呪力は呪力でも呪力かよ!? 作:パンツ男
︎︎二日間の休日が終わり、また学校が始まる。天気は生憎の雨だが、それがサボる理由にはならない。
︎︎俺は昨日食べた巨大あんみつのダメージを若干残しつつ、アパートから雄英までの道を歩いていた。
「あ!体育祭優勝した人だ!」
「優勝おめでとう!」
「かっこよかったよ!」
「いい試合だった!」
︎︎昨日と同じようにすれ違う人に声をかけられながら、俺は軽く反応しつつ雄英に向かう。
(やっぱ……体育祭後は注目されるなぁ)
︎︎雄英に到着し、教室に入ると体育祭の反響について盛り上がっていた。
「俺声かけられたぞ!」
「俺も俺も!」
「私もです」
「そりゃそうだろ!」
「いいなぁ……俺は気づいて貰えなかった……」
「気にすんな!次目立ちゃいい!」
「そうだよな!俺頑張るぞ!」
「その意気だ!」
「ん!」*1
「頑張ってとか?」
「ん!」*2
「なんじゃそりゃ」
「羨ましいノコ」
「おはよう」
︎︎盛り上がる皆に挨拶すると一斉に視線が俺に向けられた。
「おぉ!晴臣!」
「どうだった!声かけられたか!?」
「まぁそれなりに……」
「やっぱりか!」
「優勝者だもんな!」
︎︎クラスメイトの勢いに、若干押されながら俺は自分の席につく。
「やぁ!晴臣!」
「物間か、やけにテンション高いな……」
「そりゃそうさ!だって世間がB組をちゃんと評価したんだからね!」
︎︎物間は非常にハイテンションに話し始める。
「敵の襲撃を受けたにもかかわらず全員無事に生還したA組を評価するのは当然のこと!でもねぇ!だからといってB組を低く見るのは違うよねぇ!!」
「物間……?」
「B組には歴代最高点で入試を合格した晴臣や!トップ10以内の成績を収めた塩崎、拳藤、鉄哲だって在籍してるのに、やれB組は弱いだとか、A組は凄いけどB組はパッとしないとか好き勝手に評価するなんてさ!」
「わかった……だから一回ブレーキ踏め、な?」
「だけど!今回の体育祭で僕らは世間からの評価を覆した!見てみなよ!」
︎︎物間がスクショしたであろうSNSのコメントを俺たちに見せてくる。
『敵を撃退したA組凄いって思ってたけどB組も凄ぇわ!』
『体育祭ほぼB組が目立ってたな!』
『予選B組が持ってった感あるわ!』
『やっぱり雄英おかしいよw』
︎︎などなどB組を評価するコメントで溢れていた。
「良かったな」
「あぁ!僕は許せなかったのさ!B組だって凄いのにA組ばかり持ち上げられるこの状況がさ!」
「予鈴がなったら席に着け」
︎︎白熱し止まらない物間だったが、朝のHRの時間を知らせるチャイムが鳴り、ブラドキング先生が入ってきたことでやっと落ち着いた。
「先生!おはようございます!」
「おはよう。皆、体育祭お疲れ様……他の教員もお前たちを褒めていたよ」
「ホントですか!?」
「あぁ。それではHRを始める。まず最初にだが、今日のヒーロー情報学は少し特殊だぞ」
「特殊?」
「【コードネーム】……ヒーロー名の考案だ」
「……」
「……」
「……」
「「「「「マジですかァ!!?」」」」」
︎︎コードネーム……オールマイトやエンデヴァーのようにヒーローとして名乗る名前のことである。当然、ヒーロー志望の子供たちは将来どんな名前を名乗るのか必死に考え、ワクワクしていただろう。
(コードネームか……聖がめちゃくちゃ考えてたっけな……)
「なぜヒーロー名が必要なのか……先日話したプロからのドラフト指名に関係している。指名が本格化するのは経験を積み、即戦力と判断される2、3年からだ。今回来た指名は将来性に対する興味……もしくは先行投資のようなものだ」
「なるほど……頂いた指名がそのまま僕たちのハードルになるということですね」
「その通りだ……それじゃ皆が気になっているであろう指名を発表しよう!」
「おぉ!」
︎︎ブラドキング先生がリモコンを操作し黒板に集計結果が映し出される。
B組指名件数
蘆屋:4358
塩崎:1124
鉄哲:427
骨抜:136
庄田:42
泡瀬:28
拳藤:14
物間:9
︎︎黒板に映し出された集計結果に皆口々に感想を述べる。
「うわぁ白黒ついちまった!」
「やっぱり晴臣が頭一つ抜けてんな」
「ねー」
「それにA組にも指名いってるからこうなるもしゃーないか」
(この中にトップ10以上のヒーローがいるかどうか……)
「静かに……これを踏まえて指名の有無に関係に無く、職場体験に行ってもらう」
「!!」
「A組は先の一件で既に体験したが、プロの活動を実際に体験してより実りある訓練をしてもらうというわけだ」
「なるほど!それでヒーロー名!」
「ワクワクしてきたぁ!」
「仮ではあるが適当なものを付けると……」
「後悔するから気をつけろYOー!!」
︎︎教室の扉が開かれ爆音とともにプレゼント・マイク先生が入ってきた。
「リスナー諸君!これから付ける名が!世に認知されそのままプロ名になってるやつが多いからな!俺みたいに!!」
「マイク先生!?」
「皆の考えたヒーロー名を査定してもらおうと思ってな。俺はそういうの得意な方ではないからな」
「そういうことだ!イレイザー・ヘッドの名付け親の俺に任せろ!」
︎︎そういうわけで始まったヒーロー名考案。俺は白紙のフリップを見つめ悩んでいた。
(ヒーロー名か……昔は色々考えてみたけど……スレ民に頼るか……いや……今の俺にヒーロー名を名乗る資格は無いな)
「決まったら発表してもらうぜ!」
「え!?発表形式!?」
「遅かれ早かれ認知されんだ!一足先にクラスメイトに公開しちゃえよ!」
「あーまぁたしかに……」
(……少し前に出ずらくなったな……はぁ……でも後になるのも面倒だ)
︎︎俺はため息を吐き、席を立ち上がる。
「お!蘆屋早いな!決めたか!」
「はい」
「なら前に出て発表してくれ!」
︎︎クラスメイトの視線が俺に集まる。俺のヒーロー名が気になるのだろう。
「期待してるとこ悪いが……陰陽ヒーロー『ハルオミ』だ」
「え!?本名!?」
「いいのかい!?」
「蘆屋なんでまた!?陰陽師モチーフなら安倍晴明から取ったり、五芒星からペンタグラムとか色々あんのに……」
「……少なくとも……今の俺はヒーロー名を背負えるような存在じゃないです……先生が考えてくれた名前も参考にします」
「ふーむ……まぁそういうことなら深く追求はしねぇ!ただハルオミで認知されたら変えてもあんまり浸透しないかもだからそこんところは覚悟しとけよ!」
「はい」
︎︎俺の発表が終わる。その後も特に問題は無く、クラスメイトのヒーロー名が決まっていく。
「アイドルヒーロー『シーメイジ』ノコ!!」
「おぉ!“個性”に掛かっててナイスネーム!」
「俺ぁこれだ!『リアルスティール』!」
「まさに鋼の男ってやつだな!」
「私は『バトルフィスト』」
「シンプルかつ“個性”の要素もあるいいな!」
「『ファントムシーフ』!」
「“コピー”にちなんだいい名前だな!」
「『マッドマン』」
「『ヴァイン』」
「『リザーディ』!」
「『ジェボーダン』ですぞ!」
「『コミック』」
「ん!」*3
「『ウェルダー』!」
「この名を刻むぜぇ……『ジャックマンティス』!」
「『ペンタブラック』……」
「『スパイラル』だ!」
「『ロケッティ』デース!」
「『エミリー』どう?うらめしいでしょ」
「『マインズ』です。この名に恥じぬ行いを」
「『
「『プラモ』」
「『ツブラバ』」
︎︎全員のヒーロー名が決まり、再びブラドキング先生がヒーロー情報学を進めていく。
「職場体験は一週間、肝心の職場だが指名のあった者は個別にリストを渡すからその中から自分で選択してくれ。指名の無かったものは、予めからこちらからオファーした全国の受け入れ可の事務所40件の中から選んでくれ」
「なるほどな……そういう措置もあんのか」
「まぁ……指名なかったら一週間何もできませんは……ね」
「ううん!……それぞれの活動地域や得意なジャンル異なると思うしっかり考えてくれ。提出期限は今週末までだ」
「あと二日!?」
︎︎ヒーロー情報学が終わり、皆がどこに行くか話し合っている。
(……トップ10から結構来てるな……後は情報収集しやすそうなヒーロー……スレ民に聞いてみるか)
1:ヒロアカ陰陽師
皆さん今大丈夫ですか?
2:名無しの転生者
お、イッチ!
3:名無しの転生者
ええで!
4:名無しの転生者
なんかあったか?
5:名無しの転生者
時期的に職場体験の行先とか?
6:名無しの転生者
いやヒーロー名だろ!
安価なら任せろ!
7:ヒロアカ陰陽師
ヒーロー名は決めました。
8:竜舞ガブ
そうなんや。
え!?決めたん!?
9:縁柱ドンモモタロウ
マジかよ!?
安価チャンスと思ってたのに!?
10:レジェンドプロデューサー
ヒーロー名をなんだと思ってるんだ?
11:縁柱ドンモモタロウ
だってよぉ……。
12:名無しの転生者
イッチぜんぜん安価してくんないから……。
13:アサシンディケイド
そういうのは安価をよくやるスレに行くといい。
イッチにはイッチのやり方があるしな。
14:名無しの転生者
はーい。
15:竜舞ガブ
それではイッチはどんな名前にしたんや?
16:ヒロアカ陰陽師
本名のハルオミにしました。
17:聖剣使いのプロブレーダー
なんでまた?
18:ヒロアカ陰陽師
復讐者である俺がヒーロー名をなる資格がないからです。
19:ペンギンストライカー
イッチ……。
20:竜舞ガブ
そうか……。
まぁイッチがそう決めたんなら俺らはなんも言わん。
それに、復讐が終わったなら新しくヒーロー名をつけるんやろ?
21:ヒロアカ陰陽師
一応そのつもりです。
22:縁柱ドンモモタロウ
なら、そん時に安価で決めようぜ!
23:ヒロアカ陰陽師
そうですね。
その時はお願いします。
24:名無しの転生者
おっしゃ任せろ!
25:フィジカルギフテッド石化中
ヒーロー名を決めるんじゃないなら、職場体験先の相談でいいのかな?
26:名無しの転生者
あ、そうだった!
27:ヒロアカ陰陽師
その通りです。
体育祭の時にも言ったと思うですが、トップ10のヒーローから指名が貰えたので、情報収集しやすいヒーローを教えて欲しくて。
28:竜舞ガブ
なるほどな。
俺たちに任せや!
早速誰から指名貰ったか教えてくれ。
29:ヒロアカ陰陽師
はい。
エンデヴァー
ホークス
ベストジーニスト
クラスト
ミルコ
リューキュウ
ギャングオルカ
の7名からです。
30:聖剣使いのプロブレーダー
なるほどな。
トップ10の殆どから来てるな。
31:名無しの転生者
ここから絞っていくとして……まず、ベストジーニストはダメじゃない?
32:竜舞ガブ
せやな。
恐らくやけど、イッチの復讐に勘づいて七三デニムに矯正されるやろな。
33:ヒロアカ陰陽師
……?
わかりました……とりあえずベストジーニストは無しと。
34:縁柱ドンモモタロウ
そういう理由じゃギャングオルカもダメじゃないか?
35:ペンギンストライカー
そうですね。
原作の様子からイッチが復讐しようと見抜いて指導に切り替わるでしょう。
36:ヒロアカ陰陽師
なるほど……。
37:レジェンドプロデューサー
クラストも難しいだろうな。
あの熱血漢はヒーローとしてはとても尊敬できる人物だが、イッチの求める情報を与えてくれるとは限らない。
38:竜舞ガブ
リューキュウも難しいやろうな。
あと、多分あの子もおるやろうから尚更やな。
39:名無しの転生者
あぁ……。
40:ヒロアカ陰陽師
わかりました。
残りはエンデヴァーとホークスとミルコですね。
41:ペンギンストライカー
エンデヴァーも難しくないですか?
42:名無しの転生者
たしかに……。
43:ヒロアカ陰陽師
じゃあホークスはどうですか?
44:名無しの転生者
ホークスなぁ……。
45:名無しの転生者
多分、教えてくれるとは思うよ。
46:アサシンディケイド
イッチ、ホークスはヒーロー公安委員会の所属だ。
ここでホークスに借りを作ることになると面倒なことになりそうだ。
47:ヒロアカ陰陽師
なるほど……。
残るはミルコですけど……難しいですかね?
48:縁柱ドンモモタロウ
いや、ミルコが1番可能性あるぞ。
49:名無しの転生者
確かに……ミルコなら他のヒーローと比べて教えてくれる可能性は高いな。
50:竜舞ガブ
まぁ前提条件として、ミルコに気に入られる必要があるけどな。
51:ヒロアカ陰陽師
なるほど。
ならミルコにします。
52:名無しの転生者
即決!?
53:名無しの転生者
もうちょっと考えた方が……。
54:ペンギンストライカー
そうですね……可能性は下がりますが、リューキュウなら教えてくれるかもですよ。
55:竜舞ガブ
イッチ……ミルコのとこ行くなら覚悟した方がええぞ。
56:ヒロアカ陰陽師
覚悟は常にしてます。
57:レジェンドプロデューサー
そういう意味じゃなくてな。
ミルコは事務所を持たないヒーローだ。
58:アサシンディケイド
そのヒーロー活動は悲鳴や助けを求める声を聞いたらすぐに現場に行き、解決したらまた次の現場まで跳ぶんだよ。
59:名無しの転生者
他のヒーローと比べて活動地域が定まっていないんだよ。
60:名無しの転生者
下手すりゃ日本横断とかされられるってこと。
61:ヒロアカ陰陽師
なら大丈夫です。
その程度で諦めるほどの事でもないので。
62:竜舞ガブ
まぁそれならええわ。
63:ヒロアカ陰陽師
皆さんありがとうございます。
早速、ブラドキング先生に提出してきます。
64:名無しの転生者
おう。
65:竜舞ガブ
わかった。
職場体験までまだ時間あるかもやし、相談には乗るからな。
66:縁柱ドンモモタロウ
そうだぜ!
67:ヒロアカ陰陽師
ありがとうございます。
それじゃお疲れ様です。
68:名無しの転生者
おつかれ!
69:アサシンディケイド
おつかれ。
70:レジェンドプロデューサー
お疲れ様。
︎︎スレ民の相談もあり昼休みに職員室を訪ね希望の職場体験先を提出する。
「ヒーロー科一年B組蘆屋晴臣です。ブラドキング先生いらっしゃいますか」
「蘆屋か何の用だ?」
「こちらを提出しに来ました」
「職場体験先か……早いな……」
「体育祭前からある程度考えてましたから」
「そうか……それでミルコ?」
「はい、俺はこれまで“個性”と武器を用いた戦闘を主にしてました。ですが体育祭で武器の使用を禁止された時、思うように動けなかった場面が多々ありました。なのでミルコの元で近接と現場にすぐに迎える機動力を重点的に学びたいなと」
︎︎職場体験先をミルコに決めた時に考えたそれっぽい理由を話し、ブラドキング先生の様子を伺う。
「わかった、後はこちらでやっておく」
「ありがとうございます」
「頑張れよ」
「はい。失礼します」
︎︎職員室を出た俺はこの後の予定を整理しながら教室に戻る。
(放課後に葉隠の特訓を見なくちゃな……しまったなぁ……提出するついでに体育館の使用許可取ればよかった)
「あ!晴臣くん!ちょうど良かった!一緒にお昼食べよ!」
「あぁ……俺も葉隠と話したいことがあったしいいぞ。弁当取ってくる」
「うん!」
︎︎俺は教室に戻ると自分の鞄から弁当と水筒を取り出し葉隠と食堂に向かうのだった。
︎︎ちなみに俺がA組と昼飯を食べたことを後から知った物間に物凄く詰められたことをここに記しておく。