ブラックオニキスとの対決が終わり、いよいよヤチヨカップの優勝者が発表される。対決は勝利をもぎ取ったが、優勝できるかどうかは別の話だ。
「いと大儀〜〜〜☆」
ヤチヨが上空に現れ、順位を示す棒グラフが伸びていく。凄まじい速度で順位が公開されていった。
伸びていく二本の棒グラフの上でデフォルメされたかぐやと帝が争う。そして2位が公開された。
──第二位 ブラックオニキス。
二位がブラックオニキス…ということは一位は…
「ヤチヨカップの優勝者は〜〜☆」
そして残った一本はファンのコメントと共に伸び続けていき、一位が発表された。
──第一位 STAR RAIL。
今日一番の歓声が爆発する。対決を勝ったとはいえ、絶対王者の優勝を疑わない者の方が多かっただろう。だが蓋を開けてみれば大物喰らいとなり、会場は熱狂の渦に呑まれた。
「おめでとう、かぐやちゃん、彩葉」
声のする方を向けば、帝と雷がいた。通ってきたであろう道が一目でわかるほど割れている。乃依がいないが、帰ったのか。
「いやー、完全に負けたわ」
「よっし!見たか帝ぉ!」
「…かぐや。あまり喧嘩腰になるな」
「ま、元々無理やり結婚する気なんてねーし」
「だよな!かぐやも知ってた!」
信じていただろう、その反応は。
「で?彩葉のお願いごとって何?」
どうやら兄妹で勝った方の願い事を聞く約束をしていたらしい。
「引越ししたくって…保証人になってもらえないかと」
「家ごと買わなくていいの?」
「けっこーです!」
引越しするのか、彩葉たちは。確かにあのアパートではセキュリティ面で多大な不安がある。かぐやが稼いでいるし引っ越すのは良い案だろう。
そんなことを考えていると帝が耳打ちで話してきた。
「…後で会えない?できればリアルで」
「…分かった、これを渡しておく。俺の連絡先だ」
「サンキュ」
互いに連絡先を交換して、後日話すことを約束した。
「じゃあ、俺らファンのとこ行くから」
そう言って黒鬼の二人はログアウトしていった。
帝と話しているうちに彩葉とかぐやは結果発表を終えたヤチヨと話していた。かぐやが何故かFUSHIをリフティングしている。
「───かぐやはかぐやだから強いんだなって、ヤチヨは思ったよ」
──確かにかぐやだからこそ出来たことがあった。このヤチヨカップも、彩葉のことも。
当の本人は
「何にも言ってないなー」
とヤチヨに言っているが。
「さて、ここからはクライマックスに向けてハードな展開が待っているかも。このお話を最後まで見届けてね?」
そう言うとヤチヨは二人と肩を組む。
「YO!運命の荒波に揉まれる覚悟はいいかー!」
「おー!」
「お、おー…」
そうしているとかぐやに握られていたFUSHIが突然
「ネムッテ」
と、機械的な声で言った。AIも寝るのか…
「ふぁ……おねむ。じゃあね!さらばーい!」
と、ヤチヨは行ってしまった。聞きたいことがあったのだが。
ヤチヨが去った後、呆然とした彩葉が呟く。
「これ、現実…?」
「VRだよ」
「…そういうことじゃない」
─────────────
今日は約束していたリアルの帝、つまり彩葉の兄と会う日だ。約束したカフェで待っていると声をかけられた。
「はじめまして。お前が丹恒…で合ってる?」
黒い髪と翡翠の瞳。彩葉に似た雰囲気…この人が彩葉の兄か。
「あ、はい。丹羽 楓です。あなたが朝日さん…で、合ってますか?」
「タメ口でいいよ。そんな畏まらんといて」
そう言ってくれるのなら、お言葉に甘えさせてもらおう。
「…分かった。早速だが、今日呼び出した理由を教えてほしい」
「その前に何か頼もうぜ。お代は俺が持つから」
「…じゃあカフェオレを」
「りょーかい」
───────────
「で、今日呼び出したわけなんだけど彩葉のことで色々聞きたくてさ」
「直接聞けばいいだろう…と思ったが彩葉とあまり喋らないのか?」
「そうなんだよ…俺にべったりなのもよくないと思って家を出たんだけどそれで嫌われちゃってさ、話しても関係ないって」
「…そういうことなら、話してもいい」
人には人の悩みがあるようだ。
「彩葉とどういう関係?」
「…前にも言ったが隣人だ。それ以上の関係はない」
「流石に嘘でしょ。かぐやちゃんの配信見る限り結構な頻度で彩葉の家にお邪魔してるでしょ?」
「…彩葉がいない時にかぐやの面倒を見るように頼まれている」
「それだよそれ!あの彩葉が人に頼むなんて昔じゃありえないし。どうやって彩葉の心を開いたんだ?」
俺は最初に会った頃の話をした。
「…俺が高校に入ってすぐの頃、彩葉が玄関前で倒れてたのを介抱してから時々料理を押し付けたりしてただけだ」
「…なんて?」
どうやら彩葉は兄にも倒れた事を話していないらしい。他にも粉と水のパンケーキとかちょっと前にも倒れた話をしておいた。流石にかぐやの話は伏せたが。
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「…楓、ほんっとーにありがとう。彩葉のそばにいてくれたのが君とかぐやちゃんでほんとに良かったわ」
「あ、ああ。どういたしまして」
ある程度彩葉のことを話し、カップも空だ。
「それで今までの話を通して楓にお願いしたいことがあるんだけど…」
「…お願い次第だ」
「彩葉たちの引越しに楓、一緒に着いてってくれない?」
「………は?」
どういうことだ。
「いくらタワマンと言っても防犯にも限度がある。顔が割れてるかぐやちゃんがいるなら尚更の事。だからその
「それ以前に成人前の男女が一緒に暮らすのは問題があるだろう…」
「そうか?話聞く限り引っ越しても今とあまり変わらんと思うが」
「お前の言うことには一理あるが彩葉がどう思う?流石に了承はしないだろう」
「ほーん、じゃあ彩葉が賛成したら着いてってくれるってことでいいか?」
「…まあそれならいいだろう」
「言質は取ったからな♪」
そう言って俺たちの会合は終了した。
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後日。俺は引越し業者に荷物を渡し、空になった部屋を覗く。
「何故了承した…」
「お兄ちゃんの言うことも一理あるし、楓なら大丈夫かなって」
「頼ってくれるのは嬉しいが限度というものを…」
「…楓以外に言えんわ、こんなこと」
と小さい声が聞こえたが、聞かなかったことにした。
楓…彩葉と関わってきた一年は少しずつだが、彩葉の信頼を獲得していった。外野から外堀を埋められてきている。
朝日…原作だともしかしてボロアパート暮らしを知らないかも。(母から知らされてそうだけど)楓なら安心だと思い、同居人に突っ込んだ。
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