アゲハの蝶道   作:すれいめあ

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3話:中忍試験にて

厄介な爺だった。

 

私の両腕を封印するなんて。

これからの研究に支障が出ることは間違いない。

痛みも引かないし、どうにかして解除方法を探さねば。

 

無駄骨はごめんだし、ちょっと爺から実験資料を多めに拝借していこうかしら。

そう思って爺の方を見たらいつの間にか傍にガキがいた。

よっぽど幼い女で、少女ですらない子供。

 

死んだ爺の頬に触りつつ変なことをつぶやいている。

「ありがとう、あなたは立派だった…」

 

次の瞬間、猛烈に危険な予感がして飛びのいた。

完全に勘だった。何の察知にも引っかかっていない。

 

私のいた場所の地面が砕けた。

 

目を凝らしてみると、小象サイズのカニみたいなのがいる。

今のはそれが手をふるったみたいだった。

見ているうちにどんどん姿形がはっきりしてくる。

 

よく見るとカニのはずなのに、その両目は万華鏡写輪眼だった。

驚いてガキの方を見ると、コイツも同じ模様の万華鏡写輪眼。

 

「これは…とんだ隠し玉じゃない」

 

私は自分の状況と珍しいものが見れた二つの意味で笑った。

 

その時、ガキが話しかけてきた。

「おじいちゃんは立派だった。私はその生き方を侮辱するような真似はしない。でも、あなたには引いてもらうわ。おじいちゃんを弔いたいから、亡骸を傷つけてほしくないから。」

 

私は苦笑した。

 

「駄目ね…。今の状態で私があなたと戦っても万に一つも勝ち目がないわ。無駄死にはごめんだからひかせてもらうわね。」

 

伝説の三忍の私が攻撃されるまで気が付かないなんてありえない。

それなのにこのカニはそれをやってのけた。

つまりそれは、ここにいる脅威がカニだけではないことを示している。

 

それ以前によく見るとカニの足元に、細かなアリのようなものが大量にくっついているし、よく見るとガキの後頭部についている蝶も同じものだと感じる。

 

何ならわずかにだが蝶の方からは仙術チャクラを感じる。

これは…蝶が中継してどこかに仙術チャクラを送って蓄積しているわね。

つまり場合によってはこのまま戦ったら、蓄えている仙術チャクラを一気に使って一方的に攻撃されかねない。

 

ただでさえ両腕が封印されて印が結べないのに、このまま仙術使いとやり合うわけにはいかない。

これはコスパが合わないと考えて、そのまま私は撤退した。

 

両腕が封印されるというトラブルはあったが、十分収穫はあった。

何より完成された万華鏡写輪眼の使い手と対面して、そのうえで生きて帰れるなんて。

 

「やっぱりこの世界は飽きないわ。」

 

私は強い歓喜と、これからやることに思いをはせた。

 

 

 

 

 

雨の中、私は立っていた。

 

いつまでたっても馴染んだ人との別れは慣れない。

 

うちはが壊滅したときも、私には逃げることしかできなかった。

神隠で隠れたまま、一族がみな殺されていくのをそばで見続けていることしか。

 

それから里を出て、逃げて逃げて、たどり着いた村で山菜の取り方についてご老人に教えてもらった時も、老人がある朝冷たくなっているのを発見したときも。

 

みんな私は見送っていくことしかできなかった。

だって、私はもう年を取らないから。

 

でも、いくら右目の神隠による隠密や、左目の迷家による幻生物の創造があるからと言っても、所詮は術の範疇に過ぎない。

 

大事な人が頭を撫でてくれる感覚も、大切な人に抱きしめてもらう感覚も。

親もいなければ一族が壊滅した私にはとんと縁がない。

 

雨の中、葬儀の列が進んでいく。

 

木の葉の里の中で、表で私のことを知られていない以上は、私はこの葬儀の列に混じることもできない。

雨が私の涙を流してくれることを祈りつつ、雨空を見上げることしかできない。

 

正直、悲しいって感情は私にはわからないけれど、胸が痛いはわかる。

 

おじいちゃんの手紙は私の迷家の中に保管してある、大事なものとして。

 

もらった時はとてもうれしかったけど、いざ、こんな状況になってみるととても悲しい。

 

神隠でうちは壊滅以来歳をとらない体が恨めしい。

 

ただ、おじいちゃんから託された、やらなきゃいけないことはわかってる。

 

この里は暫く居なかったといっても私の生まれ故郷だ。

無くすわけにはいかない。

 

なら、次の火影を守らないと。

色々各地を回って知識を集めたけど、この知識が役立つといいな。

 

今は、私はおじいちゃんとの別れを感じていたい。

「おじいちゃん、ありがとう。私は守るよ、自分の故郷を。私は生きるよ、自分の人生を。」

 

ずっと空を見上げていたらいつの間にか雨は止んでいた。

 

ずっと立ち止まってなんかは居られない。

これからは、動かないと。

 

そう考えて、私は屋根の上から立ち去った。

 

 

 

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