本話は狐斎志異編のギャグコメディーよりの内容になります。また今回からさらに新たなオリキャラが登場します。
前回、星核ハンターによって提案された仙舟での星核騒動を解決する為に羅浮に向かったがそのドサグサに紛れて巡狩と豊穣、更には壊滅を含む三代勢力の駆け引きの闘いを繰り広げる形で途中参加したソーマと丹恒含む列車組はカオスな状況に巻き込まれてしまう。
その後は何とかして討伐すべき親玉である絶滅大君を撃破することに成功したことで羅浮の仙舟船団の問題ごとは何とか解決を果たした。
しかし、結局肝心の星核の居場所は特定出来ず、更には倒した敵の勢力が残した謎のアイテムを回収するなど余計に訳の分からない謎や禍根が残る形で騒動の幕は閉じた。
ただ危機を回避することに成功した事で仙舟同盟のお偉いさんや仙舟民からは大いに感謝され特別にしばらくの期間、仙舟での慰安旅行という形で滞在期間を過ごすことになった。
丹恒の前世の問題や、星達がお世話になっていた停雲の弔いなど、色々と気まずさや心傷に浸るような出来事を一通り経験していたなかで最近、星や羅浮でできた友人である素裳達からちょっとしたイベントのお誘いを受けることになる。
「はあ?肝試しをやらないか、だって?」
「そうそう!実はすーちゃんと一緒に動画ネタ探しで綏園(すいえん)に行ってきたんだけど...そこでなんと!青白い火の玉を沢山見かけたの!コレは絶対に見逃せない案件ネタでしょ⁈ソーちゃんもそう思わない?」
なんとも陽気で馴れ馴れしい感じで語る赤橙髪色のサイドテールをした女の子の名前は桂乃芬(けいないふん)。素裳の親友であり、普段は羅浮で大道芸人をやっている手品師みたいな感じであり、今回は趣味のライブ配信をやる為に素裳を拉致...もとい誘って肝試しをやりに行ったと言ったところだとか。
「だーれがソーちゃんだ。変なあだ名付けるな。...それで連れの素裳はどうしたんだ?いないみたいだけど」
「うーん、多分現場で倒れて失神してるかな?」
「いや助けなよ」
「大丈夫だって!ちゃんと十王司の人達に保護してもらったから!...あ、ほらあそこにいるでしょ?」
そこにはおそらく十王司の関係者達が気絶した素裳を乗せた担架を運んでいる最中だった。
「あ...ああ、ひ、火の玉が...火の玉がすぐそこにッ...!」
怪異の類に化かされたのか半白目を剥いたまま白泡吹くという間抜けな顔を晒した醜態姿をみんなに見られながらドナドナされていく素裳にソーマは哀れみを感じた。
元はと言えばこの場にいる桂(けい)が無理やり誘われなければ地獄を見ずに済んだものである。
しばらく戦線復帰できそうにない素裳に変わってソーマと星が代わりに桂と共に同行する事になり、しかたなく成り行きで肝試しに参加する事になった。
「え、え〜と、わ、私がこの綏園の調査を担当するフォフォです。い、一応十王司の見習い判官をしています。え、えーと...こっちの子はシッポです。うう...」(小声)
『オイ、フォフォ。人前で情けねぇツラしてんじゃねぇよ。仕事を任されたお前がビビってどーすんだ』
現地に着くと調査団の人たちに出会うが何やら自身の無さげな狐族の小柄な緑髪の少女と何故か空中を浮遊している青緑色の火の玉みたいなマスコットキャラの生首オオカミが飛び回りながらフォフォという少女にダメ出しを送っているという不思議な光景が目の前に現れていた。
「私は"寒鴉"。十王司の判官で、罪人の業を記録する仕事をしています...。そしてこの人は私のお姉ちゃんです。はぁ、喋るのは疲れますね...」(小声)
「...十王司の判官、"雪衣"です。寒鴉の姉です。罪人の拘束と尋問、『魔陰の身』に堕ちた者の誅滅を任されています。よろしく」(小声)
残りの正規の判官達はこれまた暗くてダークな雰囲気を見せているやる気のなさそうな灰色髪の根暗な目が死んだ魚のような瞳の女性と、対するは寡黙なショートボブヘアの黒髪で赤い瞳という余計なことを一切語らない仕事人みたいな人形な女性だった。
ただそれよりもソーマ自身が一番気になっていたことがあった。
(いや、声ちっっっさ...‼︎フォフォって子もそうだけど途中から何言ってんのか全然わからん!)
どう自己紹介を返そうか迷ったソーマはとりあえず雰囲気を彼女達に合わせることにした。
「あ〜、えーと...星穹列車のナナシビトをやっているソーマです。よろしく...」(小声)
「え?えーと...何かいいました?」
「声が小さい。もっとお腹から声を出してください」
「元気が無い人ですね...」
(アンタらが言うなッ!)
反論したい気持ちを抑えてお互いの自己紹介を終えた後、早速綏園の領地の屋敷に入っていく事になった。
ちなみに何故か星が真面目に挨拶せずにいきなりゴミの王(自称)を名乗ったり、やたらと守銭奴な発言をし出したりといつもの変人モードを発動させてたので締めておくことにした。
何故か桂は面白がって星をスカウトする勧誘をしていたが。
「ひ、ひとの気配は...ありませんね...」
「うーん、何もないよ?古い置物ばっかり...ゴミ箱だったらいいのに」
「あってたまるか。誰かが住んでる証明になってしまうだろうが」
綏園内の屋敷に侵入し、中身を覗きながら異常な痕跡がないかと確認していくが、特に変なものは見受けられなかった。その代わり、常にまわりから嫌な瘴気が漂っており、ソーマにはその不快感がずっと拭えていなかった。
「さっきから嫌な瘴気の気配を感じるんだけど何なんだこれ...」
「...ここには歳陽と呼ばれる悪霊の一種が漂っていますので、自我意識の弱い人はすぐに取り憑かれてしまいます」
「ひ、ひえぇ〜!わ、わかっていても怖いよ〜」
『ハァ...こんなんでやって行けんのかよ』
「なぁ...もしかしてシッポも歳陽だったりする?」
『おう?何だ兄ちゃん、俺様が気になるってか?聞いておどろけ、俺様は大歳陽として恐れられた燎原様だ!昔は羅浮の将軍共に一泡吹かせてやったからな。ガハハ!』
なかなかしれっととんでもない名前や過去話を持ち出してきたシッポだが今の姿はそんな威厳もへったくれもないまん丸なデフォルメされた生首オオカミというシュールな姿でしかないので全然歳陽のイメージが沸かなかった。
(もしかして、歳陽ってみんなシッポみたいな姿だったりするのか?)
「で、でもシッポは将軍様に討ち取られてい、い、今はこんな小さい姿なんだよね...」
『おいフォフォ、余計なこと言うんじゃねえ!いい加減にしねえと食っちまうぞ!』
「ひ、ひえぇ〜ッ!」
余計な一言を滑らせたせいでシッポを怒らせたフォフォはビビりながらすぐにソーマの後ろに隠れてしまう。そこからフォフォとシッポの鬼ごっこが始まり、ソーマのはふたりのイタチごっこに振り回されてしまう。
「あ、おいこんな所で走り回るなって...あひゃひゃッ!って、横腹を触るな!あ、ちょっと!」
「面白そう。私も混ぜて」
ソーマの体をすり抜けていくシッポから逃れようとフォフォがひっつき虫のようにチョロチョロと動き回るので盾代わりにされているソーマは身体元をペタペタ触られて変な笑い声を出してしまう。追加で星まで悪ノリで参加し始め、ただのおふざけ遊びになってしまう。
「あはは、ソーちゃんってばもうフォフォちゃん達と仲良くなったの?ちょっと撮っておこ〜♪」
ソーマ達のじゃれ合い(本当は巻き込まれ)を面白がって動画撮影を始める桂。雪衣と寒鴉の方は気に留める事もなく観察しながら仕事を進めていた。
しかし、綏園の主はそんな悪ふざけが気に障ったのか不気味な怪異を引き起こしてきた。
ガタガタッ‼︎
ーおどろケ...!...おどろケ...!ー
ータマシイを...よこセ...ー
屋敷内をガタガタと揺らしながら置物の備品が一部落ちて来るとしばらくして明らかに鬼火や人魂らしき火の玉の霊が飛び回っていた。全員が警戒しながらしばらくすると大人しくなったのか周りが一段と静まる。
「おお〜まさかこんなに早く撮れ高が撮れるなんて〜♪さっすがソーちゃん達だね...ってアレ?ソーちゃんどこに行ったの?」
「あれ、ソーマは?フォフォまでいないし」
『ほら見ろ、あそこに居んじゃねーか』
全員がシッポが顔を向けている先を見るとそこにはでかい壺に体を突っ込ませたソーマと引き出しのような箱の中にこれまた頭隠して尻隠さずな姿で隠れるフォフォと言った間抜けな姿を晒していた。
「二人とも何してるの?」
「何って...アレだよ、怪しい人魂がうろついてないか確認して...「ひえぇ...、こわい...ソーマさん場所変わって〜!」...」
「...」
「...」
「(スゥーッ)あ、あそこに歳陽の大群が〜(ガタガタッ‼︎)「ちょっ、フォフォあっち行けって!狭いから!」「ぜ、絶対嫌です!」...」
「ねぇ、ソーマ。もしかしてオバケがこ「違うけど?」え?」
「ぜんぜん違うけど?別に怖くないしあんな火の玉もどきなんて怖くねえしていうかぜんぜん大した事ないし!」
「めっちゃ早口でいうじゃん」
「え、なになに?ソーちゃんってばオバケがこわいの〜?」
「はぁ、何バカなこと言ってんだ?あんなもん大したことないないしビビってすらいね「ソ、ソーマさんもうここを離れよう!私達じゃ耐えきれないよ」...」
「もういい逃れできないね♪」
「...いっそ殺せ」
「いや物騒過ぎ!」
その後、ソーマがビビりである疑いが高まってきたタイミングでまた再び屋敷がガタガタと揺れ動きだし、またかと全員が身構えるが人魂らしきものは全く見かけなかった。不思議に思いながら見渡すと、珍しく星と桂が顔を青白くし、雪衣と寒鴉もこちらに向けて武器を構えていた。
「なんだよ、星達もビビってんじゃん!人の事言え「「ソーマ(ソーちゃん)上上ッ‼︎」」ハァ?何を言って...」
天井
↑
デカい複眼の人魂
真下
↓
ソーマ
「あ」
『タマシイを...よこセエェェッッー‼︎』
「「「ギャアアアアッッーーー‼︎‼︎」」」
襲い掛かるように勢いよく落下してきたおそらく歳陽もどきが暴れ回ったせいで屋敷内がめちゃくちゃになり、混乱に乗じて全員勢いよく屋敷の外から逃げ出す。
「ちょっと大丈夫⁈ソーちゃん一番近くにいたけどッ!」
「ソーマは犠牲になったのだ...お(か)しい人を亡くした」
「いやまだ死んでないでしょ⁈...多分?」
桂と星がツッコミとボケを繰り広げている中、彼女達の逃げ足を更に上回る速さで悲鳴声と共に突き抜けていく存在が一瞬で星達を追い抜いていく。
「「ギャアアアアアアアアアッッッーーー‼︎‼︎」」
「はっや⁈アレってソーちゃんとフォフォちゃん⁈」
「恐ろしい速さ...私でなきゃ見逃しちゃうね♪」
「何が⁈っていうかアレ...」
星の言葉通り恐ろしい速さで人間の速さを超えた人外スピードで逃げ回るビビり組のソーマとフォフォは後ろを一切振り向かずに視線を固定したまま逃げ続ける。迷路みたいな綏園の敷地の中をずっと走り回りながらいつ立ち止まれるかわからないくらいに走り続けるふたり。
「な、なあもう十分巻いただろ!...あと、なんか後ろが重いけど!」
「し、知りません私は知りません!」
「いやなんか重いって!絶対になんかいるって!」
「じ、自分で見てください〜!私、まだ死にたくない!」
「いや酷いなッ!ちょっとくらい見てくれてもいいじゃん!」
「は、はひぃ...わ、分かりました!な、なら、せーのでふたりで見ましょう!」
「ホントに⁈ちゃんとフォフォも見なよ⁈それじゃあ」
「「せーのッ‼︎」」
減速して振り向いたソーマとフォフォの目の前
↓
目の前にでっけえ不気味で多眼な歳陽の姿
↓
固まるビビり二人組
「「こ、こんばんは〜」」
ーギャアアアアアッッーー‼︎ー
他所から響き渡るおそらくソーマ達であろう悲鳴声が響き渡る。何とかして逃げてきた星ではあったが途中で綏園内の迷路みたいな敷地に迷い込み桂や雪衣、寒鴉達と完全に逸れてしまう。
『グフフ、怯えてる怯えてる♪お前のお仲間達が間抜けな姿を晒しているのは実に滑稽だ♪』
星の隣にいるのは逃げてきた道中で歳陽のいる結界に連れ込んできたもう一体の歳陽であり、今は星の身体に入り込んで人間達を驚かせている仲間達に対して上機嫌な様子であった。
『さてさて〜?お前の仲間達はあとどれくらい持つかなあ?』
「ん、あなた饅頭みたい、シッポみたいに美味しそう」
『...何なんだコイツ。まあいいさ、せいぜいその余韻を楽しめば?』
歳陽に操られているとはいえ、歳陽側も折角の獲物を台無しにしたくないのか下手な干渉をしてこなかったので星は桂達と合流する事を優先した。
ソーマ達とも合流しようと考えたがどう見てもあの逃げ足の速さには追いつけないので一旦諦める事にする。
(それにしてもあのふたり、やたらと相性が良かったような...。私という相棒がいながら...むぅ、後で匂いをつけてアピールしておかないと)
この状況の中で野生動物みたいな発想で自己アピールするという何とも変人気質な星であった。
パカッ(蓋の開ける音)
(キョロキョロ...)
「...もう、撒いたよな?」
「ひえぇ...も、もういないですよね?」
近くにある置物の樽の中に隠れたソーマとフォフォは歳陽が去っていったのを確認したあとようやく樽の中から出ていき、ほっと一息をつく。
そんな束の間の中、彼らの行動の一部始終を近くで眺めていたシッポは面白がって二人を揶揄い出す。
『ハハハッww何だよ兄ちゃん、まさかのビビりだったのかよ?良かったなぁフォフォ?お仲間が出来たみたいだぜw?』
「誰がビビりじゃい!こちとら世界を救ったことある玄人じゃぞ!」
『おいおい、落ち着けって兄ちゃん。口調がおかしくなってんぞ?』
「ソーマさんと仲間...え、えへへ♪」
「いやバカにされてんだよ。気付けって」
2人と一匹?でくだらないやり取りをしている最中、何やら綏園内の庭の茂みの奥からガサガサと何かが近づいて来る音がしてきた。動きからしてかなり大きな個体みたいで、また追いかけてきた歳陽かとビビりながらも武器を構えるとしばらくしてガバッと大きな生物が飛び出してきた。
「で、でた...ってアレ?お前って」
【む、何じゃ?主らは...ほぉお?あの時の童ではないか♪なんじゃ、妾にときめいて後を追って来「いやそれはない」なんじゃつまらん】
目の前に現れたのはつい最近まで戦って去ったばかりの瑞燐という豊穣の麒麟本人であった。何故彼女がこんな所で彷徨いているのかは不明だがどうせ碌でもない事でもやっていたのだろうと判断したソーマは警戒を緩めなかった。
「ソ、ソーマさん。こ、この麒麟さんって...」
「たしか豊穣の聖獣とかいう奴だったな。瑞麟っていう名前で元絶滅大君の手下だ「絶滅大君ッ⁈」」
【おい、童。妾をあんな気狂女と一緒にするでないわ。途中から抜けたであろう?お主らとは別に敵対する気は無いのじゃが?】
「それでも安心出来るわけないだろ。...それよりアンタ、この近くにヤバい歳陽が彷徨いていたけど見かけなかったか?」
【ん?歳陽?それならあやつが...「ちょっと瑞麟!私を置いてかないでくれる?」...ああ、来てしもうたか】
なぜか心底嫌そうな顔?をしながら後ろを振り向く瑞麟の見る先にはソーマが思わず目を疑うような存在が茂みの奥から現れた。
「全くこの私とあろうものを置いて行くなんて...ん?貴方達、誰?」
【"驍凰"前に言ったじゃろう?妾達と同じ面白い力を持つ例のソーマとかいう童じゃ。そこにいる狐族の小娘と歳陽は...知らん】
目の前現れたのは赤や朱色をメインにした華服に銀髪に紅メッシュという知る者から見たらアレ?識の律者?フカ?と見間違えるような容姿をした少女の姿があった。彼女の掌には弱ったように小さく萎んだソーマ達を陰湿に追いかけ回していたであろう多眼の歳陽のなれ果てた無惨な姿であった。
「アンタ...その手の歳陽は」
「ん?あ、これ?なんか生意気な霊魂類がいたから燃やしてしておいたよ♪」
驍凰が片手を握ると残り滓の歳陽は無惨に消失してしまい、完全に成仏してしまう。
「ひ、ひえッ、さ、歳陽をあ、あんな簡単に」
『あのネーちゃんヤベェ気配を感じるな。オイ、兄ちゃん。アンタだけが頼りだ、なんとかしてくれよ?』
「いや全部押し付けるなよ!」
歳陽を仕留めた後、驍凰は興味の対象をソーマに向けて自己主張の強い会話で自己紹介を始める。
「ふむふむ、貴方が瑞麟の言ってたソーマって人だね!私は偉大な唯我独尊なる豊穣の不滅なる鳳凰の"驍凰(シャオハン)様だよ!さぁこの高貴なる私を敬いなさい"驍凰様万歳ッ!"ってね♪」
どこからどうみてもソーマのよく知る識の律者に瓜二つな少女に頭を抱える。どうやらそっくりさんの縁はまだまだ続く予定らしい。
一方の星は無事に桂達と合流を果たし、途中で回復したのか戦線復帰して来た素裳が参加して来てくれたがこのタイミングで星の体内に取り憑いていた歳陽がコッソリと力を付け一気に本性を現してきた。
星に取り憑いていた歳陽の正体はかつて将軍・景元らによって封印されていた強力な歳陽の集合体"浮煙"(ふえん)であり、コッソリと蓄積し続けていた力を解放し、周りの人魂達を吸収しながら巨大な大歳陽に進化し、操られた魔陰の身の手下を従えて星達に襲い掛かかってきた。
『フフフ...ようやく時はきた!この千年間、我らはこの地の檻に囚われ続けた...仙舟の者どもよ、震えるがいい。すべてを貪る劫火が、お前たちの平穏を焼き尽くすだろう!』
「ね、ねぇけーちゃん!私が気絶していた間に何があったのッ⁈明らかにヤバい奴が目覚めてちゃってるよ⁈」
「さ、流石に私も知らないって!あ、で、でもこれはコレで視聴率を更に稼げるかも?」
「二人とも危険です!下がりなさい!」
雪衣達に守られながら距離を取る星達だが、ブラックホールのような引力の力で周り一体を呑み込み出す浮煙は力づくで星達諸共吸い込もうとする。
「か、体がッ...吸い込まれる!」
「ぐッ、もはや力づくですか‼︎」
いくらか取り巻きの魔陰の怪物達を倒したところで浮煙に触れてしまえば1発でアウトな極限状態の中、地面に杭と鎖を縫い付けた雪衣に引っ張られながら全員しがみ付く中、運悪く星の掴んでいた手元と雪衣の手元が離れてしまう。
「ッ!星さん...ッ!」
もうダメかと星が迫り来る浮煙の青白い炎の景色に目を瞑ると、星の目の前から人間大サイズの次元の膜が開き、謎の空間の隙間に吸い込まれて消えていく。
「ッ...?...え、ソーマ?」
「ああ、そうだよ俺だ。全く...間一髪だったぞ、ヒヤヒヤしたぜ」
目を見開くといつの間にかソーマのいる場所までワープしてきたのかお姫様抱っこで掬い上げられていた星。周りをよく見れば、一緒に行動していたであろうフォフォとシッポがおり、...後よく知らない顔ぶれの美少女な二人組の子達が近くにいた。
「ありがとうソーマ。...でも私という相棒がいながら知らないところで女の子を口説いて引き連れてくるなんて」
「人聞きの悪いことを言うな!...コイツら偶々合流して知り合ったただの現地人だよ」
「ほう?此奴が童の仲間か?見た事あったようななかったような...ま、別に良いか」
実際には絶滅大君・幻朧との戦いで対面しているはずではあるが、あまり他人に関心がない瑞麟には星の顔の記憶が完全に抜け落ちていた。おまけに偽装の為に女性の人間に化けている為余計に星達から見ても誰?状態であった。
「へえ?貴方がソーマの言ってた仲間か子分って奴?なーんか強そうに見えないね」
「む、子分じゃない。私はソーマの相棒である宇宙一の銀河打者でゴミキングを目指す者だ!」(ドヤ顔)
「ふーん?...つまり、貴方は変態種ってことね。よろしくね変態種♪」
「変態じゃない!私には星って名前がある。ソーマ、コイツ腹立つ。何とかして」
「いや無茶言うな。こんなナルシストをどう対処しろってんだ」
「ふふん、よーく分かってるじゃない♪そう!唯我独尊であるこの私を言いなりにさせるなんてこの世の星神ですら不可能なのさ。さぁ、敬いなさいこの驍凰様を!「あ〜主ら、あそこに居る童の仲間達を助けなくて良いのか?」」
「あ、ヤバ!忘れてた!お前ら力を貸せ、助けに行くぞ!」
「そんなに私の力が借りたいんだ?全く仕方ないねえこの驍凰様がと「語りはいいから早よせい阿呆鳥」あーハイハイやればいいんでしょやれば」
浮煙に吸い込まれそうになっている桂達を素早くソーマが虚数空間で強制ワープさせて安全圏まで退避させ、人間形態の瑞麟が手元から召喚した薙刀のような武器で紫電を纏いながら迅速で周りの魔陰の怪物達を数分足らずで瞬殺し、無防備になった浮煙に対して驍凰が紅蓮の炎を纏った鉄扇で爆炎の渦を作り出し、そのまま荒波のように浮煙を包み込み焼き殺していく。
『アアアッ!熱い熱い熱いッ‼︎何故だ⁈幽体でもないお前の攻撃がどうして効くんだ‼︎どうしてッ‼︎』
「あー、うるっさいなぁ。ただの霊魂種が騒ぐんじゃないよ。いい加減恥を知れ、愚か者」
『この私が、私の夢が...ギャアアアッッー‼︎』
肥大化していた浮煙の青白い炎の塊が肉を削ぎ落とされたように無くなり、驍凰の灼熱の炎の渦が消えてなくなると浄化されたようにみすぼらしい萎んだ人魂の姿をした歳陽が残っていた。
『ゔゔぅ...屈辱だ...おのれ仙舟の野蛮人どもめ...!』
「へぇ?さすが霊魂種、無駄にしぶといね」
驍凰が弱り切った浮煙に対してとどめを刺そうとするが近くにいた寒鴉が阻止し、もう十分だと促してきた。
「もう十分です。...どなたか存じませんがあとは私達が対処しますので。ご助力ありがとうございます」
「ふーん?あっそ、ならあとはよろしくね」
「...とんでもない力だな。何者なんだあいつ?」
「妾と同じ丹枢の奴によって生み出された豊穣の霊獣だったものじゃ。妾が麒麟なら彼奴は鳳凰に当たる存在じゃの」
「鳳凰...性質まで"あいつ"と"師匠"に似てるな。なんかの偶然か...?」
ソーマの引き連れてきた現地人達?という強力な助っ人によって瞬く間に歳陽や取り巻きが駆逐され、最終的に暴れ回った浮煙は呆気なく再封印された事で綏園での怪奇現象の異常は解決された。
「いやぁ、いい撮れ高が撮れたね〜♪視聴率が今まで最高蜂だよ!また今もみんなで参加してみようよ!」
「いや〜私はちょっと...いいかなぁ。これ以上恥を晒したくないし」
「いや、もう遅いと思う。多分動画に流れてたし」
「そ、そんなぁ...」
素裳の悲観に暮れた悲鳴が木霊しながら瑞園でのちょっとスリル満点?な肝試しの1日は無事に怪我人を出す事なく終わった。
因みに現地人でやり通していた瑞麟と驍凰の二人組はまた縁があれば会おうと別れを告げたあと、十王司の判官からの取り調べをのらりくらりとかわしながらいつの間にかその場を去っていた。まさに嵐のような連中である。
その後、要件を終えたソーマはついさっき十王司での取り調べを終えていた所でフォフォ達と雑談をしている最中であった。
「え、えへへ...も、もうこれで怖い思いをしないで済むよ、よね?」
『まーたそんな事を言ってんのかよ、フォフォ。』
「終わったならそれでいいんじゃないか?ま、俺は全然平気だったけどな」
『ハッ、兄ちゃんもビビってた癖によく言うぜ』
バタンッ!
「ソーマ!雪衣達から取り調べが終わったからもうそろそろ帰ってもいいって...アレ?二人とも、なにしてんの?」
十王司の待機所の屋敷の扉を開いてきた星がソーマに声をかけていたが何故かそこには机の下に潜り込んでうつ伏せになっている二人組が星の視界に映っていた。
「「い、いや(いえ)、ち、ちょっと床下に落とし物を...」」
「フン...こんなところにまで家畜どもの警備網があるとはな。随分と神経質で臆病な奴らよ。...Solbo、さっさと撤収するぞ。ここにこれ以上用はない」
「Krrr-r... ss-st...分かっている」
「何か見つけたのか」
「いや...何でもない」
「そうか。偵察が済み次第、"哮風 (サオフウ)大頭目"に御報告するぞ」
十王司の待機所があるエリアから遠くから離れた場所で崖上から覗く二人組の狐族...いや、狐族とは思えないほどの獰猛な顔つきと肉体をした怪しげなならず者達がいた。
目的を終えて仲間達が撤収していく中、狐族の姿をした男はもう一度その場を振り返る。
「...気のせいか?あの白黒髪のガキ...まさか"凶星の白夜叉"本人では無いだろうな?...まあいい。我ら歩離族の再建の暁には貴様ら家畜共をもう一度恐怖のどん底に叩き落としてくれる...精々、短い平和の余生を過ごすがいい」
獰猛な狐族の見た目をした男は観察していた十王司の者達を静かに侮蔑し、仲間達の後を追いながらその場を後にした。
・驍凰(シャオハン)
瑞麟と同じく豊穣の霊獣の一種であり、普段は燃え上がる炎に身を包んだ鳳凰の姿をしているが今回は人の姿に化けて登場。姿がもろ識の律者やフカにそっくりな並行同位体で性格も唯我独尊でナルシスト寄りな傲慢さを持つ。なお、瑞麟も人型に化ける事が可能。こちらは見た目や特徴が芽衣やサクラに少し似ている。
高い戦闘力と武術などを持ち、彼女のまとう羽根は意識の記憶を写す特殊な能力を持ち、加えて不死鳥の如く転生秘術を持つ為、基本的に不死身。瑞麟と同じく丹枢のとある神聖物や秘薬の実験によって生み出された豊穣の産物の生命体。相手を呼ぶ時変わった愛称や俗称で呼ぶ癖がある。イメージカラーは朱色や白銀色。