俺は逃げていた。
いきなり、弟分と立場が入れ替わってしまったみたいだった。
おまけに俺は父ちゃんを殺した反逆者ってことになっているらしい。
とりあえず、今は逃げないと。
山の中を走っていると、人影が見えた。
今出会うのはまずい。
すぐさま逃げる方向を変えようとすると。
「あれ、ボルトどうしたの?」
…一瞬、頭が真っ白になっていた。
居たのは山菜取り用のお手製の籠を背負ったちびっこおねーちゃんのアゲハさんだった。
一度、母ちゃんが隣にいる状況でおばさんって言ったら、じゃあヒナタもおばさんだね!と言ってそのまま母ちゃんに拳骨をもらったことがある。
それ以来、アゲハさんと呼ぶようにしている。
いや、それはいい。問題は。
「アゲハさん、俺のこと見てもなんとも思わねーの?」
すると、少し考えこんだ後、提案してきた。
「ちょっと詳しく話を聞いてもいいかな。」
そして着物の襟を少しまくったと思ったら、眼が見えた。
次の瞬間、なぜかラーメン屋の椅子に座っていた。
驚いて顔を上げると、アゲハさんがラーメンをすすっていた。
「アゲハさん、これはなんだってばよ。」
「ん-、ここは月読の幻術空間。私のは攻撃能力ない代わりにおいしいものいくらでも出せるから、食べたいものがあったら言って。」
違う、そうじゃない。
「でも俺、急いで逃げないと…」
「月読の中なら一瞬だから、気にしなくていいよ。それよりも何があったのか話して。」
俺はしぶしぶ、事情を話した。
俺は今、木の葉の反逆者を追っている。
あろうことか親友のことを殺したという、ボルトってやつだ。
あいつは殺して死ぬような奴じゃなかったはずだが、どうやら違ったらしい。
だが、俺の子のサラダは違うと言い張っている。
ボルトとカワキの立場が入れ替わっていると。
訳が分からない。
そんな大規模な干渉があったら気が付くはずだ。
そもそもどれだけの力を必要とするか分かったものじゃない。
だが、万華鏡写輪眼の開眼をしてまで、それを主張するとなると話が変わってくる。
俺は何を信じたらいいか分からないまま、走り続けていた。
目の前に人影が見えた。
同じうちはの、だけれど違う道を歩んだ女、うちはアゲハだった。
その女がまるで立ちはだかるように立っている。戦う力もないのに。
「何をしている、うちはアゲハ。」
問う。
するとしばらく時間をおいたのち、ゆっくりと答えた。
「状況確認かな。」
いったいこの状況に置いて何を確認するというのか。
「何の用だ。」
するとまっすぐこっちを見て、聞いてきた。
「サスケは何しにこの先に?」
俺は答えられなかった。
自分でもどうしたらいいか分からなかったからだ。
アゲハはゆっくりとほほ笑むといきなり聞いてきた。
「サスケは、私を信じる?」
「…ああ、信じる。」
なぜならこの女には実績がある。
大戦時には裏方として忍連合が世話になったからだ。
「なら、私の万華鏡写輪眼、受けてくれる?」
一瞬、言葉に詰まった。
なぜなら万華鏡写輪眼は普通なら必殺の瞳術。ただし普通なら。
この女の瞳術には攻撃性がない。そしてそれは、これまでの実績からわかりきっている。
「いいだろう、下手なことをしたら切る。」
「よかった。いいよ。その代わり、あとは任せるね。」
「何を。」
アゲハは次の瞬間後ろを振り向いて髪をかき上げた。
そこには4個目の万華鏡写輪眼があった。
そしてその目が強い光を放っていた。
「閻魔鏡。」
驚いた次の瞬間、まるで自分の人生を追体験するようなそんなイメージが降ってきた。
「ぐぅ、あ。」
何故かはわからないが、涙が出てきた。
まるであなたを信じるというのを現象にしたみたいだった。
光が収まると、何事もなかったかのような静けさが戻ってきた。
「どう?今は何をしたい?」
アゲハが聞いてきた。
俺は答える。
「決まっている。反逆者を…」
おかしい。これまでの自分の思考そのものが。
俺はなんでボルトを反逆者だと思っていた?
しかしアゲハはその俺を見るとほほ笑んで消えた。
だが俺の目は見逃さなかった。
一瞬だが、赤い足跡が残って消えていったことを。
「…アゲハ?」