもしれない…)
そんな淡い期待を胸に近づいてみると、2人の男が話をしていた。しかも日本語だったのだ。そのまま助けを求め、その2人に話しかけようと、物陰から出、俺が見たのは…
明らかに異様な光景だった。
片方は背中に真っ黒な翼があり、もう片方には狐の耳と尻尾らしきものが生えていた。そこまでなら良いのだが、その狐耳の男の歯は人間とは思えないぐらいの鋭い歯を持っていた。
俺は本能てきにすぐ又物陰に隠れたが、
その光景を理解するまでにかなりの時間を要した。
(なんだありゃぁ…コスプレ…じゃないだろうな、流石に)
困惑していると、狐耳の男が口を開いた。
「いやー、お前久しぶりに休暇がとれたな。こうやってお前と話すのもいつぶりだろうな」
「すまんなぁ、今の天魔様は少しばかり緩いんだが、その補佐をしている奴がとても厳しくてなぁ、今までのように休暇がとれくなってしまってな」
(天魔…⁉︎確か、天狗のお偉いさんだったか?つまり、あの翼の生えた男は天狗ってことになるのか…とすればあの狐耳の男は妖狐ってとこか…ったく、なにがどうなんってんだ)
そう思っていると、妖狐は信じられない言葉を発した。
「そうか、そんな休暇かがとれないなら、”人間”でも狩るか。少しばかり贅沢といこうぜ」
全身に鳥肌がだった。妖怪ならば、人間を食べて当たり前。そんな事実知っていた筈なのに今の今まで、俺の頭はその事実に辿りつけなかった。
逃げなければ。そう思っても俺の足はあまりの恐怖で言うことを聞かなかった。
「んなこと言ってもなぁ、都を抜けて山に来ている命知らずな人間なんて、そうそう居ないぞ?」
「そんなことないぞ。例えばそこの物陰で俺達の話を盗み聞きしている人間が一人」
なんと、妖狐には俺の存在がばれていたのだ。
天狗は俺の存在に気が付くと、不吉な笑みを浮かべ此方に近づいてきた。
恐怖で逃げることも声も上げることもできなかった俺は、その場に倒れこんだ。
「妖怪の話を盗み聞きするとは命知らずな奴め、安心しろ。すぐ楽にしてやるよ。といっても、俺等の腹の中に収まる運命だがなぁ」
そう天狗はそう言いながら俺の目の前で立ち止まった。
(死にたくない…死にたくない…死にたくない…なんで俺がこんな目に合わないといけないんだよ‼︎)
天狗が俺に向かって手を上げた瞬間、
俺はまた気を失った…。
そのとき、角の生えた少女が見えたような気がした。
目が覚めると俺の目に入ってきたのは見知らぬ天井だった。
(ここは…確か俺は天狗に食べられそうになってそのまま気絶したんだっけか。なんか気絶してばっかりだな…さっきから)
そんなことを思っていると、角の生えた少女が部屋に入ってきた。
「あら?おはようございます。目が覚めたのですか。私は椿姫 調(つばき しらべ)と申します。ようこそ、我が里へ」