アムロの必殺技はコロニー落としなんでしょ   作:匿名

18 / 22
第18話「ロンド・ベル」

 

「あと1日あれば!」

 

 テムさんが叫んだ。

 ラルさんの地下格納庫。工具が散らばった床の上で、テムさんが髪を掻きむしっている。

 

「駆動系の最終調整が残っている! あと1日——いや、半日でいい! 半日あれば完璧に仕上がるんだ!」

 

「テムさん、完璧じゃなくても動けばいいんですよ」

 

「動くだけでいいのなら技術者は要らんのだよキリコ君!」

 

 怒られた。

 

 日付は、UC0079年、1月3日(本来の開戦日)

 

『すまない、シャア』

 

 ガルマからの通信が入った。

 

『私の力では——1日遅らせることが、精一杯だった』

「いや——よくやった」

 

 キャスバルさんの声は静かだった。だが、確かな熱があった。

 

「ありがとう、ガルマ」

『シャア……!』

「お前にしかできないことがある。もう坊やではないな」

 

 通信が、切れた。

 

 キャスバルさんが振り返った。

 俺と目が合った。

 

「……聞いていたのか」

「すみません」

「構わん」

 

 キャスバルさんの目が、静かに燃えていた。

 

「全員を呼べ。最後のブリーフィングだ」

 

 ◇ ◆ ◇

 

 全員が集まった。

 

 キャスバルさん。アムロ。テムさん。シャリアさん。

 ランバ・ラルさん。ドレンさん。

 

 通信の向こうに、シーマさん。

 

 そして、俺。

 

 奥には、ザクが並んでいる。

 赤。白と青と赤の三色。そして——左肩だけが赤い、レッドショルダー。

 

 ……なんで一機だけトリコロールなんだ。

 

「視認性と識別性を考慮した最適な塗装パターンだ!」

 

 テムさんが聞いてもいないのに叫んだ。アムロが目を逸らしている。

 

「明日、開戦だ」

 

 キャスバルさんが言った。

 

「ジオンは住民をガスで……無力化し、コロニーを地球に落とす気だ」

 

 格納庫が、静まりかえった。

 

「我々の猶予は、あと24時間」

 

 テムさんが、歯を食いしばった。

 

「半日で仕上げてみせる」

 

 アムロが、父親を見た。テムさんは既に工具を握り直していた。

 

「作戦目標は二つ」

 

 キャスバルさんが、指を立てた。

 

「一つ。ガス散布の阻止。シーマ、頼めるか」

『ふん、せいぜいうまくサボタージュしておくよ』

 

 その声に迷いはなかった。

 

「そして、コロニー推進装置の取り付け阻止だ」

「ガスさえ防げば、コロニーを落とすとは思えませんが……」

 

 ラルさんが言う。

 

「万が一ということもある。可能性は潰したい」

 

 キャスバルさんの声に、迷いはなかった。

 

「ドレン。お前は艦を。脱出路の確保を頼む」

「了解です、少——いえ。了解です」

 

 ドレンさんが、敬礼した。

 

 ◇ ◆ ◇

 

 作戦の確認が終わって、少しだけ空気が緩んだ。

 

「……そういえば」

 

 俺は、ふと思った。

 

「俺たち、チーム名ないですよね」

「チーム名?」

 

 キャスバルさんが、怪訝な顔をした。

 

「名前がないとかっこつかないっていうか」

「かっこ……」

「キャスバルさんの方が正統派なんだから、ネオジオンとかどうですか!」

 

「ネオ……ジオン? なんだか縁起が悪い響きですね」

 

 シャリアさんが眉をひそめた。

 

「ジオン共和国は?」

「国ではないだろう、我々はまだ」

 

「ソレスタルビーイング!」

「天上人……?」

 

「三隻同盟!」

「俺たち一隻しかないだろ」

 

 ドレンさんが冷静に突っ込んだ。

 

「……木星帝国」

 

 シャリアさんがボソッと言った。

 この人もボケるのか……!

 

『木星帰りはあんただけだろ!』

 

 通信の向こうから、シーマさんのツッコミが届く。

 

「鉄華団!」

「散りそうだな」

 

「ブルーコスモス!」

「なんか悪そう」

 

「アロウズ!」

「法律事務所か何かか?」

 

「シャッフル同盟!」

『トランプでも始めるのかい』

 

「ポメラニアンズ」

「シャリア、お前……実は面白い奴だな?」

 

「ホワイトベース!」

「連邦の新型強襲揚陸艦のコードネームだぞ! どこで聞いた!」

 

 テムさんが工具を持ったまま振り向いた。え、マジで?

 

「プリベンターズ!」

「マフティ!」

「ザフト!」

「アロウズ!」

「人類革新連盟!」

「ヴェイガン!」

「袖付き!」

 

 みんながツッコミに疲れてる。

 いまだ!

 

「ギルガメス宇宙軍第10師団メルキア方面軍第24戦略機甲歩兵団特殊任務班X-1!」

「長い!」

 

 全員に同時に突っ込まれた。

 本命だと思ってたんだけどなあ……

 

 ——と。

 

「……ロンド・ベル」

 

 小さな声だった。

 アムロだ。ずっと黙っていたアムロが、ぽろっと言った。

 

 格納庫が、静かになった。

 

「ロンド・ベル?」

「……なんとなく、浮かんだだけだけど」

 

「ロンド・ベル」

「いい名前だ」

 

 ラルさんが言った。

 

『わたしは反対しないよ』

 

 シーマさんの声が、明るい。

 

「いい響きだ」

 

 シャリアさんが、静かに頷いた。

 キャスバルさんが、全員を見渡した。

 

「では——我々は今日から、ロンド・ベルだ」

 

 皆が、一つになった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。