アムロの必殺技はコロニー落としなんでしょ 作:匿名
『カタパルト、接続確認——よし、全機スタンバイ』
ドレンさんの声が、格納庫に響いた。
『1番カタパルト、キャスバル機。射出準備完了』
「キャスバル・レム・ダイクン。出る」
赤いザクが、カタパルトの光の中に消えた。
『2番、アムロ機。どうぞ』
「アムロ、行きます!」
トリコロールのザクが、宇宙を駆ける。
『3番、シャリア機、4番、ラル機。どうぞ』
「シャリア・ブル。発進します」
「ランバ・ラル。出るぞ」
白いザクと青いザクが、展開する。
『5番、キリコどうぞ』
俺はシートに背中を押しつけた。
手が、震える。
緊張か。武者震いか。
「キリコ。出ます!」
Gが体を叩いた。星の海が、一気に広がる。
左肩だけが赤いザク、レッドショルダー。
その右手には——剣があった。
それは、剣というにはあまりにも大きかった。
機体の全長を大きく超える。振り回すだけで周囲の空間を薙ぎ払えそうな、馬鹿げたサイズ。
ある世界では、ギー・ヘルムートという人物が使ったとされる試作兵器。
——テムさん、最高だぜ。
「ラルは艦の護衛を」
『任された』
「アムロ、シャリア、キリコ。行くぞ」
キャスバルさんの声は、静かだった。
『ええい! 全機発進! ガルマ閣下をお守りしろ!』
怒声が飛んだ。
旗艦の格納庫から、ザクが次々と射出されていく。
1機、2機、3機——
12機のザクが、ガルマの周囲に展開した。
ザクが、一斉に火を噴いた。
マシンガンの弾幕が宙域を埋め尽くす。
だが——
赤いザクが、弾幕を裂いた。
肉薄されたザクが反応すらできない。胴体を蹴り抜かれ、コクピットごとひしゃげる。1機目。
その反対側——三色ザクが、見えないはずの死角から撃ち抜いていく。
2機、3機。狙いを定める暇すら与えない。
シャリアさんの白いザクは、戦っていないように見えた。
ただ静かに動いている。だが敵が逃げる先に、すでに銃口が置かれている。4機目、5機目。
そして俺は——
「うおおおお!」
レッドショルダーの大剣を振りかぶる。
目の前のザクがマシンガンを構えた。見えた。タイミングが見えた。
左に——そこ!
大剣が、ザクを縦に両断した。6機目。
返す刀。7機目の頭部が飛ぶ。
残りが散開しようとした。遅い。
赤と白と三色が、四方から喰らいついた。
8、9、10——11——
最後の1機が、背を向けた。
キャスバルさんの赤いザクが、その背中を蹴った。蹴っただけだ。
それで、終わった。
『ば、ばかな……! 12機のザクが、たった一分で……!』
だが、新たな機影が3つ。
『ジョニー・ライデン。参る!』
『シン・マツナガ。閣下の盾となる』
『ガトー。ザビ家の大義に殉じる!』
そして——
ガルマのザクが、ゆっくりと前に出た。
『シャア! シャア!! シャア!!!!』
確かめるように。その名を三度。
その声は、震えていた。
「ガルマ。まだ間に合う。こちらに来い」
『……私とて、ザビ家の男だ』
「お前はガルマだ。ただのガルマでいいんだ」
あの時、一緒に食事をして笑っていたガルマが頭をよぎる。
『——だからこそ、許せないのだ!』
ガルマのザクを守るように、三機が展開する。
『閣下、お下がりを!』
ジョニーが正面から突っ込んできた。シャリアさんの白いザクが、その前に滑り込む。
「若いな」
『この程度で!』
マツナガの重い一撃を、俺は大剣で受けた。
「コロニーにガスを撒くのが大義なんですか!」
『……答える義務はない』
返す刃が、レッドショルダーの装甲を掠めた。冷や汗が背中を伝う。
アムロの三色ザクが、ガトーと高速で斬り結ぶ。
『理想なき者に、語る言葉はない!』
キャスバルさんの声がした。
「行くぞ」
合図はそれだけ。
赤いザクが動いた。三色ザクが、もう反対側にいた。
キャスバルさんがジョニーに噛みつく。振り向いた——背中を、アムロが刺す。
ガトーがアムロに飛びかかる。退路に、シャリアさん。
「これが、私たちのマブ戦術だ」
シャリアさん、その名前はちょっと恥ずかしいから変えてほしい……
噛みついて、刺して、回して、薙ぐ。言葉はいらない。
——だが。
『この程度で!』
キャスバルさんの死角を突いたアムロの射撃を、ジョニーが機体を強引に捻って躱した。
マツナガの斧が俺の大剣を受け流し、そのままカウンターを入れてくる。
ガトーの眼光が、シャリアさんのプレッシャーを押し返していた。
さっきの12機とは違う。
「……粘るな」
『エースってのは、こういうもんだろうよ!』
ジョニーが笑っていた。
瞬間——コロニーの外壁に、無数の光が走った。
「何の光!?」
「あれは……溶接光です」
シャリアさんの声が、低かった。
巨大な構造物が取り付けられようとしていた。
核パルス推進装置。
「なぜだ!」
「ガスは防いだはずなのに!?」
「まさか、生きたまま……」
——落とすのか。数百万人を乗せたまま、地球に。
「くそっ……!」
この三機に構っている暇はない。
——ならば。
「アムロ! シャリアさん! キャスバルさん! あれを使うぞ!」