アムロの必殺技はコロニー落としなんでしょ   作:匿名

5 / 22
第5話「俺を踏み台にした!?」

 

 3人分の怒声と共に、ドアが開かれた。

 

 いや——蹴り開けられた、の方が正しい。

 

 男が3人。全員、軍服。全員、でかい。

 先頭の男は目つきが鋭く、短い髪を逆立てている。

 その後ろに、隻眼の男と、一回り大きい巨漢。

 

「お前か」

 

 先頭の男が、俺を見下ろした。

 

「昨日シミュレーターで記録を出したのは」

 

 ……昨日? シミュレーター?

 ああ、あのゲームのことか。

 

「えっと……はい。やりました」

「やりました、だと?」

 

 男の目が、さらに鋭くなった。

 

「俺たちの記録を踏み台にしておいて、『やりました』だと?」

 

 やけに悔しそうだ。

 この人たちもゲーム廃人なのか?

 

 改めて3人を見た。

 軍服を着ている。明らかに実戦経験のある目をしている。体つきも、ただの兵士じゃない。

 シャアさんと同じ側の人たち。つまり、正義の側。

 しかも3人組で、エースっぽい。

 

 ……あ。

 

 わかった。わかったぞ。

 こういうキャラ、知っている。

 

 主人公の仲間サイドにいる、3人組の精鋭。

 強い。プライドも高い。敵の将軍をなんとか捕まえたりもする。

 

 だが、敵はもっと強い。そして——悪の親玉アムロを倒すために3人で挑み、壮絶な戦いの末にやられる。

 最期の瞬間、シャアさんに希望を託して散っていくんだ。

 

 「あとは……頼んだぞ……シャア……」とか言いながら。

 

 ——目頭が、熱くなった。

 

 こいつらは、死ぬんだ。

 アムロという悪党を止めるために。シャアさんと一緒に戦って。

 でも最後は、シャアさん一人を残して。

 

 俺の頬を、涙が伝った。

 

「…………は?」

 

 先頭の男——ガイアと呼ばれていた——が、固まった。

 

「おい。何を泣いている」

「……すみません……あなたたち、かっこいいなって……」

「何?」

「3人で……仲間で……きっとすごい戦いを……でも、俺がそんな未来にはさせません!」

 

 涙が、止まらなかった。

 

「おい、こいつ何を言ってるんだ」

 

 巨漢——オルテガが、隻眼の男——マッシュに耳打ちした。

 

「さあな」

 

 マッシュは短く答えた。

 

 ガイアの顔だけが、みるみる赤くなっていった。

 

「てめえ……まさか、あわれんでいるのか!?」

「え、いや、あわれんでなんか——」

「俺たちの記録を踏み台にした挙句、涙まで流しやがって! 今すぐシミュレーターだ! 擬似対戦で決着つけてやる!」

 

「待て」

 

 声が、廊下から響いた。

 シャアだった。

 

「ガイア少尉。その男は私の預かりだ」

 

 ガイアが振り返った。

 

「シャア少尉。こいつが何者か知ってるのか」

「知っている」

「こいつに俺たちの記録を抜かれたんだ。このまま引き下がるわけにはいかん」

 

「ガイア少尉、この件は極秘だ」

 

 シャアの声が、一段低くなった。

 ドレンに言ったのと同じトーン。キシリアの名前は出さなかったが、ガイアの目が一瞬揺れた。

 

「極秘、だと?」

 

 ガイアがシャアと俺を見比べた。

 何か考えている顔だった。

 

 ——それから、にやりと笑った。

 

「いいぜ、シャア少尉。極秘にしてやる」

 

 ガイアが一歩、近づいた。

 

「こいつが勝ったらな」

 

 シャアの目が、わずかに細くなった。

 

「……脅しか」

「取引だ」

 

 オルテガが、後ろで拳を鳴らした。マッシュは黙って腕を組んでいる。

 

 シャアは、しばらく黙っていた。

 それから、小さく息を吐いた。

 

「仕方なかろう。ただし、2対2だ」

 

 ガイアの眉が上がった。

 

「2対2?」

「私とキリコで出る。そちらは好きに組め」

 

 ——え?

 

「シャアさん、それって」

「キリコ、昨日と同じようにやればいい」

 

 シャアさんと、2人で。

 チーム戦。

 

 俺の胸が、じわりと熱くなった。

 

「ガイア少尉。それで構わないか」

 

 ガイアが、にやりと笑った。

 

「面白い。いいだろう。シミュレーター室で待っているぞ」

 

 3人が去っていった。

 廊下に、軍靴の音が遠ざかる。

 

「シャアさん」

「何だ」

「……ありがとうございます」

 

 シャアさんが、俺と組んでくれる。

 正義の味方と、同じチームで戦える。

 

 あの3人は強そうだった。怖かった。でも、シャアさんが隣にいるなら。

 

 ——俺は無敵だ。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。