アムロの必殺技はコロニー落としなんでしょ 作:匿名
「よう、キリコ!」
「ガイアさん!? オルテガさんにマッシュさんも!」
「言っただろう。次に会ったとき、ぶっ飛ばすとな」
ガイアが笑っている。通信越しでもわかる。
「シャア少尉が訓練相手を頼んできたんでな。断る理由がないだろう」
三連星は、キャスバルさんのことをまだ「シャア少尉」と呼んでいる。
正体は知らないらしい。
「3対3。いくぞ」
キャスバルさんの声。
俺、アムロ、キャスバルさん。
対。
ガイア、オルテガ、マッシュ。
開始と同時に、三連星が散開した。三方向から同時に圧をかけてくる。
「散れ!」
キャスバルさんがガイアを正面で受け、俺はオルテガ、アムロがマッシュ。
二週間前なら怖かった。だがもう、Gにも実機にも慣れている。オルテガの突進を読んで右に跳び、脚に一発当てた。
マッシュがアムロを振り切って横から来た。アムロの声で沈む。斬撃が頭上を通過。入れ替わりにアムロがマッシュに食らいつく。
——連携できてる。キャスバルさんがガイアを押し込んでいる。
このまま押し切れる——
と、思った瞬間。
三連星が、同時に後退した。
「……?」
三機が離脱していく。逃げるんじゃない。距離を取っている。
そして——縦に並んだ。
前にガイア。その背後にオルテガ。さらに後ろにマッシュ。
三機が一つに重なって——
レーダーの反応が、三つから一つに変わった。
「オルテガ、マッシュ! モビルスーツにジェットストリームアタックを仕掛けるぞ!」
ガイアの声が響いた。
三機が一直線に加速する。
ガイアを先頭に、影の中にオルテガとマッシュが隠れている。
ガイアが正面から突っ込んでくる。速い。
「避けろ!」
キャスバルさんの声。三人が散開する。
ガイアが左に逸れた——瞬間、その背後からオルテガが飛び出す。
「うおっ!」
俺の正面。至近距離。避ける。ギリギリ。機体が擦れた。
さらに後ろから——マッシュ。
三段目。本命。
マッシュのヒートホークが振り下ろされる。
「キリコ!」
キャスバルさんの機体が割り込んだ。マッシュの一撃を正面で受け止める。
金属が軋む音。キャスバルさんの機体が押されている。
だがその間に、ガイアが反転していた。キャスバルさんの背後を取ろうとしている。
——三段で終わりじゃない。反転して追撃まである。
「させるか!」
俺はガイアに向かった。マシンガンを撃つ。当たらなくていい。ガイアの動きを止めればいい。
ガイアが回避に動く。その隙に——
「今です!」
アムロの機体が、マッシュの横を抜けた。
マッシュがキャスバルさんに集中している一瞬。その死角から、アムロが撃った。
マッシュがよろける。
その隙に、キャスバルさんがマッシュを蹴り飛ばし、そのまま反転。ガイアに突進する。
ガイアが俺のマシンガンを避けた先に——キャスバルさんがいた。
「挟まれ——」
ガイア、被弾。
残ったオルテガに、三機が向き合った。
「……やめだ」
オルテガが、両手を上げた。
「やるじゃねえか」
ガイアの声に、悔しさと——笑いが混じっていた。
「ジェットストリームアタック、凄かったです」
「あれはお前のアドバイスだぞ」
ああ——あの時だ。
シミュレーターの後。「もっと間隔を詰めて、一つに重なって」と言ったやつ。
ガイアが笑った。
◇ ◆ ◇
12月下旬。
空気が——変わっていた。
シャリアさんとキャスバルさんが、よく二人で話している。
顔が険しい。声が低い。
通信機を握るキャスバルさんの拳が、白くなっている。
シーマさんも、最近よくどこかに通信を入れている。
壁に背を預けて、小声で。
通信が終わると、いつも——唇を噛んでいた。
「シーマさん、大丈夫ですか?」
「……大丈夫だよ。坊やは余計な心配しなくていい」
大丈夫じゃない顔だった。
でも、それ以上は聞けなかった。
アムロは、毎日テムさんと一緒にザクをいじっている。
親子で並んで工具を握っている姿は——普通の、父と息子に見えた。
みんな——わかっているのだ。
もうすぐ、何かが始まることを。
「カスタム機は、あと数日で仕上がる」
テムさんが言った。
「クワトロさんとアムロの機体は操縦系を全面的に書き直した。ついでにカラーリングも変えてある」
奥には、赤いザクと、白いザクが並んでいた。
「キリコ君の機体には——希望通り、大剣を作っている」
「本当ですか!」
「両手持ちの大型実体剣だ」
大剣。ザク用の大剣。
俺のための大剣。
「テムさん……! ありがとうございます!」
「礼はいい。君も何かカラーリングに希望はあるかい」
俺は少し考えて、言った。
「左肩だけを、赤くしてください」
「ほう?」
「レッドショルダーカスタム、です」
俺は、ニヤリと笑った。