私が生きる意味   作:黒野黒龍

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注意
この物語には「ゆ虐」描写や、一部過激な表現が含まれます。
現実での行動を助長・推奨するものではありません。
不快に感じる方は閲覧をお控えください。

この物語はフィクションです。
ゆっくりを含む設定や世界観には、他作品とは異なる独自の解釈が含まれます。
ご了承ください。



プロローグ
私はいつも同じ夢をみる。私の息子が生きていた時の夢。
 
「お母さん!黄色!黄色がいい!!」

「はいはい、黄色ね」

 私は黄色のペンをとり、息子の修也(しゅうや)に手渡した。
 
修也(しゅうや)は黄色が好きなのね」
 
「うん!先生が言ってたんだ!黄色を並び替えると違う文字になるんだ!!」

「へー、そうなんだ。なんて言うの?」

「へへ、それはね……」

「……」

 ゆっくりと目を開けると、いつもの天井が見える。

リビングへ向かうと、そこには家具が並んでいた。
 
 一人暮らしには大きすぎるテーブル。
そこには三つの椅子が置かれていた。
 
広いキッチンに大きなテレビ。

 何もかも変わらない様子に見えた。

「……」

 私は洗面所に向かい、顔を洗う。
鏡には死んだ目をした自分が写っていた。

 私は身支度をすると、机に手紙を置き、その場を後にした。


注意とプロローグ 第一章

第一章

 

 立ち入り禁止と書かれた屋上の扉を押し開けると、

冷たい風が頬を撫でた。

 

 周りにはビルやマンションが立ち並び、

その向こうには街が遠くまで続いていた。

 

 え?なぜ屋上に居るのかって?

ここにいる理由は、シンプルだ。

 

死ぬためだ。

 

 理由は思い出せない。

いや、思い出したくないだけかもしれない。

思い出したとしても、何も変わらない。

 

 ただ――

 

「死にたい」

 

 その言葉だけが頭に残っている。

 

 手すりを乗り越え、建物の縁に足をかける。

あとは一歩踏み込むだけだ。

 

 ああ……

 

「嫌だなぁ……」

 

 私が一歩踏み込もうとした時、鳥が羽ばたく音と誰かの声が聞こえた。

 

「ゆぴっ!!」

 

 声のした方に振り向くと、小汚い赤まりさが一匹、屋上の隅にポツンと立っていた。

そして、空に向かって叫んでいた。

 

「ゆっくちできにゃいくちょどりは、

はにゃくどっかいっちぇね!ちゅぐでいいにょ!」

 

そう言うと、赤まりさは私に気づき、こちらに顔を向ける。

 

「……」

 

私は無言で睨みつけた。

しかし、それに怯むことなく赤まりさは口を開く。

 

「ゆ?おいくちょにんげん、あみゃあみゃをよこちぇ!」

「ちゅぐでいいにょじぇ!!」

 

(なぜここに……?)

 

……だが、自分が置かれている状況より、あまあまを要求するとはさすがクソ饅頭だ。

だけど、そのクソ饅頭は周りを見渡すと泣き叫んだ。

 

「ゆ?!おとーちゃ!?おかーちゃ!?」

「どこにいりゅのじぇ!?ゆんやー!!ゆっくちできにゃいーー!!」

 

ゆんやーゆんやーと、その赤まりさは鳴き叫ぶ。

感情が激しいゆっくりだ。

私はため息を吐き、飛び降りるのをやめ、手すりを乗り越える。

 

歩く速度を早め、扉の方へ近づいていると赤まりさがギャーギャーと叫びだす。

 

「ゆ?おいくちょにぃんげん!!

どきょいくにょぜ!あみゃあみゃをよこちぇ!!」

 

こいつ……まだ言うのか。

生意気なクソ饅頭を踏み潰そう。

そう思い、右足を上げる。

 

 足を重ねようとした時、私はあることに気づく。

 

帽子――ゆっくりにとっての「おかざり」がない。

ゆっくりにとって、おかざりは命より大事なものだ。

 

それを失ったゆっくりは群れから追い出される。

酷い時には「せいっさい」という名のもとに処刑される。

 

さっきの鳥の音……おそらくこのクソ饅頭は鳥に捕まっていたが、運良く抜け出し、潰れることなくここに来たんだろう。

 

おそらく、おかざりもその時に飛んでいってしまったのだろう。

私は口角を吊り上げ、その赤まりさにそのことを伝えることにした。

 

「あれ?ここにゆっくりできないゴミ饅頭がいるねぇ?」

 

「ゆ!?どぼじでぞんなごどいうのじぇ!?」

「まりちゃはゆっくちしちぇるんだじぇー!?」

 

赤まりさは小さい体をくねらせながら反論する。私はポケットに入っていた小さい手鏡を広げた。

 

 そこに映っていたのは――

おかざりのない赤まりさだった。

 

 自分の姿をみた赤まりさは一瞬、ビクッと体をはねらせる。だが、すぐにニヤニヤと笑みを浮かべ、口を開く。

 

「ぷぷぷ、おかざりのにゃいゆっくちしちてにゃい

ゆっくちがいるにょぜ!」

 

赤まりさはニヤニヤと笑いながら、

おさげを揺らす。

 

 私は鏡を少し横に向けた。

鏡には二匹の赤まりさが映っていた。

 

「ゆゆ?まだゆっくちしちぇないゆっくちがいるにょ!」

 

「にゃかまをにょんでも、ゆっくちしちぇないこちょに

かわりはにゃいのじぇ!ゲラゲラゲラ」

 

(……こいつ、自分のことなのにまだわからないのか?)

 

ゲラゲラと笑う赤まりさに見えるように、前に撮っていた成体のまりさの写真を映し鏡の隣に置く。

 

「いち、に、たくしゃん!?」

「ま、まりちゃににゃにをしゅるつもりぃにゃのじぇ!?」

 

数で不利と感じたのか、赤まりさがプルプルと震えている。

反応が面白く感じた私は少しずつ、ゆっくりと……赤まりさに近づける。すると、赤まりさはパニックになる。

 

「こ、こ、こ、こにゃいで!!

やめるのじぇ!?ちゅぐでいいにょ!?」

 

赤まりさはおさげをブンブンと振り回し、

なんとか追い返そうとしている。

 

私は鏡と携帯を、赤まりさに触れる寸前で持ち上げる。

 

そして――

 

 そのまま赤まりさを叩き潰すように振りかぶった。

 

「ゆぎゃああああああああ!!」――

 

 

 少しの時間が経ち、赤まりさはゆっくりと目を開ける。携帯と鏡は赤まりさに触れる直前で止まっていた。

 

「……くっ……あははははははは!!」

 

私は腹が捩れそうなほど笑った。こんなに笑ったのはいつぶりだろうか。

 

私は携帯と鏡をゆっくり離し、赤まりさの様子を確認する。

赤まりさのあんよには、あんこと液体でぐちゃぐちゃになっていた。

 

(……ちょっとやりすぎたかな)

 

 私がそう思っているとあることを思いつく。

私は赤まりさに提案をする。

 

「……あのさ」

 

「ゆぴっ?!」

 

赤まりさは体をはねらせ、震えている。

 

私は言葉を探すように、しばらく黙っていた。

そして、やがて口を開く。

 

「私の……」

 

「飼いゆっくりにならない?」

 

「ゆ……?」

 

赤まりさは震えながら私を見上げていた。

 

そのまましばらく固まっていたが、やがて恐る恐る、小さく頷いた。

 

逃げる様子はない。

 

私は赤まりさを拾い上げた。――

 

 

私は赤まりさを連れて帰路についた。

気づけば、時刻はすでに夕方になっていた。

 

「ただいま」

 

私は自宅の扉を開け靴を脱ぐ。

マンションだと、ゆっくりは騒音になるため飼うことは禁止なのだが、一軒家に住んでいるので問題はない。

 

赤まりさを机に置こうと、手のひらに目をやる。

すると、「ゆ……ゆ……」と小さく声を漏らしながら眠っていた。

 

その寝顔を見た時、私は我に返った。

 

ついさっきまで、私は死ぬつもりだった。

だから、身辺整理もしていた。

 

それなのに――

 

ゆっくりを飼うことを選んだ。

 

……私は何をしているのだろう。

そう思い、呆然と立ち尽くした。

 

 私に育てられるのか。

そもそも育てる権利があるのか。

 また失ってしまうかも知れない、そんな恐怖が湧き上がる。

 

 私はふと赤まりさを乗せてる手を見る。

赤まりさは私の手のひらで、親ゆの近くにいるかのように、安心してゆっくりと眠っている。

 

「かわいい……」

 

そう私が呟くと、赤まりさがブルブルと震え出す。

 

「ゆっ……(ジュワー)」

 

 震えが止まると同時に、手のひらに温かいしーしーが広がる。

あんよが濡れたことに違和感を感じたのか、赤まりさが目を覚ます。

 

 赤まりさは寝ぼけながらゆっくりと周りを確認する。

 

「ゆ?あみゃあみゃはどこなのじぇ?」

「……ゆ!?どうしちてしーしーさんちゅいてるのじぇー!?」

 

そう叫んだ。

 

「……」

 

 私は手を洗い、うがいをする。

その後に赤まりさのあんよの汚れを洗い流し、服を着替えるため、私は赤まりさを机に置き、注意を促す。

 

「そこから動かないで、動いたら……どうなるかわかるよね?」

 

 私の言葉を理解したのか、赤まりさはコクコクと頷いた。

意外と頭がいい個体なのかもしれない。

 

 

服を着替えようと部屋に向かう時、

「ゆ?こにょかみはにゃんだじぇ?」

と声が聞こえた。

 

 視線をやると、置いていた遺書があるのに気づく。私は遺書を奪うように取り、足早に部屋に向かった。

 

 服を着替え、私は冷蔵庫を開けた。

冷凍庫には豚肉と野菜が少し余っており、それを使い野菜炒めを作ることにした。

 

――私はできた野菜炒めを皿に盛り、机の上に置いた。

 

赤まりさの方を見ると、目を輝かせ、よだれを垂らしている。

私は赤まりさに警告をした。

 

「それを食べたら、あんたを潰すからね」

 

それを聞いた赤まりさはビクッと跳ねると、

「ゆ、ゆっくちりかいしちゃのじぇ……」

と弱々と口に出す。

 

私は電子レンジで温めていたご飯を取りに行く。

その途中でチラッと赤まりさの方を見ると、涎を垂らしながらじわり、じわりと料理の方へ近づいていく。

 

そんな赤まりさが私が見ていることに気づくと慌てて

「にゃ、にゃにもしちぇにゃいのじぇ!?」

とおどおどと慌て出す。

 

その姿は、まるで子供が料理のつまみ食いをしようと企んでいるみたいで、少し微笑ましかった。

 

「ふふ、あんたの分も分けてあげるから待ってて」

 

「ゆっ!!」

 

それを聞いた赤まりさはキラキラと目を輝かせ頷く。

……ゆっくりにあげてもいいのかな……

少し調べよう。

 

ーー私は椅子に座り食事を摂る。

調べた結果、基本的に雑食でなんでも食べるとのこと。

 

ただし、毒性のあるものや強い苦味、

辛味や臭気の強いもの、硬すぎるものなどは食べられないらしい。

 

 辛いものが食べられないなんて、もったいない習性だ。

もし私がキムチや激辛ラーメンが食べれなくなったら発狂するだろう。

 

ふと赤まりさの方を見ると、

「むーちゃ、むーちゃ……ち、ちあわちぇー!」

と食べるたびに喜びを表していた。

 

ちゃんと食べられるか不安だったけど、口に合ったようだ。

 

「うみぇっ、まじぱにぇ、ちあわちぇー!!」

 

赤まりさの分は、食べやすいように少し細かく切ったからか、しっかりと食べていた。

 

 だが、「ちあわちぇー」という度に、

口に入れていたものがポロポロと溢れている。

 

赤まりさの周辺には食べカスが散らかっていた。

私は顔をしかめ注意をした。

 

「食べてる時に喋るな、黙って食え」

 

「ゆび!?どぼぢでじょんなごぢょいうのじぇ!!?」

「ゆっくちできにゃいのじぇぇぇ!」

 

赤まりさはあんよをバタバタと動かし体で嫌だと表現する。私は低い声で警告する。

 

「別に拒否をしてもいいけど、明日からあんたは【コンポストゆっくり】として生ゴミだけの食生活になるけどいいのかな?」

 

【コンポストゆっくり】

 

文字通り、生ごみを処理するために生きる……いや、生かされるゆっくりのことだ。

 

生ゴミは都市に住んでいる野良のゆっくりにとってはご馳走だが、悪臭が漂うため基本的にはあまり食べたがらない物だ。

 

 日が経っていなければ悪臭はないが、そのことをこの赤まりさは知らないのだろう。臭いを思い出したのか顔を歪め、震えている。

 

「ゆんやぁ……ゆっくちできにゃいのじぇ……」

 

「嫌なら舐めてでも片付けなさい」

 

 私は厳しい口調で話すと、赤まりさは泣き叫んだ。

 

「やじゃやじゃやじゃーー!!」

「そうじしゃんは、()()()()()()がしゅるのじぇー!?」

 

 (ピキィッ)

 

『べちんっ』

 

 私は赤まりさにデコピンをする。

軽くやったつもりが机の端までコロコロと赤まりさは吹っ飛んだ。

転がるのが止まると赤まりさは震える声で口を開く。

 

 「ゆ……?おつむしゃん……」

「どうしちぇいちゃいのじぇ……?」

 

 赤まりさの体を震わせ、大きな声で泣き叫んだ。

 

「ゆ……ゆ……ゆんやああああああ!!

 どぼじぢぇごんにゃごちょちゅるのじぇぇぇぇ!?」

 

「……」

 

 私は赤まりさをつまみ持ち上げる。

 すると、赤まりさは「おしょらをとんでりゅみちゃーい!」と言いながらおさげをピコピコと動かす。

 

『スッ』

 

「ゆ?」

 

 私は赤まりさを先ほどの位置に置き、力を調節してデコピンをまた喰らわす。

 

 『バシンッ』

 

「ゆぎゃあああああ!?」

 

 赤まりさが叫びながらコロコロと転がっていく。

 私がこうしているのは、楽しいからやっているわけじゃない。

 

 体罰での教育だ。

 

 このご時世では、体罰は"悪いこと"とよく言うが、相手がゆっくりなら話は別だ。

 あくまでゆっくりは生物(なまもの)であり、生き物ではない。

 

 それに、ゆっくりは害獣扱いされている。

ゴミ置き場の袋を破り、あたりに散らかす。

勝手に人の家に入っては、身勝手にゆっくりプレイス(住処)にして人間に害を起こす。

 

 だが、それだけなら社会はここまで変わらなかった。

 

 何より決定的だったことは十年前。

子供を刺し殺した“ゆっくり”がいた。

 

 ……とりあえず、泣き叫ぶ赤まりさを教育する間、昔話を聞いて欲しい。

 

 

 ――今から十年前。

ゆっくりが出現してから三年目の冬のことだった——

 

 当時、ゆっくりは突然現れた未知の生物(いきもの)だった。

危険性を訴える声もあったが、世論の多くは保護に傾いていた。

 

「弱い生き物なのだから、共存できるはずだ」と。

だが、そんな思想はすぐに砕かれた。

 

小学二年生の男児が死亡した。

加害は成体のまりさ種。

凶器は家庭用包丁だった。

 

発見したのは母親だった。

玄関先に倒れていたのは、二つの体だった。

 

当初、事故と見る声もあった。

 

だが――

 

子供の背には包丁が刺さっていた。

 

 

 『今回の事件を受け、ゆっくり保護を訴える団体と、規制強化を求める団体が激しく対立しています』

 

「これは不幸な事故です!ゆっくりは本来温厚な生物です!」

 

「包丁を持って刺したんだぞ!?どこが温厚だ!」

 

「最初に包丁を持ったのは人間の子供でしょう!?」

 

「奪われたのは人間の命だ!」

 

「一部の個体を理由に全体を排除するのは差別だ!」

 

 

 ――事件から一週間後。

ゆっくりの扱いを巡る議論は国会へ持ち込まれた。

 

「ゆっくりは管理対象とすべきです」

「野放しにすれば第二、第三の事件が起きかねない」

 

反対意見もあった。

だが、世論は既に傾いていた。

 

 その冬、ゆっくりは“保護対象”から“管理対象”へと法的に位置付けられた。

 

 これが、後に加工所と呼ばれる施設の始まりである。

 

やがて政府は各地域に施設を設置し、ゆっくりの回収と処理を制度化した。

 

 それは今も続いている。――

 

 赤まりさの教育を終え、時計を見ると夜の10時になっていた。

 

 後半はあまり力を入れていなかったのに、赤まりさの体はアザだらけになっていた。

 

 赤まりさは体を震わせながら、

「ゆっ……ゆっ……」と呟き、痙攣している。

 

 少しやりすぎたかな……

そういえば、ゆっくりがオレンジジュースで怪我が治ると聞いたことがある。

 

以前、動画で見たことがある。

 

ゆっくり虐待の動画だった。

 

濃縮オレンジジュースを一滴垂らせば、

どれだけ傷ついていても、甘さに誤魔化されるのだと。

 

画面の向こうで、まりさ種が叫んでいた。

 

「もうやめるのぜえええええ!」

 

その声に、画面にはこう書かれていた。

 

「鬼威惨、降臨www」

 

「鬼寧惨に教育されるまりさw」

 

……コメント欄は笑っていた。

そのときの私は、何も感じなかった。

 

 だが、家にはオレンジジュースはそもそもなかった。

……甘いものでも効果があるみたいなので、代わりに砂糖水を口に突っ込むことにした。

 

 私は砂糖水を赤まりさの口に流し込む。

オレンジジュースほどではなかったがアザが少し薄くなっていた。

 

「さて……次はこいつの住処だけど……

 とりあえず、これに入れておこう」

 

 私は赤まりさを小さな段ボールの中にいれる。

赤まりさが飛び越えれる高さはなく、ちょうどいい大きさだった。

 

「ゆっ……ゆっ……(ピクピク)」

 

「……」

 

 明日回復していることを願いながら、片付けを終え、私は眠りについた。

 

赤まりさの微かな震えは、夜が深くなるまで止まらなかった。

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