これから木の葉の里へ向かう途中である。
丁度大蛇丸によって火影がいなくなったから都合がいい。
これまでヒルゼンが原因で手を伸ばせなかったところに手を伸ばせるというものである。
今は森の中をかけているが、随行の鬼鮫は十分着いていけているようで、流石は暁の忍びだと思う。
と、考えていたところで、目の前に人の姿を見かけた。
おかしい。
人がいれば私か鬼鮫のどちらかが気が付くはず。
なのに直接視認するまで気が付かなかった。
と思ったところで、その人、下忍学校低学年クラスの子供の胸元に視線が向いた。
万華鏡写輪眼だ、と思った瞬間には別の場所にいた。
見た目は団子屋の軒先だが、間違いない。
これは月読の幻術空間だ。
「なぜおまえのようなのが生きている。あの日、皆殺しにしたはずだ。」
と、問うたが、返事は一言だった。
「まあまあ、落ち着いて。団子でも食べてゆっくりしゃべろう?」
ここが確かに月読の幻術空間なら時間があるというのは、自分が使えるからこそわかる。
俺は聞いた。
「何が目的だ。生きているうちははもう、俺とサスケ以外にいないと思っていたが。」
「んー。脅威度の確認かな。あの日、手を下したのはあなただから。」
その瞬間背筋が凍った。
こいつ、ダンゾウの指示だったことを分かっている、と。
慄いて、つい尋ねてしまった。
「お前は…サスケの敵か。」
「いいや、里の味方だよ。」
そのあっさりした答えに、力が抜けてしまった。
「わかった、もういい。聞きたいことは聞けた、ここから出してくれ。」
ガキは素直に言った。
「了解。また会う時を楽しみにしてるよ。あなたの体的にまた会えるかはわからないけど。」
次の瞬間、隣から声が聞こえた。
「どうしましたか。先ほどからぼーっとしているようですが」
鬼鮫の声だった。
どうやらいつの間にか現実に戻ってきていたらしい。
ふと見れば子供もいなくなっているし、鬼鮫も気が付いていなかったみたいだ。
「いや、何でもない。ちょっと考え事をしていただけだ。」
俺はそのまま木の葉の里へ向うことにした。
私は火影になった。
ヒルゼンがいなくなってから、私に火影の打診が来るなんて思ってもいなかった。
正直、自来也の方がよっぽど火影に向いていると思う。
就任式が終わってから、私は火影の執務室に引っ込んだ。
雑多な事務処理の始末などやっていられない。
暫く一人になりたかった。
そう考えていると、いきなり扉が開いた音がした。
また誰か私を呼びに来たかと思ったが誰もいない。
おかしいと思っているといつの間にか目の前にガキがいた。
まだ忍学校の低学年に通っているかのような歳のガキが、だ。
自分の感知を抜けられたと分かったとたん、ゾッとして飛びのいた。
しかしそのガキは何もせず、1通の手紙を差し出している。
火影があまり恐れるものじゃないと気合を入れ、その手紙を受け取って読んだ。
内容はこうだった。
この者の立場を猿飛ヒルゼンが証明するものとする。
なんと、それはヒルゼンの字で目の前のガキの身分を保証するものだった。
私はつい力が抜けてしまい、手紙に書いてあるにもかかわらず名前を聞いてしまった。
「お前、なんて名だい?覚えて置こうじゃないか」
「私はうちはアゲハ。ヒルゼンから里を守ってとお願いされている」
てっきり黙られたままかと思っていたが、打てば響くように返ってきた返事に思わず笑ってしまった。
「子供がそんなに責任を負うんじゃない。大人に頼りなさい。」
ついついそんな言葉を返してしまうほどに。
ギャンブル中毒の自分が何言っているんだと自分で思ったが、目の前にいるガキはヒルゼンが保証したやつだ。
頼るだけの価値はある。
これからの火影業務が、苦労ばかりにはならないと感じた。