呪力は呪力でも呪力かよ!? 作:パンツ男
『さァ!盛り上がっている雄英体育祭!!準決勝第一試合はこの二人!!』
「……」
「……」
『蘆屋VS塩崎!!B組同士のバトルだァ!!!』
「晴臣さん……二週間ありがとうございました」
「お、おう……今言うことか?」
「えぇ……ですから、この試合本気でいきます!」
「そうか……なら俺も応えるよ!」
︎︎スタジアムに立ち、言葉を交わす。
︎︎塩崎の“個性”は強力だが、手数が多く斬撃や炎といった呪装や陰陽術を使える俺は有利ではあるが油断は禁物だ。
621:名無しの転生者
イッチ対塩崎さんか……。
622:名無しの転生者
手数が多い分、イッチの方が有利だと思うけど……。
623:レジェンドプロデューサー
“個性”の相性による有利不利だけで勝負は決まらない。
624:竜舞ガブ
せやな。
アニポケの常識やな。
625:名無しの転生者
たしかにそうなんだけど……。
626:名無しの転生者
そこと同列に考えんのはちょっと……。
627:縁柱ドンモモタロウ
とはいえ、イッチは斬撃も炎も扱えるわけで……。
それを踏まえて塩崎がどう攻略するかだな。
628:ペンギンストライカー
……二人とも頑張ってください!
629:アサシンディケイド
そうだな。
630:フィジカルギフテッド石化中
楽しみだね!
『STARTッ!!』
「霊符は使わせません!」
「だろうな」
開始早々、塩崎は“個性”を使い腰のケースから霊符を取り出そうとした俺を妨害する。これまでの授業や体育祭で嫌という程見た俺の“個性”発動の為のアイテム。俺も同じ立場なら使わせないように動くだろう。
「でも甘いな……霊符はあくまで“呪力”消費を抑えるサポートアイテムであって……無くても呪装はできるんだよ」
︎︎塩崎の“個性”を後ろに飛んで回避すると、片手で印を結び全身に呪力を込める。
「鎧包業羅!飛天駿脚!砕岩獅子!黒煉手甲!喼急如律令!!」
︎︎着地と同時に呪装が完了し、強化された脚力で塩崎に接近する。“個性”で迎撃してくるが、両腕の爪で切り裂いていく。
『塩崎!先手を取り蘆屋の妨害をするも“個性”の使用を許してしまった!!蘆屋は“個性”でガンガン攻めてるぜ!こりゃ厳しいか!!?』
「そんな速度じゃ俺には追いつけないぞ!」
「くっ!分かってはいましたが……これほどまで……ッ!」
632:名無しの転生者
イッチ強ェ……。
633:竜舞ガブ
まぁわかっとったことや。
634:名無しの転生者
一方的だな……。
635:ペンギンストライカー
ですが、塩崎さんは何とか防御できてますね。
636:レジェンドプロデューサー
特訓の成果ってやつかもな。
637:竜舞ガブ
それに裂空魔弾や金鳥天衝弾じゃ詠唱中に妨害されるかもやし、“個性”で壁を作れば防御されるからイッチは近接でゴリ押さなあかんねんやろうな。
638:ペンギンストライカー
止縛法で体を縛っても、“個性”は使用できるので戦闘は続行しそうですし……。七恨縛鎖は準備中に妨害されるでしょうし……。
639:名無しの転生者
なるほど……。
640:竜舞ガブ
イッチも思うように攻められへんって感じか。
641:アサシンディケイド
だが、この拮抗状態も少し歯車がズレるだけで、一気に試合が進むぞ。
642:縁柱ドンモモタロウ
しかし……塩崎はここから打開できるか?
643:聖剣使いのプロブレーダー
勝負は最後までわかんねぇぞ……ベイバトルのようにな!
『防戦一方!!“個性”で防御しても爪で斬られて全く攻められない!!』
「塩崎!これで終わりか!」
「いえ!まだです!!まだ!!」
茨を切り裂いても次々に新しいツルが襲いかかってくる。二週間の特訓で俺の動きに慣れているのか、トドメまで持っていけない。
︎︎何度も何度も攻防を繰り返す。塩崎の“個性”は無尽蔵に見えるが水分と日光を与えないと、ツルが伸びなくなる。
「俺の呪力が尽きるのが先か、お前の“個性”が尽きるのが先か……勝負といこうぜ!」
「えぇ!望むところです!」
︎︎塩崎はペースを上げ、俺の爪による攻撃を防御するだけでなく、反撃するようになった。
︎︎俺は攻撃の手を止めず、隙を見て蹴りや斬撃を飛ばす等パターンを読まれないようにする。
『接戦!!蘆屋と塩崎!どちらも勢いが衰えることなく!激しくぶつかっている!!』
「まだまだ!!」
「くッ!」
「ハァッ!!」
「ッ……!」
︎︎塩崎が“個性”で攻撃してもそれを上回る速さで切り落とし、防御に回すブンのツタが足りなくなる。その隙を逃さず俺は攻撃を加え、塩崎に蹴りや衝撃が当たるようになる。
︎︎塩崎はスタジアムを転がりすぐに起き上がるとまた“個性”で俺に攻撃する。
「甘いな!」
「ッ……構いません!」
「そうかよ!」
「っ!」
︎︎爪を振るい衝撃波を飛ばす。塩崎の近くに着弾し煙が舞う。
645:フィジカルギフテッド石化中
近接が苦手なとこが響いてるね。
646:アサシンディケイド
そうだな。
戦闘において、相手のやりたい事をやらせないかが重要になる。
中長距離において無類の強さを誇る塩崎の“個性”だが、イッチはその軌道を読み接近し、自分の得意を押し付けている。
647:縁柱ドンモモタロウ
塩崎は思うように戦えないってわけか。
648:竜舞ガブ
せやけど……塩崎はまだ諦めてへんで。
あの目を見たらわかる、まだなにかやろうとしとる。
649:名無しの転生者
なにかって?
650:竜舞ガブ
そりゃわからへん。
でも、なんか凄いことをやってくれるって感じんねん。
651:レジェンドプロデューサー
ポケモンバトルに身を置いてるからか、コイツの勘はよく当たる。
652:名無しの転生者
そうなんですね。
653:聖剣使いのプロブレーダー
だけど……ここまで一方的だと、面倒なことになりそうだな。
654:名無しの転生者
面倒なこと?
655:レジェンドプロデューサー
……見ていたらわかるさ。
656:名無しの転生者
はぁ……?
657:竜舞ガブ
イッチ!冷静にな!
(武器使えたらもう少し楽になるんだがなぁ……霊符とケース以外は認められなかったから仕方ねぇ……)
「ッ!不意打ちか!らしくねぇな!」
煙で視界が悪くなったことを利用して、塩崎は俺の死角から“個性”による攻撃を仕掛ける。
︎︎死角から迫ってきたツルを切り裂き、煙のゆらめきからある程度の場所を特定した俺は、斬撃を飛ばした。
(呪装は強力だが……元々ケガレ……対化け物用の力だ……威力を抑えて使わねぇと一大事だな……)
︎︎俺が攻めきれていない理由の一つに、呪装の威力の高さがある。塩崎の“個性”は攻防に優れた強力なものだ。生半可な威力では、ダメージを与えることができず、かと言ってやり過ぎれば大怪我させてしまう。
(轟の時は相殺できるとふんで、総天無限腕を使ったが……)
「まだです!!」
「しぶといな!!」
「ぐッ!?」
『塩崎!死角から攻撃を仕掛けるも防がれ逆に反撃を受けてしまったァ!!』
︎︎何度目かの衝撃を受け塩崎はスタジアムを転がる。体には傷ができ、煙で汚れてはいるが、その目はまだ俺を捉えチャンスを伺っているようだ。
「見てらんねぇ!お前ヒーロー志望かよ!!それだけ実力差あんなら早く場外にでも出せよ!!」
「女の子いたぶってんじゃねぇよ!!」
「そーだ!!そーだ!!」
『一部から……ブーイングが……!』
659:名無しの転生者
アイツら好き勝手言いやがって!
660:名無しの転生者
これだからヒロアカの民度は……!
661:レジェンドプロデューサー
お前たち落ち着け。
662:名無しの転生者
レジェンドニキ……でもイッチが!
663:レジェンドプロデューサー
お前たちの気持ちもわかるさ。
だが、観客に怒るより先にかける言葉があるだろう。
664:竜舞ガブ
イッチ!!気にすんな!!頑張れ!!
665:名無しの転生者
ガブリアスニキ……。
イッチ!観客の声なんか気にすんな!!
666:縁柱ドンモモタロウ
頑張れ!!イッチ!!
たった一人から始まったブーイングは周りを巻き込んでどんどん大きく広がっていく。
︎︎俺は深呼吸して心を落ち着かせると、雑音を無視して塩崎に集中する。
「晴臣さん……」
「気にすんな……それより続きだ……」
︎︎鳴り止まないブーイングを無視して構えをとる。塩崎も俺の姿を見て、覚悟を決めたのか体勢を低くする。
「晴臣!!頑張れ!!」
︎︎ブーイングをかき消すように声が会場全体に響いた。視線を向けると、体に包帯を巻いた鉄哲が大声で叫んでいた。
「諦めんな塩崎!!」
「晴臣!!そのままいけ!!」
「二人とも頑張って!!」
「頑張れ!!」
「最後まで諦めんな!!」
「晴臣くん頑張れ!!」
「蘆屋くん……!頑張れ!!」
「塩崎さん!頑張ってくれ!!」
︎︎鉄哲の声が広がり、B組A組の席から俺達を応援する声が響き渡る。
『おおっと!!B組A組からの熱い声援が聞こえてきたぞ!!……ちょっイレイザー!?』
『ブーイングしたお前らプロか?何年目だ?』
「……相澤先生」
『お前らもう見る意味ねぇから帰れ。帰って転職サイト見てろ』
︎︎B組達の声援で静まった会場に相澤先生の声がスピーカーから響き渡る。
『ここまで上がってきた相手の力を認めてるから警戒してんだろ。本気で勝とうとしてるからこそ、手加減も油断もできねぇんだろうが』
668:名無しの転生者
やっぱ相澤先生はかっけぇな!
669:名無しの転生者
それな!
670:竜舞ガブ
ホンマ教師の鑑やで。
671:聖剣使いのプロブレーダー
それにしても塩崎は何を企んでいるんだろうな。
672:アサシンディケイド
すぐに分かるだろうさ。
673:名無しの転生者
塩崎さん……何をやるんだ……。
674:名無しの転生者
イッチ!負けんなよ!
「行くぞ……塩崎!!」
「はい!!」
『蘆屋!一気に距離を詰めた!!』
「今です!!」
「なッ!」
︎︎塩崎の迎撃を警戒しながら接近した俺は、真下から迫ってきたツルを咄嗟に回避した。
『おおっと!!塩崎!!まさかの地面からの奇襲で蘆屋の体勢を崩すことに成功したぞ!!つーかツルでコンクリ掘れんのか!?』
『一本じゃ無理でも数本を編み込んで強靭にすればできないことも無いだろう……それにスタジアムは蘆屋の攻撃で脆くなってる』
『そこまで読んでたというのか!!?』
「これはあくまで足止めです!」
︎︎塩崎は体勢を崩した俺に向かって地面を突き破ったツルを放つ。俺がツルを対処しているうちに塩崎は“個性”でドームを作り、閉じこもってしまう。
「それは悪手だろ!!」
︎︎数本まとまったツルを切り裂き接近した俺は、ドームに向かって爪を振るった。
「いない!」
︎︎ドームが切り裂かれ中が露になるが、そこに塩崎の姿はなかった。
︎︎俺はドームの中の地面が盛り上がっていることに気づいた。
「まさか……潜ったのか!?」
「そのまさかです!!」
「ッそこ……ッ!?」
︎︎塩崎がスタジアムを掘りドームから脱出していることに気づいた俺は、周囲を警戒しようと顔をドームの外に向ける。
︎︎背後から気配を感じ爪を振るうが、それよりも早く横腹を攻撃されスタジアムを転がる。
676:名無しの転生者
おいおいおい!?なんだあれ!!?
677:名無しの転生者
塩崎の体にツルが……!?
678:レジェンドプロデューサー
まさか……そんな方法で……。
679:竜舞ガブ
マジか……。
『塩崎!ついに蘆屋に一撃入れた!!ってなんだその姿!!?』
「それが……お前の奥の手か?」
「えぇ……晴臣さんの呪装を参考にいたしました」
「なるほどな……」
俺に一撃与えた塩崎は、全身にツルを巻き付けていた。さながら茨の鎧を身にまとっているようだ。
「私の体を“個性”で動かしています……苦手な近接を補うために編み出した技です」
「やるな……ならこっちも……火炎符!邪爪顕符……黒煉手甲!喼急如律令!」
︎︎立ち上がった俺は右腕の呪装を解除して、腰のケースから霊符を取り出し使用した。
︎︎再び右腕に黒煉手甲を呪装し両手に炎を纏わせる。
『茨の鎧を身にまとった塩崎に対して!蘆屋は炎をまとった爪だ!!さぁどっちが勝つんだァ!!?』
681:竜舞ガブ
あれは!!双星の陰陽師アニメ一話でヒロインが使った呪装や!!
682:ペンギンストライカー
斬撃に炎……イッチ本気ですね!!
683:名無しの転生者
またか……。
684:レジェンドプロデューサー
互いに決めにきたか……。
「……さぁ第2ラウンドといこうか!!」
「はい!!」
︎︎炎をまとった黒き爪を振るう俺と、腕に巻きついたツルを操作し一回りも二回りも大きい腕を作った塩崎がスタジアム中央で激突する。