ルナとのバトルを終えた弘は、一息つくためにカウンター席へ移動し、コーヒーを注文した。
「そういえば、アリスさんは大丈夫でしたか?」
「アリスちゃん?」
ルナは別の卓で、二人組の学生と雑談しながら対戦しているアリスを見る。
「実は……」
弘は周囲の様子を確認してから小声で、先日のカードショップでの出来事について話した。
「その話は開店前に本人から聞いたわ。今は大丈夫みたいだけど……」
「僕も何もないならいいんですけど。ほら、前も店に刺青の人来ましたよね?」
「東島さんね。いつも一番安いコーヒーとカウンター席のチャージだけ払ってカードやらないから、アリスちゃんと恵さんも怪しいって思ってたのよ。まさか、店長が……」
ルナは店内での店長の暴挙を後で聞かされたらしく、想像して顔を青くしている。
「ルナさん!ヴァンガの対戦お願いします!」
「はーい。ユリカちゃん、コーヒーお願い」
「ん」
ルナは対戦卓の方へ向かい、代わりにユリカがカウンター奥へ向かう。
「ん?」
ユリカは何度か首を傾げながらコーヒーメーカーを操作し、どうにかコーヒーを淹れて持ってきた。
「お待たせしました。ブレンドコーヒーです」
「ありがとうございます」
「では、美味しくなるおまじないをかけます」
「あ、そういうサービスあったんだ……」
ユリカはカウンターに置かれた瓶から白い粉をスプーン一杯分すくう。
「美味しくなーれ」
(棒読み……)
無表情のままだが、一つ一つの仕草から懸命さが伝わってきて、とても可愛らしく見えた。
「モエモエズキューン」
最後にユリカは、手でハートを作り、抑揚のない声でビームを送った。
「あ、ありがとうございます」
気恥ずかしさをごまかすように、弘はコーヒーを勢いよく口に含んだ。その瞬間、
「うっ!」
コーヒーの苦味と香りの中に異質な味を感じて、弘は思わず吐き出してしまった。
「ん?熱かった?」
ユリカは首を傾げる。
「ちょっ、桜井くん、大丈夫!?」
そこで店長の色葉が駆けつけた。
「い、いや、なんか、しょっぱくて……」
「しょっぱい?」
色葉はユリカが使用した砂糖瓶のスプーンを取り、少量の粉を手の上に取って舐めた。
「ユリカ、これ砂糖じゃなくてお塩だよ」
「お塩?」
「今日カウンターの手入れしたのユリカだよね?」
「ん。瓶が空だったから御厨さんにお砂糖の場所聞いて補充した」
「自分で気付いて補充してくれたの!?」
するとなぜか驚いた色葉が、ちょっと背伸びをしてユリカの頭に手を伸ばした。
「よしよし。でも次はお砂糖とお塩間違えちゃだめだよ~」
「ん。褒められた」
頭を撫でられて、ユリカはわずかに口元を緩めて嬉しそうにする。
その様子はさながらお手伝いをして褒められ、喜ぶ子供のようだった。
「桜井くんごめんね。コーヒーはすぐ淹れなおすから。ユリカ、もっかいお願い。お砂糖はこっちで入れ換えておくから」
「ん」
二人はそれぞれ裏に回った。
「ユリカさんって、あれでちゃんと仕事できてるのかな……」
弘はそう呟き、今も危なっかしい手付きでコーヒーメーカーのボタンをポチポチと押しているユリカを見つめた。
◆
再びコーヒーを出してもらい、今度は砂糖でおまじないをしてもらうと、ちょうど一人の学生が来店した。
「あ、冬島くんだ」
ユリカが反応した。
おそらく常連か、あるいは同じ学科の学生だろうと弘は推測した。
「どうも。ユリカさん、早速対戦お願いします」
「ん」
ユリカは短く頷くと、卓に移動する。
卓に座ると、目にも留まらぬ速さでデッキを置き、卓上に裏向きでカードを5枚、等間隔で置く。
「……」
さらに山札から5枚引いて、見ないように置いたところで、ユリカは向かいの席に座った冬島をじっと見つめる。
「わ、分かってるから」
冬島は鞄を置いて急いでデッキケースを取り出す。
その様子を、ユリカは無表情で、しかしそわそわした様子で見つめている。
「よし、お待たせ」
(なんか、本当に友達と遊んでるみたいな感じだな)
ユリカの様子を眺めながら、弘はそんな感想を抱いた。
「ん。じゃあ」
「「デュエマ、スタート」」
ターン4 後攻 冬島
「マナをチャージ」
冬島は手札から1枚を自分の手元、マナゾーンに逆さまに置いた。
MTGから派生したデュエルマスターズは、そちらと同じくマナ制のTCG。
土地のような専用カードはなく、どのカードでもマナゾーンに置けばマナを生み出せる。
「タップして2マナ、呪文、《ジャンボ・ラパダイス》」
ジャンボ・ラパダイス 自然文明 (2)
呪文
S・トリガー(このカードをシールドゾーンから手札に加える時、コストを支払わずにすぐ実行してもよい)
自分の山札の上から4枚を表向きにする。その中からパワー12000以上のクリーチャーをすべて、手札に加える。残りを好きな順序で山札の下に置く。
「山札から《キャベッジ・セッションズ/ソイルピンプ・キャベッジ》、《コレンココタンク/プラントボ》を手札に加える」
ターン5 先攻 ユリカ
「私のターン。ドロー、マナチャージ。《ボン・キゴマイム》を召喚。《
既に場に出してあった《AQvibrato》をタップして攻撃宣言。
「革命チェンジ」
それを手札のカードと入れ替えた。
「《
芸魔隠狐 カラクリバーシ 水/火文明 (5)
クリーチャー:マジック・モンスター/ゲーム・コマンド 4000
G・ストライク
革命チェンジ:マジック(自分のマジックが攻撃する時、そのクリーチャーと手札にあるこのクリーチャーを入れ替えてもよい)
スピードアタッカー
このクリーチャーが出た時、カードを1枚引き、その後、コスト3以下の呪文を1枚、自分の手札からコストを支払わずに唱えてもよい。
「出た時の能力で、手札から呪文、《
「シールドチェック」
冬島はシールドゾーンに伏せられたカード1枚を手札に加える。
「トリガーはなし」
「じゃあターンエンド」
このように、お互いにクリーチャーでシールドをすべて
ブレイクされたシールドは手札に加わり、逆転の鍵となる点もこのゲームの魅力の一つだ。
ターン6
「俺のターン、呪文、《プラントボ》を唱える。自分の山札の上から1枚をマナゾーンへ」
マナゾーンに置かれたのは《地封龍ギャイア》。
「パワー12000以上のカードがマナに置かれたので、さらにもう1枚マナに置く。ターンエンド」
ターン7
「私のターン、ドロー。マナチャージ。《
攻撃した《カラクリバーシ》がユリカの手の中で切り札と入れ替わる
新たに卓上に現れたのは、矢倉より伸びる赤と青の双頭の竜のカード。
「《芸魔王将カクメイジン》」
芸魔王将 カクメイジン 水/火文明 (7)
クリーチャー:マジック・ドラゴン/ゲーム・コマンド 10000
革命チェンジ:コスト5以上のマジック
W・ブレイカー
自分のマジックすべてに「スピードアタッカー」を与える。
このクリーチャーの各ブレイクの前に、自分のマナゾーンにあるカードの枚数以下のコストを持つ呪文を1枚、コストを支払わずに自分の手札または墓地から唱えてもよい。それを唱えた後、墓地のかわりに山札の下に置く。
「これでシールドブレイク。ブレイク前に手札から呪文を唱える。ダブルブレイクなので2枚、1枚目は《♪立たち上がる 悪魔に天使 堕ちるかな》」
♪立ち上がる 悪魔に天使 堕ちるかな 水文明 (4)
呪文:マジック・ソング
S・トリガー
カードを1枚引き、その後、数字を1つ選ぶ。次の自分のターンのはじめまで、その数字と同じコストの相手のエレメントの能力を無視し、相手はその数字と同じコストの呪文を唱えられない。
「でコスト5を宣言。これで次の私のターンまで、そのコストの呪文は唱えられず、既に場にあるエレメント(クリーチャーなどの場にあるカードの総称)の効果を無視する。2枚目、《
呪文
次の中から2回選ぶ。(同じものを選んでもよい)
►コスト3以下のクリーチャーを1体、自分の手札から出す。
►このターン、自分のクリーチャー1体に「スピードアタッカー」を与える。
►自分のクリーチャーを1体選ぶ。このターン、そのクリーチャーの最初の攻撃の終わりに、そのクリーチャーをアンタップする。
「1つ目と3つ目のモードを選択。手札から《AQvibrato》をバトルゾーンへ」
潤沢な手札から追撃用のクリーチャーを出す。
「そして《カクメイジン》はこの攻撃の終わりにアンタップする。ダブルブレイク」
《カクメイジン》によってシールドがさらに2枚ブレイクされ、冬島の残りのシールドは2枚となった。
◆
「ユリカさん、強いですね」
「そうでしょう?」
手が空いていたのか、色葉は弘の隣のカウンターにもたれ掛かった。
「桜井くんはデュエマはやったことある?」
「あ、えっと、小学校の頃に少し。ただ今のカードは全然知らないので」
「じゃあアタシがここまでの流れを解説しましょう」
色葉は嬉しそうに胸を張り、スマホで《カクメイジン》のカード画像を表示した。
「ユリカのデッキは【赤青マジック】。マジックって種族カテゴリで固めたビートダウンデッキね。特徴はなんといってもキルターンの速さとリソース獲得能力の両立。最速3ターンキルを狙えるうえ、手札が増えるからある程度のロングゲームでも対応できる」
「確かに今の試合も、ユリカさんは攻め続けてるのに、ドローを繰り返してるから手札があまり減ってませんね」
「対して、冬島くんが使ってるのは、【緑単キャベッジ】って呼ばれるデッキね」
色葉がスマホに移した画像を切り替えた。
キャベッジ・セッションズ 自然文明 (9)
NEOクリーチャー:グランセクト 12000
NEO進化:自然のクリーチャー1体の上に置いてもよい。
T・ブレイカー
自分のクリーチャーが出た時、自然の、パワーが12000以上で、そのクリーチャーよりコストが1小さいクリーチャーを1体、自分のマナゾーンから出してもよい。
ソイルピンプ・キャベッジ 自然文明 (5)
呪文
このターン、次に召喚する自分の、自然のパワー12000以上のクリーチャーのコストを8少なくする。ただし、コストは0以下にはならない。
「ツインパクトカードは分かる?」
「いえ、その辺は全然」
「クリーチャーとしても呪文としても使えるカードのことよ。バトスピで言うなら、《蛍石の姫妖精フローラ》とか、《彩騎士皇帝ドラゴニック・アーサー》とかね」
「ああ、なるほど」
自分がプレイしているタイトルに置き換えて考えると、スッと頭に入ってきた。
「この《キャベッジ・セッションズ》は、自分や味方が場に出た時、マナからクリーチャーを踏み倒せるの。これを呪文面の《ソイルピンプ・キャベッジ》でコストを軽減して出して、クリーチャーを次々に連鎖させて召喚する豪快なデッキよ」
「へぇ。あれ?でも確か……」
ユリカが直前に使ったカードを思い出す。
「えぇ、ユリカが《カクメイジン》の効果で唱えた《堕ちるかな》は、指定したコストの呪文の詠唱を封じる。コスト5を指定したから、このターン、冬島くんは《ソイルピンプ・キャベッジ》を使えないわ」
「ユリカさんはそこまで読んで……」
先程までのポンコツぶりが嘘のような精確なプレイングに弘は感嘆した。
「ユリカは普段はボーッとしてるけど、デュエマになるとスイッチ入るから」
色葉の言う通り、ユリカは目の前のデュエル以外、視界に入っていないかのようだった。
「ま、普段の目がとろんとしてる時も可愛いんだけど」
色葉は自慢の可愛い妹と言わんばかりに誇らしげに胸を張った。
◆
「シールドチェック」
手札に加えたカードを、冬島は緊張した面持ちで1枚ずつ確認する。
「……よし!シールドトリガー!呪文、《「この子はさわらせないわ」》!まずは自分の山札をシャッフルする!」
山札を切り、ユリカに手渡す。
「ん」
ユリカはそれをサッと二つに分け、上下を入れ替えてから冬島に返した。
「そして1枚表向きにして、それがパワー12000以上のクリーチャーならバトルゾーンへ!来い!」
山札の上を勢いよくめくり、卓へと叩きつけた。
「来たぜ。《キャベッジ・セッションズ》!」
出てきたカードは冬島のデッキの切り札だった。
「効果でマナゾーンからコスト8の《龍装者ジスタジオ》をバトルゾーンへ!」
続けて冬島はマナからドラゴンのカードを場へ。それに反応して《キャベッジ》の効果が誘発する。
「マナゾーンからコスト7、《超時
連鎖的に効果が誘発し、何もなかった盤面に一気に3体のクリーチャーが並んだ。
「そして《「この子はさわらせないわ」》で場に出た《キャベッジ》はタップ状態となり、このターン、攻撃するならこいつを攻撃しなければならない」
「……《カクメイジン》を《
《AQvibrato》と交代で出てきたパワー6000の《アオフェシー》が、パワー12000の《キャベッジ・セッションズ》に突っ込み、爆散した。
「《アオフェシー》は革命チェンジによって場に出た時、2枚ドローできる。続けて、《テスタ・ロッサ》で攻撃。革命チェンジ、《カラクリバーシ》」
再び攻撃したクリーチャーを革命チェンジさせるが、パワーは4000。《キャベッジ》には届かない。
「《カラクリバーシ》の効果。1枚ドローして、手札から呪文、《竜の闘技場 マグマンシャック》。《カクメイジン》のパワー+3000して強制バトル」
《カクメイジン》はパワー13000となり、《キャベッジ》を撃破、攻撃を強制する相手のクリーチャーがいなくなった。
「《カクメイジン》でダブルブレイク。ブレイク前、手札から《
2枚のシールドが割られ、ついに冬島のシールドが0枚となる。
「シールドトリガー!《ナチュラル・トラップ》!《ボン・キゴマイム》をマナゾーンへ」
「ん。ターンエンド」
最後のアタッカーを除去され、惜しくもこのターンで勝利とはならなかった。
ターン8
「まだ諦めてない?」
「当然。勝負は最後まで分からないだろ」
「ん。その方が楽しい」
ユリカの頷きに、冬島もほほ笑む。
「俺のターン。《デンジャデオン》の効果で、俺は1ターンに1度、マナからクリーチャーを召喚できる。俺は場の2体のクリーチャーをタップしてハイパーエナジー!異なるコストのクリーチャーをタップし、その数だけコストを軽減する!コスト4軽減して、《哀しみの夜 シンベロム・カタルシス》を召喚!これでターンエンド!」
「へぇ。面白いカード仕込んでるのね」
色葉はそれを見て、感心したように呟く。
「けど、これ冬島さんの負けなんじゃ……」
冬島はシールド0枚で、ユリカの場にはクリーチャー2体。
このままアタックすれば勝てるように見えたが、色葉は首を振る。
「冬島くんが最後に召喚した《哀しみの夜 シンベロム・カタルシス》は攻撃誘導能力があるの」
哀しみの夜 シンベロム・カタルシス 自然文明 (11)
クリーチャー:デーモン・コマンド 17000
ハイパーエナジー
ガードマン
T・ブレイカー
相手のクリーチャーが攻撃する時、可能ならクリーチャーを攻撃する。
このクリーチャーが離れる時、かわりに自分のマナゾーンにあるカードを3枚、好きな順序で山札の下に置いてもよい。
自分の他のクリーチャーが相手プレイヤーを攻撃する時、このターン、そのクリーチャーのパワーを+6000し、「パワード・ブレイカー」を与える。
「デュエマはタップ状態のクリーチャーを攻撃できるルールだから、パワー12000の《デンジャデオン》とパワー15000の《ジスタジオ》を突破しないといけないってことですか?」
「いいえ。《シンベロム》は「ガードマン」って言うクリーチャーへの攻撃限定のブロッカーみたいな能力を持つわ」
「えっとつまり、《シンベロム》のパワー17000を超える必要が……でもそれなら除去とか」
「それも難しいわね。《ジスタジオ》がいるから、冬島くんのパワー12000以上のクリーチャーはバトル以外では場を離れない。さらに《シンベロム》自身にもマナゾーンのカードを戻すことで場に残る耐性がある。一応、《堕ちるかな》があれば、それで《シンベロム》の効果を無視できるけど、ユリカはすでに2枚使ってる。そして」
「突破できなければ……」
前のターンまで追い詰めていたはずのユリカに、次のターンには既に手札に引き込んでいるであろう《キャベッジ・セッションズ》による怒涛のクリーチャー大量展開が待っている。
見ているだけの弘にも緊張が走った。
◆
ターン9
「私のターン……《
《堕ちるかな》は手札になかったのか、普通にクリーチャーを展開する。
「そして、墓地のクリーチャー6体以上、
「なっ!?」
ユリカの手札から引き抜かれたカードに、冬島は絶句した。
「
百万超邪 クロスファイア 火文明 (7)
クリーチャー:アウトレイジ 7000+
G・ゼロ:自分の墓地にクリーチャーが6体以上あり、自分の《百万超邪 クロスファイア》がバトルゾーンになければ、このクリーチャーをコストを支払わずに召喚してもよい。
スピードアタッカー
パワーアタッカー+1000000
W・ブレイカー
「いや何でそんなカード入ってんだよ」
冬島のツッコミに、ユリカは可愛らしく首を傾げた。
「ん~……かっこよくて、強いから」
「ははは……」
「じゃあまずは《テスタ》で攻撃。革命チェンジ、《カラクリバーシ》。効果で手札から呪文、《♪音速で 本番中に チューニング》を唱える。そして《ジスタジオ》に攻撃」
《カラクリバーシ》は自爆特攻によって撃沈するも、既に役目は果たしている。
「《クロスファイア》で、《ジスタジオ》に攻撃。その瞬間、クロスファイアはパワー+100万」
文字通り桁が違う。
圧倒的な数字の暴力によって《ジスタジオ》を蹴散らす。
「《♪音速で 本番中に チューニング》の効果で、クロスファイアは最初の攻撃の終わりにアンタップする。再攻撃。次は《デンジャデオン》」
再び100万のパワーで冬島のクリーチャーを撃破。
これで冬島を守るタップ状態のクリーチャーはいなくなった。
「《カクメイジン》でダイレクトアタック」
◆
冬島はユリカに敗れた後、ぐったりした様子でカウンター席に突っ伏した。
「お疲れ様」
「大丈夫ですか?」
店長と弘が声をかけると、彼は無言でプルプルする腕を持ち上げてグッドサインだけを返した。
「惜しかったわよ。あそこ1ターン耐えてたら」
「いや、あんだけ運良くトリガーで捲ったのに負けたら世話ねぇよ」
「あそこは強引に解決札探しに行ったユリカのプレイングが見事だったわ」
色葉は言いながらうんうんと頷く。
当のユリカは、そんな賞賛など意に介さず、スイッチが切れたようにいつものボーッとした表情に戻っていた。
「喉乾いた」
そして不意に立ち上がり、バックヤードへ向かった。
「自由ですね」
「そこがユリカのいいところだからね」
お気軽に感想などいただけますと幸いです