ちゃんと作ってみようかなと思ってプロットから作ったら、話数が70を軽く超えた。
こ、こんなに作るつもりじゃなかったのにッ。軽い気持ちで始めたのにッ!?
マジでこれからどうしよう。
気の緩めることの許されない戦場で誰もが呆気にとられる。
オフェリア、カドックは勿論、あのペペロンチーノや虞美人まで、目の前で起きた出来事に思考を止めた。
石畳に赤い血が流れ、一度も倒れることのなかった男が地に倒れる。
「……キリシュタリア?」
十秒? もしくは一分? それとも十分か?
どれほど時間が経ったのかを意識する者はカルデア側にはいなかった。
キリシュタリア・ヴォーダイムが倒れる。
これはそれほどの異常事態だった。
「キリシュタリア!!」
真っ先にオフェリアがキリシュタリアに駆け寄り、治癒魔術をかける。
心臓が穿たれていても、優秀な魔術回路はキリシュタリアを死なせまいと起動している。幸か不幸かそれが命を繋ぎ、常人にとっては転げまわるレベルの激痛をキリシュタリアが受け続ける原因となっていた。
「悪いけど、異聞帯を消滅させる訳にはいかないよ」
声は横から──。
全員が一斉に視線を向けた。
そこにいたのは、何処にでも良そうな何でもない少年が一人。右隣に2メートルを超える目元が陰で覆われている巨漢の男を、左隣には同じく目元が影で覆われている白いドレスを身に纏った長髪の女性を従わせている。
「フラガラック――ケルト神話の海神マナナンが太陽神ルーに与えた魔剣か!! それにこの反応……皆気を付けろ。相手は神霊をサーヴァントとして召喚してるぞ!」
「デイビッドッ」
ドクターロマニの警告が通信越しに飛ぶ。
だが、Aチームにその警告を聞く余裕はなかった。
彼等の視線は、キリシュタリアの惑星轟を防いだ元凶となった白いドレスの女性ではなく、ニメートルを超える巨漢の男へと注がれていた。
いや、正確にはその巨漢の男の腕の中にはいる人物に、だ。
デイビッド・ゼム・ヴォイド。
汎人類史のサーヴァントを召喚出来ないというハンディキャップはあるものの、『天使の遺物』によって戦力を補充することが可能なカルデア最強のマスター。
彼にはAチームも何度も助けられた。
そんな彼が、ピクリとも動かずに巨漢の男の腕でぐったりとしている。
「ッ君が、藤丸立香か──」
血を流しつつも、キリシュタリアが藤丸立香に視線を送る。
懐かしい面々に、藤丸立香は目を細める。
Aチームにカルデア職員、そして──マシュ・キリエライト。
「あぁ、そうだよ。俺が藤丸立香だ」
心は透明に、頭は常に数手先を──。
懐かしい面々でも、目の前にいる相手は前回共に過ごした人達ではない。
今、感傷に浸ることは許されない。
「あなたが藤丸立香、汎人類史を二度も滅ぼした極悪党にしては、平凡ね」
「オルガマリー所長……」
「止めて頂戴。あなたは予備のマスターとして集められたんでしょうけど、人理を守るはずのカルデアを裏切り、汎人類史を滅ぼした者よ。そんな人に所長だなんて呼ばれたくはないし。カルデアの一員だなんて認めたくはないわ」
「そっか。それなら大丈夫だよ。俺も自分がカルデアの一員だなんて思っていない。ただ、あなたの呼び方はこれ以外にないと思っただけだ」
「あら、そう。でも、二度目はないわ。肝に銘じておくことね」
魔術による遠隔通信でも、怒りが分かるほどの声色でオルガマリーは不快感を露にする。
自身の治める組織の理念をあろうことか末端の者が破っていた。
オルガマリーにとっては何よりも許しがたいことだ。
怒るのも無理はない。
「オルガマリー所長。怒りは尤もだが、ここは抑えて欲しい。さて、藤丸君。一度だけ確認しておこう」
「何かな。ダ・ヴィンチちゃん?」
「敵なのに距離の詰め方可笑しくないかい? いきなりちゃん付けとは……まぁ、それはさておき、汎人類史を滅ぼしたのは君の意思で良いのかい? 48人目のマスター。情報では君は人類悪、ビーストのマスターともある。ちゃんと考えて答えて欲しい。答えようによって私達の対応も変わるからね」
「それは、異聞帯の存続も許すってことかな?」
「いいや、残念だがそれはない。異聞帯は既に滅びが確定した世界。切り捨てられた世界だ。汎人類史を取り戻すためにも、異聞帯は滅ぼさなくてはならない」
「そっか。それなら、俺の答えは決まっているよ」
異聞帯がある以上、汎人類史を元に戻すことは出来ない。そんなことは分かり切っている答えだ。
もしかしたら──そんな甘い考えを抱いたから確かめただけ。
藤丸立香のいたカルデアよりも、今のカルデアは現実的な組織になっている。助けられる者は助けるだろうが、切り捨てる行為への迷いは藤丸の知っているカルデアよりも少ない。
息を軽く吐き、口を開く。
「異聞帯を消させはしない。慈悲をかけることも手加減も必要ないよ。俺は強制されてここにいる訳じゃない。自分の意思でここに立っている」
「──それは私達と殺し合いをすると言うことよ。意味が分かって言っているのかしら? あなたの目の前にいるのは、世界を救ったカルデアが誇る最高のチームよ。殺されない、何て高を括ってはいないでしょうね」
脅されている訳でも、無理やりやらされている訳でもない。自分の意思でカルデアの敵になっている。
その言葉にオルガマリーが鋭い眼つきで警告する。
魔術のまの文字も知らなかった素人が、世界を救ったAチームと戦うつもりなのかと──。
「それこそ今更だよ。オルガマリー所長。一度汎人類史を滅ぼした時点で俺はもうどんな存在とも戦うつもりだ。警告する必要はない」
「そう。なら、Aチームやりなさい。加減の必要はありません」
「──呂布奉先」
オルガマリー、藤丸両者の号令と共にAチームがフォーメーションを変え、藤丸のサーヴァントが地を掛ける。
異なる世界では逆の立場で戦った両者。再び彼等は世界の存亡をかけてぶつかり合った。