ある任務でカカシ班は波の国へ来ていた。
任務はタヅナの護衛。
カカシからすればただのCランク任務であまり歯ごたえがあるとも思えない、下忍の任務だ。
だが、ナルトやサスケ、サクラが受ける任務としてはちょうどいいレベルだし、このレベルの任務なら何があってもカカシなら守れる難易度だった。
今は道中の宿場町に寄ったところであるが、活気があり、海の幸、山の幸、新鮮なものが数多く陳列されていて見ているだけでも飽きない。
ナルトは目を輝かせて商品に目移りしているが、サクラはそれを呆れた目線で見ており、サスケは明後日の方しかめっ面しつつ一丁前に警戒している。
「こんなところからそんなに警戒してても仕方ないよ。ナルトはもうちょっと警戒するべきだけど」
サスケは鼻を鳴らし、
「こんなガキと一緒にするな。うちはの名が廃る」
といって歩いて行ってしまった。
カカシは慌てて、
「おーい、晩御飯は宿で取るから、日が沈む前に大通りに面した例の宿に集合だよ」
と言って過ごした。
サスケはうちはの生き残りである。
今となってはあの憎い兄と、自分のみがうちはの生き残りとなっているため、自分の行いがそのままうちはの評価であることを理解している。
とはいえ、いくらうちはであっても腹は空く。
何かいいものはないかと探して、近場にあった団子屋に入っていった。
団子を注文して暫く。
椅子に座っていると、ふと隣に誰か座った。
誰か座ったな、と流そうとして気が付いた。
なぜ、忍んでいるはずの僕の隣に座れる、と。
驚いて振り向き、とんでもないことに気が付いた。
隣に座った女の両目はなんと、いびつな写輪眼と思われる瞳。
俺はうちはだが、こんな目は一度も、イタチが居たころでさえ見たことはなかった。
うなじで長髪を蝶で留め、なぜか荷物として背負い籠をそばに置いている、一見して忍びとは全く関係ない装い。
ただ1点、両目の写輪眼と思われる瞳のみが普通とは異なる容姿だった。
「へえ、やっぱり気が付くんだ。うちはって面白いね」
サスケは驚いて飛び下がった。
「お前…何ものだ。うちはなのか。うちはは壊滅したはず。」
すると女は何かを押し付けてきた。
包みに入った新鮮な肉。
唖然として目を落とした瞬間、声が聞こえた。
「今朝とってきたばかりの猪肉、これあげるよ。お近づきの印にね。じゃあ、またね。」
慌てて女のいた方を向くと、影も形もなかった。
まるで最初からいなかったかのように。
手元の猪肉のみが女がいた証だった。
カカシは困っていた。
夕方まで宿でイチャイチャパラダイスを読んでいたらいきなりサスケが飛び込んできて、いきなりまくし立ててきたからだ。
もう時間が夕餉も近いし、明日以降も任務の場所へ移動しないといけないからさっさと食事して寝たかったのだが。
ただの戯言なら右から左に流すのだが、内容が聞き捨てならなかった。
街中で女のうちはに会った。
まるで意味が分からない。
現在生きているうちははイタチとサスケのみのはずだし、写輪眼が使えることを条件としても自分が入る程度。
とっくの昔にうちはが壊滅したことは周知の事実だ。
だがしかし、これを言っているのがナルトなら見間違いじゃない?と一笑に伏すところだが、言ってるのが当の本人のサスケなのだ。
本当に意味が分からない。
だがしかし、捨て置けないのも事実。
細かく内容を聞くことにした。
「サスケが言うなら本当のことなんだと思うけど、あまりにも突飛すぎやしない?
こんなところにうちはなんているわけがないでしょ。
せめてどんな容姿だったかとかさ、美しいお姉さんだったとか何か言いようがあるでしょ。」
そういった瞬間、サスケがまくし立ててきた。
「年は俺より幼いくらい、普通の麻の和服を着ていて長髪、首の後ろで蝶の髪飾りで留めてた。
大きな背負い籠を持っていて中には山菜や切り分けられた肉などが入っている匂いがしていた。
何よりほらこれ、いきなり猪肉を上げるなんて言って押し付けてきたんだ。
これが証拠になるだろ」
カカシは困った。
頭を掻いて言う。
「証拠がそれだけじゃあね。
君が大通りで買ってきたものをそういっている可能性だってあるし、あんまりにも荒唐無稽すぎるよ。
それに、誰からもらったかわからない食べ物を食べるだなんて、忍びとしてどうかと思うけどね。」
と言いつつ、カカシは警戒心を上げていた。
なぜなら、この世界には細胞培養技術があり、うちはの細胞を手に入れた誰かが試していないとも限らない。それに闇市に流れた写輪眼を誰かが移植している可能性だってあるし、この場合あり得るのは、誰かが任務の邪魔をしに来たか、イタチの手先か、だ。
さすがにたまたまいたうちはの生き残りが、たまたま波の国にいて、たまたまサスケを見かけてからかいに来たなんてことは無いだろうし、警戒するのに越したことはない。
これは帰ってから上に相談だな、と思いつつ。
「まあ記憶にとどめておくよ。」
とだけ言うことにした。
この後の激戦できれいさっぱり忘れることになるとは思いもせず。