アゲハの蝶道   作:すれいめあ

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小話:襤褸小屋にて/屋敷にて

「襤褸小屋にて」

 

ワシは昔、里の医療忍者の一人じゃった。

 

事切れた母親から赤子を取り上げて思う。

もう一刻の時間もない。

 

「母親との胎内同調、チャクラの逆流、胎内開眼による眼球の胎内欠損。よく生きておったもんじゃ。」

ワシは本当にそう思う。

 

そして問題はこれだけではない。

「消失した眼球跡から、チャクラが漏れ出ておる。今すぐ塞がねば命に関わるぞ。」

 

医療忍者としては是非もない。

今すぐ母親からの眼球移植をするべきだと判断し、母親から取り出す。

 

そのまま、眼孔に母親の目を埋め込んだが、それでもまだ安定しない。

理由はわかっている、赤子の能力のせいだ。

どんな万華鏡写輪眼が開眼したかは分からぬが、普通の開眼の仕方とは全く異なる以上はどんな能力が開眼していてもおかしくはない。

 

最も、産婆には経験則で大方予想がついていた。

胎内で母親が強い感情に襲われた際に、自分の身を守る力でも開眼しているのだろう、と。

 

ひとまず、安定のために追加で父親の万華鏡写輪眼を移植することにする。

眼を取り上げて、感じる。

万華鏡写輪眼も、僕を使ってくれと言っていることを。

 

「ふむ、よくはわからぬが、まあこういうときは言うとおりにさせてもらおうかの。」

 

そうして言われるままに、うなじと胸元に埋め込むことにした。

 

赤子に移植を終わった段階でふと、気が付く。

この赤子が親を見る機会は、今が最初で最後だと。

 

「ほれ、これがおぬしの親じゃ。今はうまく見えぬかもしれぬが、よく見ておきなさい。」

「あー、う?」

 

そして封印布で赤子の目を隠し、一息ついて考える。

「さて、小僧どもと話して、しばらく赤子を引き取ることを考えんとな。なにぶん、無断で万華鏡写輪眼を使ってしまったからのう。」

 

これらのことを、赤子は知らない。

 

 

 

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「屋敷にて」

 

私たちの屋敷には妖怪がいる。

 

つい数年前に屋敷で生まれた子供だけど、なぜか悪意を持って触ろうとするとまるでいなかったかのように消えてしまう。

それに見た目も眼が多いし、抱き上げようとして触れてしまって慌てて手を引っ込めたなんて話も聞く。

 

もともと両親が住んでいたらしい離れの襤褸小屋に引き続き住まわせているけど、正直言ってどっかに言ってもらいたいのが本音だ。

まあ、うちはだから屋敷の外に出すわけにもいかないんだけど。

 

いつも通り、お盆にのった貧相な食事を部屋の前に置く。

するといつの間にか消えてる。

 

暫くすると、空になった食器だけ置かれてる。

私はそれを回収して立ち去る。

 

後ろを向くと、襤褸布を身にまとった子供がこっちを見ている。

「気味の悪い子。」

 

屋敷の子供たちの遊びに混じってるのも見たことない。

唯一別の場所で見たことあるのは、屋敷の女中頭が、うちはの品位が下がるとか何とか言って、目の前でやり方を見せて教え込んでいた時くらい。

あとはどこに居るかすら、みんな知らない。

 

でも一度だけ、変なことがあった。

 

日向が屋敷を訪れてきたことがあったのだ。

理由は、子供が攫われたのを助けてもらったとか何とか。

帰った後で数日の食事を抜きにされてて笑えたわ。

 

とりあえず、こっそりお盆から取ってきた沢庵を齧りつつ台所へ戻ることにした。

 

 

 

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