星達の無事を確認出来たソーマはまだ合流出来ていない丹恒を迎えに行くためにヴェルト達に一言伝えに行った後、すぐに丹恒の元へと向かった。
「...いったい何が起こってるんだ?」
仲間達の居場所と無事を確保出来たソーマはまだこちらを追っているであろう丹恒の元へ帰還したが、本人を迎えにいった先で全く知らない先客のおそらく男性と思われる二人組の仙舟人と丹恒がお互いに対面しており、何やら一触即発と言った重々しい雰囲気を放っていた。
「丹恒ッ!」
「...ソーマか。まて、これ以上迂闊に近付くな、奴は危険だ!」
丹恒が向かってきたソーマをこれ以上近寄らせないように手を遮っていた。丹恒が手で遮っている先には前髪で隠れた鋭い眼光を光らせている長髪の長身男性がおり、丹恒の隣近くには背の低い金髪の華服を着た少年が片手に剣を構えており、鋭い眼光を放っている男に武器を向けていた。
長髪の長身の男はソーマの気配に気付くと一瞬此方に視線を向けるが、何かを呟いた後しばらくしてすぐに丹恒の方へ視線を戻す。
「...ここに"あの者"が来るのは想定外だが、まぁいい。先ずは...貴様からだッ...!」
「なッ⁈待てッ‼︎」
おそらく例の不気味な男と対立してるであろう少年は男の突然の攻撃行動に意表を突かれ、丹恒への攻撃を許してしまう。槍を持って防御する丹恒に対して手にした赤い刀身のヒビ割れた剣で容赦ない剣撃を浴びせていき丹恒を容赦なく追い詰める。
慌てて仙舟人の少年が割って入り、手にした剣で迎撃するが、男はなりふり構わず手にした剣を少年を無視して丹恒に目がげて全力で投擲し、刀身が深く丹恒の左肩に突き刺さってしまう。
「丹恒ッー‼︎」
「ッ!よくもッ...」
攻撃を許してしまった事で少年は男を睨み、ソーマの方は急いで丹恒の元へ駆け寄って行くが、途中から丹恒の様子に変化が訪れた。
「ふん、ちょうどいい。お前たちに教えてやる。そこに居るのはかつて十の悪逆を犯せし者...仙舟を裏切り、大乱を起こし、永世に追放された罪人...」
男の語りに合わせて変質していく仲間であった丹恒の姿にソーマは動揺を隠せないでいた。
「丹恒...その姿は...いったい」
変わり果てた丹恒らしき人物に長髪の男、"刃"はその正体を代弁する。
「持明の龍尊..."飲月君"だ...!」
水の渦に飲み込まれるように包まれて現れたのは長く黒い長髪と二対の龍のような角を生やした仙人のような衣装と雰囲気を見せた丹恒であろう変わり果てた姿であった。
「仙舟に潜り込んだのが星核ハンターだけかと思ったか?」
「星核ハンター...⁈まさかアンタもカフカの仲間だったのか⁈」
「何だ?奴から教えてもらってないのか?」
迎えに向かった筈の仲間である丹恒が何やらよく分からない存在に変身していたり、星核ハンターを名乗る謎の人物である刃に出会ったり、何か知らない因縁に巻き込まれたりと情報の波に混乱するが、その騒動に同じく巻き込まれた少年、"彦卿"も混乱した状況を見て間違いなく刃が敵である事を認識し、彼らに剣を向ける。
「まさか星核ハンターにかつての大罪人まで仙舟に潜り込んでたなんて...ならば、まとめて捕らえて将軍様に差し出すまで‼︎」
彦卿は冷気を帯びた氷の剣を複数飛来させ、丹恒達に剣を向けて攻撃を開始してきた。何故かソーマまで巻き込まれて...。
「いや待って!まだ何もしてないのになんで俺まで攻撃されてるのッ⁈」
「無駄口を叩くな。構えろ小僧」
「小僧じゃなくてソーマだッ!」
「ソーマ、奴とはこれ以上関わるな」
迫り来る彦卿の氷剣の弾幕攻撃に翻弄されるも、境遇は大きく違えども三人とも戦闘の玄人であり、まだまだ戦闘経験が荒削りな彦卿のトリッキーな飛び道具を生かした剣技を軽々とソーマ達は対処していく。
丹恒(飲月)が仙術を生かして遠距離から攻撃を仕掛け、迫り来る彦卿の氷剣の弾幕をソーマの召喚した結晶槍でまとめて相殺し、刃が一気に距離を詰めて鋭い剣撃を仕掛けていくという、無駄の無い連携で彦卿を追い詰めていく。
「ぐッ...僕は...まだ負けてないッ‼︎」
「もういい加減降参してくれ。俺たちは別にアンタをどうこうする気はない。というか俺、何もしていないよね?」
「...たしかに。いや、でも!そこに居る罪人たちと関係がある時点で怪しいよ!」
「く、強くい言い返せない...!というか、た、丹恒...だよな?お前、いったい何をやらかしたんだ」
「それは...」
「ふん...過去を忘れ、のうのうと生きている奴にそんなことを話せる度胸なんぞあるものか。..."白珠"の事を忘れたとは言わせんぞ、丹楓」
「ッ...」
彦卿を追い詰め、ようやく落ち着いたかと思えば今度は刃と丹恒(飲月)との間で気不味さと一触即発の雰囲気を見せ始めたタイミングで第三者からの介入が割り込んで来た。
「ハイハイ、もうやめなさい。刃ちゃん、それまでよ。皆んな『聞いて』、『武器を下ろして』」
新たに現れた声の主であるカフカが現れ、仲間である刃に命令を指示すると、先程までの剣呑な雰囲気は霧散し、嘘みたいに静かになる。それに伴って全員呼応するように武器を下ろした。
「刃ちゃん、満足したかしら?」
「...」
刃が大人しくなったのを確認したカフカはソーマ達の方に向き直る。
「アンタは...カフカか」
「また会えたわねソーマ。あの子達とは仲良くやれたかしら?」
「銀狼とサムのことか...別に、仕事通りに足並みを揃えただけだ」
「そう、それは何よりね」
「カフカ、お前たちは何のつもりでここに来た?」
「ウフフ、そんなに警戒しないで。これから来るお客さんたちに貴方達の恥ずかしい光景を見せるわけにはいかないもの」
「お客さん達?」
カフカの口から出たお客さん達という存在に疑問を感じていると、しばらくして別方向から複数人の雲騎軍の兵士を引き連れて来た景元将軍が現れて来た。
「これはまた随分と懐かしい旧友達に出会えたね。...もっとも何とも気不味い雰囲気ではあるが」
仙舟同盟の将軍の内の一人である景元は旧友と呼んでいる刃と丹恒に幾つか懐かしむようにしばらく会話をやり取りした後、星核ハンターであるカフカと刃を彦卿含む兵士達に連行させた。どのような形であれ、星核ハンターは犯罪者である以上、仙舟の将軍として見過ごせない事なのである意味当然ではある。
景元達のデリケートな仙舟の問題事に理解出来ずに置いて行かれている中、話を終えたのか景元がソーマの方に向き直る。
「やあ、星穹列車のナナシビトさん。まだ君とは自己紹介をしていなかったね。私は景元。仙舟「羅浮」の神策将軍、そして帝弓の七天将の一人だ。...なんて堅苦しい挨拶はここまでにして...現状を説明させてもらうと君達ナナシビト達の協力で仙舟での厄災のひとつを押し留める事が出来ている。ただ、まだ問題事は解決出来ていない」
「そうだったのか...。あ、俺は星穹列車に所属するソーマ・アストラだ。ソーマと呼んでくれで構わない、景元将軍殿」
「景元と気軽に呼んでくれて構わないよ。丁度、君の仲間たちを符玄にお願いして"鱗淵境"という場所にまで案内している。...例の絶滅大君・玄朧がいるであろう場所だ」
「絶滅大君・幻朧か...やっぱりソイツを倒さないと状況は解決しない感じか?」
「逆に言えば、彼女を討伐出来れば連動的に敵の残党は烏合の衆となる。私達の頑張り次第だね」
「なら星達とすぐに合流しないと。...あーその、丹恒は...どうするんだ?」
「...もちろん、仲間達を助けに行く。今の俺は丹恒としてここに立っている」
「なら問題ないね。では、皆急ぐとしよう」
丹恒を迎えに行った道中思わぬトラブルに巻き込まれたが、一旦丹恒の無事を確認し、景元達と共に星達が今いる鱗淵境まで移動を急がせた。
その道中、戦闘があったのか羅浮の地にはいない筈の反物質レギオンの屍が幾つか転がっており、やはり間違いなく黒幕である絶滅大君・幻朧の正体は壊滅の星神ナヌークの仲間である事が確定した。
海の底にある鱗淵境ではあるが、そこは飲月の姿となった丹恒による龍尊の力で海を二つに割り、鱗淵境の入り口を切り開くことに成功した。尚、初めて見た丹恒の真の姿になのか達はかなり驚いていたが星が丹恒の容姿を見てホントは美少女だったのかと勘違いされ、丹恒が困惑してたのはここだけの話。美形ではあるのは確かではあるが...。
「凄いな...まさか海底にこんな遺跡があったなんて」
「もしかして隠されたお宝があるとか?」
「確かに面白そうだが、それは敵を倒してからだな」
いつも通りの調子で鱗淵境内の探索を行い、周りにいた絶滅大君の取り巻きを排除した後、遂に黒幕のいる時空の空間世界にたどり着く。
ー鱗淵境内ー
『フフフ、よく参られたな客人達♪皆、この美しき肉体を見よ...豊穣の業、確かにその名に恥じぬ。この肉体で何が出来るか試そうではないか♪"瑞麟"よ、主も働くが良い』
ソーマ達の目の前に現れたのは此方の10倍以上もある巨大な妙齢の美巨女と麒麟のような生物が出現する。
周りには豊穣の力を利用した玄蓮を生み出し、噴き出てくる玄蓮の黄金の花粉がこちらの生命力を吸い取るように影響を与えてくる。
瑞麟と呼ばれた麒麟と思わしき生物が黄金に光る毛並みの身体を揺さぶりながら前足を地面に叩き付けると玄連の花が激しく光出す雷撃に打たれ、蓮の花が禍々しい食虫植物のような怪物へと置き換わる。
「うわ...なんかキモいかも」
「あんな触手みたいな花のバケモンが相手かよ」
「種子マシンガンでも撃つのかな?」
「各員、油断するな!特にあの花には迂闊に近づくな!」
ジワジワと迫り来る花粉と触手のような枝の柱が襲い掛かり、星達は互い武器を構えて応戦を開始する。
各自が幻朧が仕掛けてきた玄蓮の花の怪物を相手している中、ソーマは幻朧とは別に瑞麟と呼ばれたもう一体の麒麟を警戒し、星達が幻朧の相手をしている間に此方を最優先で仕留める事にした。
ソーマが両手に装備した二丁拳銃を乱射すると瑞麟は攻撃に呼応したように身を振るわせ身体から放電を始める。
すると先程まで放った弾丸が見えない電磁波の壁に阻まれて全てが無力化されてしまう。
「防御してるのか?」
しかし、てっきりソーマからの攻撃を防御したかと思えばいきなり瑞麟は助走をつけて瞬間加速したかのような神速の速さでソーマに迫り来る。
「ヤバッ⁈」
咄嗟に斜め横へジャンプ回避した事で紙一重で助かるが、ソーマの頬に僅かな切り傷が残る。直ぐに瑞麟が過ぎ去った場所へ目を向けるそこには残像を残すように空中を電光石火の如く走り回り、此方に襲撃を掛けようとする敵の姿があった。
激しく雷撃を放って突っ込んでくる瑞麟をソーマは回避しながら今度は虚数の結晶槍で迎撃していく。どれだけ撃ち込んでも弾幕が跳弾するように弾かれ、中々ダメージを通す事が出来なかった。
「チッ!素早いうえに硬いと来たかッ...だったら!」
このままでは拉致が開かないと判断したのかソーマは虚数空間を利用して高速機動で動き回る瑞麟を奇襲戦法で回り込みながら大剣形態にした陽月をタイミングよく瑞麟に叩き付ける。
「ッ⁈」
叩きつけた大剣の歯応えが感じないと思ったら瑞麟の頭部に生やしている大きな角が完全に剣撃を受け止めており、逆に角から放電する斬撃の刃がソーマにダメージを与えていく。
「ソーマッ!」
危機に気がついた丹恒が仙術で水流を発生させ、瑞麟を叩きのめそうとするが、すぐに逃げられてしまい、玄蓮の花が枝を伸ばして襲いかかって来る。丹恒の水遁の術では仕留めきれない豊穣の枝を負傷したソーマが素早く蒼炎の業火でまとめて焼き尽くし、迫り来る枝を全て焼き切る。
「無事かソーマ」
「ああ、大丈夫。...アイツを捕まえるのは至難の業だ。どうしたものか...」
捕えられない硬くて厄介な敵をどう攻略しようか悩んでいると、ソーマはある策を思い付き、丹恒に伝える。
「丹恒、協力をしてくれるか?」
「...分かった。なら、俺が奴の動きを押さえる」
「頼む!」
作戦を思いついたソーマは律者形態に変身し、瑞麟に向かって一気に猛攻を仕掛けていく。自身の指先から光る物を放出しながらしつこく瑞麟を追いかけ回し、あえてジグザグに逃げ回るように飛び回る。
しつこい猛攻にイラついたのか瑞麟は自身の角から膨大な雷を放電し、飛び回るソーマを攻撃するが、召喚した結晶槍を盾代わりにして軌道を逸らしレーザーの弾幕を撃ち返す。
が、当然瑞麟の放電バリアで打ち消されてしまう。だがそれでいい...それが目的だからだ。ある程度追い回した後、しばらくして丹恒が巨大な水球の塊を完成させ、それを瑞麟に目掛けて解き放つ。
【ッ⁈】
丹恒からの攻撃に気付いた瑞麟が直ぐに回避行動を取るがソーマの妨害により本人諸共水球の中に引き摺り込まれる。水中で瑞麟は直ぐにその場を離脱する達に雷撃で身体を加速させようとするが、本人の体に何かがまとわり付く。
【?】
瑞麟が眼を向けるとそこには薄っすらと光り輝くワイヤーのような光の糸が瑞麟の身体にいくつもまとわりついていた。
「よし、掛かった‼︎」
ソーマがコッソリと瑞麟を追いかけ回しながら張り巡らせた光の糸を蜘蛛の網目のように忍ばせ、丹恒が放った水遁の術を駆使する事で水の中に引き摺り込み、動きを鈍らせ意識を逸らすという作戦である。
そして今も尚もがきながら脱出しようとする瑞麟を逃さずソーマが手にした光の糸で引っ張り上げると暴れ出す瑞麟の身体を完全に締め付ける。
それでもなお悪足掻きをしながら体内から雷の力を解き放つが何故かうまく制御出来ずに雷撃が分散してしまう。
「無駄だ。俺の水遁の術で展開している限りお前の雷撃は撃てない。純水の中でなら尚更無理だ。諦めろ」
豊穣の指令である瑞麟は遂にソーマと丹恒の連携によって完全に無力化されてしまう。
一方で星達含む景元側は、豊穣の力によって不滅の肉体を持つ幻朧の油断を誘う為に景元が囮になり、幻朧に捕えられているタイミングで不意打ちを仕掛けることで身体の制御を奪われ壊滅の力を注ぎ込まれる景元の肉体に星の持つ存護の槍をの背中から突き立てた。
そのタイミングと同時に景元の化身である「神君」の刃を幻朧の背中に突き立てたことで幻朧と建木の力の繋がりが断ち切られ、本体である歳陽の肉体も大ダメージを受けて実体を失ってしまう。
『...まさかこのような奇策でやられようとは。しかし妾は肉体を失っただけで死んではおらぬ。いずれはまた新たな壊滅の火種を撒き散らしてやろうぞ』
肉体を失った幻朧が負け惜しみのように言葉を告げると、配下である瑞麟に自身を連れて行くように訴える。
『何をしておる瑞麟、早く妾を連れて行かぬか。お主程度ならそのような拘束なぞ他愛も無いであろう?』
幻朧が瑞麟に訴えかけるが、まるでやる気がないかのように無反応だった。反応の無い瑞麟にイラつくがようやく沈黙していた本人が動き出す。
【妾、もう飽きた】
「「「しゃ、喋ったあああああッーーー‼️」」」
この黄金色の麒麟、ただの幻朧の配下かと思えばまさかの自分から喋り出したという強烈なインパクトを見せ、その衝撃で列車組全員が固まってしまう。
たしかにソーマの相棒であるヴルムも会話は可能ではあったが、あくまでも人型だったとき限定であり、人型でない生命体で人語を喋る個体は生まれて初めてであった。
『何のつもりじゃ、瑞麟。碌に語らぬくせに何を言い出すかと思えば』
【そりゃあ、妾が喋ったら貴様と口調が被るであろう?コレは妾なりの配慮じゃ。...というか妾はそもそも豊穣の指令であるし、貴様の命令を聞く義理もないのじゃが?】
『...フフフ、随分と態度に出たな畜生めが。やはり主も丹枢の失敗作に過ぎぬか。まぁよい、どの道持て余してた所じゃ、勝手にするといい』
興味が失せたように幻朧は実体の失った歳陽の炎の身体で何処と去ってしまう。
【ふう...あの五月蝿い壊滅の狂信者も去ってくれたし、妾もお暇させてもらうかの】
そう告げた瑞麟は先程までの丹恒とソーマからの拘束を何事もなかったように簡単にすり抜けて自由の身になってしまう。
「加減されてたのかよ。とんでもないヤツだな」
【いやぁ、お主も中々悪くはなかったぞ♪久々に骨のある童に出会えてよい経験となった。せめてお主が種馬であれば文句なしの好みじゃったがの〜】
「え?な、何言ってんだアンタ?」
【まぁよい、お主からは"妾と良く似た力"を感じる。もしや何か深い縁があるかもしれぬな。また何処かで会うことを楽しみにしておるぞ】
ソーマにまた会おうと別れを告げた後、瑞麟も遅れて鱗淵境の地を飛ぶように去っていってしまい、ソーマ達だけがその場に残されていた。
「...とりあえず脅威は排除出来た...ということでいいかな、景元殿?」
「ああ、そうだね。途中でよく分からない事になっていたが...問題解決はしたってことでいいだろう」
「仙舟の霊獣って人の言葉を喋れたんだ...ウチ、初めてみたよ」
「いや...流石にあれは例外中の例外だろう」
「ねぇ、ソーマ。あの子捕まえてペットにできない?」
「出来るか!ていうか危険すぎるわ」
幻朧と瑞麟という壊滅と豊穣の指令達が去っていった状況を眺めながらソーマはこの羅浮の地で見つけた謎の疑問点を思い返す。
「丹枢といい、あの麒麟とかいう霊獣といい...まさか本当に"崩壊"と何らかの関係があるっていうのか?」
偶然見つけた謎の結晶石に先程、瑞麟が呟いた自身と良く似た力という不可解な台詞の繋がりが余計にソーマの疑問を沼に深まらせた。とりあえずこの事については、同郷のヴェルトと雇い主であるヘルタなどの信用できる人物達に頼んで調べてもらう必要がありそうだと考えを改める事で思考を切り上げた。
「...あれで良かったのか、カフカ?」
「何のこと刃ちゃん?」
景元将軍の配下に連行された後に隙を見て太卜司から脱出し、しばらくの間、長楽天の隠れ家にカフカ達は移り住んだ。その際、刃は疑問に感じた事をカフカに尋ねる。
「なーに?そんなに彼のことが気になったの?」
「誤魔化すな...別にそうではない。...だが奴は俺達が"過去に保護したときの記憶をまだ一部保持している"。...エリオの施し程度では限界ではないか?」
「確かにそうね、あの子と違って彼はあくまでも記憶処理程度の処置しかしていない...何らかキッカケで私達のことがバレてしまうのも時間の問題ね」
「...いつまでも他人のフリは通用せんぞ。...あといつまで続く?」
「少なくともエリオからはまだはっきりとは教えられてはいないわ。エリオも彼のことを予測するのは難しいんでしょうね」
「ふん、面倒なことだ...」
「大丈夫よ。彼がそばにいるおかげであの子の未来も安定化しているんだから決して悪い方向には進まないわ」
「だといいがな...」
刃はカフカから帰ってきた返答を聞いた後、興味が失せたように部屋を後にした。
【瑞麟】(読み方:すいりん)
絶滅大君・幻朧との戦いで配下としてソーマ達に襲いかかって来た敵?と思われる豊穣の霊獣。
その正体は、薬王秘伝の頭領である丹枢が手に入れた万願甘露と語るとある神聖物によって生み出された生命体。豊穣に連なる治癒や再生の力を持ち、彼女?が持つ大きな角や身体の一部は負傷者や天欠者の身体を癒し、失った肉体を再生させるという豊穣の薬神じみた秘薬としての効果を持つ。
幻朧とはあまり関係は良くなく、主人である丹枢が契約を結んだ関係上、協力しているだけであって、幻朧が敗れたことを契機に自分から契約を破棄することを選んだ。丹枢の遺体から発見された謎の結晶石に加え、瑞麟がソーマに語った類似した力という意味深な発言から崩壊に関連する秘密を抱えている可能性があるとされている。
尚、実は瑞麟以外にも丹枢が作り出した豊穣の霊獣がおり、もう一体は脱走した関係で現在は行方不明とされている。