呪力は呪力でも呪力かよ!? 作:パンツ男
︎︎入試までの8ヶ月はあっという間に過ぎていった。
︎︎この8ヶ月、俺は勉強も実技も基礎から叩き上げて新たな式神も用意して万全を期した。
「……お前は連れてってやれねぇけど……見守ってくれ」
︎︎《黒虎》として活動していたことがバレないように、虎の面は自室のタンスに隠しておく。
「ハッ……相変わらず酷ぇ顔だな……」
︎︎8ヶ月前に自分の生きる目標を見つけて、再出発しても悪夢は消えなかったが、それでもあの時と比べて顔つきが変わった気がする。
1:ヒロアカ陰陽師
おはようございます。
これから俺は雄英の入試です。
2:名無しの転生者
イッチおはよう!
3:名無しの転生者
もう入試か……時間の流れの違いもあるけど早いなぁ。
4:竜舞ガブ
最近、おじさん歳を感じるわぁ。
5:名無しの転生者
あんたに年齢の概念あったんだ。
6:竜舞ガブ
あるに決まってるやろ、俺のことなんやと思ってんねん。
7:名無しの転生者
600族のバケモン。
8:レジェンドプロデューサー
お前たち話が脱線してるぞ。
それでイッチ、入試は大丈夫か?
9:ヒロアカ陰陽師
はい。
やれることは全部やったので後は本番でそれを出し切れるかです。
10:名無しの転生者
頑張れ応援してるぜ!!
11:名無しの転生者
イッチなら大丈夫だ!
12:ヒロアカ陰陽師
ありがとうございます。
︎︎施設を出て、最寄りの駅から雄英に向かう。
︎︎電車に揺られながら、スレ民の応援に微笑む。
「あと三駅か」
︎︎早朝から施設を出て数時間、そろそろ雄英の最寄り駅に到着する。周りを確認すると、俺と同じ受験生と思われる学生が緊張で顔を強ばらせながら参考書とにらめっこしている。
「……」
(それにしても色んな人がいるな……)
︎︎雄英高校ヒーロー科の倍率は約300倍。約1万人の受験生に対して、2クラス38席の狭き門。
(でも……やってやる。こんなところで足踏みしてる時間はないんだ)
︎ここにいる受験生がどんな思いを背負っているのか知らないが、俺にはやらなきゃならないことがある。
︎︎俺は拳を固く握り、改めて決意する。
13:ヒロアカ陰陽師
雄英高校に到着しました。
14:名無しの転生者
ついにかなんか長かったなぁ。
15:ヒロアカ陰陽師
そうですね。
この世界に転生して12年経って……あ。
16:名無しの転生者
え?どうした!?どうした!?
17:名無しの転生者
なんかあったか?
18:ヒロアカ陰陽師
いえ、前を歩いていた受験生がコケそうになってたんで助けようと……でも、先に女の子が助けたみたいで。
19:レジェンドプロデューサー
お、そこか。
20:竜舞ガブ
イッチ、そのコケかけた子はヒロアカの主人公や。
緑のもじゃもじゃ頭の子やろ?
21:ヒロアカ陰陽師
はい。
22:名無しの転生者
おぉ!あのシーンか!
23:名無しの転生者
原作のシーンを間近で見られるとは感動だな。
24:名無しの転生者
まぁ俺たち見えてないんだけどな。
25:名無しの転生者
細かいことは気にしない。
26:ヒロアカ陰陽師
それじゃあ、筆記試験なので一旦落ちますね。
実技試験になれば切り替えます。
27:名無しの転生者
センキュー。
28:転生者掲示板
LIVEモードに切り替えます。
『今日は俺のライヴにようこそー!!!エヴィバディセイヘイ!!!』
︎︎筆記試験が終わり、実技試験の説明会場で待機していると、雄英で教鞭をとっているプレゼント・マイクが大きな声で受験生たちを迎えてくれた。
30:名無しの転生者
耳ないなった。
31:名無しの転生者
なんも聞こえへんねんけど、掲示板バグった?
32:名無しの転生者
ここはだこ?私はどこ?
33:縁柱ドンモモタロウ
なんかデジャブった。
34:名無しの転生者
前にもあったよなこんなこと。
『こいつぁシヴィー!!!受験生のリスナー!実技試験の概要をサクッとプレゼンするぜ!!!アーユーレディー!?』
︎︎プレゼント・マイクのメンタルは相当強いようで、受験生たちからレスポンスが返ってこなくても特に気にせず話を進めた。
「リスナーにはこの後10分間の『模擬市街地演習』を行ってもらうぜ!!持ち込みは自由!プレゼン後は各自指定の演習会場へ向かってくれよな!!」
︎︎事前に通知されていたが、道具の持ち込みが自由で良かった。俺は霊符がなくても呪装できるが、余分に呪力を消費するし、武器という手数が減ってしまう。
「演習場には仮想ヴィランを
(……行動不能ね……極端な話、止縛法やその上位互換の
「もちろん他人への攻撃等アンチヒーローな行為はご法度だぜ!?」
36:名無しの転生者
なんか簡単じゃね?
というかロボ無双なら戦闘系の“個性”が超有利じゃん。
37:名無しの転生者
まぁヒーローを目指すならある程度の戦闘力はいるし……支援系の“個性”で全く戦えませんじゃ話にならないからなぁ。
38:縁柱ドンモモタロウ
まぁそのためのアレみたいなとこあるし……。
39:名無しの転生者
アレ?
40:レジェンドプロデューサー
実技試験が終わったら教えるよ。
イッチは皆とフェアな状態で試験に挑むと言っていたから、俺たちは何も教えないことにしている。
41:名無しの転生者
律儀だなぁ。
42:名無しの転生者
まぁイッチだし。
「質問よろしいでしょうか!?」
︎︎実技試験の説明を聞き、配られたプリント見ながらどう行動するか考えていると、前の席に座っていた受験生が立ち上がりプレゼント・マイクに質問していた。
「プリントには
︎︎眼鏡の受験生はプレゼント・マイクにプリントと口頭での説明の違いを指摘した。
「ついでにそこの縮毛の君!!先ほどからボソボソと……気が散る!物見遊山のつもりなら即刻ここから去りたまえ!」
︎続けて後ろの方にいた受験生がブツブツと呟いていることを指摘し、大勢の前で注意した。あの受験生は先程コケかけていた奴だった。
(スレ民の話ではあの子がこの世界の主人公らしいが、注意を受けて完全に縮こまってるな……本当に大丈夫か?)
44:名無しの転生者
うわぁ……ホームルームで槍玉に上げられた記憶がフラッシュバックした……。
45:名無しの転生者
あれ嫌だよなぁ……。
46:名無しの転生者
というか大丈夫なんですあれ?完全に萎縮して全力出せそうにないですけど。
47:縁柱ドンモモタロウ
まぁ……大丈夫さ。
48:聖剣使いのプロブレーダー
主人公だからな。
49:竜舞ガブ
そっちは心配せんでもええで。
イッチと同じ試験会場にならん限りは大丈夫やからな。
50:名無しの転生者
フラグか?
「オーケーオーケー!受験番号7111番くんナイスな質問サンキューな!四種目の敵は0P!そいつは言わば
︎︎眼鏡の受験生を落ち着かせたプレゼント・マイクは、彼の質問について答える。
「有難う御座います失礼致しました!」
「なる程……避けて通るステージギミックか」
「まんまゲームみたいだぜ」
(……この世界にマリオあるんだ)
︎︎プレゼント・マイクの説明を聞き、俺はこの世界にも前世のゲームがあっることを知った。
(なら、他の作品……ドラゴンボールとかワンピース……それこそ双星の陰陽師もあるかもしれないな)
52:名無しの転生者
へぇ……マリオあるんだ。
53:名無しの転生者
なら!他の作品とかあるかもな!有識者ニキわかる?
54:レジェンドプロデューサー
過去にヒロアカに転生した奴から聞いた話だと、大昔の作品として呪術廻戦や鬼滅の刃があると言っていたな。
55:名無しの転生者
大昔!?呪術廻戦と鬼滅が!?
56:竜舞ガブ
まぁ、ヒロアカは現代で異能が発現して大体100年くらい経った世界やからな。
57:名無しの転生者
そうなんだ!てっきり“個性”のある2014年くらいだと思ってた。
58:レジェンドプロデューサー
勘違いするのも仕方ないさ。“個性”の影響で人類は一度停滞したからな。“個性”がなければ恒星間旅行ができるまで発展していたと明言されている。
ヒロアカ連載当初の2014年から100年後の現代って感じだろう。
59:名無しの転生者
なるほどなぁ。
「俺からは以上だ!!最後にリスナーへ我が校“校訓”をプレゼントしよう!かの英雄ナポレオン=ボナパルトは言った!『真の英雄とは人の不幸を乗り越えていく者』と!!」
「
「それでは皆良い受難を!!」
︎︎実技試験の説明が終わり、試験用に動きやすい服に着替えると試験会場に向かうバスに乗る。スレ民のやり取りを眺めながら、これから始まる実技試験に向けてシュミレーションする。
︎︎バスを降りると目の前に広がる試験会場の大きさに少し驚く。そのまま街を模した試験会場とは言っていたが、まんま街なので雄英の凄さを改めて実感した。
︎︎俺は深呼吸して心を落ち着かせると、係の人に声をかける。
「すみません、事前準備が必要な“個性”は今の時間に準備しても大丈夫ですか?」
「君は……受験番号7131……確認しました準備していただいて大丈夫ですよ」
︎︎ヒーロー科の試験を受けるだけあって、出願の際に個性届のコピーを提出していたから、俺の受験番号で“個性”を確認したんだろう。
︎︎係の人から許可を貰ったので、俺は腰のケースから霊符を複数枚取り出すと前に向かって投げつけた。
「なんだ?なんだ?」
「すみません“個性”を使うんで少し離れてください」
「お、おう」
︎︎俺の行動に驚いた他の受験生に離れるよう言うと、慣れた動作で呪装していく。
「韋駄天符 飛天駿脚、轟腕符 砕岩獅子、金剛符 鎧包業羅……喼急如律令!」
︎︎脚、腕、胴にそれぞれ呪装をすると次に式神を召喚するために新たな霊符を取り出す。
61:名無しの転生者
改めて雄英ってすげぇな。
試験会場ってか街じゃん!
62:名無しの転生者
日本最高峰のヒーロー科ですし、そりゃ金かかってるでしょうよ。
63:竜舞ガブ
そんなんはどうでもええわ。
それよりイッチ姿やで……昔は切れ長の目のイケショタやったのに……あんなに隈ができてもうて……うぅ。
64:縁柱ドンモモタロウ
なんか……雰囲気は清弦みたいだな。
65:竜舞ガブ
イッチぃぃ!!
66:名無しの転生者
うわっ!?急にどうしたんだこの人!?
67:レジェンドプロデューサー
まだあの時の傷が癒てないんだ……そっとしておいてやれ。
「ギュウ太「凄いねえ!!」ッ!?」
「……えっと何か用か……ッ!?」
「あ、ごめんね……試験の準備中に話しかけちゃって、凄い“個性”だなって!……私の顔になにかついてる?」
「いや……なんでもない」
「驚くよね!透明だもんね!」
「あ、あぁ……」
(マジかよ……あの時の子、雄英受けてたのか)
︎︎俺が召喚した式神に驚いた受験生がいたので、試験前の大事な時間を邪魔したかもと、謝るために振り向くと驚いた。
︎︎俺が《黒虎》として最後に助けたあの時の女の子がいたからだ。あの時のこと忘れるはずがない、彼女の言葉がきっかけで俺はここにいるわけで……彼女は俺にとって恩人と言ってもいいかもしれない。
69:名無しの転生者
ん?イッチどうしたんだ?
70:名無しの転生者
あの子となんかあったのか?
71:縁柱ドンモモタロウ
あの子は……葉隠透だ!
72:聖剣使いのプロブレーダー
確かA組の生徒だったよな。
73:竜舞ガブ
同じ試験会場やったんか。
74:名無しの転生者
偶然ってあるもんだな。
「ハイスタート」
︎︎彼女……葉隠と話していると、プレゼント・マイクの声が聞こえた。あまりにあっさりとした声だったので一瞬動きが止まってしまった。
「どうしたぁ!?実戦じゃカウントなんざねぇんだよ!!走れ走れぇ!!賽は投げられてんぞ!!?」
︎︎プレゼント・マイクの話を聞き数秒の沈黙の後。
「うおぉい!?マジかよぉ!!?」
「おい!押すなって!!」
「お前こそ押すな!!早くしねぇとポイント無くなっちまうよ!!」
︎︎受験生が一斉にゲートに向かいごった返した。
「うわぁ!?ど、どうしよう出遅れちゃった!?」
「はぁ……おい、しっかり掴まっとけよ」
「え?ちょっと急になに!?み、皆がいるんだよ///」
︎︎葉隠を引き止めた俺にも責任はあると思い。この状況を何とかするために、俺は葉隠を抱き上げると、呪装で強化した脚力でゲートを飛び越える。
76:名無しの転生者
イッチが飛んだ!?
77:名無しの転生者
あれありか!?
78:レジェンドプロデューサー
まぁありだろうな。
実戦にカウントがないように、街への入り方も決まりはないからな。
79:名無しの転生者
ゲートって先入観にとらわれてたか……。
80:竜舞ガブ
それにしても律儀やな……葉隠ちゃんまで一緒に運ぶとわな。
81:名無しの転生者
まぁイッチだし。
82:名無しの転生者
グレても根は真面目だからね。
83:名無しの転生者
なんか後方腕組彼氏面してるやつおるんやけど……。
84:聖剣使いのプロブレーダー
皆イッチが好きなんだよ。
85:名無しの転生者
バ、バッキャロー!そんなわけ……なくもないんだからね!
86:名無しの転生者
ツンデレする必要あったか?
︎︎葉隠を実技試験会場に運びながら周りを見る。街の中心部辺りにロボットが大量に配置されているのが見えた。
「あれが仮想敵ってやつか」
「は、早いねぇ!」
︎︎ビルの壁を蹴り中心部の近くまで一気に向かうと、衝撃を殺しながら着地する。
「これで遅れた分は取り返せたろ」
「あ、ありがとう」
「それじゃ……試験頑張れよ」
︎︎俺は葉隠から目を離し、ロボットの群れに視線を向ける。後ろからゲートを通り抜けた受験生たちが続々とこちらに向かってきている。早くしないとここも混戦状態になるだろう。
「あ、あの!」
「ん?」
「私!
︎︎葉隠は腕を一生懸命に振り、ロボットの群れに走って行った。
88:名無しの転生者
なんか……嵐みたいな子だったな。
89:名無しの転生者
見えない分、精一杯自分をアピールをしてるからじゃないですかね。
90:縁柱ドンモモタロウ
……なんかイッチの顔赤くない?
91:竜舞ガブ
あれやろ。
この前まで荒んでたから、純粋な言葉に照れてんのやろ。
「……うるせぇ」
︎︎ガブリアスニキのレスに返すと、懐から無地の仮面を取り出す。
「ギュウ太郎」
︎︎先程、召喚できなかった式神を呼ぶ。霊符が光ると俺の隣に2mくらいの牛型の式神が現れた。
『モゥ』
「あぁ……今日はよろしくな」
︎︎牛型の式神は俺の体に顔を擦り寄せてくる。クロ*1もそうだが、荒れた時に創ったはずなのに、俺に懐いているのだろうか。
『ヤッチマエ!!』
『ブッ殺ス!!』
「ギュウ太郎……二番!」
︎︎式神の召喚でロボットたちは一斉に俺に向かって動き始めた。
︎︎仮面を着けると牛型の式神に番号を伝える。式神が背負っていた大きい鞄から、石の短刀が二本射出される。
︎︎戦闘時、武器に呪装して戦うことがある俺は、一度に持っていける武器の数に限りがあるため、牛型の式神に予め持たせることにしたのだ。
「星動読符、斬浄穢符……来災先観、万魔調伏……喼急如律令!!」
︎︎石の短剣をキャッチすると、目の前に霊符を投げ仮面と短剣に呪装する。大剣となった短剣を逆手で持ち姿勢を低くして構える。
93:名無しの転生者
なるほどなぁ……武器を多く持てないなら、式神に持たせればいいか。
94:名無しの転生者
確かに理にかなってはいるけど。
95:竜舞ガブ
なんで俺を見んねん。
96:名無しの転生者
あの牛とほぼ同サイズなのに、道具を一つしか持てないんだなって。
97:竜舞ガブ
剣舞じしんしたろか?
98:名無しの転生者
サーセン。
「……何やってんだか」
『仮面ヲ着ケタ変ナ奴!』
『マズハ、オ前カラダ!』
「口悪ぃな……」
︎︎ロボットの言葉にツッコミを入れつつ、体を低くして一気に駆け出す。
「十六夜彼岸の舞!」
︎︎地面、ビルの壁、電柱、壊したロボットの残骸を足場に高速で移動し周りのロボットを破壊していく。
100:竜舞ガブ
うおぉぉ!!
「大体50Pくらいか?……まだまだいるな」
︎︎瓦礫の山を見ておおよそのポイントを把握する。
︎︎今の音を聞きつけたロボットが続々と迫ってくる、受験生たちも合流してきた。
「さて、頑張りますか」
︎︎俺は大剣を構え直し、ロボットの群れに向かって走り出した。