「空、っ!?」
「咲夢───!」
クレア・リートが狂気に侵された御兎に殺され、ソレを見た空原咲夢がショックで気絶。聞けば聞くほど絶望的状況ですが…まだやりようはあります。
「ドット・リフティア!」
「っ?」
「遠く離れて、彼の身体を治療しなさい。蘇生する手立てはありますから!」
「ッ、分かった!」
離れていく吸血鬼を一瞥して、また光線を放とうとする御兎に一発入れる。
「イージスフォースIII」
「…邪魔。ミラー──」
「こんな技を開発したのですよ…OFFエリア」
私を中心に半透明のドームが展開され、その範囲に御兎が入ると同時に技がかき消される。
「この技の範囲内では能力が使えなくなります、シンプルでしょう?」
「チッ」
これで彼女は遠く離れた2人に攻撃する手段がなくなった。発動者も能力が使えないというデメリットはありますが、如何せん無い方が楽ですからねぇ。
「
「白炎結界V」
光には光、四方八方から放たれる光線を白い炎で阻む。
「気絶直前に放とうとしていた技はコレですか…厄介ですね」
当たってれば最悪そこから狂気が漏れ出て今までの行動がおざなりに…ストーンスパイクで気絶させたのは大正解でした。
「お前にいた時はあまり動けなかった」
「…人民を大量に殺ったのは?」
「刺激が足りない」
あの時は私の心が折れかけましたね、私の意志とは関係なく大量殺人鬼になりましたから。それを刺激が足りないとは。
「腸が煮えくり返る……貴様は意志を持った病気ですね」
「ならばお前は擦り切れた木偶の坊だ」
「そうですか。死ね」
「Ctrl Vしてお返しする」
「Cが先でしょう。機械音痴ですか?」
「黙れ、くぐぅ…!」
力を溜めている、例の衝撃波ですね。
「再び狂えィッッ!」
「
「させん────彗星一撃X!」
「ぎぅっ!?」
「マーズ!」
衝撃波が発動する…直前にマーズがそれを妨害した。遅いですよ、戻ってくるのが!
「ッ、空原君が気絶…何があった?」
「クレア・リート死亡、そのショックで空原咲夢は気絶。前者は私が後で蘇生させます」
「……そうか。畜生、もっと早ければお前を…教師失格だな」
「ならば私は人間失格です」
………。余計な会話ですね。
「「…張り合うのは───」」
「私の目の前で雑談するなァッ!」
「…!」
御兎の身体が半分ほど黒く染まっていますね…いや、飲み込まれていると言うべきでしょうか。
「この身体はよく馴染む、コイツで貴様らを葬ってやろう!」
狂気は霊力を練り、詠唱を開始した。させませんよ?
「明ノ明星X」
「ジ・インフェルノVII」
「うぎっ……日月・進歩・不絶・飛躍」
「攻撃を受けてもなお続けるか…!」
「ならばコレで」
御兎、技をパクらせていただきますね。
「光遍立方衝」
「っ、クソがッ!」
詠唱を途切らす事に成功。狂気は悪態を吐くが肉体は少しずつ黒が覆っている。
「どうする御珠、ヤツを引き剝がす程の衝撃を与える事は出来るが…生徒の身体が」
「………」
考えるのです、私。狂気に操られながら一体今まで何をしていたと言うのですか…ッ!
「一先ずは拘束を…」
「…っあれ?」
気付いたら白い空間に飛ばされていた。遠くからかすかに笛の音が聞こえる。
「目が覚めたか」
「クレア?……ッ」
そうだ、御兎が狂気に乗っ取られて…!
「落ち着け、咲夢。御珠さんが俺を蘇生させるって言ってたから」
「そ、っか…ココは何処なの?」
「精神世界みたいなヤツだな。俺ら以外にも人はいるぜ?」
「え?」
「後ろを見てみろ」
クレアが指さす後ろを見てみると、そこには───
「6年ぶりだな、咲夢」
「大きくなったわね」
「…ぁ」
お父さん、お母さん…!
「「おいで」」
「ッ…!」
2人は駆け寄る私を抱きしめてくれた。この温もりは…本物だ。
「クレア君も来ていいのよ?」
「俺はいいっす」
「…この温もりは渡さない」
「いいつってんだろ!」
しばらく抱きしめてから離れ、私に話しかける。
「天国から見てたぞ、御兎ちゃんが乗っ取られてるようじゃないか」
「あの愉悦の魔女って女の行動は気に食わないけど…御兎ちゃんもその人も助けたいんでしょ?」
生前は見たことない程の真剣な目つきで2人はこちらを見据える。ならば私も真剣に答えよう。
「うん。御兎も御珠さんも助けたい」
「俺もだぜ。つっても戦いが終わるまでは蘇生されないだろうがな…」
「なら、俺達からはコイツを渡しておく」
「?」
お父さんがポケットから取り出したのは…小さな白い花びら。
「天国からこの空間に来る前に、とある神様に渡されてな。咲夢が持っておくべきだろう」
「外見的に多分日本神話の方ね」
日本神話?…黄泉比良坂が元ネタの世末開裂を使ってるし伊邪那美とか?それと…
「ずっと聞こえてるこの笛の音って何?」
「確かに」
「笛の音?あぁ、『パラパワー』のことか」
「"同じ力"を持つ者が揃った時に聞こえる笛よ。正直よく分からないけど」
「ふーん…」
同じ力、パラパワー…parapower?誰と誰が同じなんだろ、私とクレア?諸々が終わってから考えよう。
「それじゃあ、行って来い!」
「うん。ありがとう、お父さん、お母さん」
「……ちょっと待って。貴方、言い忘れてるわよ?」
「ん?あぁそうか」
「?」
意識が戻りそうなのか少しずつ消えていく私を見て、両親は笑顔で言う。
「「16歳の誕生日、おめでとう」」
「…ふふっ、ありがとう」
コレで、私は戦える。鳴り響く笛の音と共に、私は元の世界に戻った。
「咲夢、頼んだぜ…」
「スレッドバインダーXIX」
「ッぐぉ、離せェぇ…!」
「誰が離すか、大人しくしろ!」
霊力の糸で拘束してますが、長時間は持ちません。ですが意地でも────!?
「何ダ!?」
「空原君の身体が光って…!」
「サングラスあります?」
「あるか!」
地獄に行ったらサングラス魔法でも作りましょうか。それはさておき…
「…!」
「目を覚ましましたね」
「あのまま眠ってればよかったものを…!」
ーーー
目を覚ましてから湧き上がる力に戸惑いつつ、周囲を見渡す。
「先生、御珠さん、そして……御兎」
狂気に乗っ取られているからか8割ぐらい真っ黒になっている。
「空原咲夢、一体どこから神力なんかを?」
「神力?」
「気付いてないのですか。目を覚ましてから霊力と一緒に纏ってますよあなた」
「…そっか」
あの花びらに入っていたんだろうね……よし。
「御兎、今からその狂気をぶっ祓ってあげる」
「お前ごときに、倒されてたまるか!」
白い花びら
何故か神力が入っていた。どの神が渡したかは不明。
笛の音
パラッ、パー、ワーと鳴る(空耳)。同じ力を持つ者がいると聞こえるらしい。
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次回もよろしくおねがいします。