「え?しばらく列車が動かせないだって?」
「そうじゃ。この先の宙域の時空が乱れておる。このまま強引に進めば取り返しのつかん事になる」
車掌であるパムからの想定外な通告にソーマは困惑する。しかし、どうやら列車組の開拓の旅ではそこまで珍しい事ではないらしい。
「今までもいろんな不測の事態はあったけど、まさかこれ以上進めないなんて事になるなんて。...もしかして、反物質レギオンの影響のせいだったりする?」
「いや...おそらく、観測結果からして間違いなく"星核"が関係してるだろうな」
「星核...私の体内にあるものと同じもの...」
目的地である星に着いたはいいものの、問題の付近の宙域がかなり不安定な時空の歪みが確認された為、星穹列車は非常事態への対応と解決の為、実質無期限の停止が確定した。
当初、星穹列車は目的地の星である"ヤリーロⅥ"へ向かう予定であった。列車は予定通り跳躍(異次元ワープ移動)を行い、ヤリーロⅥまで無事に到着することは出来たものの、星核による悪影響を受けた星の近くにきた影響でその宙域から出る事が出来ないというイレギュラーな事態に及んでしまったらしい。
しかし、どのみちソーマ達は例のヤリーロⅥという星を星核という災害から救う為の使命を受けているので予定通りに例の星へ降下する事になる。
ーヤリーロⅥ高原エリアー
「...話に聞いてた通り、死の極寒世界って感じだな。生き物の気配がひとつもいやしないや...。ところでみんな大丈夫か?」
「俺は大丈夫だ。三月、星、お前達は平気か?」
「多分大丈夫」(鼻水をすすりながら頷く)
「うう、さ、寒い。流石にあらゆる環境に耐性のある美少女の対寒能力でも想定外だよ...」
「何、美少女って独立したの生物個体なの?...ほら星、マフラーでもかけとけ」
「ん、ありがと」
着いた先の星の大地は、正に白一色の白銀世界であった。どうやら遥か昔は普通の人類が住める地球によく似たような星であったが、星核がヤリーロの星に出現した事で悪影響を受け、星の大部分が死の極寒地へと早変わりし、今ではベロブルグという地が唯一の生物が生存できる最後の地となってているのだという。
そのため、もしこの死の白銀世界に逸れようものなら二度と助からないと言ってもいいだろう。
方向感覚が麻痺しそうな危険な環境の中、お互いに逸れないよう、今回のヤリーロⅥへの探索チームとしてソーマ、なのか、丹恒、星の四人で降りる事になり今彼らは人が住んでいるエリアを探す為、慎重に探索をしている真っ最中であった。
「ま、まだ見つからないの?もう寒すぎて少し眠気が...ちょっと寝てもいいかな」
「しっかりしろ三月。こんなところで寝たら一生冬眠する事になるぞ」
「じょ、冗談だってば!」
「みんな、みてみて鼻から氷柱ができた」
「ちょ、あんた鼻水が凍ってるじゃん!」
「セイウチ〜」
「...あー、大分キツそうだな?仕方ない、ちょっと火を起こしてあげるから待ってな」
「火?」
ソーマは右手の指を指パッチンさせると、彼の指先から蒼く小さな炎が現れ、手のひらサイズ大まで大きく燃え広がる。
すると、なのか達の周りが最初より空気が温くなり、縮こまった身体が動きやすくなる。暖かい炎の光で凍えきった身体を癒す為、群がるように三人ともソーマの炎の元に集まる。
「わぁ〜すっごくあったかい〜!あんたってばこんな能力もあったの?」
「正確には"蒼炎の律者"の力だな。温まってくれたらのなら良かった。まさか、律者の力が人の役に立つときが来るなんてな」
「助かったソーマ。やはり温まると身体が動きやすくなるな」
「ありがたや〜ありがたや〜」
「お前はどこのド田舎の村人だよ?」
星の安定しない変な口調にツッコミを入れながら、本人達が元気に活動できるようになるまで炎の力で暖めてあげる。
「それにしてもホントに人のいる場所までに辿り着けるのかな?」
「それはまだ分からないな。だが間違いなく宇宙からの観測では生命体が活動している比較的暖かい領域があったのは確かだ」
「もしかすると降りた場所が思ったより、遠すぎたのかもな。味方かも分からない相手の領地のど真ん中に降りるなんて自殺行為だし」
「たしかにそうですねぇ。あ、僕にも火に当たらせてくれませんか?」
「ああ、どうぞどうぞ」
「いやあ、助かりますぅ。ホントに寒いですね〜」
「ええ、確かに。...ところで、アンタはいつからこの場に?」
「ヤダなぁ〜お兄さん、貴方達が立ち止まって火で暖まっている時からですよ〜」
「丹恒...」
「ああ」
丹恒への合図と共に咄嗟にソーマは銃器を相手に突きつけ、丹恒も槍を怪しい奴の喉笛に突きつける。
「ああ‼︎待って待ってくださいって〜ッ‼︎怪しいものじゃないんですよ‼︎近くにシルバーメインが彷徨いていたんでしばらく隠れていたんですが、そのあとで違う格好した貴方達を見かけたんで声を掛けようとしたらお兄さんが手にしている炎が暖かくて居心地が良かったのでつい〜」
「なら、まず身元を名乗りな」
「ハイィ〜もちろんですぅ!」
突然、自然流れで入り込んで来たこの怪しい胡散臭げな男の名は「サンポ・コースキ」といい、この付近にある"ベロブルグ"という地を行き来しながら商売を嗜んでいる商売人であり、日頃からの活動を"シルバーメイン"という国の警察機関に目を付けられた為にコソコソしていたのだというらしい。
サンポ本人は自身を見逃す見返りにソーマ達をベロブルグに案内するという提案を出してきたが、一旦なのか達とも相談し、丹恒とソーマが彼を監視する形で警戒しながら提案を飲むことにした。
「商売人であるこのサンポならあなた方が求めている欲しい情報を仕入れる事も出来ますよぉ。もちろん対価は頂きますが...今回は特別サービスでタダでお客様を案内して差し上げますッ」
「そうか、ならすぐにでも案内するといい」
「だ、大丈夫なの?こんな胡散臭い奴に任せちゃって」
「大丈夫ですよ〜。この辺を何度も行き来している常連ですからあなた方を無事に目的地に送り届けるのを約束しますよぉ。...ただ、このあたりにシルバーメインが彷徨いているので...どうかお助けください、友よ〜‼︎」
「ハァ、いいからさっさと案内しな。働き次第でアンタの扱いを考えてやるから」
「ありがとうございます!このサンポ、誠心誠意、案内役をやらせていただきます〜」
怪しさ全開な地元民のサンポという男を案内役にしながら目的地である"ベロブルグ"という都市への移動ルートを進めていく。
しばらく、突き進んでいき、サンポからあともう少しでベロブルグに着くという知らせを受けるが、運が悪かったのか、は 或いは都市に近いエリアであった為か運悪くサンポの言っていた例の警察機関であるシルバーメインという団体に見つかってしまう。
「そこを止まれッ‼︎」
「ジェパード隊長、おそらく例の不審な男の仲間かと思われます。ご指示を」
「...」
シルバーメインの隊員と指揮官らしき金髪の盾持ちの男性に見つかり、道先を封鎖されてしまう。
おまけにサンポの仲間と勘違いされ、不審者の仲間として連行されそうになるが仲間ではないと説得しようとサンポを見るといつの間にか彼の姿がどこにも見当たらず、ドサグサに紛れて逃げ出したのだと思い知る。
「アイツ、いつの間にか逃げられたよ!」
「やはり信用出来ない男だったか」
「今更喚いても仕方ない。俺達が仲間ではないという身の潔白を証明しないとな」
ソーマ達は自分達があのサンポという男とは関係ない事を彼らに伝え、なのかが用意した証拠品である列車から撮った写真をシルバーメインの隊員達に見せる。完全に身の潔白が証明されたわけではないが、宇宙からの来訪者であると言う事を紹介し、詳しい話を国のリーダーである大守護者に確認を取ってもらう為、ベロブルグに案内するという形になった。
「どうやら今の私達では君達の身分の処遇を判断するには事が大きすぎる。よってベロブルグで大守護者様に判断をしてもらう。着いてきてもらおう」
隊長であるジェパードの判断により、ソーマ達は連行に近い形でベロブルグに案内される事になった。
「わぁ!壮大な感じ〜!」
「なんか道端で電車が走ってる」
「待て、あまりうろつくな」
「ここが...ベロブルグか。...昔を思い出すなぁ」
目的地に着くと先程までの白銀の世界から人の営みを感じさせるクラシックな大きな町並みの都市国家の風景が見えてきた。
ソーマは昔地球にいた頃、当時カスラナ家の家族と共に過ごしたときに見た北方の寒い地域の街並みを懐かしむように思い出す。
初めて見る町並みに見惚れながらジェパード達に例の国のリーダーである大守護者のいる巨大な城の館元まで連れてこられる。
「ここからは大守護者様に相見えることになる。くれぐれも粗相のないように素直に話す事だ」
ジェパード達が去り、さっそく大守護者の元へ向かうと偶然大守護者らしき偉い人と口論をしていた銀髪の女性の姿を見かけ、ソーマ達が来たのを確認したのか大守護者の人は口論していた本人に話を切り上げるように合図し、不服な顔をしながらも銀髪の女性がその場を辞退する。
その際一番近くを通っていたソーマが彼女とすれ違うように通り過ぎるが、ソーマは一瞬何か見覚えのある顔を見たような既視感を抱いた。
(...気のせいか?いやまさかこんなところに彼女が...いや、そんなわけないか)
一瞬自分の良く知る妹分の顔を思い出すがこんなところにいるはずが無いと考えを否定し、大守護者の人に視線を向き直す。
が、また彼の感情を混乱させる状況を目にする事になる。
「はるばる遠くの星からよく来てくれた天外の来訪者達よ。私が元ベロブルグ大守護者の"カカリア・ランド"だ。さっそく、お前達の来訪目的を教えて貰おうか」
(いくら何でも...そっくり過ぎない?...まさかここが地球...な訳ないよなぁ)
丹恒が代表してベロブルグの大守護者である"カカリア・ランド"と名乗る女性に自分達の身分と来航目的の話を続けながらソーマも話に参加していくが、彼女の姿がどう見てもソーマが良く知る...かつて地球にいた頃に敵対してたネゲントロピーの盟主であった同じカカリア本人と余りにもそっくりであった為、表情に出ないようにするのに堪えていた。
「詳しい話は理解した。しかし、今日はもう遅い。お前達の星核を封印する戦いの話には我々も協力する形で対応することを約束する。また明日からその事について話し合おうではないか。此方で手配したホテルで疲れをとるといい」
「感謝する、カカリア殿」
星核に関する話を告げ、詳しくはまた明日という形でカカリア側から用意された来賓客向けのホテルで今日は一夜を過ごす予定となった。
外へでて階段を降りていく最中、ソーマはぎごちなく落ち着かない顔をしながら考えごとをしていた。
その様子が気になって心配したなのかはソーマに声を掛けて見る。
「ソーマ大丈夫?さっきから反応が悪いけど?」
「え?ああ、いや、何でもないよ。...まぁ、あれだ、今回の星核の件、何とか解決させる事が出来るかちょっと心配してただけさ。ほら、悪さしてる星核を封印出来ないとこの星だけでなく、俺達の乗ってる列車も動く事が出来なくなるだろ?」
「あ、たしかに!うーんでも開拓の旅で数日間も列車を留守にしてた時も幾つかあったし大丈夫だって!」
「そうだな。当時ヴェルト達と共に現地を旅して迷子になった三月を探すのに何日も掛かった時もあったからな」
「ちょ、あの時は悪かったってば!っていうかひとこと余計だよ!」
「うーん...」
「うん?どうした星」
「なんかあのカカリアって人、怪しい...星核のこと知ってるとか?」
「シーッ!場所を考えろッ...」
星の口を押さえ込んで周りを確認するが、幸い移動してからシルバーメインの衛兵が見当たらない普通な街並みの場所だった為、誰にも怪しまれずに済んだ事でホッとする。
「ま、まぁ星ってばすっごいストレートだけど、たしかにあのおばさん、凄く怪しいっていうか、なーんか心の中を見透かされてる感じ?がするし」
「もしかすると、土壇場で裏切ったりするかも?」
「怪しいのは分かるが、さすがに不謹慎だぞ二人とも」
(いや、そうともいい切れないんだよな...)
よく似た並行世界のそっくりさんに対面したことのあるソーマは、あの顔をした人物が裏で悪事を企んでいても不思議じゃないという勘のような確信があった。
実際、故郷の地球でブローニャの養母であったネゲントロピーのカカリアはブローニャからの話で、昔A-10計画で訳ありとはいえ、ブローニャやゼーレ、アリーン姉妹達に被害を与えたことがあり、ソーマが関わった事があった時期にはウェンディという少女に律者コアを埋め込んで管理したり、芽衣の父親である雷電龍馬を失脚させて逮捕したりとやりたい放題であった。
その為、ソーマにはあの同じ顔をした彼女の存在に絶対碌でもない爆弾を抱え込んでいるだろうなという嫌な信頼があった。
「ただの杞憂であればいいんだがなぁ...」
ソーマは自分の嫌な予感がただの杞憂で済んでくれる事を祈りながら、なのか達と共にホテルの元へ向かう形となった。
その後少しの自由時間の間、なのかの提案で共にベロブルグの街を観光していたがその道中、味を占めたのか何故か街中のゴミ箱を漁りだすという謎奇行をし始めた星を必死に止めに行ったのはここだけの話である。
ー翌日ー
「うっわ...やっぱ居るじゃん」
「まさか悪い予感がこうも当たってしまうとはな」
「もしかして私って未来予知能力がある?」
「はいはい、もうそれでいいよ」
翌朝を迎えてホテルの外からうるさく騒いでいる外野の人々の声に嫌でも目に入り、まだ寝ている星を目を覚ましたなのかが起こしに行ったあと、ソーマと丹恒は窓際からこっそりと外を眺めた。
そしたらやはりというか、昨日会ったばかりのシルバーメインの衛兵らやその部隊がホテルの入り口を包囲するように待機していたのが見えていた。
どう考えてもそのまま会いに行ったら絶対に連行されだろうなという予想を考えながらとりあえず応じないと事態は進まないので、遅れて集まった星達を準備でき次第、引き連れて四人でホテルの入り口に向かい外へ出る。
「お前達が例の天外の来訪者だな?私は"ブローニャ・ランド"。シルバーメインのリーダー代行だ。偉大なる守護者カカリア・ランドの命により、反逆を目論む罪人を逮捕する。抵抗せず大人しくしなさい!」
「ああ、やっぱり...ていうか」
予想通りというか、やはり自分達を理由を付けて逮捕しに来たシルバーメインの実行部隊の面々の集まりが逮捕通告をして来たのが確認できた。
しかも、星達はともかくソーマにとっては目の前のシルバーメインのリーダーが自分の良く知る妹分をそのまま成長させたようなそっくりさんなうえ、名前までカカリアと同じく、知り合いと完全に同名であるというタチの悪さである。
まさかこの世界に来て、3人目の同名のそっくりさんに出会うとは...。もうそのうちそっくりさんや同名だけでなく、自分とクリソツな人物と出会っても驚かないと自身を戒めることにした。
例のそっくりさんの件はともかく、目の前にいるブローニャからの逮捕通告に素直に応じる気なぞないので、丹恒が約束の裏切りだと反論するが全く取り合って貰えず、不意を突いて全員でこの場を逃げる事になった。
相手を蒔くために、なのかの作戦で裂界の侵蝕の道に逃げ込み、何とかシルバーメインを蒔いたかと思ったがまさかの道先で伏兵を忍び込ませて包囲するという二手三手の策で逆にこちらが不利に追い込まれる事になる。
「チッ...厄介なッ...!」
「大人しく観念しなさい、反逆者。これ以上逃げ場はないわ」
全員ここで大人しく投降するなぞ全く無いが、敵が多いのも厄介でどう倒そうか攻めあぐねていた。
(俺やなのかには飛び道具があるが、相手側の方が圧倒的に銃器の数が多い。...律者の力を振るおうにもレギオンのようなモンスターならともかく、人間相手を死なせるの不味いな...)
相手を鎮圧しようにも、自身の力では死人を出してしまうかも知れないという状況にどう事態を乗り越えようかと敵に銃器を向けて苦心していると、どこからともなく第三者からの介入が入ってきた。
「あのぉ〜、僕の事忘れてはいませんか?」
「なッ新手⁈ゴホッゴホッ...!!」
「うわッ⁈なに?煙ッ⁈」
「あまり吸い込むな!」
煙幕の煙の福作用なのか、周りにいるシルバーメイン達も何人か意識を失ったり、その場を離れたりと混乱が続く中、この状況を引き起こした張本人である"サンポ"がゆっくりとこちらを歩きながら爽快に登場する。
「このサンポ、助けてくれた友を見捨てることなんてできません。義理はしっかりと果たしますよ...って、あらら...効果が強すぎましたかねぇ?」
「サンポ、アンタな...」
「おや!ソーマさんご無事でしたか!なぜ平気なのかはともかくとして...あの〜...運ぶの手伝って貰えませんかねぇ?」
「ハァ、何とも閉まらない登場だな」
「そう言わないでくださいよ〜‼︎これでもタイミングをみてようやく助け船を出せたのですからぁ!」
とりあえず、近くで気絶している星を抱えて持ち上げようてするが、同じようにサンポのお手製の煙幕の煙を吸い込んで気絶しているブローニャが近くで倒れていた。
正直、彼女は見た目がそっくりなだけの別人であり、今は敵対関係にあるので助ける義理もないのだが、裂界の空間の中である以上、いつモンスターに襲われるか分からない上、いつシルバーメインの仲間が助けにくるか分からないので仕方なく彼女も保護する事にした。
別に大切な妹分にそっくりだとかではなくこの場で死なれると目覚めが悪いからといい訳を心の中で作りながら二人分を抱え込み、先になのかと丹恒を抱えて移動したサンポの後を追う。
・カスラナ家との生活
3rd世界の地球で昔、訳ありで当時、天命から身を隠して生活していたジークフリート・カスラナとこの時から交流があったキアナ・カスラナと共に隠れ家で過ごしていた時期があった。
ちなみに当然カスラナ家特有の料理が全くできないという呪いは健在で、二人揃って料理を黒焦げにしてしまうので、当時のソーマが本人達の代わりに料理担当となっており、当時からジークとキアナの胃袋をいつの間にか掴んでいた。おかげでジークからは小さな主夫と呼ばれて可愛がられていたとか。