「超かぐや姫!」の聖地巡礼していたら、いつの間に「超かぐや姫!」の世界にいた件 作:マッキーガイア
私は立川北駅を抜けると、しばらくサンサンロード*1に出た。
目的は映画館。『シネマツー』である。
さて、何故私はわざわざ地元の徒歩20分も掛からない映画館ではなくわざわざ片道電車で1時間半もかかる様な場所の映画館に向かっているのか、それは2週間前に遡る。
2週間前の土曜日のこと、両親の不在に際してポップコーン片手に土曜の夜を謳歌しようと眠る寸前の弟を叩き起こし、一緒に映画を見る事となった。
最初は文句ばかり言っていた弟だったが、観る映画を決めて良いと言えば仕方なさそうに了承。
その際、弟の琴線に触れたのが最新作であった『超かぐや姫!』であった。
2時間半後、私と弟は横並びに泣いていた。
こんな素晴らしい映画を何故私は公開後すぐ観なかったのだろうかと酷く後悔した。
演出、作画、声優の演技、ストーリー……どれを取っても一流だ。
正直言って物書きではない私ですら、この様な素晴らしいストーリーを書きたいと心から思ってしまった。
はっきり言おう、これが脳を焼かれるという事なのだと人生で初めて(嘘)実感した。
それから2週間、私の頭の中は『超かぐや姫!』で一杯になった。
登校中のプレイリストは全て『超かぐや姫!』の曲に移り変わり。
脳内では彩葉とかぐやが常にちちくりあっている天国である。
それを文字にしてサイトに投稿しようと思い至ったが、「超かぐや姫!」の内容が完璧でどこをどうやっても蛇足にしかならないので筆が止まった。
pixivでならともかく、ハーメルンでやる以上、日常を垂れ流すだけでは長続きしない。
なので少し変わった事でもやろうかと思ったが、彩葉とかぐやの間に男が混ざる光景が掠っただけでも想像した瞬間、脳が破壊されて吐いてしまった後に殺意が湧いたのでしょうがない。
百合に挟まる男、絶対許せないウーマン誕生の瞬間である。
ブル◯カでも主人公女子生徒だと嬉しい。
故にとことん沼にハマっていった訳だが。
『超かぐや姫!』が劇場公開するらしいとXで大盛り上がりし始めた。
これはいかんと慌ててチケットを取ったのが昨日、なかなか結局取れずじまいで1週間くらいたってしまった。
それもその筈、上映館は限られている。だったら聖地巡礼できる場所をと狙ったのが立川北のシネマツーである。
酷い激戦だった。ちぎっては投げちぎって投げ、いつしかその屍の上に私は立っていた。
今や私の心持ちは歴戦の猛者である。私の下に何百の屍が眠っている。私はその数百人のためにこの映画を楽しまねばならんのだ。
「……まだ上映まで1時間くらいあるな。」
お日様がてるてると輝いている。まるで私の心の様である。
少し早く来すぎてしまった気がしなくもないが、かと言って聖地巡礼するには時間が足りなすぎる。
仕方なしげに私は目に映ったアニメグッズ専門店に向かった。
「ぬん……?なんだろうこのキャラ。」
ショップに入れば知らないアニメのキャラのずらりと並んでいる。いや、私が知らないアニメなど山の様にあるのはあるのだが、まるで覇権と言わんばかりに並んでいるのだ。
なんだ?異世界にでも迷い込んだか?
とは言え、知っているキャラもそうそういるわけで……ってかコレまだアニメ化発表すらしてないのにBlu-ray出てるし。
「はへぇ、もしかしてそう言うイベントなのかなぁ…マイナーアニメを押し出したり。あ!超かぐや姫!にちなんで2030年フェアとか!!」
な、訳ないか。
いくら神作であろうとここまでに手が込んでいてテーマが分かりづらいフェアなんてあってたまるか。
もしかして、モニタ◯ングか?それともどっかにいる芸人に向けての説に巻き込まれたか?
「ありそー……」
あの人復活したのかな、頭の中に独特な笑い声が響いた。
とは言え、公式ガイドブックが売ってる様子もないし。もう用はないかな。
本誌欲しかったんだけどなぁ、まだ電子でしか読めてないし。
うーん、まぁ、もうそろそろだし、映画館向かうかぁ〜。
「はぁ!!??無い!!??上映自体が!?!?」
思わず、スタッフに言い寄ってしまった。
さっきからなかなか電光版に『超かぐや姫!』の文字が出てこないと思ったらこれである。
ネットで確かに探して見つけて支払いまで済ませたのだ。にも関わらず、スタッフはないと言う。
「はい、申し訳ありませんが。その『超かぐや姫!』?と言う作品は本館では上映されてません。」
「いやいやいやいやいや!そんな筈ないよ!!確かに私、チケット買ったんですよ!?」
「………と言われましても、もうしかしたらダミーサイトの可能性も…」
「えぇ、ダミーサイトっ……えぇ…マジかぁ……」
マジで?詐欺られた!?マジでっ!?
私の1ヶ月分の約半分使ってここに来てるんだよ…?
えぇ、いや、確かにURLとか観てなかったけどさぁ……えぇ、マジかよ。
「……申し訳ありません。当館ではその補完も致しかねまして……」
「え、あ、いや。すみません。私のミスなので……し、失礼します。」
私は急足で映画館を出た。
すまない、戦友たちよ。
英霊たちよ。
実は私はただの地縛霊だったらしい。君たちの仲間という訳だ。
一緒に恨もう!!勝利を手にした者どもを!
「恨めしいっ!!恨めしぃ!!
普通に敗北したよりも恨めしいっ!!
だったら一回期待なんかさせんじゃねーよ!!ばーーーか!!!」
あまりにもあまりな事に感情を込めて人目も気にせず叫んでしまった。すると視線の端でびくっと跳ねた灰色の髪が見えた。
「ビビったぁ……。」
そんなどこぞで聞いた様な声を出しながら木の影からこちらを覗いている少女が一つ。
ふと、見入って仕舞えばすげぇ美少女である。
それがこちらに視線を飛ばすなり、「あっ!」と叫んだ。
「彩葉!追いかけなきゃ!」
そう言いながら走り去る少女にしばらく視線を持って行かれた。
というかさっき、なんて言った?……いろは……いろはと言ったのか?
思わず目線を走り去る少女の向こう側に向けると3人組のJKが居た。
薄い金髪っぽい子と薄い赤髪っぽい子に挟まれて純日本人らしく黒髪っぽい子がちちくり合っている。
なんとも微笑ましい光景である。
はて?なんか見た光景だな。
というか、さっき見る筈だった光景だな。
つーーーか、なんか知ってる3人組だったな。
「あははー!!ナイナイナイ!!2次創作の読み過ぎ!!気付いたら転移してましたなんてなんかの即死トラップかなんかかよ!!!」
一瞬、思い至った考えがあまりにも馬鹿すぎて笑い飛ばす。
まさか過ぎるよ。ただの一般美少女である私が『超かぐや姫!』の世界に転移とか、たはは。あまりにもあまり過ぎる。
「……さてと、仕方ない時間余ってしまった訳だし。ちょっと観光かな。」