アムロの必殺技はコロニー落としなんでしょ 作:匿名
3人分の怒声と共に、ドアが開かれた。
いや——蹴り開けられた、の方が正しい。
男が3人。全員、軍服。全員、でかい。
先頭の男は目つきが鋭く、短い髪を逆立てている。
その後ろに、隻眼の男と、一回り大きい巨漢。
「お前か」
先頭の男が、俺を見下ろした。
「昨日シミュレーターで記録を出したのは」
……昨日? シミュレーター?
ああ、あのゲームのことか。
「えっと……はい。やりました」
「やりました、だと?」
男の目が、さらに鋭くなった。
「俺たちの記録を踏み台にしておいて、『やりました』だと?」
やけに悔しそうだ。
この人たちもゲーム廃人なのか?
改めて3人を見た。
軍服を着ている。明らかに実戦経験のある目をしている。体つきも、ただの兵士じゃない。
シャアさんと同じ側の人たち。つまり、正義の側。
しかも3人組で、エースっぽい。
……あ。
わかった。わかったぞ。
こういうキャラ、知っている。
主人公の仲間サイドにいる、3人組の精鋭。
強い。プライドも高い。敵の将軍をなんとか捕まえたりもする。
だが、敵はもっと強い。そして——悪の親玉アムロを倒すために3人で挑み、壮絶な戦いの末にやられる。
最期の瞬間、シャアさんに希望を託して散っていくんだ。
「あとは……頼んだぞ……シャア……」とか言いながら。
——目頭が、熱くなった。
こいつらは、死ぬんだ。
アムロという悪党を止めるために。シャアさんと一緒に戦って。
でも最後は、シャアさん一人を残して。
俺の頬を、涙が伝った。
「…………は?」
先頭の男——ガイアと呼ばれていた——が、固まった。
「おい。何を泣いている」
「……すみません……あなたたち、かっこいいなって……」
「何?」
「3人で……仲間で……きっとすごい戦いを……でも、俺がそんな未来にはさせません!」
涙が、止まらなかった。
「おい、こいつ何を言ってるんだ」
巨漢——オルテガが、隻眼の男——マッシュに耳打ちした。
「さあな」
マッシュは短く答えた。
ガイアの顔だけが、みるみる赤くなっていった。
「てめえ……まさか、あわれんでいるのか!?」
「え、いや、あわれんでなんか——」
「俺たちの記録を踏み台にした挙句、涙まで流しやがって! 今すぐシミュレーターだ! 擬似対戦で決着つけてやる!」
「待て」
声が、廊下から響いた。
シャアだった。
「ガイア少尉。その男は私の預かりだ」
ガイアが振り返った。
「シャア少尉。こいつが何者か知ってるのか」
「知っている」
「こいつに俺たちの記録を抜かれたんだ。このまま引き下がるわけにはいかん」
「ガイア少尉、この件は極秘だ」
シャアの声が、一段低くなった。
ドレンに言ったのと同じトーン。キシリアの名前は出さなかったが、ガイアの目が一瞬揺れた。
「極秘、だと?」
ガイアがシャアと俺を見比べた。
何か考えている顔だった。
——それから、にやりと笑った。
「いいぜ、シャア少尉。極秘にしてやる」
ガイアが一歩、近づいた。
「こいつが勝ったらな」
シャアの目が、わずかに細くなった。
「……脅しか」
「取引だ」
オルテガが、後ろで拳を鳴らした。マッシュは黙って腕を組んでいる。
シャアは、しばらく黙っていた。
それから、小さく息を吐いた。
「仕方なかろう。ただし、2対2だ」
ガイアの眉が上がった。
「2対2?」
「私とキリコで出る。そちらは好きに組め」
——え?
「シャアさん、それって」
「キリコ、昨日と同じようにやればいい」
シャアさんと、2人で。
チーム戦。
俺の胸が、じわりと熱くなった。
「ガイア少尉。それで構わないか」
ガイアが、にやりと笑った。
「面白い。いいだろう。シミュレーター室で待っているぞ」
3人が去っていった。
廊下に、軍靴の音が遠ざかる。
「シャアさん」
「何だ」
「……ありがとうございます」
シャアさんが、俺と組んでくれる。
正義の味方と、同じチームで戦える。
あの3人は強そうだった。怖かった。でも、シャアさんが隣にいるなら。
——俺は無敵だ。