夢に咲く。   作:Lcrcl (エルマル)

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途中で別視点あり。


Flame Bullet

訃報を知った私は、その場で気絶したようで目が覚めたら久々に病院の天井を眺めていた。

 

医師や看護師が来る頃には、私は何が起きたか完全に理解し泣いていた。生まれて10年、一番泣いた。(また泣いたのか、文字が少し滲んでいる)

 

一通り検査してもらい、特に問題ないと診断された。そこで警察が来て死因が殺人だと知った。誰だ。私のお父さんとお母さんを殺したのは。心の中はソレでいっぱいだった。探してぶっ殺してやろうかとも思ったが、流石にその思考は切り捨てた。

 

犯人はお父さんの元同僚で、逸脱者らしくまだ捕まってないらしい。なので捕まるまでここを出ないでほしいと言われた。入院は出来るからと。

 

逸脱者、それも大人だし…私は大人しく待ってようかな。

 


 

「咲夢、大丈夫?…じゃないか」

「…大丈夫だよ。気持ちの整理にはもう少し時間が掛かりそうだけどね」

「バナナ買ってきたから、後で食べてくれ」

「ありがとう」

 

クレアと咲夢のお見舞いに来たけど、咲夢はずっと声のトーンが低いままだ。お人形さんのような綺麗な顔も相まってロボットみたいになってる。

 

「その、両親は───」

「逸脱者に殺されたって」

「「!?」」

 

さらっと言う咲夢、しかし表情が崩れ目は潤んでいた。涙を堪える為に真顔になってたようだ。

 

「私たちは強い。三階から飛び降りても無傷だった。でも逸脱者じゃない普通の人って…こんなにあっさり死ぬんだね…っ」

「咲夢…」

「なんで、なんで…お父さん…お母さん!」

 

大粒の涙を流す咲夢を、かける言葉が見つからない私たちは見ている事しか出来なかった。

…せめて、背中はさすってあげよう。

 


 

御兎やクレアが見舞いに来てくれたけど、それでも元気は出なかった。両親が亡くなったのにすぐ元気になるのもおかしいね…でも初めてできた友達を前にしてこうなるとは思わなかった。2人は泣いてる私の背中をさすってくれた。それが収まった後、私は一応無事なようだし一旦帰ろうとクレアが言った……その時だった。

 

院内に警報が鳴ったのだ、逸脱者の不審者が侵入してきたと。

 

恐らく私たち3人の思考は一致しただろう、『絶対私の両親を殺したヤツじゃん』って。多分私も殺して根絶やしにしようという魂胆かな?と私は何故か一周回って冷静に思考していた。

 

ドアがガンッと蹴り破られ、中から乱れたスーツを着た半狂乱のサラリーマンが現れる。私をみるなりニタッとした笑みを浮かべ、『これであの野郎があの世で絶望するぜぇぇ』とか言ってる。怖い…けど怖がってると本当に殺されかねない。

 


 

「覚悟しろぉ、空原の娘…ついでのそこのガキどももなぁ!」

「っ…咲夢、どうする!?ヤバいよ!?」

 

病院まで来て殺しにくるとか正気の沙汰じゃないよ!?

 

「そこの男、止まりなさい!」

「あ?」

 

看護師が警官を連れて部屋に入ってきた、しかし見るからに一般人だ。

 

「逮捕だ──ぐぎっ!?」

「てめぇごときに捕まるかよ」

 

警官が男に触れた瞬間電気が流れ気絶してしまった。雷属性か…!

 

「………」

「咲夢、固まってる暇なんてないよ!逃げよう!?」

「でも逃走経路なんてあるか!?」

「…ある。私の後ろに」

「「え?」」

 

後ろ?と脳がその単語を捉えた次の瞬間、『パリィン!』という音と共に咲夢が窓を突き破った。

 

「チッ、逃すかァ!」

 

私たちをスルーして窓から飛び降りる男。それを見た私たちは3秒ぐらい固まった後、ようやく状況を理解した。

 

「え、あ、追いかけないと!」

「待て待て飛び降りるな」

 

「…窓の弁償、不審者の方でいいですよねコレ」

 

部屋に残った看護師はそんな事を言ってた気がする。

 


 

この病院は町の隅にあり、近くの森に逃げれば誰も巻き込まなくて済む。そう考えた私は窓を突き破り飛び降りて、全力で逃走を開始した。

 

男の足は随分速かったけど、なんとか追いつかれずに森まで行く。入ると男は私の動きを止めようと木を薙ぎ倒し始めた。何故そこまでして私を殺したいのかと問うても、『地獄でテメェの親父に訊くんだな』と返される。半狂乱だしどうせ逆恨みだろうから訊いても意味はないか。

 

そろそろ足が疲れそうになった所で、男はとうとう私は直接攻撃しだした。電撃が放たれ、私を狙う…が、私はそれを霊力を纏った腕で打ち消す。あっけに取られた男は『テメェも俺みたいな力を、クソが!』とかブチギレている。

 

さてはこの人逸脱者についてしらないな?と察した私は先程の攻撃の乱雑さから練度も低いと考察し、逃げるより倒した方がいいと方針を切り替えた。

 

動きを止め、男の方を向く。『両親の仇、お前を倒す』と宣言し霊力を練る。それに気圧されたのか男は冷や汗を流しながら『ガキが…大人を舐めんじゃねぇ!』と言いながら突っ込んでくる。イノシシみたいだ。

 

私はその突進を避け──男の脳天に火の弾丸を撃ち込んだ。名付けて、フレイムバレット

 

脳震盪を起こしたのか男はよろめき、その場で倒れた。あっけない、と思いながら私はこうして初戦闘を終えた。仇は取ったよお父さん、お母さん。

 


 

「咲夢!助けにき、た…あれ?」

「…やっと来た。もう終わったよ」

「えっ、不審者が倒されてる…」

 

しかも咲夢は無傷。どうなってるの…?

 

「動きが下手くそだったから、回り込んで頭に一発入れたらこうなった」

「「…マジ?」」

「咲夢嘘つかない」

 

そんな口調じゃないでしょ普段は。

 

「…ところで、どうするんだ?」

「?」

「両親が亡くなったんだろ?親戚とかいるのか?」

「親戚?…あ」

「も、もしかしていないの?」

「両親は一人っ子で祖父母はもういない。どうしよう」

「…ウチに来るか?」

「…告白?」

「違ぇよ!?」

 


 

両親の葬式を終えた後、私は警察から男の事情を知った。どうやらセクハラとかが原因でクビにされ、業績が優秀だったお父さんに逆ギレした時に逸脱者となって犯行に及んだらしい。やっぱり逆恨みだった…そんな人に両親は殺されたんだ。私がその場にいればと、悔しくて堪らない。

 

また私はリート家に養子として引き取られ、ビャッカ王国に引っ越すことになった。御兎とは土日ぐらいしか会えなくなるのは寂しいけど、同時に新たな生活が楽しみだ。

 

お父さん、お母さん。どうか天国から私を見守っててね。

(この文の横に一粒の涙が零れ落ちた痕跡がある)




フレイムバレット 火
その名の通り、火の弾丸を放つ。非常にシンプルで、溜めもほぼない。

豆知識:後天的な逸脱者はホントに些細な事でもなりうる。低確率で。

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次回もよろしくおねがいします。
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