数日が経ち彩葉は快復、かぐやは彩葉に無理させないように配信活動を行っているが、このままでは一位に到達できない。
そんな時、かぐやにブラックオニキスから挑戦状が届いた。ヤチヨカップの集計終了一時間前、三対三の『SENGOKU』モードでの勝負だ。かぐやとグループの俺は勿論参加する。
決戦の日、ツクヨミに作られた特設スタジアムでブラックオニキスを待っているが、一向に現れない。かぐやが犬DOGEと遊び始めようとしたその時、会場の岩壁が爆発し、虎バイクに乗ったブラックオニキスの三人が現れた。虎バイクってなんだ…?
「どーも、対戦受けてもらってありがと」
帝がやたらこっちを見てくる。なんだ…?
「丹恒、今日はよろしく」
「ああ、胸を借りる気持ちで挑ませてもらおう」
「謙虚だねぇ…そして俺の姫、かぐやちゃん!」
「おらぁ帝!勝負だ!」
かぐやが帝にやたら喧嘩腰だ。
「へへっ、前傾姿勢かわいすぎ」
「俺が勝ったら、結婚してくれんの?」
と帝が言うと、着ぐるみスキンの彩葉が斬りかかる。
「んな、わけ、ねえだろ!」
帝は軽く避け、
「こわ」
とつぶやいた。
「いろはがダメって言ってる!」
「あっバカ!あんた何回言ったら…!」
そういったやりとりをする彩葉とかぐやを帝は温かい目で見ていた。
─────────
配置に着き、作戦会議を行う。
「いろPとかぐやがトップレーン、俺がボトムレーンへ向かうのがベストだと思うが、何か意見はあるか?」
「ない、私もベストだと思う」
「いぎなーし!」
法螺貝の音が鳴り響く。
一戦目が始まった。かぐやと彩葉はトップレーン、俺はボトムレーンへ龍霊に乗って向かう。
対する黒鬼は各レーンに一人ずつの配置、トライデントだ。こちらは初心者もいいところなので、舐められているのだろう。
龍霊を降り、櫓へ向かう竹林を走っていると、矢が頭に向けて飛んできた。
「っ!」
撃雲で叩き落とし、飛んできた方を見ると、ブラックオニキスのメンバーの一人、乃依がいた。
「ふつーに当てるのは無理っぽいなぁ」
「お前が俺の相手か」
そう言ったそばから俺は乃依を無視して牛鬼の方へ向かう。乃依を迎え撃つにしろ櫓を取りに行くにしろ、牛鬼に近い方が都合がいい。
牛鬼の近くに着き、俺はスキルを発動する。味方単体を「同袍」とし龍霊を付与する。龍霊は一定時間毎に行動し、攻撃力を上げてくれる。もういくつか効果があるがそれは後に分かる。
乃依がこちらに来たので正面から迎撃する。矢を叩き落としながら近づこうとするが、引撃ちされ近づけない。
そうしている内に太鼓の音が響く。帝に櫓を取られたか。こちらも取らないとまずい…!
矢が当たるのを無視して、乃依に全速力で突っ込む。
「もーらいっ」
と矢を当てられるが問題はない。身体に当たる直前、透明な盾に弾かれる。そのまま乃依を貫いた。
「ぴえーん♡」
スキルには累積可能なバリアの付与も含まれている。
そのまま牛鬼を倒して鐘を鳴らしたが、自陣の天守閣が落ちる様子が見えた。雷に落とされたようだ。
一戦目は敗北に終わったが、乃依の残機を減らせただけ良しとしよう。
インターバルの作戦会議中。戦闘に集中しすぎて気づいていなかったが、かぐやに帝が彩葉の兄だと教えてもらった。だからヤチヨカップの告知の時俺の影に隠れてたのか…。
あと彩葉が着ぐるみを脱いでいた。あれには特有のヒットボックスがあるから不利なんだとか。
「てか実力差がありすぎだよ…無理無理」
「すまない。こちらがもっと早く落とせていれば…」
「いやいやいや、丹恒は渡り合ってたでしょ」
そんな時、空を見上げていたかぐやが妙案を思いつく。
「…ねぇ、帝ってさ…」
───────
二戦目が始まった。黒鬼はトライデントを続行、俺たちも同じ配置で櫓に向かっていた。違いがあるとすれば、俺が走ってボトムレーンの櫓に向かっていることだろうか。
ミニオンを処理しながら乃依と接敵、そのまま膠着状態に持ち込む。ボイスチャットでかぐやの準備完了の報告を受け、俺が合図を飛ばす。
「─挙一明三
─君命無二
─ 一意専心!」
合図とともにかぐやがジェットハンマーで
「うお〜りゃあ!」
落下の勢いで牛鬼を倒したかぐやを乃依が狙うが、その狙う瞬間が命取りだ。俺は即座に
龍霊を複数召喚。
「不朽不滅を以て八荒を翔け…」
複数方向から追い詰め乃依の逃げ場を無くす。
「厄災を払え!」
龍霊たちと共に乃依を貫いた。
そしてこの必殺技には追加効果が存在する。
────
かぐやの乗っていた龍霊は未だ帝と彩葉の頭上にいた。丹恒の
「!何ッ!?」
龍霊を金棒で受け止めるが、押し切られそのまま飲み込まれて落ちる。
龍霊は
まだ一度も出していない初見殺しだ。二度は通用しないだろう。
そのまま彩葉、かぐやが両方の櫓を取り、コールド勝ちを取った。
──────────
自陣天守閣でノリノリなかぐやとハイタッチをしていると、帝が通信をかけてきた。
「やられたよかぐやちゃん、それに丹恒。でももし二戦目で配置変えてたら?」
その質問にかぐやは
「んー、帝も負けず嫌いっしょ?私だったら勝ってるうちはぜーったい作戦変えないから。どう?配信のかぐやちゃんとは違った〜?」
と返して笑っていた。
帝は
「う〜ん、新解釈の登場だ。かぐや道は深い」
と独り言を言っていた。
運命を決める三戦目。両陣営は各々櫓を取得。
自陣天守閣の近くで彩葉・かぐやと雷・乃依の攻防が繰り広げられていた。帝が天守閣へ向かっており、このままでは落とされるため、彩葉は焦っていた。
俺は龍霊と共に彩葉とかぐやの元に舞い降りる。
「彩葉。ここには俺とかぐやがいる。三人の力を合わせればこの苦難は乗り越えられる」
そう言うと彩葉は頷いて、
「楓!ここの二人お願い!」
「…了解した!」
彩葉とかぐやはジャンプ台から帝のもとに向かっていく。
俺は雷と乃依の相手をする。どちらも残機が一つなので、落とせば脱落だ。
「ということですまない、ここは通行止めだ」
「へぇ…生意気」
「…押し通る」
雷・乃依との戦いが始まった。雷が近接で戦い、乃依が弓で援護。シンプルだが厄介極まりない。スキルを発動する時間も与えられず、バリアが切れてしまう。無防備な肩に乃依の矢が突き刺さった。
「ぐっ…!」
激痛が走る。強引に猛攻を抜け出し、矢を引き抜く。傷口から黄金の血が流れた。
やはりダメージを受けるのはまずいか…
必殺を切り、地上に逃げ場がないように龍霊を展開、地上を削り取る。
勿論二人は空へ回避。黒鬼は移動を虎バイクで統一しているため空での回避手段もない。必殺後、即座に行動する龍霊で二人を飲み込んだ。
「雷と乃依を倒した。これから天守閣を守る」
『こっちも帝倒したから天守閣を落とす!』
かぐや達も帝を撃破したようだ。彩葉の声がいつになく明るい。二人は敵の天守閣へ向かっている。あと俺にできるのは…
「帝の足止め…か」
リスポーンした帝がミドルレーンを一直線に向かってくる。帝とぶつかる前に俺はスキルを発動した。
「天地を支える!」
そして一直線にこちらの天守閣へ向かう帝と激突した。
天守閣へ向かうのをなんとか食い止めながら、応酬を続ける。
「一機も落とさず俺らとやりあうなんて、何者?あと彩葉とどういう関係?」
「前者については、俺が知りたいっ!後者については、ただの、隣人だっ!」
「彩葉がお隣さんなだけであんな心許すわけ、ないなっ!本当のとこどうなんだっ!」
「っ!倒れてたとこを介抱しただけだっ!」
などという会話が繰り広げる内に、自陣天守閣の直前まできていた。
一方かぐやは大将落としの前にいた。
「勝ち確ぅ──」
とハンマーを振りかぶった瞬間、かぐやの足元が爆発する。雷の仕掛けた地雷だ。帝は俺たちの勝ち、と笑みを浮かべていた。
だが、最後に笑うのは俺たちだ。
かぐやには傷一つついておらず、そのまま大将落としを打ち込み天守閣へゴールイン。
二本先取で俺たちの勝利は確定した。
帝と対峙する前に発動したスキルは、かぐやを『同袍』としたものだ。
バリアが付き、地雷のダメージを打ち消した。
万が一のために発動したが、勝つことができて安堵している。
「彩葉、かぐや。よく頑張った」
「楓だってすっごい活躍してたじゃん。かぐやにスキル打ってなかったら負けてた」
「うぇーい!じゃあ三人のやつ!しよ!」
三人でハイタッチして、勝利の喜びを分け合った。
楓…ゲームの騰荒の劣化仕様。同袍にのみバリアを付与できる。やはり黄金の血が流れている。彩葉とかぐやの二人を「大地」から支える。
かぐや…真実のメロンパンがないので、レプトケファルス(空泳いでるやつ)の代わりに龍霊に乗る。最後の詰めを楓に埋めてもらった。
帝(朝日)…お兄ちゃんなので妹に近づく男を警戒している。