呪力は呪力でも呪力かよ!?   作:パンツ男

39 / 40
39スレ目

「立てよ……まだ始まったばっかだぞ」

 

「クマ……野郎ッ!!」

 

 ︎︎スタジアムに倒れる爆豪を見下ろし、俺は足元のコンクリを蹴り砕き拳大の欠片を拾うと、握り潰した。

 

「み恵(めぐ)みを受(う)けても背(そむ)く敵(あだなえ)は篭弓羽々矢(かごゆみははや)もてぞ射落(いお)とす……裂空魔弾(れっくうまだん)……喼急如律令」

 

 ︎︎詠唱を終えた俺は、拳に握った弾丸を親指で弾き飛ばした。爆豪は咄嗟に“個性”で弾丸を爆破して壊すことに成功し、防御することに成功した。

 ︎︎爆豪は弾丸が直撃したスタジアムを見てその威力に顔を歪める。

 

「まだまだ弾はある」

 

「ッ!」

 

『蘆屋の弾丸!爆豪は回避するのに必死で近づけねぇ!』

 

「避けてばっかだな」

 

「黙ってろ!」

 

 ︎︎“個性”で飛行する爆豪は、追尾するように飛ぶ石の弾丸を回避しながら俺に接近しようとする。

 

「起こりって知ってるか?」

 

「あァ!!」

 

「武道や格闘技……心理的なやり取りにおいて、本格的な攻撃や動作が起こる僅かな予兆みたいなもんだ」

 

「それがどうした!」

 

「今のお前の行動を読むなんざ簡単って話だ」

 

 ︎︎爆豪を挟み撃ちにするように放った弾丸。爆豪は“個性”を使い方向転換しつつ、弾丸を破壊した。

 

「器用だな」

 

「もう終わりかァ!」

 

「なわけないだろ……本気で打ってやるから死ぬなよ」

 

「ッ!?」

 

 ︎︎力を込めて全力で石を弾き飛ばした。先程よりも速く飛んだ弾丸は爆豪の頬を掠め、スタジアムを超えて観客席の真下の壁に激突する。

 ︎︎轟音と共にヒビが走り壁が陥没する。

 

『なんて威力だ!?石の弾丸が壁を壊したァ!!?』

 

「……殺す気か?」

 

「お前なら避けれると判断したまでだ」

 

「推し量ってんじゃねェ!」

 

『爆豪!再び蘆屋に接近!!』

 

「さっきも言ったが……お前の動きは予測できる」

 

「避けんな!」

 

「なら当ててみろ」

 

「ッ!」

 

 ︎︎俺は爆豪の爆破を躱しながら隙を見て拳を叩き込む。爆豪は苦悶の表情を浮かべながらも、爆破し続ける。

 

「タフネスはあるみたいだな」

 

「ッ……!」

 

 ︎︎爆豪の耐久力ならいけると判断し、顔面、腹、背中、横腹、顎を順に殴る。流石の爆豪もバランスを崩してまたスタジアムに倒れる。

 

 

 

787:名無しの転生者

重り外しただけなのに強くね?

 

788:レジェンドプロデューサー

ただ、重りを外しただけではないからな。

 

789:名無しの転生者

と言うと?

 

790:レジェンドプロデューサー

120kg+67kg、合計187kgの重りを背負っているんだ。

日常生活でも体には相当な負荷がかかる。

ガブリアスニキの話じゃ、呪力で体が壊れないように調整してるとは言っていたが、強すぎればトレーニングの効果が薄くなり、弱すぎれば身体の故障に繋がる。

 

791:竜舞ガブ

つまりギリギリの丁度ええラインを保ってたって話や。

 

792:名無しの転生者

なるほど。

 

793:レジェンドプロデューサー

そして今、物理的な重りが外れたことに加え、常に意識していた調整の必要がなくなったことで、戦闘に100%意識を集中できるってことだ。

 

794:名無しの転生者

そういうことか!

 

795:名無しの転生者

確かに身体が壊れないようにって意識してたら……思う存分戦えないわな。

 

796:名無しの転生者

じゃあ今のイッチって……。

 

797:名無しの転生者

最強じゃね?

 

 

 

 

「まだ終わりじゃないだろ?」

 

「……ッたり前だ!!」

 

「そうこなくちゃな……面白いものを見せてやる」

 

「あァ?」

 

「来い!クロ!」

 

『カァー!!』

 

 ︎︎このまま一方的な試合を続けても良かったが、ふとアイデアが降ってきたので、俺はカラス型の式神を召喚した。

 ︎︎最初の爆豪の猛攻を防御したことでボロボロになった袖では満足に呪装できないと考え、上着を脱ぎ右腕に巻き付ける。

 

「黒翼仇刃(こくよくきゅうじん)……喼急如律令!」

 

『おっと!召喚したカラスが光となって蘆屋の腕にくっついたぞ!?何が起きるんだ!!?』

 

「式神呪装!黒鳥魔鏡(こくちょうまきょう)!!」

 

 ︎︎普段は短剣に呪装していたが、体育祭では“個性”発動に必要なアイテム以外使用を禁止されているため、俺は霊符ケースと霊符以外使うことができない。

 

「本来は武器に呪装するんだが……上手くいったな」

 

 ︎︎右腕に纏っていた光が収まると、黒いガントレットが装備されている。カラスの翼を思わせるような装飾に動きを阻害しない最低限の大きさでとても良い。

 

「呪装をイメージし顕現するには相当な修行と時間がいるんだが……ぶっつけ本番でできるもんだな」

 

「ブツブツ喋んなや!!」

 

「人の話は最後まで聞いた方がいいぞ!」

 

 ︎︎爆豪は“個性”を巧みに使い、真正面から俺に爆破を浴びせ始める。

 

 

 

799:竜舞ガブ

イッチマジか……。

 

800:ペンギンストライカー

天才なのか……才能なのか……。

 

801:名無しの転生者

え?なんかすごいの?

 

802:レジェンドプロデューサー

イッチが言ってただろ呪装をイメージして形にするのは膨大な労力や時間が必要だと。

 

803:竜舞ガブ

実際……作中じゃ一人しか呪装の形をぶっつけ本番で変えることでけへんかったからな。

 

804:名無しの転生者

じゃあイッチって結構凄いことしてんの?

 

805:ペンギンストライカー

はい……。

事前にある程度構想を練っていたとしてもそれをいきなり形にするのは才能としか。

 

806:縁柱ドンモモタロウ

確かあの呪装って受けたダメージを蓄えて任意のタイミングで放てるんだったよな。

 

807:名無しの転生者

うわぁ……爆豪の猛攻をひたすら耐えてる。

 

808:名無しの転生者

あれって結構やばいんじゃ。

 

809:竜舞ガブ

少なくともSMASHくらいの威力はあるやろな。

 

810:聖剣使いのプロブレーダー

それって……ヤバくね?

 

 

 

 

『蘆屋!爆豪の猛攻を耐え続けている!爆豪このまま押し切れるか!!』

 

「防御ばっかしてんじゃねェ!」

 

「本気を出せとか、防御するなとか……注文が多いな」

 

「ッ!!」

 

「お前だって出し切れよ。人に全力でこいって言うならお前も出し惜しみすんな」

 

「俺は最初から全力だ!!」

 

「そうか?ならお前の全力じゃこの程度が限界ってことだ」

 

「ッ……!死ねェ!!」

 

 俺の挑発に乗った爆豪は自分が追い詰められていることも知らずに猛攻を続ける。俺は全てガントレットで防御し、反撃の準備を着々と進める。

 

「ほらよ!」

 

「ッ……!」

 

「別に反撃しないとは言ってないぞ?」

 

 ︎︎爆豪が冷静にならないように攻撃の隙をついて弱攻撃を与え、ひたすら俺への怒りを募らせていく。

 

「ッ!その手に乗るかよ!」

 

閃光弾(スタングレネード)!!

 

「目潰しか……!」

 

「そこォ!!!」

 

「ッ!」

 

 ︎︎ゼロ距離からの光と音の攻撃、俺は咄嗟に目を守ったが、爆豪はそれを予測していたのか腹に爆破を叩き込んだ。

 

「やっぱそうか……防御し始めた時と……今……明らかに腹の模様が消えかかってんなァ」

 

「……」

 

「何も言わないってことは……認めるんだな?つーことはお前の“個性”にも消耗以外で何かしら付け入る隙があるわけだ」

 

「へぇ」

 

 

 

812:名無しの転生者

才能マンやべぇ……!

 

813:名無しの転生者

確かに爆豪の前で何度も“個性”を使ってたからバレるかもとは思ってたけど……。

 

814:アサシンディケイド

キレながらも見るところはちゃんと見てるな。

 

815:竜舞ガブ

褒めてる場合ちゃうで……イッチの弱点に気づき始めとるんや、これは長期戦になったらマズイかもな。

 

816:名無しの転生者

そういえば、なんでイッチの呪装が消えかけてるんだ?

 

817:ペンギンストライカー

呪装は込める呪力と維持する呪力が必要だということは説明しましたよね。

問題はこの維持する呪力にあります。

 

818:竜舞ガブ

複数呪装をしてる場合、そのうち一つに呪力が集中すると、残りの呪装の維持が難しくなんねん。

 

819:名無しの転生者

なるほど。

 

820:レジェンドプロデューサー

イッチが今使ってる呪装は受けたダメージを蓄積し衝撃に変換する。

つまり、攻撃を受ければ受けるほど維持するための呪力が上昇していくってことだろ。

 

821:竜舞ガブ

そういうことや。

 

 

 

 

『爆豪ついに蘆屋に一撃を与えた!!』

 

「腹の模様が消える理由……時間経過か……個数制限で古いヤツからリセットされる……あとはリソースの配分とか……まぁなんでもいい……お前にも付け入る隙があるってこったァ」

 

「ベラベラ喋るな。そんなに俺の“個性”が暴けて嬉しかったのか?」

 

「ハッ!人の話は最後まで聞いた方がいいだろ?聞けよ」

 

「お前が先に聞かなかったんだろ」

 

「そうだな!!」

 

 ︎︎爆豪は先程の猛攻からうってかわり俺の死角を狙うように常に動き続ける。“個性”により360度全方向を縦横無尽に飛ぶ。

 

「ッ!死ねェ!」

 

「隔壁遮闇……喼急如律令」

 

「そこだ!!」

 

 ︎︎爆豪は俺からの反撃を警戒して広範囲を爆破する。爆炎を結界で防ぐが爆豪は黒煙に紛れて背後から攻撃を仕掛けてきた。

 

「さっきも言ったろ?殺気がダダ漏れなんだよ」

 

「ッ!」

 

 ︎︎爆豪は俺の拳をギリギリで回避しまた距離をとった。

 

「おいおい……逃げんのかよ」

 

「うっせェ!」

 

「そろそろ……この状況にも飽きてきたし……」

 

「あ?」

 

「フン!」

 

BOOOM!!!

 

『なんということでしょう!!蘆屋の拳でスタジアムが半壊した!!残る足場は蘆屋の真下だァ!!?』

 

 ︎︎ヒットアンドアウェイに徹しようとする爆豪の策を壊すために俺はスタジアムを殴り破壊した。

 

「てめッ!?」

 

「ほら来いよ……俺はここだぜ?」

 

「ッ!!」

 

 

 

822:名無しの転生者

えぇ!!?

 

823:名無しの転生者

スタジアムぶっ壊したァ!?

 

824:レジェンドプロデューサー

なるほどな……爆豪はヒットアンドアウェイでイッチを削るつもりだったがこうなるとチマチマやれないな。

 

825:名無しの転生者

え?なんで?

 

826:竜舞ガブ

爆豪は試合開始からイッチに反撃を貰いまくっとる。

さっきは回避できたけど次はわからん。

スタジアムが残ってるなら試行回数を稼げたかもしれんけど、この状況やと一回ミスしたら即場外判定で負けになる。

 

827:名無しの転生者

なるほど……。

 

828:名無しの転生者

でもそれってイッチも逃げ場が無いって事じゃ。

 

829:レジェンドプロデューサー

背水の陣ってやつだろうな。

 

830:聖剣使いのプロブレーダー

逃げ場のない場所に自分を置く。

これ以上ない緊張感だろうな。

 

831:縁柱ドンモモタロウ

そうなると感覚が研ぎ澄まれていくから爆豪が反撃を受ける可能性が高くなるってわけか。

 

832:ペンギンストライカー

考えましたね。

爆豪のやりたいことをやらせず、尚且つ自分のアピールはしっかり行う……強かと言うべきか計算高いと言うべきか……。

 

833:名無しの転生者

あ!爆豪が飛んだぞ!!

 

834:名無しの転生者

あれってまさか!

 

835:アサシンディケイド

決めに来たか。

 

 

 

 

「ほら来いよ」

 

「ッ!!」

 

 スタジアムが壊れたことで、場外負けの可能性がぐっと上がり、爆豪は舌打ちをする。俺が挑発すると“個性”で高く飛び、俺との距離を稼ぐ。

 

「だったら!!残ったスタジアムごと吹き飛ばしてやるよォ!!!」

 

 ︎︎高く飛んだ爆豪はこちらに向かって回転を加えながら、一直線に飛んできた。

 

「榴弾砲着弾(ハウザーインパクト)!!」

 

「それがお前の全力か……黒鳥魔鏡……解放!」

 

 ︎︎爆豪と俺の拳がぶつかり合い、会場全体が眩い光に包まれた。

 

『両雄激突!!果たして……どっちが勝ったんだ!!?』

 

 ︎︎プレゼント・マイク先生の声が会場全体に響き渡る。光が収まると残っていたスタジアムの足場は崩壊しており、俺は結果に爆豪は反動で震えながらも“個性”で浮いていた。

 

『なんということでしょう!!2人ともまだ立っている!!』

 

「諦めが悪いな……もう限界だろ?」

 

「それは……お前もだろう、がッ!!腕の呪装……無くなってんぞ……!!」

 

「……」

 

「そっちが来ねぇなら……俺が終わらせてやるよ!!」

 

『カァ!!』

 

「ッ!?」

 

 ︎︎限界が来ても諦めずに攻撃しようと接近する爆豪の背後からクロが突進してきた。最後の一撃の後、俺は腕の呪装を解除して爆豪の死角で待機するように命じていた。

 ︎︎意識外からの不意打ちに、爆豪は咄嗟に身体をひねりクロを爆破したが、その一瞬が命取りになる。

 

「気ィ抜くなよ……奇一奇一(きいつきいつ)たちまち雲霞(うんか)を結(むす)ぶ 宇大八方(うだいはっぽう)ごほうちょうなん たちまちきゅうせんを貫(つらぬ)き 玄都(げんと)に達(たっ)し 太一真君(たいいつしんくん)に感(かん)ず 奇一奇一(きいつきいつ)たちまち感痛(かんつう)……金鳥天衝弾!喼急如律令!!」

 

「クソッ……!!」

 

「俺が最後までガチンコやるような奴に見えたか?……奥の手は最後の最後まで隠し通すもんだ……覚えとけ」

 

 ︎︎最後まで食らいついてきた爆豪だったが、限界が来た身体では回避することができず、衝撃波をモロに受け半壊したスタジアムに落ちる。

 

「……」

 

「……」

 

「……」

 

「……ば、爆豪くん……場外…………蘆屋くんの勝利!!」

 

 ︎︎静かな会場にミッドナイト先生の声が響く。数秒遅れて観客席から割れんばかりの声が会場全体を大きく揺らした。B組の席の方を見ると皆が立ち上がり喜んでくれている。

 

(……ちゃんとお前らから貰ったもん……ここまで持ってきたぞ)

 

 ︎︎俺はクラスメイトに軽くてを上げ微笑んだ。

 

『以上で全ての競技が終了!!今年度雄英体育祭1年優勝は……』

 

『B組蘆屋晴臣!!!!』

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。