初来店からしばらくして、弘は再び神河を訪れていた。
「いらっしゃいませー。ようこそ喫茶神河へ」
出迎えてくれたのは、ギャル風のキャストだった。
ウェーブがかった金髪、緑色のカラコン。
大きな瞳が印象的な、快活そうな子だ。
「お、君は会うの初めてだね」
「あ、はい。桜井弘と言います。えっと……」
弘は名札を確認しようと、彼女の胸元に目を向けた。
すると、彼女はわざとらしく胸を手で隠すようなポーズで体を反らした。
「やだ~、今私のおっぱい見ようとしたでしょ。えっち」
「あ、す、すすすすみません!!」
弘は必死に頭を下げて弁明する。
「出禁は勘弁してください」
「あ、ごめん、ほんの軽いジョークだから」
「ネムリ、そいつにそういう冗談通じないから」
卓でデュエルしていたアリスが嗜めた。
「改めて、あたしはネムリ。担当はMTG。よろしくね、弘くん」
「は、はい。お願いします」
弘は店内の様子を見回した。
アリスとネムリの他には、カウンター越しに恵がいるくらいで、キャストの姿が見当たらない。
「店長は?」
「店長はお昼食べに行ってるからもうすぐ帰ってくると思う」
「そうなんですね。じゃあカウンターで待たせてもらいます」
「りょ。あ、カウンターはチャージ800円でワンドリンク制だよ」
「え、安」
テーブル席のチャージ2000円との落差に思わず声を上げた。
「金銭感覚バグってるよ弘くん。席代800円だって全然安くはないからね」
(客の財布気遣ってくれるんだ)
「対戦卓が高いのは、対戦でキャストがかかりっきりになるから。カウンターは飲食スペースだからその分安くしてるの。あ、でも卓と違ってドリンク必須だからそこは注意してね」
すると、弘の後ろでドアが開く。
「あ、店長……」
振り返るとそこにいたのは店長ではなく、制服を着た警察官だった。
見た目は30代後半くらいで、タレ目の気のいいおじさんという印象だが、その真剣な顔によって店内に緊張が走る。
「え?警察?うちらなんかした?」
「ああ違う違う」
ネムリが動揺したのを見て、警官の男性が右手を振って否定の意を示す。
「ちょっとパトロールついでに注意喚起をしに来たんだよ。店長はいる?」
「あ、今お昼休憩中です」
「そうか。できれば、店長がいるときに話したかったけど」
「何かあったんですか?」
レジの方からやってきた恵が、警官のそばに歩み寄った。
「実は今、市内の店を回っててね。あー、初めて会うバイトの子もいるし、先に名乗っておいた方がいいか」
すると警官は、ポケットから警察手帳を取り出した。
「巡査部長の
「あ、どうも」
ネムリは軽くお辞儀をし、つられて弘も頭を下げた。
「
「ニュースでたまに名前を見かけますね」
「彼らはこの付近を根城にしている連中でね。最近、新しいシノギを始めたって情報があったからこうして見回りに来てるんだよ」
「コンカフェと半グレに何の関係が?」
「コンカフェというより、この店だから関係する内容かな。結論から言えば、彼らはカードを使った賭博行為、それも一般人に賭博を強要しているそうなんだよ」
「いわゆるアンティルールってやつ?そんなホビーアニメの序盤の悪役みたいな……」
アリスの疑問に、忍田は首を横に振る。
「これが案外馬鹿にできなくてね。君らも知っての通り、トレーディングカードは今や世界中でブームだ。カード一枚に何十万もの値がつくことがある。小銭稼ぎにはうってつけだ」
「けど、わざわざ律儀にカードゲームするんですよね?何の意味が?」
「分かりやすく暴力を振るえば、こちらも強盗として処理できる。しかし、ゲームという形を取れば、単なる遊びだったと主張されることもある。賭博や脅迫の証拠が乏しければ、すぐに立件するのは難しい。加えて検挙できても賭博罪は強盗よりもずっと罪が軽い。彼らにとってはローリスクで稼げるビジネスってことさ」
「なるほど。あ、すみません、僕部外者なのに口を挟んじゃって」
「いやいいよ。常連さんにも注意してもらった方がいいからね」
「話はすべて聞かせてもらった!」
その時、店のドアが開き、色葉が戻ってきた。
「その黒蜥蜴とかいう連中、アタシがデュエルで壊滅さ────」
「駄目だよ」
デッキを掲げる色葉の言葉を忍田が遮った。
「なんでですか!?」
「いいかい?君は店長なんだから、賭博行為に加担したら、開業許可が取り消されるかもしれないよ?」
まだ不満そうな色葉に、忍田はため息を吐いた。
「くれぐれも、カードで勝ったら奪ったカードを返せとかいって勝負を挑んだりしないでね」
(この人、警察からもそういう認識なんだ……)
色葉の狂犬っぷりを再確認し、弘は苦笑いを浮かべた。
「愛坂さん、彼女のこと、しっかり見張っておいてくださいね」
「分かりました」
忍田は恵にそう告げると、踵を返して店を後にした。
「バカ店長。黒蜥蜴に喧嘩売ったりしないでよ」
「買うのは?」
「駄目に決まってんだろ」
「冗談冗談。あ、桜井くん。来てたんだ。バトスピならアタシが相手になるよ」
「あ、お願いします」
◆
数日後、弘は駅前のカードショップを訪れていた。
「えっと、新弾コーナーは……」
ショーケースの端から端まで眺め、目当てのカードを探していると、
「でさー────」
ガラス越しに見覚えのある姿が見えた。
時雨と、隣を歩くのは彼女より少しだけ背の高い男性。
年はそれほど変わらないように見え、灰色のジャケットのファスナーを首まで上げ、黒ぶちのメガネをかけた大人しそうな印象の顔だ。
(あれって、もしかして前に言ってた
ここで気付かれると邪魔になると思い、目当てのカードも見つからなかったので店を去ろうと踵を返した。
「いたっ……」
その拍子に、店に入ってきた数名の男性のグループとぶつかった。
「す、すみません」
見るからに体格のいい、20代前半くらいの男たちだった。
日焼け痕や刺青が目立ち、いかにも柄が悪そうに見える。
その威圧感に、弘は目を伏せて縮こまった。
「チッ、気つけろよ」
幸い彼らは弘を睨み付けると、その後は特に気にすることもなく、大声で騒ぎながら店内に入っていった。
「おっ、ヤベー!見ろよ!」
その男性グループはショーケースに展示された高額カードを指差して笑いだす。
「これ売れそうじゃね?」
「高っww 」
店内での彼らの態度に、弘は少し不快そうに眉をひそめた。
「いやよね。あーいうカードを商材としか見ないやつ」
「ですよね……って」
いつの間にか、時雨とその彼氏は、入り口付近に来ていた。
「ど、どうも」
「時雨、この人は?」
「同じ大学のサク、桜井弘」
なぜか彼氏の方は不安そうに弘を見ている。
「あ、えっと、はじめまして。俺は
「で、私の彼氏」
時雨はそう自慢げに付け加えた。
「よろしくお願いします。天間川さんも大学生ですか?」
「ああ、俺は
「すごい。名門じゃないですか。あ、僕は機械工学科で」
「機械工学科?」
彗は怪訝な顔をした。
「ああごめん。えっと、その、学科どころか学部も違うけど、どういう知り合い?」
「
「そうバイト先の先輩後輩なのよ!」
そこで時雨が慌てて割り込んだ。
「ほ、ほら、前に喫茶店でバイトしてるって言ったでしょ?そこに最近入ってきたのがこいつ」
「あ、そうなんだ」
「ちょっ、
「いい?彗に神河のこと言ったら出禁にするから」
「は、はい……」
物凄い顔で凄まれて、弘は黙り込んだ。
(バイト先のこと隠してるのかな。まあ彼女がコンカフェでバイトしてるって聞いたらあまりいい気はしないと思うけど……)
改めて二人の様子を見る。
(隠し事しなきゃいけないような仲には見えないんだよな)
仲睦まじく話す二人に首を傾げた。
「ぎゃはははっ!」
すると、いつの間にか柄の悪いグループの男たちはデュエルスペースに移動していた。
周囲の冷ややかな視線も意に介さず、卓を囲んで大声で騒いでいる。
「あ、あの~……」
見かねたバイトの店員が連中に声をかけた。
「他のお客様のご迷惑になりますのでお静かに────」
「あぁ?」
店員の言葉を遮り、リーダーと思しき赤髪の男が威嚇する。
「俺ら金払ってここ座っての。文句ある?」
「い、いや、でもですね……」
「それにぃ、他のやつらも「なんとかを召喚!」とか声だしてんだから」
「今のめっちゃ似てるwww 」
悪意のある赤髪の物真似に、取り巻きの男たちは手を叩いて下品に笑い出した。
「っ……」
すると、時雨は男たちに向かって歩き出した。
「お、おい。時雨!」
彗は慌てて止めようとしたが、時雨はその制止を振り切り、男たちが囲む卓をバンッと叩いた。
「あんたら、カードやってくるくせにルールも守れないわけ?」
「は?何お前?」
「時雨、やめろって」
彗が手を掴むが、近くにいた男が彗を突き飛ばした。
「うわっ!」
彗はその場で尻餅をつき、それを見て男たちが笑い出した。
「ダッセーww」
「なぁお前さ、彼氏くんに守ってもらってるからって、調子乗ってると怪我するぞ」
「……わかった」
すると、時雨は赤髪の正面の卓に座った。
「フリーお願い」
「は?」
「何かおかしなこと言った?ここはデュエルスペース。あんたらの雑談スペースじゃないのよ。なら、これをやるのが筋ってもんでしょ?」
時雨は自分のデッキケースを見せた。
「私みたいに可愛い子とタダで遊べるんだから、文句ないでしょ?その代わり、負けたらこの店から出ていって。二度と立ち入らないこと」
時雨のその提案に男たちは笑い出した。
「ぎゃはははっ!」
「デュエルで決めるとかww」
「拗らせすぎてウケるwww」
しかし、時雨はまるで意に介さず、スマホを取り出して「遊戯王ニューロン」のアプリを立ち上げた。
「何怖いの?本来ならあんたら営業妨害で通報されてもおかしくないのに譲歩してやってんのよ?」
「は?そんなわけ」
「あっ、ごめーん。低学歴には法律の話とかわかんないよねー」
それを聞いて赤髪は黙ってデッキを取り出した。
「……じゃあ俺が勝ったら、お前のことも好きにさせろ」
「いいわよ」
「だ、駄目だ時雨!だったら俺が相手する!」
「あ、彗は審判お願い」
時雨は止めようとする彗にスマホを投げ渡す。
「っ……わ、わかった」
スマホの画面を見て、なぜか彗は納得してスマホを構えた。
「マッチ戦。始めるわよ」
「へっ、それじゃあ」
赤髪は取り出したダイスを振り、サッと手で隠した。
「奇数か偶数か。当ててみな」
「奇数で」
赤髪が手をどけると、サイコロの目は4、偶数だったのでマッチ戦一本目は赤髪の先攻に決まった。
「兎川さんのこと、止めなくていいんですか?」
「大丈夫だ……多分」
(でも兎川さんって確か、彼氏さんに付き合ってやってるだけなんじゃ……)
ターン1 先攻 赤髪
「俺は手札から《天使の施し》を発動!」
「なっ!!」
弘は男の初手に絶句した。
「お、おい。ふざけんな!禁止カードだろ!」
当然審判の彗も声を上げる。
「は?別にこれ大会じゃないし。禁止カード使っちゃいけないなんて一言も言ってないけど?」
「くっ……」
「俺は3枚ドローして、2枚を捨てる」
男は潤沢な手札をじっくり吟味してから、2枚のカードを墓地へ置いた。
(あのカードって……)
遊戯王に明るくない弘ですらよく知っている。
男が捨てたカードのうち一枚は《封印されし者の左腕》。
5枚揃えることで特殊勝利するカード、《封印されしエクゾディア》のパーツカードだ。
禁止カードを平気で使う連中なら、おそらく制限カードである各種パーツカードも3枚ずつ入れているのだろう。
「さらに《成金ゴブリン》を発動。1枚ドローするかわりに相手のライフを1000回復する」
「……」
時雨は黙って敵の動きを見据える。
「泣いて謝っても許してやらねぇからな!《強欲な壺》!」
「そこ!」
時雨は手札から1枚のカードを叩きつけた。
「《灰流うらら》を捨てて効果発動!デッキからカードを手札に加える効果を無効にする!」
「くっ」
無条件で手札を増やす最強のドローソース、《強欲な壺》は砕かれ、何も生み出せぬまま墓地へ沈む。
「だがまだ終わってねぇ。手札はたんまりあるからな。俺はフィールド魔法、《チキンレース》を発動」
再びドロー効果を持つカードを使い、デッキを掘り進める。
だが、
「《強欲な壺》!」
「手札から《
2枚目の《強欲な壺》も時雨の手札誘発によって阻まれた。
「チッ……」
「あんたもう詰んでるわよ?」
「はぁ?」
「《封印されしエクゾディア》は、5枚のカードを手札に集めることで勝利するカード。それは逆に手札を必ず5枚以上にキープしなければならない。今あんたの手札は3枚、そして手札を増やせる《壺》は2枚無効にした。分かる?」
「知るか!」
赤髪は吠えて、ターンを続ける。
「彗さん。詰んでるってどういうことですか?」
「遊戯王で、手札の"枚数"を増やせるカードは実はかなり少ない。その中でも、【エクゾディア】に噛み合うカードは禁止カードまで含めてもほんの一握り。多分あいつのデッキに手札を増やせるカードは《強欲な壺》しかない」
「そうか。遊戯王は同じカードは3枚までだから」
必死にドローを続けたが、赤髪は3枚の手札を抱えたまま固まる。
「次のターン覚えてろよ」
「次?」
時雨は小馬鹿にしたように笑う。
「あんたって本当に、
「あぁ?」
「丸腰でターン渡して返ってくるわけないでしょ?」
遊戯王はモンスターによって8000のライフポイントを削り合い、勝利を目指すゲーム。
「自分フィールドにモンスターが存在しない場合、手札から《SRベイゴマックス》を特殊召喚!」
マナコストの概念は存在せず、理論上1ターン目からすべてのカードを使うことができる。
「その効果でデッキから《SRタケトンボーグ》を手札に加える。風属性モンスターが存在するので、《タケトンボーグ》を特殊召喚!」
ゆえにプレイヤーに求められる技能は長期的なゲームの組み立てではない。
与えられた5枚の
そのゲーム性とはすなわち、思考の探求である。
「私はレベル3の《ベイゴマックス》と《タケトンボーグ》でエクシーズ召喚!」
2枚のカードを重ねて、山札の横、エクストラデッキから1枚の黒いカードを重ねた。
「《
《ガボンガ》の下に重ねたカードを抜き取り、墓地へ置き、手札から《ダグ》を隣に呼び出した。
「《ダグ》の効果でデッキから《
時雨は《
「私はレベル3モンスター2体でエクシーズ召喚!管魔人メロメロメロディ!」
今度はホルンの上にまたがる小さな緑髪の可愛らしい悪魔が重ねられた。
「私はメロメロメロディを素材にリンク召喚!」
メロメロメロディを墓地へ置き、盤面の斜め右上、エクストラモンスターゾーンへ青枠のカードを置いた。
「
呼び出した二体の「デモンスミス」モンスターを墓地へ送り、今度はエクストラモンスターゾーンに、二つのマーカーを持つカードを置いた。
「
次にエクストラデッキから紫枠のカードを出した。
「《
「なんなんだよあいつ」
「さっきから手札減ってねぇぞ!」
「なのになんで……」
時雨が使った手札は1枚だけ。
そのたった1枚から既にモンスターは4体に増えている。
最初の《ベイゴマックス》から連なり、盤面という名の宇宙を生み出したのだ。
「さて、打点はもう揃ったわね。これでバトルフェイズ、《
赤髪:LP8000→5600
「《セクエンティア》でアタック」
赤髪:LP5600→4400
「《魔を刻むデモンスミス》でアタック」
赤髪:LP4400→2600
「《ガボンガ》でアタック」
赤髪:LP2600→500
「くくっ、アハハハッ!大口叩いといて計算間違えてるじゃねぇか!これでお前の体は────」
「何勘違いしてんの?間違えるわけないでしょ」
「あ?」
「メインフェイズ2、私はモンスター3体でリンク召喚。光なき影ア=バオ・ア・クゥー」
呼び出したモンスターは黒いドレスを着た白髪ツインテールの少女。
攻撃力は2800だが、バトルフェイズは過ぎている。
「素材となって墓地へ送られた《
「なっ!」
赤髪:LP500→0
「はい私の勝ち。マッチ二戦目は負けたあんたから先攻か後攻選んでいいわよ」
「舐めやがって……さっきのはまぐれだ!」
しかし、
「《ドロール&ロックバード》の効果発動。あんたはこれ以上、デッキからカードを手札に加えられないわ」
「くそっ!」
サイドデッキからより効果的な手札誘発を選出されたことで、一戦目以上に何もできずに赤髪は敗北した。
「くそっ!」
赤髪はイラついて、卓に置かれた自分のデッキをひっくり返す。
「こんなもん無効試合だ!だいたいなんで負けたくらいで出禁にならなきゃならねぇんだ!」
「うわダッサ。ホビーアニメの小悪党の方がまだいさぎいいわよ」
「うるせぇっ!舐めやがって」
「言っとくけどここで暴れない方がいいわよ?」
すると、時雨は彗に渡した自分のスマホを指差した。
「それ、全部撮られてるから」
「なっ!?」
彗に渡したスマホは、「ニューロン」を開いていたが、同時にカメラを起動して動画も撮っていた。
「えーっと、恐喝とか強要罪の証拠がばっちり残ってるけど、どうする?」
「っ!」
それを聞いて、男達は大慌てで店を出ていった。
「二度と来んなよ!」
男達の姿が見えなくなると、周りから大歓声が上がった。
「どう?勝ったよ?」
時雨は自慢気に微笑む。
「し、時雨。その、すごかったけど、無茶はもうしないでくれ」
「でも信じて動画撮ってくれてたでしょ?」
「そりゃ、これないと時雨が危ないし……と、とにかく、今日から家まで毎日送っていくから」
「それは普通にそうして欲しい」
「なんなら、学校行くときも」
「それやったらあんたが遅刻するでしょ」
そんな二人のやり取りを見て、弘も思わず頬が緩んだ。
(というか。あれのどこが彼氏さんに付き合ってやらされてるだよ)
素人の弘にすら分かる。
兎川時雨は間違いなく真のデュエリストだった。
「き、君。助かったよ。本当にありがとう」
すると、先程のアルバイト店員が時雨に頭を下げた。
「別にいいですよ。私もムカついたんで」
「いやほんと、なんとお礼を言っていいか。実はあいつら、ここ最近来るようになって。しかも客を賭博に誘ったりして本当に迷惑してたんだ」
「賭博……」
────彼らはカードを使った賭博行為、それも一般人に賭博を強要しているそうなんだよ
以前、
「しかも、なんか
「そこまで見ててなんで通報しなかったのよ」
「いやだって、あいつらヤクザがバックにいるとか言ってて怖くて……」
「ま、バイトで命賭けたりしないわよね。普通」
時雨は肩を落とした。
「よし。じゃあ彗、今日は帰ろ。うちまでエスコートしてくれるんでしょ?」
そう言って、時雨は彗の手に指をしっかり絡めた。
「っ……あ。ああ」
「ふふっ、じゃあサク、うちら帰るから、またね」
「あ、はい。お疲れ様でした」
二人を見送った後、しばらくして弘も店を出た。
感想など頂けますと幸いです