呪力は呪力でも呪力かよ!? 作:パンツ男
︎︎午後の部はレクリエーションから始まった。俺を含めた最終種目に出場する16名は、このレクリエーションに参加するのは自由なので、俺は観客席からクラスメイトを応援しつつ、トーナメントに向けてイメージトレーニングでもしておく。
「……」
︎︎レクリエーションはなかなかに盛り上がっているみたいだ。借り物競争をしており、物間が拳藤に連れていかれるのが見えた。最終種目に出られない分ここで目立とうと皆全力で取り組んでおり白熱している。
︎︎恥ずかしがっていたA組女子も葉隠や芦戸が楽しんでいるのを見て吹っ切れたのか、アメリカから来たチアリーダーに負けじと応援している。
349:レジェンドプロデューサー
お、レクリエーションが始まったか。
350:竜舞ガブ
皆頑張ってるな!
351:聖剣使いのプロブレーダー
物間はアニメ同様、拳藤に持っていかれたな。
352:名無しの転生者
借り物競争って人借りる時、一緒に走りますよね?
あれでいいんですか?
353:縁柱ドンモモタロウ
いいだろ、物間だし。
354:竜舞ガブ
物間やもんな。
355:アサシンディケイド
まぁ……本人が抵抗してないし問題は無いだろ。
356:名無しの転生者
抵抗できないの間違いでは?
357:竜舞ガブ
細かいことはええやんか!
それより、瀬呂くんも“個性”活かして活躍してるで!
358:名無しの転生者
あ、ホントだ。
359:ペンギンストライカー
瀬呂くん、最終種目に出場するのにレクリエーション参加するんですね。
360:レジェンドプロデューサー
活躍するところを多く見せたいんだろう、そういう貪欲な姿勢も良いな。
361:名無しの転生者
なるほど。
362:竜舞ガブ
イッチは力を温存するみたいやな。
363:ペンギンストライカー
午前の部であれだけ派手に動いたんですから、そりゃ消費も激しいでしょうし。
364:名無しの転生者
でも、天狗召喚の時にまだ2割も使ってないって言ってなかった?
365:レジェンドプロデューサー
“個性”は筋肉と同じ身体機能の一部だ。
使えば使うほどに強化されていく。
366:アサシンディケイド
物間との戦いでイッチの“
367:竜舞ガブ
ただまぁ最終種目は消耗するやろうな。
轟に塩崎に飯田……順当に勝ち進めば決勝戦は爆豪と戦う可能性が高いし、用心せなあかんやろ。
368:レジェンドプロデューサー
そうだな。
369:ペンギンストライカー
お、借り物競争第二走者が走る番になりましたよ!
370:縁柱ドンモモタロウ
アニメじゃ瀬呂、上鳴、砂藤、峰田、物間、拳藤が参加してたけどそりゃそのあとも続くよな。
371:フィジカルギフテッド石化中
回原、鎌切尖、小大、尾白、蛙吹、葉隠の6人が走るみたいだね。
『さァ!借り物競争第2レースの準備が整ったみたいだぜ!!』
「葉隠が走るのか……」
「ん?あぁA組のやつか。なんだ気になるのか?」
「まぁ……友達……いや知り合いだしな」
「へぇ……」
「なんだよ」
「なんでもないよ」
︎︎隣に座った骨抜が、俺の言葉を聞いて何か感じたのかニヤニヤしている。
︎︎俺が葉隠のことを気になっていると言ったからか勘違いしているのかもしれない。
「言っとくがそんなんじゃないぞ」
「何も言ってないよ」
「……」
︎︎何か勘違いしてると思って訂正したが、骨抜は意味深な笑みを浮かべるだけだ。
︎︎これ以上、訂正しても誤解が増すばかりなので俺は黙って葉隠達の借り物競争を観戦することにした。
「……」
︎︎スタートの合図で一斉に走り出した。一番最初にお題の書かれた紙を取ったのは鎌切だった。“個性”を用いた移動ではクラス内で俺の次に速い鎌切は観客席に向かって、お題の物を借りようと声をかけている。
︎︎回原、蛙吹、尾白、葉隠、小大の順でお題を取り次々に声をかけていく。
『B組鎌切!一足先にお題の紙を手に取った!1歩リードか!』
「ん?なぁ……さっきの子お前の方に近づいてないか?」
「……葉隠がか?」
︎︎骨抜の言う通り、葉隠はB組の観客席の方に走ってきている。
「晴臣くん!来て!」 ︎︎
「呼ばれてるぞ」
「……ニヤニヤすんな、そういうお題と決まったわけじゃないだろ」
「まぁそうだけどさ……物間はなんか言うかもだけど、俺は応援するぞ」
「……そうかよ」
これ以上、何か言っても意味ないと思い俺は観客席から飛び降り葉隠の近くに着地した。結構な高さがあったが、鎧包業羅を呪装したのでノーダメージだ。
『おっとぉ!A組葉隠!お題の借り物にB組の蘆屋を選んだようだ!!まさかまさかのまさかだったりするのか!!』
『何言ってるかわかんねぇよ』
「葉隠、一緒に走ればいいのか?」
「うん!1位目指してるから速く!」
「おう」
373:竜舞ガブ
イッチに春が来たぞ!!
374:レジェンドプロデューサー
落ち着け東堂葵(ガブリアスのすがた)
375:竜舞ガブ
誰がゴリラや!!
376:縁柱ドンモモタロウ
いやまぁ……うん、流石にあれだけでイッチと葉隠さんがでぇきてぇるぅぅって結論づけるのは早計だろ。
377:ペンギンストライカー
確かにこれまで色々と接点がありますけど……。
やっぱり当人達が違うならこちらで勝手に決めつけるのは良くないかと。
378:竜舞ガブ
せやな……すまんイッチ。
379:アサシンディケイド
だがまぁ……勘違いするのもわかるさ。
ほら、見てみろ。
380:名無しの転生者
え?
381:名無しの転生者
ん?
382:名無しの転生者
あ!!
383:竜舞ガブ
お姫様抱っこしとる!!?
384:聖剣使いのプロブレーダー
またか……。
385:名無しの転生者
ガブリアスニキが気ぶり勢になるのも仕方ないんじゃ……。
「1位になりたいのか?」
「うん!だって障害物リレーも騎馬戦もいいとこ無しだったからね!ここでバシッと決めて指名貰わないと!」
︎︎俺の手を取り走り出す葉隠。前を鎌切が走っていて葉隠のペースじゃ恐らく追いつけない。さらに回原や尾白、蛙吹もお題の品を借りてきてゴールに向かって走っている。
「そうか……葉隠、目立つことができて尚且つ1位になる方法があるが……」
「ホント!じゃあやろう!」
「……俺が葉隠をお姫様抱っこして一気にゴールするんだが……本当にいいのか?全国放送だぞ?」
「え…………いいよ!もう何回もしてもらってるし!今更だし!」
「わかった……失礼するぞ。韋駄天符!飛天駿脚!喼急如律令!」
『何と言うことでしょォ!!蘆屋!葉隠をお姫様抱っこしてゴールに向かったァ!!!』
葉隠を抱き上げ、呪装で強化した脚力でゴールに向かって一気に走り出した。どこで借りたのか、立て看板を持った回原と三角コーンを抱えた尾白を抜かした。
「速いね!」
「口閉じてろ……舌噛むぞ」
「もう慣れたから大丈夫!」
「そうかよ」
︎︎レインコートを持った蛙吹を抜かし、先頭を走る鎌切に追いついた。
「晴臣!?お前何して……」
「見て分からないか?借り物競争のお題だ」
「どう見ても逆だろうが」
「細かいことはいいだろ……それじゃお先」
「あ、おい!?」
387:聖剣使いのプロブレーダー
速っや。
388:縁柱ドンモモタロウ
葉隠さんも慣れたなぁ……。
389:レジェンドプロデューサー
実技入試、マスコミ騒動の時と合わせて三回目だからな。
390:竜舞ガブ
これはもう誤解されてもしゃーないやろ。
391:名無しの転生者
そうかな……そうかも……。
392:アサシンディケイド
言ってる間にゴールしたな。
393:フィジカルギフテッド石化中
思いっきり走れるのって楽しそうだなぁ。
394:ペンギンストライカー
そっかフィジギフニキは動けないですもんね。
395:フィジカルギフテッド石化中
うん……だから復活したら絶対疲れるまでストーンワールドを走るって決めてるんだ。
396:名無しの転生者
一週間止まらなそう。
397:フィジカルギフテッド石化中
流石に一週間は無理かな。
三日くらいだね。
398:名無しの転生者
三日は行けるんだ……。
399:竜舞ガブ
それよりお題発表やで!
400:レジェンドプロデューサー
ここで間違ったものを持ってくると失格になるからな。
401:竜舞ガブ
せやけども!
そうやないやろ!葉隠がなんでイッチを選んだかやって話や!!
402:聖剣使いのプロブレーダー
多分、ガブリアスニキの思っているやつじゃないと思うぞ。
403:竜舞ガブ
なんでや!
期待したってええやろ!!
404:レジェンドプロデューサー
はいはい。
落ち着こうな。
405:竜舞ガブ
雑にあやすな!!
『それじゃ全員ゴールしたみたいだし!結果発表といこうじゃないか!!』
「早速いきましょうか!1位の葉隠さん!お題を見せてちょうだい!」
「はい!」
「葉隠さんのお題は……寝不足な人!!」
『なんだそれェッ!!!』
︎︎会場全体がズッコケた。
︎︎まぁそうなるだろうなと俺は冷静だった。
「ま、まぁ……答え合わせしましょうか……蘆屋くん!ズバリ昨日の睡眠時間は!」
「二時間弱」
「本当に寝不足じゃない!?あなた大丈夫なの!?これから最終種目もあるのよ!!?」
「慣れましたし」
「慣れの問題じゃないわよ!!」
︎︎もっと面倒なことになった。これならまだ、気になる人みたいなお題とかで冷やかされた方がマシだった。
︎︎あの日以来、俺は約二時間しか眠れなくなった。眠ると雛月寮の家族が俺に怨嗟を吐く夢に苛まれて熟睡できなくなったのだ。
「蘆屋くんの生活リズムは問題ですが……お題はクリアです!葉隠さん1位!!」
「やった!ありがとう晴臣くん!」
「別に大したことはしてねぇよ。お題見て即座に俺を選んだ葉隠の判断力のおかげさ」
「こういう時は素直にお礼を受け取るものだよ!」
「……わかった」
「よろしい!」
407:竜舞ガブ
なんやねん!そのお題!!
408:名無しの転生者
ガブリアスニキ落ち着いて!?
409:名無しの転生者
600属が暴れたら大変なことになるぞ!?
410:レジェンドプロデューサー
葉隠の様子からそういうあれじゃないことくらいわかっていただろ。
411:竜舞ガブ
それくらいわかっとるわ!
でも紛らわしいお題にキレたってええやろうが!
412:縁柱ドンモモタロウ
ガブリアスニキってこんなんだっけ?
413:聖剣使いのプロブレーダー
わりとこんなだろ。
414:ペンギンストライカー
まぁまぁ、落ち着きましょう。
それにしてもガブリアスニキはなぜ、イッチと葉隠さんの関係に一喜一憂してるんですか?
415:竜舞ガブ
現状イッチと一番仲のええ子やからや。
同年代の友達が出来たら、あの時の傷が癒えるかなと思てな。
416:名無しの転生者
ガブリアスニキ……。
417:竜舞ガブ
それに俺らには相談できなくても、友達になら話せるってこともあるやろ。
イッチには相談ができる友達が増えて欲しいんや。
418:レジェンドプロデューサー
たまにはいいこと言うんだな。
419:縁柱ドンモモタロウ
ちょっと見直したぜガブリアスニキ。
420:竜舞ガブ
まぁ、葉隠が繭良に雰囲気似てるから今のイッチと並べばしっくりくるってのもあるけどな!
421:縁柱ドンモモタロウ
前言撤回。
やっぱダメだわこの人。
422:レジェンドプロデューサー
上げた株を下げるなバカ。
423:ペンギンストライカー
確かに似てるところはあると思いましたが、それは言わなくて良かったですよ。
424:聖剣使いのプロブレーダー
>>420 そんなに似てるのか?
425:竜舞ガブ
明るい性格、巨乳属性、金髪に緑のグラデ……要素だけ見たらかなり共通点あるで。
426:名無しの転生者
なるほど……。
『それじゃ次々行こうか!第3レースの準備頼むぜ!』
「お疲れ様!次のレクリエーションも頑張ってちょうだい!」
「はい!」
第2レースの結果が決まり次のレースの準備が始まる。俺達はグラウンドから観客席に戻るためにフィールドゲートに向かう。
(ガブリアスニキ……)
︎︎俺は観客席に戻る道中でスレ民のやり取りを見てため息をつく。心配してくれるのは嬉しいが葉隠との関係を憶測で語るのはやめて欲しい。
(そもそも俺は人殺しだ……幸せになる資格なんてねぇ)
「ん?晴臣くんまた難しいこと考えてる?」
「別に……」
428:転生者掲示板
LIVEモードを終了します。
429:縁柱ドンモモタロウ
……ガブリアスニキ?
430:竜舞ガブ
ホンマにすまん。
431:レジェンドプロデューサー
ちゃんと反省しろよ。
432:ヒロアカ陰陽師
ガブリアスニキ、心配してくれるのはありがたいのですが、葉隠との関係を邪推するのはやめてください。
433:竜舞ガブ
イッチ……すまん。
これから気をつけるわ……。
434:レジェンドプロデューサー
イッチもっとコイツに強く言っていいんだぞ。
435:ヒロアカ陰陽師
いえ、勘違いされる行動をした俺にも非はあります。
今回はこれで終わりにします。
436:レジェンドプロデューサー
そうか。
ガブリアスニキ、イッチの温情に感謝しておけよ。
437:竜舞ガブ
お前に言われんのは癪やな……。
438:ヒロアカ陰陽師
そういうことなんで最終種目始まったらまたLINEモードにしますね。
439:名無しの転生者
OK!
440:名無しの転生者
ゆっくり休んでトーナメント頑張れよ!
「……晴臣くんってさ、何か悩みでもある?」
「いきなりなんだ?」
「ほら……さっき睡眠時間が二時間って言ってたでしょ、何か悩みでもあるのかなって」
「……心配してくれてるのか?」
「当たり前じゃん!友達なんだからさ!」
「友達……」
「え!?違うの!?」
︎︎葉隠の突然の発言に俺は驚いた。
(友達……でいいのか……)
「あれ?晴臣くん?」
(B組は……クラスメイト……友達……なのか?)
「おーい?」
(そもそも俺なんかが友達なんか作っていいのか……?)
「晴臣くん!」
「ッ!?な、なんだ」
「なんだじゃないよ!しかめっ面してさ!」
「……悪い……考え事してた……」
「考え事?」
「あぁ……どこからが友達なのかと……」
「ふふ……そんなこと考えてたんだ。難しく考えすぎ気楽でいいんだよ」
「そんなもんでいいのか?」
「いいの!私と晴臣くんは友達!わかった?」
「あぁ」
︎︎葉隠の勢いに乗せられ友達になった。なんというか不思議な感じだ。
「……」
「あ!今笑った!」
「え?」
「今、口角がこんな風に上がったよ!」
︎︎葉隠はおそらく自分の頬を指で持ち上げて笑顔を作っているのだろう。式神の視界を共有しないと葉隠の素顔を見ることはできないが、なんとなく葉隠が何をしているのかわかる。
「……そうかもな」
「そうだよ!」
『借り物競争が終了!!次は大玉転がしだぜ!!』
︎︎プレゼント・マイク先生が次のレクリエーションの種目の案内が聞こえてきた。
「あ、もう時間だ……」
「頑張れ」
「え?」
「応援してる……友達だからな」
「……うん!見ててね!また1位取ってみせるね!」
「おう……あ、そうだ」
「うん?」
「チア衣装……似合ってる」
「ッ!!?」
「葉隠?」
「こっち見ないで!」
「お、おう……」
「なんで今言うかなぁ///」
「え?」
「なんでもないよ!」
︎︎何故か照れている葉隠は腕で顔を隠しているのか、あわあわしている。
「私も!」
「ん?」
︎︎どうしようかと考えていた俺に、葉隠が急に大きな声で話しかけた。
「私も!最終種目応援するから!」
「……ありがとう」
「だから頑張ってね!それじゃ行ってきます!」
︎︎元気よく手を振ってゲートから走っていく葉隠を俺は見送った。
「……かぐやちゃんなら可愛いって言ったら喜んでたんだけどな……同年代の女子との接し方って難しいな……」
︎︎俺は葉隠を応援するために観客席に向かった。
︎︎観客席に戻ると物間がA組に手を貸すなんてと騒いでいたが、無視することにした。