今、火影がいないため俺が代理で指揮を取っていた。
本来は火影がとるものだが、殺されてしまったからだ。
今、サスケが追っているはずだ。
夜、落ち着いて執務室へ一度戻る。
すると子供が立っていた。
「なんだアゲハじゃないか。今は忙しいんだ、離れていてくれ。」
「シカマルさん、今どんな状況?」
いきなり聞いてきた。
アゲハ相手なら隠すものじゃないと思って、簡単に話すことにした。
「ああ、反逆者ボルトを今サスケに追わせているところだ。」
アゲハは何か焦っているようだった。
いつもののんびりとした様子が感じられない。
アゲハはいきなり聞いてきた。
「ねえ、真実って信じる?」
いきなりだった。訳が分からない。
だが、何かしたいことがあるのはわかった。
「なんだ、話してくれないと分からないぞ。」
彼女は透き通るような笑顔で言った。
「世界って難しいね。私みたいにうちは生まれでも民間人になったり、サスケみたいに里を出ても里を守る忍びになったりする。
人柱力でも火影になったり、全く先は分からないよね。
でも一つだけ言えることはあるんだ。私は、この道を納得している。だから後悔なんてないよ。」
「何を。」
そのままアゲハは言った。
「私のお願い聞いてくれる?一生に一度のお願い。」
困惑しながらも聞いてみることにした。
「ああ、言ってみろ。」
とんでもないことを言った。
「私の万華鏡写輪眼、受けてくれる?」
訳の分からないことを。だが、一生に一度のお願いなんて、アゲハから聞くのは初めてだ。
受けることにする。
「いいぜ、やってみろ。」
「わかった。私は貴方を信じる。だから、あとはお願いね。」
次の瞬間、振り向いて髪をかき上げた。
うなじには血の涙を流す万華鏡写輪眼があった。
驚いて反応する間すらなく、万華鏡写輪眼が輝いてまるで自分の人生を追体験しているような感覚に陥る。
一方で俺の冷静な部分が判断する。
これは別天神級の強力な瞳術だと。
光が収まった瞬間、俺はすべて理解した。
何のためにこの術が、どれだけの犠牲を払って使われたのかを。
アゲハは崩れ落ちた。
まるで水たまりに落ちた蝶みたいに。
俺は涙が止まらなかった。
そのまま叩き壊す勢いで医療班を呼び出す。
「…馬鹿野郎が…」
その言葉はアゲハに言ったのか、自分に言ったのか、自分でもわからなかった。
私は今、どこに居るのだろう。
ゆっくりと先の見えない靄の中を歩く。
すると目の前に人影が見えた。
知らない男の人だった。
顔を合わせると、周りの景色が変わっていく。
昔、記憶にある私の住んでいた襤褸小屋だった。
机の上にはボタン鍋がある。
湯気が出ておいしそうだった。
「ちょっと話さないか。」
男の人が話しかけてきた。
頷く。
その目は見たことがある。
毎朝鏡で、自分の胸元で見ている文様。
同じ万華鏡写輪眼だ。
だから、確信した。
「あなたは、閻魔鏡の中のお父さん?」
男の人も頷く。
「そしてここは、月読の幻術空間。」
お父さんが頷く。
「よくわかったね。さすがはアゲハだよ。」
満足そうだった。
「どうして?」
疑問がいくつもある。
お父さんは私が生まれる前に居なくなった筈だし、自分が生きているのかも分からない。今が何時なのか、私はどこに居るのか。
分からないことだらけだった。
お父さんは言った。
「まあ、せっかくだし、ボタン鍋を食べつつ話そうか。」
アゲハにとって不思議な、新鮮な感覚だった。
暫くして食べきってからゆっくりとお父さんが話し出す。
「アゲハ、僕は君を叱らなくちゃならない。」
私はこの、今の場所に居たいのに居たくない感覚が何かわからなかった。
だけど、叱られる心当たりはあった。
万華鏡写輪眼の閻魔鏡の能力だ。
普段鏡として使うなら、ただ精神干渉を反射すればいいだけだからコストはいらないし、迷家の幻生物を介せばどれだけ強力な精神干渉でもかく乱くらいはできる。
幻術は気づかれないことが鉄則だから、ノイズさえ混ぜてしまえば無効化できる。
ただし、すでにかかっている術を解くのだったら話は別だ。
万華鏡写輪眼をレンズとして、自分の体にエネルギーを貯めて放つ必要がある。
もちろんそんなことをすれば普通は、体は一瞬でボロボロになるし、2発目なんて撃てない。そもそもエネルギーが足らない。
そこを今回はあらかじめ貯めておくことと、神隠の幻体で負荷を全身に分散することで条件をクリアして、2連射をしたのが真相だった。
使ったエネルギーは一人につき10年分だから、20年分。
3発目はもう、しばらくは撃てない。
「僕はアゲハに生きててほしいからその目を託した。だからそんなに無理をするために使っちゃだめだよ。」
「閻魔鏡は、私は貴方のことを知らなくても貴方のことを信じる。だから貴方を捻じ曲げることは許さない。そういう力だ。だけどそれは使用者がすべての負担を受けるということでもある。」
「ごめんなさい」
自分が謝ったことに言ってから気が付いた。
そのまま、食卓で、ぽつぽつとこれまでのことを話す。
不思議な感覚だった。
暫くすると。お父さんは言った。
「アゲハ、いつまでもここに居ちゃいけないよ。そろそろ現実に戻りなさい。」
私はとても名残惜しかったけど、そのまま立ち上がった。
「うん、ありがとう。行ってきます。」
「行ってらっしゃい。」
行ってきますって言えたのは初めてだったけど、自然と口から出た。
そして私はそのまま玄関の扉を開けた。
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