今回から私の要望に応じてくれた一部の読者様から頂いたアイデアを活用したオリジナル要素のある設定をアレンジして加えていきます。素晴らしきアイデアをリクエスト出して頂いた読者様には深く感謝いたします。
ネモ・テラ星での無人兵器群の暴走テロ事件を解決し、無事依頼を達成したソーマ達はそれぞれ用を済ませたあと救援にやってくるカンパニーの艦隊が入港する前にさっさとトンズラすることにした。
ソーマはともかく、銀狼やサムあたりは星核ハンターとして指名手配されており、ブートヒルもかつてカンパニーに酷い目に遭わされ、恨んでいることもあって以前に何度かカンパニー関係でやり合った過去がある為、銀狼達と同じくカンパニーから逃れるために三人ともソーマとその場でまた今度と、お別れを告げた。
少し負傷した銀狼がサムに抱えられて飛行しながら帰還していってたが、急いでた影響で乱雑だったのかもっと優しく扱えと銀狼が文句を愚痴っていたのはご愛嬌である。
嵐みたいな去り方をした同業者達を見送りながら自分も星穹列車に帰還するかと帰還準備を始めるとソーマの通信端末から誰かからの連絡メール通知が鳴っていたことに気付く。
「ん?誰かからのメール?...って、丹恒からか。...もしや星やヴェルト先生たちの身に何かあったのか?」
少し不安になりながらも端末画面を操作して丹恒からの通知メールを開くとそこにはソーマ宛に応援要請を頼んでいる内容メールが発信されていた。
ー差出人:丹恒ー
【件名:ソーマへ】
[ソーマ、羅浮へと入港して数日経った星達との連絡が突然取れなくなった。現時点でも何が起こっているのか分からない状況だ。
もしそちらの仕事の件が済んでいたら羅浮に向かう為の捜索チームとしてオレと共に参加して欲しい。
疲れているかもしれない中すまない、よろしく頼む]
丹恒からのメールの内容だとカフカから提案された羅浮に向かうように依頼された話を受理し、星やなのか、ヴェルト先生あたりが羅浮の入港をしたようだが、現地人と遭遇してしばらく羅浮の探索と一番偉い人がいる神策府へ向かい将軍と呼ばれる人に会いに行く予定だったらしい。
しかし、数日してから突然まったく連絡が取れない状況が起き出し、通知が来なくなる前には、"薬王秘伝"や"絶滅大君"と言った危険な存在が動き出しているという話が伝えられており、それ以降から連絡が取れなくなっている事からおそらく例の名前を挙げてきた連中に襲われている可能性があるかもしれないと結論付けた丹恒がソーマに応援要請を送ってきたようである。
丁度帰還する予定だった為、ソーマは丹恒に急いでに帰ってくるとメール返信を送ったあと、すぐに帰還準備を始めた。
星穹列車内では丹恒が星達の連絡を取るための手段を模索していたが、解決策が見つからず、かろうじて仲間達が最後に残してくれたであろう映像通信には星達と星核ハンターのカフカと思われる連中とのやり取りのシーンを確認できた。
しかし...
「...ッ⁈不味い、この男は危険だ!まさか奴までここにきていたとは」
「丹恒、もしやこの男性に見覚えがあるの?」
同じく丹恒と鑑賞していた姫子が尋ねる。
「ああ...奴には過去に何度も襲撃をされた事がある。間違いなく奴だ」
「なるほど...この人が例の丹恒のことを狙ってた犯人ってことね...なら丹恒、アンタはどうするの?ヴェルト達を助けにいくのかしら?」
「ああ...流石にいつまでも俺の事情で仲間達を危険に晒すわけにはいかない」
「分かったわ。ただ...もし可能なら念の為ソーマにも連絡を入れた方がいいわ。丹恒ひとりで向かう事になるよりまだ安全よ。彼の用事が済んでればいいのだけど...」
その後、姫子からの提案で丹恒は別任務中のソーマに可能ならヴェルト達の捜索活動に協力してもらうようにメールを送ってみたところ、運良く向こう側も任務を終えてきたのか直ぐに向かうとソーマから快く快諾をしてくれた。
ソーマが直ぐに合流できる事を確認した丹恒は姫子にその事を報告し、自身はすぐに羅浮へ向かう為の下準備を始めた。
「♪〜...ハァ、なのか達は大丈夫なのかえ?【コンコンッ!】のわっ⁈な、なに奴じゃッ⁈」
日頃の業務である列車内の清掃整理作業をしていたパムがなのか達の身を案じて物思いに耽っていると、突然列車の外から窓を叩くような音が聞こえ、思わずパニックになる。近くの物音が聞こえる場所に視線を向けるとなにやら列車の外側にいる人影がパムにコンタクトを取ってきていた。
「って...も、もしやソーマか?というより何故お主は外にいるのに平気なんじゃ⁈」
《ごめん、列車内に入れてくれ》←(手で合図)
パムによって帰還してきたソーマを迎え入れた後、丹恒になのか達の捜索の手助けを求められたので急いで帰ってきたとパムに告げた。
「そういう事なら丹恒はもう準備ができておるぞ。しかし、大丈夫か?帰ってきたばかりで疲れてるのではないか?」
「大丈夫だよ。あと4、5回くらいの戦闘をやっても平気なくらいさ。それで丹恒はどこに?」
「俺ならここにいる。すまないソーマ、あまり無理をさせたな、まだ行けそうか?」
「大丈夫だ問題ない。とりあえず先生達に会いに行こう」
「分かった。では姫子さん、パム、行ってくる」
「無事に帰ってくるのよ」
「なのか達を頼むのじゃ!」
「とりあえず羅浮に着いたけど...人の気配があんまり無いな。もしかしてカフカの言っていた星核関連とかか?」
「おそらくそうだろうな。ただ今の俺たちは羅浮が入国制限をかけている状況で入港してきた密航者でもあるからあまり下手に目立つ行動はしないように頼む」
羅浮に到着し、"流雲渡し"と呼ばれる場所に降り立った丹恒とソーマの周りには港らしきエリアが見えていたが例の星核による騒動や被害が出て住民達が既に退避いるのか人の気配がなにひとつなかった。
仕方ないのでソーマ達は現地人がいる場所まで警戒して移動しながら散策をしているとなにやら人影を見つけ、よく見るとその場で二人組の男女が何やら未知の敵?らしき存在に襲われていたのが確認出来た。
「人が襲われてる⁈」
「話してる暇はない、急いで加勢するぞ‼︎」
敵の数が多いのか、襲われている男女の二人組が己の武器で応戦しながら戦うもジリジリと追い詰められていた。
しかし、そこで偶然その場を見かけたソーマと丹恒がすぐ様加勢に入ったことで死地を免がれる。
「そこのふたり!加勢に入るぞ!」
「...ッ⁈って異郷の人?あ、ありがとうとにかくコイツらの鎮圧に協力して‼︎」
「了解だ」
「助かるよ。ならば僕は君達の援護に入ろう」
「...?これは...」
救助した金髪の男性からの不思議な治癒の術を受けてソーマを含む三人で襲いかかってくる敵の集団を蹴散らしていき、人数が2倍になった事で危なげなく余裕で鎮圧にすることに成功した。
敵の殲滅後、倒れた敵の遺体を観察しながらソーマは丹恒と共に救助した二人組から情報を聞き出すことにした。
話によれば目の前にいるうちの女性の方は名を"素裳"といい、この羅浮に存在する雲騎軍に所属する兵士の一員らしい。そして肝心のもうひとりの男性は名を"羅刹"といい、背中に大きな棺を背負った金髪の行商人というあまりにもクセの強い外見をした人物だった。どうやら羅刹は羅浮への行商目的で訪れた際に星核による騒動に巻き込まれた際に先程戦った"魔陰の身"というものに堕ちた元兵士達に襲われ、そのとき魔陰の兵士から住民を逃がす為の任務に来ていた素裳が偶然発見したことで先程のような状況に陥ったという事らしい。
「...」
「あれ?私と彼を見てるけど...何か気になることがあるの?」
「ッ...ああ、いや何でもないよ。ほんとに何でもないから...」
(まさかの次は「李素裳」さんかよ!っていうか名前まで同じすぎだろ...服装以外全く見分けがつかないんだけど...なんか羅浮の雰囲気が神州に似ているなと思ったらすぐにこれだよ。あとは...)
目の前にいる少女が完全にソーマの故郷にいる天命に所属している李素裳という戦乙女にそっくりであり、また仲間のそっくりさんに辟易していたが、寧ろそれよりもその隣にいる金髪の男性の方がソーマにとってあまりにも見た目が強烈すぎて目が離せかなった。
...そう、似ているのである。いやあまりにも見た目や喋り方の雰囲気がまんま
もはや魂レベルでそっくりなのでは?と錯覚してしまう程であり、素裳の事が一瞬で吹き飛ぶ勢いであった。
「おや?そこの君、僕に何か?ハハ、もしや怪しい奴と思われているかな。素裳さんにも同じように警戒されたよ。やっぱり僕の喋り方って胡散臭いのかな?」
いや、アンタの場合は存在そのものが胡散臭いの塊そのものだと口から言いかけそうになるが何とか堪える。養父と服装以外、同じ見た目ということもあり、挙動不審になっていたソーマの様子に丹恒が心配を気にかけられたが、何とか平常心を保たせた。
その後は素裳と羅刹に自分の事を紹介しながらいつくるかもわからない敵からの襲来から逃れる為、素裳からの提案で安全圏である"工造司"と呼ばれる区域まで移動する事になった。
道中いくつかお互いに興味本位で会話が続き、素裳から覚えづらい漢字の名前のふたりよりソーマの方が簡単ど覚えやすいね、と軽口を叩かれるが、肝心のソーマは素裳との会話より羅刹に対してどう接したらいいか分からずあまり内心穏やかではなかった。
工造司のエリアにつき、住民が生活している所まで来れたのは良いものの、何やらこの地域も何やら魔陰の兵士や怪物達に襲われたのか、被災者や怪我人が溢れており、防衛している兵士まで疲れ切っている様子だった。
警備していた雲騎軍の一兵士から話を確認したところ、どうやら豊穣の勢力である"薬王秘伝"という組織が暴れ回っており、羅浮の"仙舟同盟"の1将軍である"景元"を含む巡狩の陣営が星核の騒動で暴れ回っている豊穣勢力を鎮圧しに回っていたという事らしい。
しかし、それとは別に羅浮内での騒動で更に新たな壊滅の勢力である"絶滅大君・幻朧"が密かに活動を始めているという話も出てきたのだ。その際、兵士の何人かが仙舟同盟の武官と行動を共にしている見知らぬ格好をしたナナシビトかも知れない異邦人を複数人見かけたという話からかなり近くにいるという情報も得れた。
「...済まないが僕はここで一旦止まることにするよ。僕は商人である以前に医師でもあるからね、ここまで怪我人が多くいる以上、無視はできない」
「私も雲騎軍に合流しないと。とりあえずここで一旦お別れだね」
羅刹が現地の怪我人を治療する為に残る事にし、素裳も雲騎軍に合流出来たので現職復帰しないといけない事になった。
「そうか、分かった。ではここでお別れだな」
「ああ、ちょっと待ってくれ。ソーマさん...君にこれを渡そう」
「え?お、俺に何か?」
羅刹から呼び止められたソーマが首を傾げると懐から薬品らしき飲料を取り出し手渡す。
「失礼ながら君の様子を観察させてもらってたんだがソーマさん、あまり肉体的にも精神的にも疲れが取れていないだろう?僕の治癒の術でもあまり効果が見込めてなかったから、気休め程度だけどコレを飲むといい。これは僕の護衛をしてもらったお礼さ、勿論お代は取らないよ」
「あ、ありがとう」
親切心で手渡された漢方薬を含んだ栄養剤と思われる飲料を見渡す。胡散臭い男だがその目は真剣にこちらを見据えていた為にその親切心に負けて飲む事にした。
しばらくすると薬の効果が効いてきたのか疲労感がマシになり、精神的な余裕が出来てきた。薬の効果に驚いていると羅刹は効いたのが目で見て理解出来たのか安心しきった顔を見せていた。
「良かった、栄養剤みたいなものだけど効果はあったみたいだね。これで僕は失礼するけど、また出会う事があったら商人としておもてなすよ」
素裳と羅刹に別れを告げ、ソーマは丹恒と行動を再開し星達を探す為の探索を再開するが、丹恒に先程のやり取りを気にかけられた。
「ソーマ、本当に大丈夫なのか?あまりあの男を信用してる訳ではないが疲労が溜まっていると聞いた」
「いや、大丈夫だ。あの人、どうやら本気で気にかけてくれてたのか自分の体質に合わせた回復薬を渡してくれてたみたいだな。胡散臭いのは確かだけど表情は真剣だったし」
「...そうか、それなら特に言うことはない。ただ何かあったら遠慮なく言ってくれ」
「ごめん、心配かけたな」
丹恒と共に移動しながらソーマは己の体の状態を再度確認する。ネモ・テラでの戦闘に加えて羅浮へ入港してからの連戦で疲労気味ではあるが、以前も似たような事は経験しているのでそこまでキツさはなかった。ただ...
(...体内の崩壊エネルギーの消耗が厳しいな。虚数エネルギーで代用しているとはいえ、やっぱり純正じゃないとガス欠になりやすいか...困ったな)
律者であるソーマにとって自身の身体を維持している崩壊エネルギーはある意味生命線とも言えるものだ。疲労が回復していない原因も正にこれである。
人間でいう所の血液であり、代用している虚数エネルギーはある意味輸血に近いものであるため、境界の権能でエネルギー変換をしようにも限界がある。近いうちに対策を立てないといけないのだ。
(またヘルタにお願いをするか...或いはヴェルト先生に力を貸してもらうか)
ソーマが自身の今後のことで対策を考えていると微弱に感じるここには存在しないはずの力の気配を感知する。
「...!これは...崩壊エネルギー?もしやヴェルト先生か!」
「どうした、もしやヴェルトさん達の居場所が分かったのか?」
「ああ、自分と同じ力の気配を感じた。...おそらくこの先だと思う。ただ一段と力の気配が強くなっている...もしかすると戦闘になっている可能性がある」
気配を感じた場所からはかなり離れており、ソーマと丹恒がその場にたどり着くにはかなり時間がかかる。しかし、ソーマには虚数ワープを用いた瞬間移動ができる為すぐにたどり着くのは可能だ。ただし、あくまでもソーマひとり分であり、力を消耗している今では丹恒まで一緒に運んでいくことが出来ない。
「ならばソーマが先に先行してくれ。お前が瞬間移動できる力を持っているのを聞いている、早く合流できるに越したことはない」
「大丈夫なのか?」
「気にするな。密航している身とはいえ、捕まるほどのヘマはしない」
「分かった、なら先に急がせてもらう!」
「頼んだぞ」
丹恒に別れを告げ気配を感知した場所までソーマは単独で急ぐ事にした。
「何よこれ...倒したのにゾンビみたいに復活してくるし!」
「丹枢...何故そこまで」
丹枢と呼ばれた人物であろう存在と対峙していた星となのか、ヴェルトは、目の前にいる彼女の不滅ぶりに警戒心をより高めていた。
ソーマが別任務で列車を離脱した後、星達は予定通りカフカからの提案であった羅浮への入港を果たし、星核の封印のために仙舟同盟の景元将軍や太卜司の符玄らと協力して問題ごとの解決に向かったが、その際にさまざまなことに関わった中で薬王秘伝の頭領である丹枢と呼ばれる人物と対峙することになり、符玄達と共に彼女の討伐を行うこととなった。
しかし、ここでまさかの討伐したはずの豊穣の怪物となった丹枢が再度復活したのだ。彼女は豊穣の力とは異なる謎の力を駆使して強大化し、周りにあった建木の枝を再生させながら新たな豊穣の怪物を自力で生み出すという豊穣の星神じみた奇跡を引き起こしてきた。流石にいくら力に自身のある列車組でも無限に湧いてくる敵を相手にするのは分が悪すぎた。
「ぐッ...お前達一旦下がりなさい!ここは私が阻止するわ!」
符玄が疲弊している星達を援護する為に法術を展開し、丹枢が使役する建木の怪物からの攻撃を防御するが、いくら彼女でも無限に湧く敵を防ぎ続けるのは至難の業である。ジワジワと結界が破られていきいくつかの攻撃が符玄の身体に直撃する。
「符玄ッ‼︎」
「ま、まだ...いけるわ!」
容赦なく更に追加で敵の攻撃が符玄に迫り来る寸前、何処からか飛来してきた鋭い槍の弾幕が迫り来た建木の怪物の身体をズダズダに引き裂き、伸ばしてきた枝ごと破壊されていく。
「ッ⁈この攻撃は...」
いち早く第三者からの攻撃の正体に気づいたヴェルトが振り向くと、上空から現れた虚数空間から登場してきたソーマの姿を見つける。
「ハアァァァッッー‼︎」
『なッ⁈何者ですかッ⁈』
丹枢が襲撃者の正体を確認する暇もなくソーマが突き出してきた陰月の槍に一瞬で串刺しにされてしまい、呆気なく無力化されてしまう。
しかし、彼女は再び謎の力で再び身体を再生させながら槍の拘束から逃れようとする。
『無駄ですッ。私のこの身に宿る"万願甘露"の力がある限り、薬王に等しい力を得られるのです!』
「自己再生するのか?だったら...‼︎」
ソーマは指を鳴らすと陰月の槍から虚数エネルギーを活性化させ、自身のもうひとつの力である蒼炎の力を発揮し、丹枢と周りの建木の怪物を巻き込んで全てを青い炎で焼き尽くしてしまう。
どれだけもがいても決して消えることのない不滅の蒼炎は彼女を焼き続け、終わりのない苦痛を与えつつけた。
『熱い熱いッ‼︎何故消えない⁈私の力でも相殺出来ないなんて!』
「蒼炎の力は決して消える事のない不滅の炎だ。俺の力が尽きる事がない限り消えることはない。この力を使わせた時点でアンタの敗北だ」
終わりのない業火の炎に焼かれ続ける丹枢を他所にソーマは星達の安否を確認する。
「星、なのか、ヴェルト先生無事か?」
「助かったよソーマ!」
「やはりお前がいると頼もしいなソーマ」
「さすが私の相棒、完璧な登場だね」
特に問題無さそうな星達の様子に安堵し、彼らと共に戦ってくれた符玄に向き直る。
「先生達を助けてくれてありがとう。アンタは?」
「私は太卜司に所属する符玄よ。仙舟同盟として星穹列車に協力同盟を組んでいるのだから当然よ。それでお前もナナシビトのひとりかしら?」
「ああ、仲間達の救援に向かった者だよ。ナナシビトのソーマ・アストラというんだ、よろしく」
星達と符玄の状態を確認した後、もうひとり共にいる協力者であろう狐族らしき女性に状況を聞く為に声を掛けようとすると、ソーマの攻撃で無力化されていた丹枢が恨み辛みを吐き出すように狐族の女性を睨みながら言葉を吐き捨てていた。
『ま、待ちなさい...まだ!薬王秘伝は...私達はまだ...ッ!"幻朧、絶滅大君"...いつまで眺めているつもり?...約束を果たしなさい...いま!ここでぇッ‼︎』
「...?アイツ何を言って」
丹枢の吐き捨てた何かを訴えている台詞に困惑していると、そばにいた狐族の女性が無警戒に丹枢の元へと近付いていく。
「あ、おい!迂闊に近付いたら危険だ!」
ソーマやなのか達の制止を無視しながら近づく狐族の女性、停雲は今までの態度が変わったように黒幕じみた台詞を語り出す。
「絶滅大君...フフッ、本当にいい響き。恩人たち、彼女が何を言っているか分かります?にはさっぱりですわ?...全く、虫ケラが」
丹枢の近くまできた彼女はそのまま手をかざすと悶え苦しんでいた丹枢が糸が切れたように沈み、その周りにいた建木の怪物諸共、業火の炎で焼き消されてしまう。
「この肉体が壊れるその瞬間、内側から溢れ出る絶望と恐怖...それこそが最高に美しい破滅の芸術...素敵なことであろう?」
そう言いながらソーマ達に振り向いた停雲はあり得ないほどのショッキングな角度で首を曲げた後、糸の切れた人形のように倒れ伏し、体内から紫色の炎を噴き出したことで真の姿を表した。
『改めて自己紹介させてもらおう...妾こそは"絶滅大君、幻朧"。此度この地に訪れたのはこの仙舟に混沌を呼び、自ら滅びの道を歩ませる為よ』
「ぜ、絶滅大君⁈まさか停雲がレギオンの一味だったってこと⁈」
「...いや、仲間だったらわざわざ操り人形みたいなことすると思うか?」
ソーマ達の視点から見れば明らかに用済みとなった停雲と呼ばれる狐族の女性を使い捨てるつもりで彼女の首をへし折ったようにしか見えなかった。
おそらく、幻朧ははなから彼女を操って乗っ取る為に偽装した身代わりの肉体代わりだと考えられる。
正体を表した絶滅大君・幻朧が置き土産に残した魔陰の怪物達を何とか殲滅したが、結局逃げられてしまい、ソーマ達は新たに現れた敵を早いごと対処しなければならないという問題ができてしまった。
「ところでソーマ。お前は羅浮まで一人で来たのか?」
「いや、丹枢と共に来てたんだ。俺の方でヴェルト先生達の気配を感じ取れたからひと足先に行ってくれと丹恒に頼まれた」
「そうなのか。それにしてもどうやって気配を感じ取れたんだ?」
「あれ?先生が力を駆使する時に崩壊エネルギーを使ったりしなかった?」
「たしかに力を行使したが、かなり微弱なものだぞ?大半は虚数エネルギーをメインに使っていたんだが...」
「え?それじゃあ俺が感じ取った崩壊エネルギーの気配はいったい...」
ヴェルトとの相互確認のズレに違和感を感じていると先程まで丹枢が倒されたはずの場所にふと見慣れない薄っすらと光る謎の物体を発見する。
「あれはいったい?」
謎の物体がある場所まで移動して例の正体不明のアイテムを拾い上げてみた。見た目は何やら赤紫色に輝く結晶石のような美しいクリスタルと言ったような代物だった。
ソーマが手にしてしばらくその結晶を眺めていると突然自身の意識から何らかの存在しない謎の記憶映像が流れてきた。
「ッ⁈あ、頭がッ...!これは...まさか丹枢って人の記憶なの...か?」
全く見たことも聞いた事もない羅浮の風景であろう記憶が一通り流れ終え、ようやく謎の怪奇現象から解放される。
「ッ!ハァッ...ハァ...何だったんだ今の。いや...それよりも!」
ソーマはもう一度この怪しげな光を放ち続ける謎の結晶石を注意深く真剣に観察する。
「やっぱり...間違いない。...でも、この世界には存在しない筈。何故...何故コイツから"崩壊エネルギー"が出ているんだ...?」
この宇宙では法則上、存在は確認されていない筈のエネルギーが何故ここに存在していたか、何故丹枢がこのような代物を手にしていたのか...新たに増えた不可解な未知の存在に頭を悩ませるが、この場でその真実を教えてくれる者は誰一人いなかった。
ソーマ・アストラ(情報2)
彼が持つ律者の権能は終焉に並ぶ程に強大であるが、それ故にその権能を最大限に駆使する為には膨大な崩壊エネルギー(或いは虚数エネルギー)を必要とし、複雑で規模が大きいものであればより消耗が激しくなる。
しかし、元の世界から離れ過ぎた彼は終焉の繭から離れた影響でバックアップを受けられず、本来の権能のパワーのうちたったの5%しか発揮することが出来ないとされる。
ただし、何らかの手段で外部から崩壊エネルギーに近い性質のエネルギーを供給出来れば本来の律者としての戦闘力を再び復活させることが可能となる。