ワシこそが火影に相応しい者だ。
だというのに、千手の小娘が火影の座に座りおった。
非常に忌々しい。
ひとまず、やつが弟子にしている小娘のいる班を手懐けることから始めることとする。
現状、風影が奪われたようだが、木の葉には大して影響はない。
やつらの班がそろって任務中というのは都合がいい。
どうせ千手の小娘は根の動向には気が付くまい。
最後のうちはも里の外に逃げ出してからだいぶ時間がたっておるし、いつ始末しても問題ないだろう。
右目と右腕の調子も良好、欲を言えばもう少し写輪眼が欲しいところだが、あまり欲深いことは言えぬ。
ワシは火影に十分相応しい能力を持っているので、あとは邪魔者がいなくなればいい。
そうすればワシは木の葉の里の指導者になり、この里の悲劇をすべて消し去ることができる。
今しばらくの我慢と考えよう。
ひとまずは小娘の班の、サスケの代わりに送り込む者を決めねばならんな。
表向きの任務は…そうだな、不穏分子たる人柱力の監視とでもしておけばよかろう。
とりあえずは、うちはの不穏分子を取り除かねばならんな、里の平穏のために。
そうして私は根へ指示を行うために一人の部下を呼ぶことにした。
名は…適当にサイとしておこう。
これでワシの火影への道が開ける。
もう千手の小娘に媚び諂う必要もなくなる。
まさに笑いが止まらぬ状況というものだな。
最も、慢心したときこそが一番危険であるから、気を引き締めねばならんな。
と考えてワシは部屋を出て行った。
そしてわしはついぞ、部屋の壁際から無表情で見つめている一人の子供に気が付くことができなかった。
ワシは死んだはずじゃった。
実際に体を抜かれ、腕も失い、その状態で何とかフカサクの背に文字を書き、そこで力尽きて水中へ落とされたはずじゃった。
だというのに…なんじゃろうの、この空間は。
一面空色の草原にショッキングピンクの空、クレヨンで描いたかのような雲と太陽。
足元ではカエルがにゃーと鳴いておるし、ちぎれた腕にはピラニアみたいな、ヒラメみたいな訳の分からん黄色い物体がくっついておる。
というか、そのまま原色ではなかろうかの?
体の抜かれた痕には毛の生えた緑の饅頭がくっついておるし、これはワシどうすればいいんじゃ?
そう思っていると顔なじみのアゲハが突然現れた。
「なあアゲハよ。ワシにこの奇妙な場所を説明してくれんかの?ワシ、死んだと思ったらこの変な場所にいたんじゃが…」
ついでに聞いてみると、返事が返ってきた。
「カエルのおじいちゃん、だいたい死んでたから今治療中!ここは私の左目が作った迷家の中、どう、すごいでしょ。」
なんか自慢されたんじゃが。
とりあえず、訳の分からないことはおいといて、今一番気になっていることを聞く。
「あー、ちょっと。ワシの伝言はちゃんと届いたんかの?というか今はいつじゃ。間に合うなら急いで助けに行きたいんじゃが…」
実際、状況的には非常に切羽詰まっているのは間違いないはず。できれば是が非でも木の葉の里に向かいたいところじゃが、そもそもこの空間からの出方すらわからぬ。
するとアゲハが驚くべきことを言った。
「伝言はちゃんと伝わったよ、ナルトが解いた。だからそこは安心していいよ。
今はカエルのおじいちゃんを治療しないと。迷家の時間ルールを曖昧にして治療しているから、里の危機には間に合うはずだよ。」
時間ルールを曖昧にする?わしにはさっぱり意味が分からんかった。
「つまり、どういうことじゃ。」
「んー。つまりお外での1日が迷家での1か月くらいってこと。今はそのくらいに抑えてるけど、里の状況次第ではもっと早くするから。間に合うならおじいちゃんがよぼよぼになっても構わないよね。」
ワシとしてはよぼよぼになるのは勘弁じゃったが、間に合うという結果には背に腹は代えられない。
まあ、仕方あるまい。
と、ここでふと気が付いた。
「まて、ワシはここで数か月、ずっと魚に手を食われて変な饅頭に張り付かれたままなのか⁉ちょっとそれは勘弁してほしいんじゃが。」
そこでアゲハが言った。
「大丈夫、いっぱい食べれば早く取れるよ。だから安心して。」
ワシはその、しばらく張り付いたままという副音声に絶叫するしかなかった。
「チクショー!」