魔法少女のその後 作:匿名
「アンタ、今月も家賃滞納なんだけど! アタシの持っているマンションだから良いもののこれがよそだったら追い出されてるわよ。って、部屋も汚いし――それに煙草禁止って言ってるでしょ! 身体壊すよ、ったく一日に何箱吸ってるんだか……」
そう言ってこの部屋の主の布団を引っぺがしながら、その近くに置かれた灰皿の煙草の吸い殻を捨てている長い黒髪に黄色のメッシュが入っている女。
「ん、もーう、美咲。勝手に入ってこないでよね。てか、まだ眠いし」
この部屋の主はそう言って、引き剥がされた布団を掴んでもう一度眠りにつこうとするがそれを
「くっそ、ぐうたらのくせに力が異常に強すぎる」
「ふっふっふ、修行が足りないようじゃなマジカルハニー。このマジカルファイアーに勝とうなんて百年早いわ!!」
この部屋の主が言ったこの言葉はふざけて大嘘をついているようだが実はそうではない。美咲は魔法少女マジカルハニーとして、このすっかりだらけきった彼女、
だが、それも昔、地球を守り切った英雄は今、このように社会ではダメニートと言われてしまうだろうほどに落ちぶれていたのだ。
そして、この布団を巡る争いは拮抗したまま何時まで続くのかと思われたが一人の介入により終結を迎えた。
「こらこら、子猫ちゃんたち何をしているんだい?」
このキザっぽい言動通りのボーイッシュな見た目でスーツをビシッと着こなしている女は
「真先輩、聞いてくださいよ。美咲がいじめるんですよ」
伊吹は真っ先に真に助けを求め二度寝に戻ろうとする。
「眠り姫の味方をするのも良さそうなんだけどね。美咲も君の身体を心配してのことだろう? 美咲の事も考えてちょっと頑張ってみないかい。ほら、君の好きな駅前のケーキ屋のケーキを買ってきてあるからさ」
真と手に持った紙箱を見せると伊吹はあっさりと布団を手放した。
「痛ったーい、アンタね……」
布団を急に手放されたため反動で吹っ飛んでしまった美咲は頭をさすりながら呆れたように立ち上がる。
「ほへーん、へも、ほんはへって、ゴホッ、ゴッホ――」
伊吹はこのわずかな時間で皿とフォークを取り出してケーキをモシャモシャと食べていて、そのまま美咲に言い返そうとして詰まらせてしまっていた。
「こらこら、そんなに急いで食べなくても。ほら、水」
伊吹は真に差し出された水をごくごく一息に飲み干した。
「ごめんって、私ってどうにも尻に火がつかないと頑張れないタイプだからさ。でもね、本当に悪いと思ってるから今日はバイト入れたんだよー。だから今日はギリギリまで寝たかったんだよね。バイト行くの結構久しぶりだから行くのに精神使っちゃうんだよ」
そう言って伊吹は自身のスマートフォンを見せる。
そこには単発バイトアプリであるタイムーで勤務予定となっているバイトのスケジュールがあった。
「まあ、そういうことなら……」
なんだかんだ言って、ここで引き下がってしまうあたり美咲も伊吹に甘い。
「解決したようならなによりだ。ほら、美咲の分も買ってきたから食べるといい。僕は仕事で疲れたから部屋に戻って寝るとするよ」
「ほんとすみません、真先輩」
美咲が頭を下げると真はにっこりと笑って部屋を後にした。
――ここはマンション
自身も魔法少女として戦った美咲が魔法少女を助けるセーフティーネットになれないかと思いいかと思い経営を始めたマンションで今は連絡が取れた同じ
何故、魔法少女たちにセーフティネットが必要かという話は魔法少女が生まれた時の話まで遡る必要がある。
この世界には、私たちの住む地球とは別に幾重にも重なり合う無数の次元が存在している。
その一つである――異世界マジカルランド。
このマジカルランドが次元を食い尽くし存在を消滅させる異次元獣に滅ぼされたことから始まった。
マジカルランドに暮らしていた生物モッフルンは、次に異次元獣が向かう先である地球が存在する世界で、自分たちの命と引き換えに少女たちに特別な力を譲渡し魔法少女を生み出すがそれが悲劇の始まりであった。
少女たちは異次元獣によって破壊されようとする世界を多くの魔法少女の犠牲を出しながら守り切った。
だが、彼女たち魔法少女の活躍は魔法少女以外には理解されなかった。
それは異次元獣を倒した際に異次元獣によって殺されたりした魔法少女や魔法少女以外の人々、破壊された町などは別の事故や事件によって生じたものとされる認識阻害が働くからだ。
そのため、日夜を問わず異次元獣と戦い続けた彼女たちは一部を除きほとんど、親や周りからは深夜でも異次元獣と戦うため家を出ざるを得なかったり、一週間ほど家に帰ってこなかったりしたことで不良と見なされ魔法少女以外の人間関係が悪化し、戦いの激化で高校を卒業できなかった。そして、戦いで負った心の傷も大きい。
そんな、彼女たちが一般社会で生き抜くことは難しかったからだ。
これは魔法少女であった美咲も同じはずなのだが心に何かを抱えてこの活動を進めようとしていた。
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