終焉に愛された子は開拓の旅を歩むか?   作:Jr.404

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 ネモ・テラ編を早く終わらせたかったので、まとめて書きました。スタレ宇宙での話の筈がめちゃくちゃオリジナル要素の強い内容になってます。スタレ宇宙は下手すると現実の宇宙よりも広い可能性があるのでまぁこんな星での騒動がひとつやふたつあっても大丈夫だろうと割り切っています。
 また一部の読者様からありがたいアイデア集を考案していただいたのでどこかのタイミングやストーリーで組み込ませる事を予定してます。素晴らしいアイデア集、大変ありがとうございます。


10話「壊滅の傀儡者たちの遊戯」

 ソーマと銀狼が黒幕とも言える存在から直々に案内され、訪れた先で待ち構えていたのは人型の構造体という無機物な肉体に自我を宿した自身をこの中枢ブレインであると自ら名乗る二体のAI人格プログラムであった。

 

【我々は幾多もの機械生命体を統括しその意識を介して貴様たち人類種を長年に渡って眺めてきていた...。実に人間というものは興味深い、同じ同族同士で争いあい、破滅の道を歩もうとも争い、足を引っ張り合う事しかしない】

 

 個体名をアトンと名乗る男性型構造体は遥か昔から人類を観察し続けてきた事を語り出し、興味深い存在だとそう語った。だか、ソーマからすると彼らの発言がお世辞にも前向きで肯定的な話をしているようには思えなかった。

 アナイアレイトギャングが残した厄介な置き土産である論理ウイルスに感染した連中がまともな思考をしているとは思えないからだ。

 

【持つ者、持たざる者...同族でありながら互いに奪い合い、憎しみ、妬み、その身を喰い合う。そしてそれは他の生命体をも巻き込みながら支配し、喰い滅ぼす...貴様たち人類は随分と闘争心にありふれた獰猛な生命体なのだな?】

 

「はあ...そんなこと言われても。人間なんだから当然でしょ?出来れば大人しくしてくれる?」

 

「銀狼あまり迂闊な返事をするな。連中にマトモな反応が帰ってくる保証はない」

 

【フフフ、我々を前にしてもその態度...気に入ったぞ人類。私は貴様達のその貪欲さがどこまでの可能性を見せてくれるかをこの目で眺めて見たいのだ。貴様達が同族を押し除けてまで上に這い上がろうとするその本能を!】

 

【...No.002001αアトン、敵への速やか対処を推奨する】

 

【まぁまて、No.002012βネイト。貴様の判断は連中を試してからだ。ソーマ、銀狼よ、ここはひとつゲームという名の殲滅ゲームをしようではないか。貴様達の人類の見せるその勝利に対する貪欲さを私に直に見せてくれ】

 

 アトンと呼ばれた男性型構造体がそう語ると隣にいる女性型構造体のネイトがなんらかの権限プロトコルを制定し、ソーマ達がいた空間エリアが現実から仮想空間のように...いや、間違い無く擬似的な仮想世界へと置き換えられていく。

 

「へぇ、ブレインにしては随分と粋な事をするじゃん」

 

「...コイツら、いったい何を企んで?」

 

 そのまま自分達を殺しにかかろうとするかと思いきや、人間に対する哲学みたいなことを語り出し、お前たち人類の見せる可能性や本質を知りたいとかで自分達を仮想空間のゲーム世界へと誘い込んできた。

 本当に奴らが狂っているのか、まったく分からずただ連中の要求に応じて奴らの目的を伺い知るしか現時点では対処法はなかった。

 

 無重力に浮遊するように浮かぶオブジェの残骸とアポカリプス世界のような終末世界を思わせる大地が現れ、空には不自然なほど近い距離にある複数のカラフルな衛星と思われる天体が幾つも浮いていた。

 

「ステージはギャラクシーアポカリプス系かな?ま、ゲームなら私は大歓迎だよ」

 

「俺、ゲームはそんなに得意な方じゃないんだけどな」

 

【案ずるな、内容は至ってシンプル、現れて来る大量の敵を的確な対処法で攻略し"殲滅していけば良い"。ただそれだけだ、簡単なものだろう?】

 

 アトンが告げた後、仮想空間ステージ内から無数の反物質レギオンによく似た個体の敵が現れる。

 

【貴様らには良くやり慣れた相手だろう?さぁ思う存分本能を発揮して見せて見よ!】

 

 アトンの合図と共に待機していたレギオンの軍団が呼応してソーマ達のいる場所に目掛けて進行を開始する。

 

「来やがったな...やるしかないか、銀狼!」

 

「分かってるって!でもちょっとくらい遊んでもいいでしょ?」

 

 互いに戦闘の合図を送りながら迫り来るレギオンの大群を迎え撃つことにする。仮想空間だからか、現実のような制約が無く銀狼はいつの間にか背中から機械的な飛行用のウイングユニットを召喚し、戦闘機のように機敏な動きで敵陣へと強襲を仕掛けていく。

 

「もう手慣れてるし...なら俺も変に気にせずに律者の力を使えるな」

 

 今までよく加減して押さえていた律者の力を解放し、久々にかつての姿を見せることになる。

 

「...うーん、やっぱりあの時と比べて弱いなぁ。仕方ないけどこれで充分!」

 

 特徴的な装飾と黒を主軸にした律者衣装に2対の角、長い龍のような尻尾姿を見せながら、ソーマは一気に上空に飛翔し迫り来るレギオンの大群を強襲する爆撃機の様に突っ込みながら手にした陽月と陰月を互いに遠距離用のランチャーカノン兵器のように形成させ、ド派手に物理弾とレーザーの弾幕の豪雨をぶちかましていく。

 空中から機動砲撃をかまして来るソーマと銀狼に対してレギオン側も重力の法則を無視するかの様に空中飛行で襲い掛かり数で圧倒しようと総攻撃を仕掛けるが、彼らの巧みな空戦機動に翻弄され、銀狼を追撃しようと追いかけると後方から仕掛けてきたソーマによるフルオープンアタックの砲撃で蚊蜻蛉のように叩き落とされ、逆にソーマに向かってターゲットを絞ると今度は銀狼側が強力なレーザー照射アタックではたき落とされていき、彼らの撃墜スコアにどんどん加算されていった。

 ステージ内の様子はさながら小規模な宇宙戦争じみた壮大なドッグファイト戦を思わせる派手派手しさで支配されていた。

 

【ふむ、流石に最初の敵にしては単調で弱すぎたか。ではステージ2に移行だ】

 

 アトンが新たに宣言するとまた新たなステージに変わりだし、今度は巨大な洞窟内を思わせるエリアから宇宙生物...スウォームの大群が現れる。

 

「うわ!気持ち悪ッ‼︎壁天井までびっしり引っ付いているんだけど⁈」

 

「無駄口叩いてたらそのまま虫どもの餌になるだけだぞ!」

 

「あーもう!もう少しマシな演出とか無かったの!」

 

 ぐだぐだと文句を垂れながらも的確に対処していく銀狼とソーマは手慣れた手付きでスウォームの成虫を撃墜していく。

 

「というかソーマ、ゲーム得意じゃないって言っときながらかなり手慣れてんじゃん?ホントは嘘でしょ?」

 

「俺は感覚派だよ‼︎...ッ、そこッ‼︎」

 

「うわ...後ろも見ずに真後ろにいる奴、倒しちゃったし」

 

 感覚派と言っているソーマの無駄の無い変態機動に若干引きながら銀狼もあとに続いていく。

 

【フフフ、そうだ...より戦闘本能を高めろ、限界を見せてみせてみるといい】

 

【...】

 

 ステージアップして行くたびに苛烈になっていく中で戦っている2人の様子を愉快そうに眺めながらアトンは愉悦に浸っていた。

 

 ...ただひとりその様子に不満を抱きながら観察していた者を除いては。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハァ...ハァ...流石にキツイな。...ステージLv.はいくつなんだ銀狼?」

 

「多分...ステージLv.99まで来たんじゃない?...流石に私も疲れた〜」

 

 ここまでほぼノーダメに等しい大戦果を上げているソーマと銀狼ではあるが、より難易度が跳ね上がって行くたびに疲弊が積もり、精神的な負荷は避けて通れなくなってきた。

 

【ここまでよく耐えて来たな人類。では最後のステージLv.100で仕舞いにしてやろう】

 

「え?なんか随分と呆気ないね?」

 

「どういうつもりだ?」

 

【深い意味は無い。ただ貴様達が私の試練を無事に乗り越えられたのだ。思う存分誇るがいい。...もっとも、このステージをクリア出来たらの話だかな】

 

 ようやく長かったアトンからの試練に終わりが見え、最終ステージが解放されていく。ここまでソーマはアトン達が論理ウイルスで異常をきたしているのではと思っていたがそのような様子をあまり見せてこないことについ警戒の意識を緩めてしまう。

 ...思えば奴らのいるこの司令塔の建造物に支配された無人兵器群が大量に守護するように此方の行手を塞いでいる時点で気を許すべきでは無かったのだ。

 

 

 

 奴らに人間らしい感性を求める事自体が間違いであると...。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【さぁ...最終ステージを始めようではないか!】

 

 アトンの呼応と共にステージが今までの比にはならないほどの巨大空間になり、沢山の銀河団が見え隠れする深淵の宇宙が現れる。そしてソーマ達が見える先に出て来たのは100mサイズに及ぶ巨大な単眼が隙間から突き出ているようなデザインをした立法化された正八面体状の天体物であった。

 そしてその天体物の近くにアトンとネイトが飛来しており、ソーマ達に向けて宣言してきた。

 

【さぁ、最後ステージの対戦相手はもちろん..."我々"だ。全ての試練を乗り越えた貴様らを大いに歓迎しよう、盛大になッ‼︎】

 

 アトンの宣言と共に彼らの分身体が無重力空間に大量に現れ、ソーマ達へと攻撃行動を開始して来た。

 複数の分身体のネイト型が無重力空間から次元ゲートを開き、弾幕なんて言葉の表現が馬鹿馬鹿しく思えて来るほどのレーザー弾の数の暴力が襲い掛かる。

 

「やっば⁈いきなりかよ‼︎」

 

「ちょっといきなり飛ばし過ぎじゃん!追い付かないんだけど!」

 

 もはや仮想の宇宙空間にある光る星々全てが弾幕なのでは?というほどの非常識な反則攻撃に大苦戦を強いられる。レーザー弾による災厄攻撃が落ち着くと今度は分身体のアトン達がブラックホールのような空間重力を一斉に引き起こし、2人揃って目に見えない凶悪な引力に身体を全力で引っ張られていく。

 身体を圧迫するような苦しみに耐えながら重力に追いやられている銀狼をその場から引っ張り出してなんとか安全地帯を逃れようとすると、今度は誘導弾のような追尾性で隕石のようなキューブ状の弾幕群が満足に動けないソーマ達に襲い掛かる。

 

「チッ、移動阻害デバフに自動追尾攻撃とか趣味悪いっての‼︎」

 

「か、身体が満足に動かせない...!」

 

 必死にアトンとネイトの軍団からのダブルパンチ攻撃に耐えながらもなんとか回避しながら反撃するが、ここで運悪く銀狼が初めて本格的な被弾を受けてしまう。

 

「銀狼‼︎」

 

「ッ‼︎...ぐッ...い、痛い!肉を焼かれたみたいに痛いッ‼︎」

 

「そんなバカな...!ここは仮想空間の筈なのに!」

 

【苦しみが無ければ本気になれんだろう?だから貴様らが動かしている肉体に痛覚が流れるように付与したのだ。今の貴様達は生身の身体で現実の戦いをしているのと変わらん。本気で生き延びきらな無ければ肉体は無事でも痛覚による深刻な精神負荷で命を落とす事になるぞ?】

 

「本性を表しやがったなッ!」

 

【表した、だと?私は別にただ"敵を全滅していけばいい"とそう言っただけだぞ?一言も痛覚は無いとは言ってはいない。当然本気の命懸けのゲームをして貰わなければ人類の限界を推し量る事ができぬでは無いか】

 

 どうやらアトンは自分達を仮想空間に誘い込んだ際に此方を試す為に遊びとしての殲滅ゲームではなく、本気の殺し合いのゲームを所望していたようだ。その為に敢えて今動かしているソーマ達の本物の肉体に身体の外傷的な傷を負う事はなくとも、痛覚による痛みをそのままダイレクトに感じ取るように細工したらしい。

 ソーマ自身は兎も角、銀狼は良くも悪くも人間である為これ以上被弾し続ければ本気で彼女の命に関わってしまう。

 

【だが...貴様達だけが不利を被るのはナンセンスだな。ならば我々も貴様達から攻撃を受ける度に物理的なネットワークの遮断ダメージを受けるようにしよう。ダメージを受けることでネットワークによるダメージ修復が効かなくなり、最終的に死に至る...これにて対等となった。さぁ、始めようか盛大な殺し合いを!】

 

【...】

 

 説明を終えたアトンからの容赦無い攻撃が再開され、ソーマは咄嗟に銀狼を抱えて直ぐに回避行動を取る。虚数ゲートから大多数の虚数の槍弾幕を射出し、迫り来るアトンやネイトの分身体を撃破していくが、理不尽な数の暴力と敵からのお返しとばかりの攻撃に追い詰められ行く。

 

【すり潰すだけでは詰まらんな。...切り札も使うとしよう。ネイト、"ホルス"を使うぞ】

 

【使用を承認...】

 

 アトン達からの攻撃を凌いだソーマは銀狼の状態を確認するがなんとか持ち直せる段階まで動けるようで痛覚ダメージが心配だがどの道、相手に勝てなければいずれ此方が死ぬことになってしまう。

 

「銀狼、まだ行けるか?」

 

「当然じゃん...けどこんなに痛いなんて...帰ったら刃とカフカに怒られるな...」

 

 互いに状態を確認し合いながらアトン達がいる場所に向き合うとそこには最初に見かけた例のよく分からない謎の正八面体のオブジェクトが沈黙を破って動き出していた。

 

【今度はこの"ホルス"が代わりに貴様達を相手しよう。思う存分暴れるがいい】

 

 正八面体から眼球のような目が現れ、ブロックキューブのような変形を繰り返しながら目の様な中央体から高密度の黄金色のエネルギーが凝縮されていた。明らかに危険な何かを感じ取ったソーマと銀狼は直ぐに回避行動を取ると後から遅れてオルスの目から全てを蒸発させる死の熱線が解き放たれ、そこら辺にあった筈の仮想の宇宙空間がデータ破損を起こした様に崩壊し、空間が崩れ落ちる様に無くなって行く。そこには明らかに仮想空間ではなく現実のネモ・テラの大気の空が見えていた。

 

「嘘だろ...仮想空間が現実世界にまで干渉して来るなんて!」

 

「ねぇ、これってヤバいやつなんじゃ。あんな大量破壊兵器が暴れ出したらこの星の住人が全滅してしまうよ?」

 

 ホルスと呼ばれる正八面体の浮遊物は仮想空間内にしか存在しない筈の破壊兵器がまるでそのまま現実世界に現れたかの様に登場した事でこの兵器がネモ・テラの人口密集地帯にでも放たれればこの星に甚大な被害が及ぶ事になる事は想像に難く無い。

 

【貴様らだけで戦っていても詰まらんからな。ここはより多くの人類を巻き込んで暴れさせて貰おうか。さぁ人類、この星の住人の生命は貴様達にかかっているぞ】

 

「クソが、頭のイカれた人形共め!」

 

 ホルスの起動と共にアトンとネイトも、自身の分身体を増やしだし、ソーマ達に目掛けて遠距離攻撃を再開し始める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ったく!ラブリー共の数一向に減らぬぇな!ベイビーがッ‼︎」

 

「GAaaaッッーー‼️」

 

 迫り来る無人機械の群れを排除しながら悪態をつくブートヒルと己の身体を武器に暴れまわりながら口からブレスを吐くヴルムが今もなお戦い続けていた。

 

「アイツらはまだ敵を仕留めきれてねぇのか?クソッ...」

 

 ブートヒルがソーマと銀狼の身を案じながら迎撃をやり続けている中、ヴルムが何らかの異変を感じ取ったのか、動きが一瞬止まり空を見上げだす。

 

「...?オイどうした、ドラゴンベイビー!」

 

 動きを止めたヴルムに違和感を感じていたブートヒルが声を掛けると次の瞬間、突然ヴルムがブートヒルの身体全体を覆い隠す様にかぶさり出す。そしてその行動にブートヒルが文句を言う暇も無く、彼らの上空から高密度の黄金色のレーザーの熱線が通過し、爆発音と共にそこから発生してきた爆風に巻き込まれてしまう。

 

「うおッ⁈ベイビーが、なんだってんだよ、いったい!」

 

 爆発音と爆風が治まった状況からヴルムの身体から身を乗り出して外の様子をを眺めているとそこには山岳があった筈のエリアと人口密集地跡が跡形も無く巨大なクレーターを残して無残な焼け野原跡だけの死のエリアが完成していた。

 発射したであろう元凶元を辿って視界を向けるとそこには無機質な赤紫色に輝く正八面体の浮遊物体が鏡の様に美しく輝くフレームを変形させながら砲口らしきものを照射したであろう痕跡が確認できた。

 

「ホーリーベイビーが...。マジでこの星滅ぶんじゃねーか?」

 

 流石の荒くれ者であるブートヒルも今回ばかりは匙を投げ出したくなるような危険な存在にまともにぶつかり合う気力が湧かなかったようだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【...どういうつもりだNo.002012βネイト。何故勝手にホルスの攻撃を許可した?】

 

【No.002001αアトン、貴様はあまりにも遊びすぎた。我らの目的は旧人類の淘汰と剪定が目的だ。何故"壊滅"に背く様な行動を取る?いい加減貴様の行動には反吐が出る】

 

【何だと...】

 

「な、なんか様子がおかしくない?」

 

「仲間割れしてるのか...?」

 

 決戦兵器である"ホルス"が起動し、アトンによる人類に対する試練という名の遊戯に利用され、そのヤバさを表した様な滅びの一撃が放たれた事でソーマ達が肝を冷やし、何としても奴らの危険な兵器を阻止する為にゲームではない本気の戦いに突入するが、どういうことかアトンとネイトの分身体を相手にソーマと銀狼が激しく戦闘を繰り広げている最中に、アトン側が予期していないホルスによる第二射の砲撃が敢行され、ネモ・テラの大陸地域数千キロ地点の山岳地帯と人口密集地区に着弾し、甚大な被害と巨大なクレーターを発生させていた。

 間に合わなかったとソーマ達が嘆く中で例のホルスの砲撃を許可したであろう元凶、ネイトはアトンに詰め寄られるが逆にネイトが開き直り、アトン側に苦言と不満を漏らしているという訳の分からない仲間割れ状態が発生していたのがついさっきソーマ達の目の前で起きていた光景であった。

 

【我々は遥か昔から人類の歴史とその行動心理を観察し学んできた。その結果が奴らは我らが身を挺してまで救うほどの存在価値はないと判断した】

 

【確かに人類共は野蛮だ。だが、それと同時に学べるものもある。奴らの獰猛な闘争心と上へと目指そうとする貪欲さは目を見張るものがある。だからこそ我々は奴らに試練を与え、我々が倒すのに相応しい存在に仕立てあげる必要がある】

 

【理解出来ん。人類は危険だ。脅威となる存在を淘汰しなければ我らや他の生物の脅威となり全てを喰い滅ぼす。"壊滅"の道に背くことになる】

 

【ネイト...我々には淘汰圧が必要だ。奴らは滅ぼさずに壊滅の試練として新たな脅威になってもらうべきだ。より強大であればこそ壊滅の道がより崇高なものとなる】

 

 ソーマ達を他所に口論を繰り広げだすブレイン構造体達に呆気に取られ、困惑が広がっていく。奴らは共同意識で行動判断をしているわけではないという事なのだろうか?

 

「ねぇ、ソーマ。これってある意味チャンスじゃない?」

 

「チャンス?確かにそうだけど、そもそもなんで連中はブレインのクセに人間見たいに議論し合って喧嘩してんだか...」

 

「私達人間を学習して学んでいるから?ともあれこれ以上アイツらが危険な行動を取ってこなくなるから助かった」

 

「人間の身内争いまで真似てしまうなんて...何だか皮肉だな」

 

 ブレイン構造体達が口論し合いながら対立状態がしばらく続いた後、遂に決別し始めたのかお互いを敵認定し始める。

 

【...我々の勝利を疑う者は、"敵"だということを忘れたか?】

 

【...貴様に勝てるとでも?】

 

 数分前までソーマ達と戦っていた筈のアトンとネイトの分身体が突然行動パターンのプロトコルを書き換えられたのか、そのままお互いを身内同士に標的に変えて勝手に二体と分身体との内戦じみた潰し合いが始まってしまう。

 当然、仮想空間時程ではないとはいえ、腐ってもブレイン級だけあって互いに膨大な数の光学兵器や重力装置などを展開して互いの分身体の数を減らして行く。

 

「ああもう、アンタら他所でやれってのッ‼︎」

 

 ブレイン構造体同士での大規模な喧嘩の余波に巻き込まれ、被害を受けてたソーマが腹立たしげに悪態をつく。

 時間が経つたびに一体一体と数をジワジワと減らしていき、最終的にはオリジナル体だけが残っていた。最後の一体になっても争いを辞めないとは、つくづく彼らも人間と変わらず壊滅という狂気に意識を飲まれた憐れな傀儡にすぎないという事なのだろう。

 

「ッ!今だよ!」

 

 弱り切ったアトンとネイトをつかさず銀狼とソーマが全力攻撃を仕掛け、レーザーと槍の弾幕弾による一斉射で呆気なく撃破され、彼らの義体はガラクタへと還る事となった。

 

【...ヤッてくれ...たな人類。マ、さか我らが...このようナ醜態をさ、らすトは...】

 

「アンタらは人間を真似過ぎたんだよ。だから悪いところも全部現れてしまった。勝手に自滅した自分の愚かさを恨むんだな」

 

【...フ、フ...フハハハ、アハハハハハッー...タしかに我々ノ負けだナ。だが人類、我々ハ...論理...ウイルスによっテ"壊滅"に目覚めタ存在だ。我々が...滅びてモその意思は消えん..."天理よ、壊滅と共にあれ"...】

 

 最後のセリフと共に沈黙したアトンは機能を停止し、動かなくなる。...最後のタイミングで意味深な発言をかましていたが結局なんなのかは理解出来なかった。

 しかし問題は最後に残っているあの巨大なホルスとかいう浮遊している戦略兵器である。司令塔である例のブレイン達が共倒れしたのでもう制御できない筈なのだが、何故か未だに当然のように活動を続けており、止まる気配は無かった。

 

「まさか事前の命令コマンドを入力して動かしているのか?結局まだ厄介な置き土産がまだ残ってやがるな」

 

「私も流石にヘトヘトなんだけど...。ハァ、エリオの奴、こんな事になるのを分かってて私に黙ってたの?」

 

 急いで現場を急行し、自分の姿がモロバレしているのもお構い無しにソーマは銀狼を引き連れてホルスが飛行を続けている上空エリアまで上昇して行く。

 ホルスの表面近くまで来た二人はすぐに空中から弾幕弾を有りったけ撃ち込みながら破壊を試みるが、赤紫色の反射ミラーのような表面には全く傷が付かず逆にホルス側が外部からの攻撃に感知し、迎撃としてミラーフレームから反射したスプレッド状の拡散レーザーがソーマ達に襲い掛かり、回避して行くが、中々にレーザーの弾幕が厚く、完全に防御態勢を取られてしまったことで責めあぐねてしまう。

 ほかの手段としてソーマの愛槍である陽月と陰月を用いた一撃必殺技の投擲も敢行してみたがどうやらホルスのミラー装甲には受けた攻撃を受け流す機能があるようで物理的にも貫通させる事が困難だった。

 どうしたものかと責めあぐねているとホルスがまた照射レーザーを放つ形態をとりだし、スライドしたフレームから眼球の様な砲口が開き出す。

 

【焦土作戦実行ッッー‼︎】

 

 ホルスが砲撃形態を展開するタイミングと同時に明後日の方向から飛来してきた聴き慣れた男性音声の人物から繰り広げられた爆炎の強襲の一撃が開いたホルスのフレームの隙間に直撃し、ダメージを伴った影響か、ミラーのフレームが痙攣するように有機的に水面の波のように揺れだし、それがまるで生物の悲鳴声の様に変換されて鳴り響く。

 

「サム無事だったか!それにしても...まさか効いてるのか?」

 

【ダメージは効いてる様ですがまだ足りません。あの飛行体の砲口らしき場所への集中攻撃を推奨します】

 

 無人機群の始末を終わらせてきたのか、そのまま直接ホルスに攻撃を仕掛けていったサムがソーマ達に敵の弱点を周知してくれた。どうやらホルスのフレームが開いて砲撃形態を取るときに見えてくる剥き出し部位の砲口を狙わないと完全に破壊は困難な様である。

 

「兄弟、生きてるかッ‼︎」

 

「ブートヒル!アンタも無事だったか!」

 

 司令塔の入り口で囮役をやっていたブートヒルがヴルムの背中に乗って此方まで飛来してきたのを発見し、散り散りに別れていた仲間達が完全に合流し、全員がホルスの目の前で集まる。

 

「サム、ブートヒル、銀狼。親玉は撃破したがコイツが一番最後の難敵だ。コイツを止めなければネモ・テラの星の住人はコイツにまとめて焼き滅ぼされる。仕上げの仕事だ、コイツの開く装甲の中身と砲口を狙え。それで有効打が与えられる」

 

「空飛ぶラブリーストーンが相手ってか。ハッ、雑魚狩りよりはやりがいがありそうだな」

 

【私が敵の意識を誘導します。ミスター・ソーマと銀狼は敵の砲口に攻撃を仕掛けてください。お願いします】

 

「あ、私片手を怪我してるから止め役、ソーマに譲るね〜」

 

「結局最後の火力頼みは俺かい...。ま、仕方ないか。それじゃあ...仕掛けるぞ!」

 

 ソーマの作戦開始の合図と共に一気に散開し、飛行するサムとヴルムに跨ったブートヒルがホルスの意識を逸らすためにヘイト攻撃を仕掛けていく。当然ホルスの特殊装甲に阻まれて全くダメージが通らないが別にそこは重要ではない。

 執拗なヘイト攻撃で苛ついているのか拡散レーザーでもなかなか迎撃出来ない敵に剛を煮やして遂にホルスの特殊装甲フレームがスライドして中身が剥き出しになって行く。

 どうやら敵は主砲の照射レーザーを撃ち込み、周りの敵をまとめて爆風などで巻き込んで一網打尽に吹き飛ばす魂胆らしい。

 だがそれでいい、それが初めから狙いだからだ。剥き出しになった隙間からギョロギョロした眼球の様な砲口が現れ、チャージモードへと移行し、最大出力へと段階的に近付いて行く。

 

「それじゃあソーマ、しっかりと決めてきてね♪」

 

「変にプレッシャーかけるのやめてくれ...発射まであと数秒カウントか」

 

 銀狼が砲口の注意を逸らす為に飛行しながら挑発攻撃を仕掛けている間にソーマは対極の陰月を取り出し、投擲する様な姿勢を構える。2対の先端同士が有機的に動き、捩れ合う様に変形し、より長く、より長大な大槍形態となる。

 ホルスの砲口にしっかりと狙いを定め、意識の中でカウントダウンを測る。一番確実に敵にダメージを与えられるのは発射寸前になりかけているタイミングである時が最も理想だ。外したら次のチャンスが有るかは分からない...だからここで絶対に当てて見せる。

 

 

 

 

 

 

 

(5…)

 

 

 

(4…)

 

 

 

(3…)

 

 

 

(2…)

 

 

 

(1…)

 

 

 

(0…ッ!今ッ‼︎)「全員、全力退避だッ‼︎」

 

 

 

 

 

 

 

 

 その場にいた銀狼達に素早く退避指示を送り、カウントダウンを終えたタイミングで手にした対極の陰月を極端まで崩壊エネルギーで身体強化した右腕で全力投擲する。

 全身全霊で投擲された禍々しい陰月の槍が爆発的な運動エネルギーによる衝撃波で巨大なソニックブームを発生させながら雷撃のようにホルスの砲口へと吸い込まれて行き、勢いよく突っ込まれた陰月の槍がホルスの砲口内へと深く入り込む。

 

「これで...終わりだッ‼︎」

 

 投擲を終えたソーマが片手を伸ばし、手のひらを強く握りしめるような仕草を決めると同時にホルスの体内から無数の禍々しい槍のような針山が内側から外側を食い破るように突き出し、突き刺された針山のような槍の攻撃に痛さのあまり生き物のように機体が震え出す。そこから正八面体のフレームが熱で溶けて行く様に崩れ出し、甲高い悲鳴声の様な音を立てながら機械とは思えない変質ぶりを見せて異質な浮遊物は沈黙していく。

 

 この瞬間、遂にこの星にいる最大の脅威と呼べるもの全て破壊され、アナイアレイトギャングによる壊滅の置き土産はソーマ達による連合チームによって完全に駆除された。

 





・No.002001α個体ネーム「アトン」
 
 ネモ・テラ・オリジンにて配備されていた惑星間コントロールネットワークシステムブレインの初号機に当たる指令級AI。絶対的なネットワークシステムの命令件を持っており、本来はネモ・テラのテラーフォーミング、又は円滑なシステムコントロールや管理タスクなどを担当する割と重要な存在。見た目は男性型の構造体ボディをした姿で長期的な視野で星の国家体制管理をする長期的思考モデルな為、短期的思考があまり得意ではなく、同じブレイン級であるネイト型とは度々意見の対立があった。
 論理ウイルスによる汚染の悪影響で人間などの知性体に対して試練という名の戦いを強要させ、より人類に強い個体を選別させるという行為に愉悦を抱く厄介な思考回路を誕生させてしまった。尚、最終的に自滅こそしたものの、完全に消えたのは感染体の方なだけで感染前の自我データはバックアップサーバーにまだ存続しているのでアトンとネイトと共にまだ消滅はしていない。



・No.002012β個体ネーム「ネイト」

 ネモ・テラ・オリジンのブレイン級AIであるアトンに続く指令級2号機。アトンとは異なり、軍事や防衛などの外部からの自衛を目的としたブレインタイプであり、元々は年々から活動が活発化している反物質レギオンなどといった脅威に対処する予定だったが、皮肉な事に壊滅の手先による置き土産によって感染し、積極的に知的生命体を淘汰するような思考回路を取るようになる。見た目は、女性型の構造体ボディをしており、防衛や戦闘を主体とした思考モデルな為、短期的思考が得意となっている。
 アトンと同じく付いている型番らしき番号は製造された年月を刺しており、星暦の年代時期をさしている。



・正八面体型決戦兵器「ホルス」

 ブレインAI達によって起動させられた決戦兵器。アトンがソーマ達を意図的に最後の殲滅ゲームによるステージへ誘導した際、仮想空間のままだと嘘を吐き、ステージLv.100は正真正銘本物の実物でガチの殺し合いゲームを知らず知らずのうちにやらされていた。
 元々は対反物質レギオンなどの壊滅勢力の敵を殲滅するための決戦兵器で、赤紫色をした正八面体装甲フレームから除く眼球の様な砲口から繰り出す照射レーザーは最大射程5000万km程まで及ぶヤバい代物の超兵器だったりする。正八面体の外側のフレームは液体金属素材が使われており、偏光ミラーシステムまで導入されている事で砲口も無い表面からいきなりレーザー弾を放出する事が可能で一度に最大108体分のマルチロックレーザーを照射可能。
 未知の科学技術が使われており、機械と思われる筈だが中身が有機的な部位が見え隠れしており、ソーマ達からの攻撃ダメージで生き物のような悲鳴声のような音を発していたことから生体兵器の類では無いかとも言われている。
 元ネタは新世紀エヴァンゲリオンに登場する使徒ラミエルがベースとなっている。
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