アムロの必殺技はコロニー落としなんでしょ 作:匿名
「あと1日あれば!」
テムさんが叫んだ。
ラルさんの地下格納庫。工具が散らばった床の上で、テムさんが髪を掻きむしっている。
「駆動系の最終調整が残っている! あと1日——いや、半日でいい! 半日あれば完璧に仕上がるんだ!」
「テムさん、完璧じゃなくても動けばいいんですよ」
「動くだけでいいのなら技術者は要らんのだよキリコ君!」
怒られた。
日付は、
『すまない、シャア』
ガルマからの通信が入った。
『私の力では——1日遅らせることが、精一杯だった』
「いや——よくやった」
キャスバルさんの声は静かだった。だが、確かな熱があった。
「ありがとう、ガルマ」
『シャア……!』
「お前にしかできないことがある。もう坊やではないな」
通信が、切れた。
キャスバルさんが振り返った。
俺と目が合った。
「……聞いていたのか」
「すみません」
「構わん」
キャスバルさんの目が、静かに燃えていた。
「全員を呼べ。最後のブリーフィングだ」
◇ ◆ ◇
全員が集まった。
キャスバルさん。アムロ。テムさん。シャリアさん。
ランバ・ラルさん。ドレンさん。
通信の向こうに、シーマさん。
そして、俺。
奥には、ザクが並んでいる。
赤。白と青と赤の三色。そして——左肩だけが赤い、レッドショルダー。
……なんで一機だけトリコロールなんだ。
「視認性と識別性を考慮した最適な塗装パターンだ!」
テムさんが聞いてもいないのに叫んだ。アムロが目を逸らしている。
「明日、開戦だ」
キャスバルさんが言った。
「ジオンは住民をガスで……無力化し、コロニーを地球に落とす気だ」
格納庫が、静まりかえった。
「我々の猶予は、あと24時間」
テムさんが、歯を食いしばった。
「半日で仕上げてみせる」
アムロが、父親を見た。テムさんは既に工具を握り直していた。
「作戦目標は二つ」
キャスバルさんが、指を立てた。
「一つ。ガス散布の阻止。シーマ、頼めるか」
『ふん、せいぜいうまくサボタージュしておくよ』
その声に迷いはなかった。
「そして、コロニー推進装置の取り付け阻止だ」
「ガスさえ防げば、コロニーを落とすとは思えませんが……」
ラルさんが言う。
「万が一ということもある。可能性は潰したい」
キャスバルさんの声に、迷いはなかった。
「ドレン。お前は艦を。脱出路の確保を頼む」
「了解です、少——いえ。了解です」
ドレンさんが、敬礼した。
◇ ◆ ◇
作戦の確認が終わって、少しだけ空気が緩んだ。
「……そういえば」
俺は、ふと思った。
「俺たち、チーム名ないですよね」
「チーム名?」
キャスバルさんが、怪訝な顔をした。
「名前がないとかっこつかないっていうか」
「かっこ……」
「キャスバルさんの方が正統派なんだから、ネオジオンとかどうですか!」
「ネオ……ジオン? なんだか縁起が悪い響きですね」
シャリアさんが眉をひそめた。
「ジオン共和国は?」
「国ではないだろう、我々はまだ」
「ソレスタルビーイング!」
「天上人……?」
「三隻同盟!」
「俺たち一隻しかないだろ」
ドレンさんが冷静に突っ込んだ。
「……木星帝国」
シャリアさんがボソッと言った。
この人もボケるのか……!
『木星帰りはあんただけだろ!』
通信の向こうから、シーマさんのツッコミが届く。
「鉄華団!」
「散りそうだな」
「ブルーコスモス!」
「なんか悪そう」
「アロウズ!」
「法律事務所か何かか?」
「シャッフル同盟!」
『トランプでも始めるのかい』
「ポメラニアンズ」
「シャリア、お前……実は面白い奴だな?」
「ホワイトベース!」
「連邦の新型強襲揚陸艦のコードネームだぞ! どこで聞いた!」
テムさんが工具を持ったまま振り向いた。え、マジで?
「プリベンターズ!」
「マフティ!」
「ザフト!」
「アロウズ!」
「人類革新連盟!」
「ヴェイガン!」
「袖付き!」
みんながツッコミに疲れてる。
いまだ!
「ギルガメス宇宙軍第10師団メルキア方面軍第24戦略機甲歩兵団特殊任務班X-1!」
「長い!」
全員に同時に突っ込まれた。
本命だと思ってたんだけどなあ……
——と。
「……ロンド・ベル」
小さな声だった。
アムロだ。ずっと黙っていたアムロが、ぽろっと言った。
格納庫が、静かになった。
「ロンド・ベル?」
「……なんとなく、浮かんだだけだけど」
「ロンド・ベル」
「いい名前だ」
ラルさんが言った。
『わたしは反対しないよ』
シーマさんの声が、明るい。
「いい響きだ」
シャリアさんが、静かに頷いた。
キャスバルさんが、全員を見渡した。
「では——我々は今日から、ロンド・ベルだ」
皆が、一つになった。