「団欒にて」
僕は今、危機的状況にある。
今日の朝、いきなり嫁がとんでもないことを言い出した。
「思いついたわ!新作料理を作ってあげる。」
嫁はその、なんというか感性が独特な人である。
ついこの間はカニ風料理と言いつつ、まるで暗い中でいきなり人の顔面に飛びついてきて卵を産みそうな見た目の甲殻類料理を出してきた。
味は海鮮風でとてもおいしかったが。
また別の日には、チャーハン!と言いつつ、緑色のマリモみたいな塊を出してきた。
こちらも、山の幸を凝縮した出汁を使ったみたいで、絶品だった。
あの緑色はどこから出てきたのやら。
頼むからいつも通りのボタン鍋を作ってくれと思いつつもあきらめる。
嫁の料理は絶品なのは確かだし、こんな自信満々なところもかわいいからだ。
ただ、一つだけ言いたいことがある。
「料理の火加減の見極めに、写輪眼を使うのはどうなんだ?」
嫁は笑って答える。
「いいじゃない。こんな便利なもの使わないだけ損よ。むしろ主婦なんだからどんどん生活に使っていくべきよ。」
僕はちょっと困った顔で頬を掻く。
というのも、少し前にうちはの書庫で気になる資料を見かけたからだ。
「僕は万華鏡写輪眼を持っているからわかるんだけど、万華鏡写輪眼はいつ開眼するか分からないんだ。それに開眼自体の負担も大きいし。
僕の見かけた資料だと、お腹の中に子供がいる状態で開眼すると、子供の目が溶ける可能性があるって書いてあったよ。」
嫁は自信満々に言う。
「忍びにすらなれなかった私がよりにもよって万華鏡写輪眼なんて高尚なもの、開眼するわけないじゃない。心配しすぎよ。それよりも生活を便利にする方が優先だわ。」
また、嫁は重ねて言う。
「もしそんなことになったら、私の目でもなんでも子供にあげるわよ。わかったらおとなしく座ってなさい。」
僕は苦笑して言う。
「こういうものに絶対なんてないんだから、気にしてほしいんだけどな。」
そういいつつ食卓で待って出てきたのは、紫の塊にたこ足が何本も生えたものだった。
味は大きめのたこ焼きといった感じで絶品だったが、この感性はどうにかしてほしかった。
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「食卓にて」
私は今、危機的状況にある。
近所に引っ越してきたアゲハの料理の腕を知りたかったから、まずは一品作ってみてほしいとお願いした。
お願いした、はいいんだけど。
なんか、紫の塊にたこ足が何本も生えたものが出てきた。
え、私今からこれ食べるの?
目の前ではアゲハがニコニコと笑っている。
私は見つめ返す。
目の前でアゲハがキラキラと笑っている。
「えーい。しゃーんなろー!!」
女は度胸よ、どんなものでも食べて見せるわ。
と、一口食べてみる。
外側はカリッとして、内側はふわふわ、時々混ざっているたこ足がいい感じにアクセントになっている。
また、大量に使われた紫キャベツと、それを元にした生地がいい具合にトッピングされていて、食感を飽きさせない。
絶品だった。
私は激怒した。
「なんでこんな形にしたのよ!もっとこう、何かあるでしょ!味はいいのに見た目だけで台無しじゃない!」
アゲハは涙目で答えた。
「だって、なんかいいと思ったから…鍋だとレシピ通りにしか作れないんだから、面白くない!」
「レシピ通りにしなさいよ、レシピ通りに。逆になんで鍋なら普通に作れるのよ。」
たんこぶ付きの頭でアゲハは首を傾げつつ言った。
「なんか、昔里を警備していた忍びは、たまに里に入ってくる野生動物を狩ってお土産にしていたみたいだよ。特に猪がおいしかったんだって。」
突然の情報に目を白黒させる。
「それ、どこ情報よ。私全然知らないんだけど。」
「内緒!」
ふと、アゲハは聞いてきた。
「ねえ、サスケは好き?」
突然すぎて私は何も答えられなかった。
「鍋のこと、覚えておいてね。」
「ちょっと、どういうことよ。」
アゲハは子供みたいに笑って言った。
「内緒―!」
…どうやら、この友人は癖が強いようだ。