アムロの必殺技はコロニー落としなんでしょ   作:匿名

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第19話「これでは道化だよ」

 

 人類が増えすぎた人口を宇宙に移民させるようになって、既に半世紀が過ぎていた。

 

 地球の周りの巨大な人工都市は人類の第二の故郷となり、人々はそこで子を産み、育て、そして死んでいった。

 

 宇宙世紀0079、地球から最も遠い宇宙都市サイド3はジオン公国を名乗り、地球連邦政府に独立戦争を挑んで宣戦を布告。

 

 その3秒後(・・・)、公国軍は全正面で攻撃を開始した。

 

 事実上の奇襲である。

 

 ◇ ◆ ◇

 

『シーマ艦隊! 何をやっている! ガスはどうした!!』

 

「申し訳ありません、指揮官殿! 海兵隊は何者かの妨害により——ああーっ! 大変です! 動けません!」

 

 答えるシーマの声は、緊迫感に欠けていた。

 

「ああっ! 爆発がーっ!」

 

 咄嗟に、副官のコッセルが録音していた爆発音を流した。

 

 どかーん!

 

 シーマが親指を立てた。コッセルが無表情のまま頷いた。

 

「ミノフスキー粒子戦闘濃度! 申し訳ございません、通信途切れます!」

『まっ、まて!』

 

 ブリッジが、静かになった。

 

「……上出来だよ」

 

 シーマが、椅子の背に身を預けた。

 

 あとは、坊やたちの仕事さ。

 

 ◇ ◆ ◇

 

 サイド2、8バンチ(アイランド・イフィッシュ)宙域。

 

 コロニーに向かう公国軍の艦隊が見たのは——巨大な、サンタクロースだった。

 

 真っ赤な服。白い髭。丸い腹。

 艦隊の進路上に、それは浮かんでいた。直径30メートルはあろうかという、巨大なバルーンが四つ。

 

「……なんだ、あれは」

 

 次の瞬間、サンタの腹が光った。

 

 巨大な映像が、投影された。

 

 金髪の男だった。

 青い目。整った顔立ち。紺のスーツ。

 

 ——だが、サンタの腹に映っているせいで、スーツは赤く染まっていた。

 

『ジオンの兵士諸君』

 

 声が、全周波数で響いた。

 

『私の声が聞こえるな』

 

 艦橋のクルーが、動きを止めた。

 

『諸君らはジオンの名のもとに戦っている。だが——問おう。ジオンとは何だ』

 

 声が反響する。

 

『ジオン・ズム・ダイクン。人の革新を唱え、宇宙に住む者たちの自立を説いた男は、私の——父だ』

 

 全艦が、制止した。

 

『私の名は、キャスバル・レム・ダイクン』

 

 ざわめきが、広がった。

 ダイクン。あの、ダイクン。

 

『父は、人の可能性を信じた。宇宙に出た人類が、地球の重力に縛られず、新たな時代を切り拓くことを夢見た』

 

 キャスバルの目が、まっすぐ前を見ていた。

 

『だが、今——ザビ家は、その名を騙り、何をしようとしている』

 

 声が、低くなった。

 

『同胞たるコロニーに毒ガスを撒き、住民を殺し、その屍を地球に叩きつける。これがジオンか。これが、父の夢見た人の革新か』

 

 宙域が、静まり返った。

 

『否! 断じて違う!』

 

 キャスバルの声が、響いた。

 

『私は父の意志を継ぐ者として、ここに宣言する』

 

 映像の中で、キャスバルが右手を上げた。

 

『我々は、ロンド・ベル。ザビ家の暴走を止め、コロニーの民を守るために立ち上がった者たちだ』

 

 紺のスーツが、真っ赤に映る。

 

『兵士諸君。武器を下せ。ここにいる人々は、諸君らと同じ宇宙の民だ。守るべき同胞だ。殺すべき敵ではない』

 

 沈黙が続いた。

 

『ザビ家に従うか、ジオンの理想に従うか——選ぶのは、諸君自身だ』

 

 全軍が、サンタを見ている。

 

 テムさんが「これしか手に入らなかった」と用意した物。

 キャスバルさんが「これでは道化だよ」とぼやいていた物。

 

 瞬間、通信が割り込んだ。

 

『狼狽えるな! ジオンの兵士たちよ!』

 

 全周波数。全チャンネルに、一斉に。

 

『キャスバルを名乗る逆賊に惑わされるな!』

 

 ガルマの声だった。

 ザビ家の末弟。ガルマ・ザビ。その声は若く、真っ直ぐで、怒りに震えていた。

 

『ガルマ……なぜここに……』

 

 キャスバルの声は静かだった。

 

『そうか。前線に出ると言って、それで、開戦を1日遅らせたのか』

『……ああ』

 

 ガルマの声が、変わった。

 

『友のためをと思い、ジオンのためをと思い、兄上を説得した。なのに——』

 

 声が、震えていた。怒りだけではない。もっと深いものが混じっている。

 

『謀ったな、シャア!』

 

 最後に、その名を呼んだ。

 偽りの名。だが二人の間では、本当の名前よりも重い名前。

 

 次の瞬間——旗艦の格納庫から、一機のザクが射出された。

 

 濃い緑の胴体。橙の手足。装飾の施された大型ヒートホーク。

 

 速い。

 ザクがヒートホークを抜いた。

 

 一閃。

 

 サンタが、縦に割れた。

 真っ赤なバルーンが左右に裂け、白い髭が宇宙空間にゆっくりと漂っていく。

 残骸が、星の光を浴びて散った。

 

 投影されたキャスバルが、宇宙に溶ける。

 代わりに、ガルマのザクがその真ん中に浮いていた。

 

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