お手柔らかにお願いします。
昔、一人の男がいた。
彼はうちはの中でも落ちこぼれだった。
忍術や体術も満足に使えず、幻術しか使えなかったからだ。
鍛えても体が細いため重みが乗らず、チャクラも少ないため忍術もうまく使用できない。
さらに言えば、男には幻術以外の才能がほとんどなかったのだ。
また、男は昔万華鏡写輪眼も開眼していたが、能力は精神干渉ができる月読と、対になる***のみだった。
直接的に戦いに使えるものは何一つなく、うちはの血筋でありながらエリートからは外されていた。
何せ満足に火遁・豪火球すら使えなかったためだ。
男には嫁がいた。
幼馴染で、自分の昔からの許嫁だった。
うち派の血筋でありながら忍としての才能は一切なく、それでも作る料理は男にとって絶品だった。
待望の第一子を授かったばかりで、いつ生まれるかを楽しみにしていた。
しかし、そのころに受けた任務で男は致命傷を負ってしまった。
共に任務を受けた仲間に、何とか家族へ何かを残したいと思ったが、手元にあるもの以外、何も思い浮かばなかった。
結局彼が、家族に残せたのは自分の万華鏡写輪眼だけだった。
昔、一人の女がいた。
女はうちはの中でも下流の出で、満足に忍術を扱うことすらできなかった。
女には旦那がいた。
うちはの中でも落ちこぼれに値して、エリートではなかった。
それでもいつも朗らかに笑っており、彼女にとっては太陽のような人だった。
女は待望の第一子を宿しており、生まれてくる時を楽しみにしていた。
そのころ旦那が任務に出掛けたが帰ってきたのは旦那の万華鏡写輪眼のみだった。
女はそのまま泣いた。
怒り、憎しみ、悲しみ。
あまりにも多い感情が体を駆け巡った。
その感情は閾値を超え、対に万華鏡写輪眼へと至ったが、女にとっては些事だった。
あまりの悲しみがあったが、女には子供がお腹の中にいた。
ついに出産の日に至ったが、中々子供は出てこなかった。
時間をかけてようやく産まれたが、驚いたことに生まれた子供には目が無かった。
うちはなのに目の無い子供。
女は泣いた。
だがしかし、女にはもう時間が残されていなかった。
だから女は産婆に頼みごとをした。
「お願いします。私と旦那の眼を、娘にあげてください」
そして女は力尽きた。
あるところに産婆がいた。
彼女は里の中でも医療忍術も収めた優秀な産婆であった。
往年は各地を飛び回り、数多の医療技術を学んで、晩年には木の葉の里でひっそりと暮らしていた。
彼女は一つだけ仕事をしていた。
それが里の中に対する、産婆だった。
もう年でこれが最後の仕事として、うちはのある女の出産を手伝った。
たいそう時間がかかり、女は力尽きかけていたが、取り上げた赤子を見て仰天した。
なんと赤子には眼が無かったのだ。
写輪眼を伝承するうちはにおいて、目が無い。
それはあまりにもむごい話だ。
だが、女はもう幾許もなく、力尽きるであろう。
これが最後として、産婆は告げた。
「この娘には目が無い。うちはで目が無いとすると先は大変だろうよ。
おぬしはどうする。」
「お願いします。私と旦那の眼を、娘にあげてください」
また、女は言った。
「生まれてきてくれてありがとう、私の娘。あなたの名前はアゲハよ」
そこで女は事切れた。
困ったのは産婆である。
枕元にあった1対の万華鏡写輪眼、また、今しがた亡くなった女の万華鏡写輪眼。
確かに材料はある。
産婆には技術もある。
だがしかし、人生の最後にこのような頼みごとをされるとは。
だが、目の無いうちはなど、どうなるかは火を見るよりわかりきっている。
産婆は経過観察の名目でしばらく赤子を引き取り、両目の眼孔に女の万華鏡写輪眼を、うなじに男の右目を、胸元に男の左目をひっそりと移植することにした。
その後しばらくすると万華鏡写輪眼の文様はなぜか消えたが、産婆は気にすることはなかった。
そして経過が問題ないことを確認できた段階で赤子をうちはへと返し、産婆は仕事を切り上げた。
その後、産婆はひっそりと没し、赤子の秘密を知るものは誰もいなくなった。