藤丸立香が異星の使徒になる話   作:大田シンヤ

6 / 10
見切り発車で始めた小説だけど、ここの設定どうしよう!?ってところがいっぱいある。
さぁて、どうしようか。
取り合えず、考えながら書いていこうかなと思ってます。


6.心は透明に

 ──少し考えれば分かることだった。

 誰かを救うと言うことは、誰かを助けないと言うこと。

 それを藤丸立香が思い知ったのは、走り出した後のことだった。

 

 最終決戦の日から、戻って来たのは藤丸立香がカルデアに訪れた日。

 あの日と同じように行動すれば、藤丸立香は人類最後のマスターとなり、マシュ・キリエライトと共に人理修復の旅に赴くことになっただろう。

 

 だが、そうはならなかった。

 人理焼却の旅の先にある人理漂白。そこで戦うことになった異聞帯の人々のことを藤丸立香は想ってしまった。

 あの人達にも生きていて欲しい。そう想っていた時には、あの日とは別の行動をしていた。

 

 だが、所詮凡人。

 魔術師としての腕前は下の下。一人で出来ることなど何もない。このままAチームがレイシフトを行い、人理漂白において、特異点Fは重要な反撃の手掛かりとなる特異点Fを消去するのを見るしか出来なかっただろう。

 単独顕現を保有しており、時間逆行の影響を受けない、ビーストたちが力を貸してくれなければ……。

 

 記憶を保持し、呆れながらも手助けに来てくれた皆を見て、一人ではどうにもならずとも、皆とならどうにかなるかもしれないと、当時は考えた。

 結果的には、そうなった。

 特異点Fが消去される前にこの世全ての悪(アンリマユ)を出現させることでカルデアの目を特異点Fから逸らすことができた。

 特異点Fが消去されてしまえば、マリスビリーの完全犯罪が成立する。そうなれば、人理漂白の解決の糸口すらなくなる。それを防いだのだから、良いことなのだろう。

 しかし、同時に藤丸立香はあの日罪を犯した。

 あの日、藤丸立香は世界が滅ぶことを良しとした。

 特異点FをAチームが攻略する場合、確実に特異点を消去してしまう可能性が高かった。それを防ぐためとは言え、あの日藤丸立香は世界を滅ぼした。

 

 それだけではない。

 異聞帯を地上に出現させる際も、罪を犯した。

 かつてと同じように異聞帯を七つ地上に出現させる条件として異星の神によって出されたのは、Aチームによって防がれた未曽有の大災害である人理水没を六度クリアすること。

 

 その条件を藤丸はクリアした。

 組織による支援も、魔術も、抑止力の援助もなく世界を七度救って見せた。

 だが、その後──異聞帯を出現させるタイミングで藤丸立香は選択を迫られた。

 

 『──選べ』

 

 短く告げられた言葉。

 目の前にあるのは無数の世界——そこで人々が今も生きていた。

 鬼が支配された平安の世、肉体を絡繰りに変えて永遠を生きる人々、砂漠の土地で懸命に生きる少年、世界を空から平定した王、薄暗い街で怪物を狩る狩り人、そして──何でもないことで笑い合う、平和を謳歌している人々がいた。

 

 目の前にあるのは、並行世界としてさえ分岐を許されず足切りされた有り得ざる歴史の断片──異聞帯だ。

 かつて踏破した七つの異聞帯だけではない、他にも多くの異聞帯が藤丸の目の前にあった。

 この中から藤丸は地上に出現させる異聞帯を選ばなければならない。

 だが、それは七つ以外の異聞帯を切り捨てることを意味する。

 

 「────」

 

 この中から、藤丸は選ばなければならない。

 一度吐いた唾は呑み込めない。

 異星の神から与えられた異聞帯は一つ。それを七つにして欲しいと交渉したのは他ならない自分自身。そして、七つ以上異聞帯を選ぶことは出来ない。

 これ以上の異聞帯を救うには更に体を酷使しなければならなくなる。

 既にシミュレーションとは言え、六度世界を救っているのだ。限界も近い。何より、まだ異聞帯の踏破が残っている。

 故に、選ぶしかなかった。

 

 幾つもの異聞帯の中から、藤丸立香はたった七つの異聞帯を選ぶ。

 生き残るための戦い。それにすら参加出来ず、この日——多くの異聞帯が消えてなくなった。

 

 ──────

 ────

 ──

 ―

 

 微睡から目覚める。

 目覚めれば、いつもとは違う天井。それに違和感を覚える。

 少し寒気を感じ、ベッドから起き上がり上着を羽織る。

 違和感のある腕を擦りながら、部屋を見渡すと扉が開く音を聞き取り、藤丸は視線を向けた。

 

 「何だ、もう目覚めたのか。もう少し寝ていても問題なかったのだぞ?」

 

 「スカディ」

 

 扉から入って来たのは影の女王スカサハに姿形がよく似ている異聞帯の王──スカサハ・スカディだ。

 

 「……俺、何で北欧異聞帯に?」

 

 「ふむ、少しばかり記憶が混濁していたようだな。思い出せないか? お主はここに術式を受け取りに来たのだぞ?」

 

 「術式……あぁ、そうか、そうだった」

 

 スカサハ・スカディの言葉で北欧異聞帯の一室で寝ていた理由を思い出す。

 もうじきカルデアが本拠地としているブリテンに攻めて来る。敵とは見なしていないが、攻められるのなら自衛はするというのが藤丸の方針だ。

 そのために武器を受け取りに来ていたのだった。

 

 「カルデアは今何処に?」

 

 「ギリシャ異聞帯でオデュッセウス率いる防衛艦隊と戦っている。その前は現地の住民と取引をし、テオス・クリロミノアを入手していたぞ」

 

 「……防衛艦隊は大丈夫?」

 

 一組織であるカルデアが七つの世界に勝るほどの戦力を有しているはずがないと考えるだろうが、相手はカルデアであり、()()Aチームである。

 何よりギリシャ異聞帯であるならば、彼の独壇場になる。

 そう考えて被害について問いかけるとスカサハ・スカディは少し目を閉じた後、口を開く。

 

 「現在は艦隊がかなり押されているようだ。だが、予めマスターから与えられていた情報を上手くオデュッセウスが使っているのだろう。人的被害はそれほど多く出てはいない」

 

 「……そっか」

 

 今のところは、という枕詞が付くだろうが、まだ壊滅はしていないことに安心を覚える。

 今のカルデアには、ネモは存在しない。

 そのため、虚数空間には潜れても水中の中を進む機能がない。最悪の場合アトランティスの艦隊は全てオリュンポスに撤退してしまえば問題ないだろう。

 なるべく犠牲が少ない内に戦いが終わって欲しいと願う。

 

 「そう言えば、ギリシャでは汎人類史の英霊が多く召喚されていたけど、そっちはどうなったの?」

 

 「報告では予想通り生き残った数騎がカルデアに協力しているようだぞ」

 

 「分かった。ありがと。それじゃあ俺はブリテンに戻るよ」

 

 そう口にして、藤丸は扉の取っ手に手をかける。

 向かう先は本拠地としているブリテン異聞帯のキャメロット。

 もうすぐ来るであろうカルデアと対峙するため、藤丸は心を透明にした。

 

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