「超かぐや姫!」の聖地巡礼していたら、いつの間に「超かぐや姫!」の世界にいた件 作:マッキーガイア
時間が…ずれてる?
そうやっと気付いたのは件のかぐや命名事件でお馴染みであるカフェを見つけた時である。
元々、今日は映画を観るだけでなく聖地巡礼も計画の一部だった為に一番早い公演時間を選んでいるのだ。それが大体朝の9時頃。それは今の私のスマホもその時間を示しているし、間違いはない。
だが、カフェに設置されている時計を覗いてみれば夕方4時を少し過ぎている。
カフェの時計がずれているのかと思って周りを見渡してみれば制服を着た学生さんが沢山座っている。私の感覚では今日土曜日じゃなかったろうか。仮にど平日であったとしても学生がいると言う事は自動的に放課後、夕方である。
「何がどうなっているんだ…?」
さっきから予想外の事が多過ぎて困る。
世界が変わってしまった様な……
そもそも時間軸が違う様な…
仕方なし気に店員さんに言われた通りの席に座り、コーヒーを一杯頼むとスマホをいじり出す。
今だに私のスマホの時計は朝9時を指している。いや、正しくは過ぎて9時45分。
時計が全く持って噛み合わない。まるで私と私のスマホだけ、世界に取り残された様だ。
下調べに使用したネット記事を見ればこの辺りにカフェは見つけることが出来なかったとある。だが、映画を観ながらその通りに進めばその場所にたしかにカフェを見つける事が出来たのだ。
GPSを用いた地図で調べればここにカフェは無いとされているのにも関わらずである。
所謂、なんかカフェが生えてる。キモチワルッって感じ。
「彩葉ノートで赤点回避記念〜〜」
「お礼の品でーす。ご査収くださーい。」
また聞いた事のある声が耳に響く。
ふとして、隣に目を向けると見知ったJK達が座っていた。
………ん、彩葉?
彩葉と言えば「超かぐや姫!」の主人公的存在の少女である。確かに本編でもこんな場面があった。それにそっくりな状況が隣に巻き起こっている。
偶然にしては重なり過ぎだ。
儚く消えた私の映画チケット。
その後に出会ったまるでヒロインかぐやにそっくりの少女。
無いはずなのに生えてきたカフェ。
あまりにもズレが生じている時間。
まさか、いや、まさか。
さっき戯言として自分で一蹴したでは無いか。
それがマジだって言うのか……?
マジに起こっているって言うのか?
「名前?名前はえーーーーーっと……
かぐや!」
無情にも隣の席からそんな声が響いた。
つまりはつまり、私本当はダミーサイトに引っかかって騙されたって事じゃ無いわけで…
つまり、映画のチケット買えなかった私はこの世に存在しない訳で。
フッ、すまん、私勝者だったわ。すまんな屍共。
ははは、泣き叫ぶ亡者共の悲鳴が聞こえる様だ……
いや、結局観えてないから私も悲鳴上げてたわ。草
あれからすぐ、逃げる様に立ち去った彩葉達を追う為に会計を済ませて、走って後に追う事となった。
つまり、尾行である。既視感あるねっ。
この世界の中心は彼女たちだ。
彼女たちの為にこの世界が生まれ、彼女たちが物語を紡ぐ為にこの世界の歴史がある。
つまり、帰る方法ももしかしたら彼女たちが握っているかも知れない。
いや、彼女たちが知らぬともきっと彼女たちの周りには何か変化がある筈だ。
少しずつ、サンサンロードが茜色に染まっていく。建物の側面から現れた太陽の光が瞳にとめどない物を浴びた。まぶちい。
仕方なし気に昼に買った(1時間前)サングラスを付けると、ショーウィンドウに映る自分を見る。
「意外と様になってるな。」
黒い服をも相まって何処ぞのエージェントに見えなくも無い。記憶とか消してきそうだ。
名付けるなら、エージェントPか。
名前にPは付かないけど、ペルソナ好きだから…ペリーじゃないよ。
現在時刻は10時半。映画が後半に突入し始めた頃。こちらの時間は知らぬ。
映画では観れなかったかぐやと彩葉の絡みも見えて感激してはいるが、映画で見るより生っぽくて罪悪感を感じ始めてきた。
件のスマコンの勝手に購入事件を過ぎた後、トイレの仕方の話になったのである。いや、まぁ、かぐやはここに来てそう時間が経っていないのでそう言うのも知って行かなきゃならないのは分かるが、マジで居た堪れなくなってきた。
「もう!大丈夫だって!!それより早く家に帰ろっ!!」
「何をそんなに焦ってんの?まさかまた、アンタ何かやったの?」
「そりゃ、もうサプるぁ〜〜ーイズだよ!」
「嫌な予感しかしないんだけど。」
話に嫌気が刺したのかかぐやが吠えた。データ生命体っぽい何かだったかぐやにとってそう言う話はあまり関係ないと言う事なのだろうか、分かりかねる。
そう言えば覚える事も多かろうと思っていたが、彩葉が現代社会の何かを教えるって展開なかったなとふと思う。
自分で調べたのだろうか。
赤ん坊からたった3日で大きくなった割に生活苦労してなさそうだったから不思議だったんだ。
そんな事を思っていた瞬間であった。
がさっと、電柱の下にあったゴミ袋を踏みつけてしまった。
「何やつ!!??」
瞬間に振り返るかぐや、しょうがなさそうに彩葉も振り向いた。
「えー、もー、無視してたのになんで反応しちゃうの。」
「えっ!?彩葉気づいてたの!?」
「そりゃ、気付くよ。さっきから1人でぶつぶつ言ってたし!」
え!?1人でぶつぶつ言ってたの私!?
と言うか、バレてたんかい!!
2人して電柱に隠れている私を見つめてくる。
何というか、推しに認知されたくないオタク心と普通に話せるなら話しときたい自分の心でせめぎ合ってバーストしかけている。
「で、何のようですか?」
そんな私を押し退いて彩葉が話しかけてきた。
どうする?今の私には多分明確な身分証明なんて無いぞ。
全て令和6年製だ。普通に怪しい。
こちらに正当性のかけらも無いぞ。どうする、警察待ったなしだぞ。
もはや、本当のこと言うか?かぐやの事だって信じたし、眉唾な事実くらい飲み込むだろう?
いや、あれは眉唾な事件が目の前に起きていたから起きた事実確認に過ぎない。こっちは笑い飛ばされるかも…
しょうがない。しょうがないったらしょうがない。こうなったら。
「何の用か。それはそちらがよく知っている筈だろう。」
しょうがないので死ぬほどカッコつけることにした。
「知っているって何のことですか?」
彩葉が問いかける。
私は仕方ないとばかりに首を振る。
「2日前、この辺りに飛行物体が落下してきたと言う情報を入手。」
「ギクっ…」
「我々はそれを外星人の物と断定。調査に赴いたが、痕跡の一切が消失、または存在が確認できず。
故に周囲の住人がその外星人を匿っていると仮説を立て。調査の結果、酒寄彩葉が外星人と共に行動している場面を目撃。」
「……うっ。」
「酒寄彩葉の身辺調査と同時に観察を開始。少々生活に難があるが、異様な点は見当たらず。
少々強引だが、接触を開始。」
「……は、はぁ……」
「私はMIB(メン・イン・ブラック)日本支部のエージェントP。
少しお話を聞かせて頂きたい。なに、時間は取らせない。」
私は着けていたサングラスを外すと彼女に向き直った。
すると、彩葉は「しまった」と言う顔をしながら冷や汗をダラダラとかき始めた。
ふと、かぐやが「あっ!」と叫び出す。
「これ記憶消される奴だ!!」
そんな声が夜の住宅街を駆け巡った。